日本小児放射線学会雑誌
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症例報告
脊髄超音波検査が診断と治療効果判定に有用だった新生児GBS髄膜炎の1例
塚越 隆司竹内 秀輔新井 順一出澤 洋人日向 彩子鎌倉 妙星野 雄介雪竹 義也宮本 泰行
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2019 年 35 巻 1 号 p. 46-49

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緒言

B群溶血性連鎖球菌(Group B streptococcus; GBS)髄膜炎は新生児期の感染症として重要であり,死亡率や後遺症遺残率が高い1).そのため,早期の治療介入を要するが,その診断や治療効果判定は容易ではない.新生児髄膜炎に対して頭部超音波検査を用いて評価する報告は散見される2)が,脊髄超音波検査の有用性を示した報告はまだ少なく3),われわれの調べた限りでは髄液検査所見とともに観察した報告はない.今回,新生児GBS髄膜炎に対して脊髄超音波検査を実施し,診断時から治療終了時まで髄液検査所見とともに超音波検査所見を追跡できた症例を経験したので報告する.

脊髄超音波検査の方法・所見

方法:脊髄超音波検査は患児を側臥位にし,背側正中にプローブを当て,胸椎から腰椎まで評価した.24 Hzのリニアプローブ(TOSHIBA Aplio i800)を使用し,Bモードによる観察後,カラードプラで脊髄クモ膜下腔の脈管と髄液混濁,索状物を区別した.

所見:正常対照例の脊髄超音波像(Fig. 1)として脊髄円錐矢状断(Fig. 1a)と胸髄水平断(Fig. 1b)を示す.脊髄クモ膜下腔には正常脳脊髄液の無エコー域を認める4)

Fig. 1 

正常対照例の脊髄超音波像

a:脊髄円錐矢状断;脊髄クモ膜下腔に脳脊髄液の無エコー域(矢印)を認める.脊髄(S)から伸びる高エコーの馬尾神経(矢頭)を認める.腰椎(L1–2)を示す.

b:胸髄水平断;脊髄クモ膜下腔に脳脊髄液の無エコー域(矢印)を認める.胸椎(Th),棘突起(Sp),横突起(Tp)を示す.

症例

症例:日齢6の男児.

主訴:発熱,多呼吸,頻脈.

母体情報:28歳,0経妊0経産,妊娠31週0日から切迫早産で入院し,妊娠36週1日に退院した.前期破水はなかった.妊娠35週0日の膣培養でGBSは同定されなかった.

現病歴:在胎38週0日,出生体重2,378 g,Apgar score 1分値8点,5分値9点,頭位経膣分娩で出生した.日齢6に38.6°Cの発熱を認め,CRPは弱陽性を示し,重症感染症を疑われ,当院へ新生児搬送された.

入院時現症:体温38.8°C,心拍数184回/分,血圧80/49 mmHg,呼吸数49回/分,SpO2 100%(室内気)だった.活気は不良で大泉門は平坦であり,四肢末梢に軽度の冷感を認めた.Moro反射,把握反射,吸啜反射は正常だった.

検査所見:血液検査は白血球14,000/μl,CRP 1.34 mg/dlであった.髄液検査は細胞数2,669/μl(多核球85.2%,単核球14.8%),蛋白定量490 mg/dl,糖定量39 mg/dlであった.

入院後経過:細菌性髄膜炎と判断し,アンピシリンナトリウム,セフォタキシムナトリウム,ゲンタマイシン硫酸塩で抗菌薬治療を開始した.第2病日に入院時の血液と髄液の培養からGBSが同定された.第3病日に再度発熱を認め,アンピシリンナトリウム,リネゾリドに抗菌薬を変更した.同日の頭部造影MRI検査では膿瘍形成などの異常所見は認められなかった.第5病日には解熱し,第16病日までリネゾリドを,第31病日までアンピシリンナトリウムを投与した.同定されたGBSのアンピシリンナトリウム,セフォタキシムナトリウムに対する感受性は良好だった .抗菌薬終了後も発熱や白血球,CRPの上昇を認めず,第43病日に退院した.退院前の頭部超音波検査で異常はなく,生後10か月の時点では明らかな後遺症は認められなかった.感染経路としては,母体の膣培養でGBSは同定されなかったが経膣分娩で出生しており,早発型発症のため,垂直感染の可能性が高いと考えた.

本例の脊髄超音波像(Fig. 2)と髄液細胞数の経過:第1病日(Fig. 2a, b)の初回脊髄超音波検査では,脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇と索状物形成を認めた.第4病日(Fig. 2c),第24病日(Fig. 2d)の索状物は徐々に消退し,髄液細胞数はそれぞれ767,102/μlに低下した.第31病日(Fig. 2e, f)には脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇と索状物形成はさらに改善し,髄液細胞数は80/μlとさらに低下した.脊髄の拍動は初回脊髄超音波検査では消失していたが,2回目以降では拍動を認めた.脊髄超音波所見は髄液細胞数の低下に応じて改善を示し,新生児GBS髄膜炎の治療効果判定に有用であった.ただし,児の回復に伴う啼泣や体動の増加は,脊髄拍動の評価を困難にした.

Fig. 2 

本例の脊髄超音波像

a:脊髄円錐矢状断;第1病日,髄液細胞数2,669/μl,脊髄クモ膜下腔に索状物(矢印)を認める.

b:胸髄水平断;第1病日,脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇(矢頭)を認める.

c:脊髄円錐矢状断;第4病日,髄液細胞数767/μl.脊髄クモ膜下腔の無エコー域の拡大を認める.

d:脊髄円錐矢状断;第24病日,髄液細胞数102/μl.脊髄クモ膜下腔の無エコー域はさらに拡大を認める.

e:脊髄円錐矢状断;第31病日,髄液細胞数80/μl.脊髄クモ膜下腔の索状物(矢印)は消退している.

f:胸髄水平断;第31病日,脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇(矢頭)は改善している.

考察

今回,新生児GBS髄膜炎における髄液細胞数と脊髄超音波検査の推移を観察し,脊髄超音波検査は,早期診断,治療効果判定に有用と考えられた.

本例は診断時に髄液細胞数の著明な増加を認め,脊髄超音波検査で①脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇や索状物形成と②脊髄拍動の消失を認めた.Nepalらは脊髄超音波検査で①,②の両者が同時に陽性の場合,髄膜炎の陽性的中率が93.1%だったと報告している3).本例の脊髄超音波検査所見も髄膜炎として合致しており,典型例と考えられた.入院時には頭蓋内超音波検査も実施したが,報告されているような明らかな髄膜炎の所見2)は認められなかった.頭蓋内超音波検査は髄膜炎の診断や硬膜外膿瘍や水頭症など髄膜炎の合併症の評価に有用とされている5)が,早期診断には脊髄超音波検査がより有用であることが示唆された.

また,本例では治療によって髄液細胞数の低下とともに,脊髄クモ膜下腔のエコー輝度の低下や索状物の消退を認め,脊髄拍動も認めるようになった.Nepalらは,34例中22例で脊髄超音波検査を追跡し,42.8%の症例でエコー輝度の低下や索状物の消退を認め,62.5%の症例で脊髄拍動を認めたと報告している3).しかし,追加で実施された脊髄超音波検査は1回のみで,同時に髄液細胞数も評価されておらず,これまでに髄液細胞数と脊髄超音波検査所見の変化を経時的に比較した報告はない.本例ではFig. 2に示したように髄液細胞数の低下とともに脊髄超音波所見の改善が認められ,脊髄超音波検査が髄膜炎の治療効果判定に有用と考えられた.臨床経過が良好な症例では,髄液細胞数の追跡を脊髄超音波検査で代用し,侵襲的な手技である腰椎穿刺の回数を減らせる可能性が示された.

さらに,新生児髄膜炎を脊髄超音波検査で評価することは,腰椎穿刺が困難な症例でも有用と考えられる.例えば呼吸や循環動態が不安定な症例や,血液凝固能異常のある症例では,脊髄超音波検査で髄膜炎が示唆されれば,髄膜炎としての治療を開始する根拠となり得ると考えた.

新生児髄膜炎の評価において,脊髄超音波検査の限界もある.脊髄クモ膜下腔のエコー輝度上昇はタンパク質や細胞成分の増加によって生じる6)が,出血や炎症でも同様に変化するため,感染との区別は困難である7).加えて,①,②の所見は無菌性髄膜炎よりも細菌性髄膜炎に多い3)ものの,両者の鑑別診断は難しい.また,脊髄拍動は児の回復に伴う啼泣や体動との区別が困難となるため,睡眠中など体動の少ない状況で検査することが望ましいと考えられた.脊髄超音波検査は,椎弓の骨化が進むと脊髄クモ膜下腔の十分な観察ができなくなり,生後6か月程度までが実施の上限と報告されている4)

結び

本例は新生児GBS髄膜炎に対し,脊髄超音波検査と髄液検査の両方を経時的に評価した初めての報告である.脊髄超音波検査は新生児髄膜炎の診断や治療効果判定に有用である可能性が示された.

今回は一例報告であり,今後症例の蓄積を行っていく必要がある.

 

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