抄録
独立栄養で生きる植物にとって、獲得した栄養素やエネルギーの体内での効率利用は、過酷な環境下での生存戦略の一つとして重要である。C 3 植物では葉の全窒素の約80%が葉緑体に分配され、中でもRubiscoには約12-35%が分配されている。葉の老化や飢餓等のストレス条件下では、葉緑体タンパク質は速やかに分解され、それらを構成していた窒素や炭素はリサイクルされる。
オートファジーは植物においてもタンパク質のバルク分解・栄養素リサイクルを担う主要なシステムと考えられているが、その実態については不明な点が多い。私たちは老化葉におけるRubiscoを含む小胞、RCB(Rubisco-containing body)、の発見をきっかけに、葉緑体タンパク質の分解とオートファジーの関係を調べてきた。そして、(1)RCBは、 ATG 遺伝子に依存したマクロオートファジーにより、液胞に輸送、分解されること、(2) 葉緑体のオートファジーにはRCBによる部分分解と縮小した葉緑体本体の分解の2つの様式があること、(3) RCB形成は窒素ではなく主に葉の炭水化物含量によって制御されており、その制御は葉緑体以外の成分のオートファジーとは異なること、を報告した。本発表ではこれらの結果を紹介し、葉緑体タンパク質やオルガネラ分解におけるオートファジーの寄与について議論したい。