抄録
私たちは、タバコ培養細胞、シロイヌナズナ、ヒメツリガネゴケを用いてオートファジーの生理的役割を調べている。
栄養培地で培養していたタバコ細胞をショ糖を欠いた培地に移すと、細胞内のタンパク質や膜リン脂質、rRNAが分解を受け、1-2日のうちに約50%にまで減少する。オートファジーを3-メチルアデニンで阻害するとタンパク質とrRNAの分解が抑えられる。このことは、栄養飢餓条件下では、細胞はオートファジーにより自己成分を分解し、リサイクルやエネルギー調達をしていることを示唆している。
シロイヌナズナの根端を切り取って液体培地で培養すると、培養液のショ糖に依存して根の伸長成長が起こる。マクロオートファジー経路を欠損したatg5変異体では、この成長が抑制されている。このことは、オートファジーが細胞成長に寄与していることを示唆している。
ヒメツリガネゴケの原糸体を暗所に置くと、クロロフィルやルビスコの分解を伴った老化が起こる。マクロオートファジー経路を欠損したヒメツリガネゴケ原糸体では、野生型に比べて老化がより速く起こる。このことは、オートファジーが老化過程を負に制御していることを示唆している。