小児の精神と神経
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急性の強迫行為と摂食制限による低血糖と脱水症を認めた6 歳女児例
児玉 由布子藤井 秀比古川口 智子中嶋 義記
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2020 年 59 巻 4 号 p. 385-392

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抄録

半年前の溶連菌感染症の罹患後,急性の強迫行為と摂食制限を呈し,低血糖と脱水症状に至った6歳女児例を報告する.特に誘引なく,朝の着替え,朝食のやり直し行為が始まり,次第に強迫行為が長くなり,食事も摂れなくなったため当科へ紹介入院となった.低血糖および脱水所見を認め,A群溶血性レンサ球菌(GAS)抗原検査は陰性,頭部MRI,髄液検査にて明らかな異常を認めなかった.入院後,補液を開始し,低血糖と脱水症状の改善とともに,強迫行為と摂食の回復がみられ退院となった.その後症状なく経過していたが,約1年半後に同様の強迫行為が出現した.外来にて経過観察し1か月ほどで自然軽快した.経過中に施行したGAS抗原検査は陽性,咽頭培養にてSt. pyogenesを検出した.臨床経過から,溶連菌感染に関連した自己免疫性神経疾患である小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorder Associated with Streptococcal infections;PANDAS)や,明らかな先行感染がなく急性発症するOCD症状を包括した疾患概念としての小児急性発症神経精神症候群(Pediatric Acute-onset Neuropsychiatric Syndrome;PANS)が疑われた.今後の類似症例の蓄積が望まれる.

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© 2020 一般社団法人日本小児精神神経学会
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