日本小児放射線学会雑誌
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第56回日本小児放射線学会学術集会“新時代の小児診療,360度の評価をめざして”より
先天性骨系統疾患に対する再生医療:低ホスファターゼ症に対する間葉系幹細胞移植
竹谷 健
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2021 年 37 巻 1 号 p. 34-41

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要旨

先天性骨系統疾患は,画像診断の進歩や原因遺伝子の同定により早期診断が可能となっている.しかし,患者の多くは致死的な経過をとるか,著しく日常生活が障害される.したがって,根治療法を含めた治療法の確立が期待されている.我々は先天性骨系統疾患の1つである低ホスファターゼ症(hypophosphatasia; HPP)に対する根治療法を目指して,間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell; MSC)を用いた骨再生治療に取り組んでいる.これまで,致死的なHPP患者に対して同種MSCを用いた治療を行った結果,骨の石灰化の回復だけでなく,筋肉や呼吸障害の改善もみられ,さらに精神発達も伸びることによって,生命予後ともにQOLの改善ももたらした.しかし,正常の骨構造の回復には至っていない.今後,増殖能や骨分化に優れている,高純度MSC(rapidly expanded cells; REC)を用いた細胞移植を検討している.これらの方法論が確立すれば,HPP以外の他の先天性骨系統疾患の根治療法へも応用が期待できる.

Abstract

Congenital skeletal diseases (CSDs) can be diagnosed early by advances in diagnostic imaging and identification of causative genes. However, many patients have a fatal course or severely impaired daily activities. Therefore, therapeutic improvements are expected. To establish curative and permanent therapy for one of CSDs, hypophosphatasia (HPP), we are trying to achieve bone regeneration using mesenchymal stem cells (MSCs), which bring about bone and cartilage regeneration. So far, we succeeded in not only recovery of bone mineralization but also improvement of muscle weakness, respiratory disturbance and mental retardation for fatal HPP patients using allogeneic MSC transplantation, resulting in improvement in both prognosis and quality of life. But, normal bone architecture has not been restored. In the near future, we plan a new cell transplantation using highly-purified MSCs (rapidly expanded cells; REC), which have excellent proliferative ability and bone differentiation. Bone regenerative therapy using MSCs can be expected to be applied to curative treatments for patients with CSDs including HPP if these methodologies are established.

はじめに

先天性骨系統疾患は450種類以上も存在するが,それぞれは非常に稀有な疾患であり,多くは骨・軟骨形成や骨代謝に関わる遺伝子異常により発症する1).疾患によっては,骨だけでなく呼吸器系,免疫系,中枢神経系などの多くの臓器に合併症を引き起こすことがある1).昨今の画像診断の進歩や遺伝子診断技術の劇的な向上により多くの先天性骨系統疾患の早期診断が可能となっている.しかし,根治療法が存在する疾患はほとんどなく,疾患によっては酵素補充療法を含めた薬物療法が行われているが,その効果は限定的である.

最近,induced pluripotent stem(iPS)細胞に代表される多能性幹細胞を用いた再生医療が注目されている.再生医療とは,病気や外傷によって失われた機能を再生する医療で,革新的医療として国民に安全・有効・迅速に届けることを理念としている.現在,日常診療で行われている有効な再生医療が,造血幹細胞移植と臓器移植である.移植源(ドナー)として,自分の細胞/組織/臓器を使う自家と,他人(同種)の細胞/組織/臓器を使う同種に分かれており,病気の種類や重症度,年齢や合併症などにより適切な移植源が用いられている.特に,同種移植においては,免疫抑制剤の進歩などによりその有効性と安全性が飛躍的に向上している.しかし,国内外において先天性骨系統疾患に対して,正常な骨構造に達する骨を再生する根治療法は確立されていない.

先天性骨系統疾患の多くは骨芽細胞や軟骨細胞の起源である間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells; MSC)からの骨化に至るまでの経路が障害されていることから,骨化能が正常な同種MSCによる骨再生医療が有望であると考えている.今回,我々が取り組んでいる先天性骨系統疾患の1つである,低フォスファターゼ症(hypophosphatasia; HPP)に対する同種間葉系幹細胞移植を中心に,その結果と今後の展望について述べる.

低ホスファターゼ症(hypophosphatasia; HPP)

先天性骨系統疾患の1つであるHPPは,ALPL遺伝子変異によって,骨の石灰化に関わる酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性が低下して,正常な骨の石灰化が障害される疾患であり,多くは常染色体劣性遺伝形式をとる2).主な症状として,骨症状(骨の湾曲,易骨折性,歯の脱落)だけでなく,中枢神経症状(難治性けいれん,難聴,発達遅滞)や呼吸障害,低身長などがみられる.発症時期と症状によって,胎児期あるいは新生時期に発症する周産期重症型,周産期に発症するが経過が良好な周産期良性型,生後半年以内に発症する乳児型,乳歯の早期脱落を特徴とする小児型の他,成人型,症状が骨には無く歯に限局する歯限局型の6種類の病型に分類される(Table 1).このうち,周産期致死型は日本で最も頻度が高い病型で,かつ最も重症であり,全身骨の低石灰化・長管骨の変形・骨幹端不整等が顕著で,徐々に骨の石灰化が消失して呼吸不全などで致死的な経過をとる2,3).2015年9月から,酵素補充療法が始まっており優れた治療効果を示している4,5)が,確立した根治療法はない.

Table 1  低ホスファターゼ症の病型分類
臨床型 臨床像 画像所見
周産期重症型 呼吸障害,痙攣
予後が極めて不良
骨の変形・短縮・消失
くる病変化,狭胸郭
周産期良性型 長管骨の変形
出生後石灰化が改善
長管骨の変形・短縮
乳児型 体重増加不良,高Ca血症
頭蓋骨癒合
長管骨の変形・短縮
くる病変化,狭胸郭
小児型 低身長,歩行障害
骨痛,骨折
長管骨の変形・短縮
成人型 骨痛,筋肉痛,骨折 偽骨折(大腿骨)
歯限局型 乳歯の早期脱落(5歳まで),う歯 歯槽骨喪失,歯髄腔の拡大

検査値として,血清ALP値が低値で診断されることが多く,ALP 300 U/L以下でHPPを疑う3).ここで注意すべき点として,2020年4月から,ALPの測定法が変更され,国際標準に統一されるため,測定値が従来の約3分の1となる.また,ALP値は年齢によって正常値が異なり,小児期は成人期よりも高値を示す.したがって,思春期までの場合,国際標準として,100 U/L以下の場合,HPPを鑑別する必要がある.

画像診断として,骨X線所見として,骨の変形・短縮・消失,くる病変化,狭胸郭などがみられる2,3).また,乳児型や小児型では骨幹端舌様低石灰化領域が特徴的と言われており,成人型では大腿骨の偽骨折(Looser zonesと呼ばれる骨折線)がみられることがある2).最近,我々はX線でみられる長管骨の骨幹端を横走する骨硬化を示す線条である成長停止線が軽症のHPPの一部に認められることを発見した(Fig. 1)(unpublished data).成長停止線は小児で骨の成長を阻害する侵襲(低栄養,感染,愛情遮断などの精神的ストレス,化学療法など)が加わり,その後成長速度が回復した後に「年輪」のように現れると言われている.HPPによる骨石灰化障害の侵襲によって成長停止線を認める可能性が示唆されるため,今後症例数を蓄積して,詳細を明らかにしていく予定である.

Fig. 1 

HPPに認める成長停止線

大腿骨遠位骨幹端および脛骨近位骨幹端に認める成長停止線(矢印).

間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)

MSCは骨髄から単離された線維芽細胞様の骨形成細胞集団として報告され,造血幹細胞が存在する微小環境の形成に加えて,骨細胞,脂肪細胞および軟骨細胞に対する分化能力を有する紡錘形の接着細胞として定義されている6).近年,骨盤だけでなく脂肪,軟骨,筋肉,腱・靭帯,滑膜,歯髄,臍帯血,臍帯,胎盤などの広範な組織からMSCを培養できることが報告されている(Fig. 27).しかし,それぞれの組織に存在するMSCは同じであるか,それとも組織特有の細胞特性を持っているかは明らかではない7,8).また,in vitroでは,これまで骨芽細胞,脂肪細胞および軟骨細胞に分化するだけでなく,心筋細胞,血管内皮細胞などの他の中胚葉系の細胞に加えて,神経細胞,皮膚,網膜色素上皮,肺,肝細胞,腎尿細管細胞を含む外胚葉系および内胚葉系の細胞にも分化することが明らかとなっている7).しかし,in vivoでは骨,軟骨,脂肪への分化は認めるが,それ以外の組織や臓器への分化は明らかでないため,真の幹細胞ではなく,「間葉系」由来の多分化能性細胞であると考えられている8)

Fig. 2 

間葉系幹細胞

A:幹細胞としての間葉系幹細胞.自己複製能および分化能(骨,軟骨,脂肪)を有する.B:様々な部位に存在する間葉系幹細胞.

MSCは上述した骨・軟骨・脂肪への分化能だけでなく,免疫調整作用,抗炎症作用,抗菌作用,抗酸化作用,抗アポトーシス作用などの多機能を有する細胞である9,10).これらの作用を機能別に分けると,cell replacement(細胞置換)とtrophic action(栄養効果)に分類される.前者はMSCあるいはMSCから分化した細胞が目的の組織・臓器に到達(homing)して,生着(engraftment)し,障害された細胞と置換(replacement)して,機能が回復する(組織の恒常性・再生・修復)ことをもたらす一方,後者はMSCが直接あるいはMSCにより刺激された他の細胞が,栄養因子,サイトカイン,細胞外基質,細胞外小胞(微小胞,エクソソーム),ナノチューブを産生することによって,機能が回復する(免疫異常の正常化や組織の恒常性・修復)ことに寄与している(Fig. 311)

Fig. 3 

多機能を発揮するためのMSCの2つの機序

A:細胞置換.MSCまたはMSCから分化した細胞が標的組織/器官に生着し,損傷細胞と置換される.

B:栄養効果.MSCあるいはMSCによって刺激された細胞がサイトカイン,成長因子,細胞外マトリックスを産生して,あるいは間接的に細胞外微小胞,エキソソーム,ナノチューブを介して細胞内物質(遺伝子,タンパク,ミトコンドリアなど)を移入して,損傷した細胞を回復させる.a:MSCおよびMSCにより刺激される細胞のパラクリン効果.MSCは,成長因子,サイトカイン,ホルモンなどのパラクリン因子を分泌する.b:ナノチューブによるMSC内の物質輸送.MSCは,ナノチューブを介してオルガネラ(ミトコンドリアなど)および/または分子(遺伝子,タンパク質など)を転送する.c:MSC由来のエキソソームまたは細胞外微小胞からの移行.MSCは,エキソソームや細胞外微小胞によってオルガネラおよび/または分子を輸送する.

これらの多機能に加えて,MSCの採取に関して,MSCが存在する骨髄,脂肪,胎盤,臍帯から比較的容易かつ安価に採取できるだけでなく倫理的配慮が少なくて済むこと,MSCの増殖に関して培養操作が簡便で確立した手法が存在すること,これまでの多くのMSCを用いた臨床研究において投与されたMSCが腫瘍を形成したり,死亡例などの重篤な副作用が報告されていないことから,安全で利用しやすい幹細胞としてMSCによる細胞治療への期待が高い12).現時点で,造血幹細胞移植後の難治性移植片対宿主病(graft-versus-host disease; GVHD)や脊髄損傷に対する治療としてMSCが用いられており,今後もさらなる臨床研究が行われることが予想される.

低ホスファターゼ症に対する同種間葉系幹細胞移植

1. これまでの細胞移植

HPP患者のMSCはALP活性だけでなく骨形成能も著明に低下しているため,骨再生治療を目的とした細胞治療に自分のMSCを用いることはできない.そのため,骨化能が正常な他人(同種)のMSCにより骨再生が可能となると考えられる.

これまでHPPに対する細胞治療として,海外で乳児型の患者に,健常人の骨髄および骨,骨をつくる骨芽細胞や骨芽細胞に分化するMSCを移植することによりそのドナーの細胞が患者の骨に到達して骨を作り,患者が救命されたことが報告されている13,14).このことから,我々は,独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の協力のもと,2004年に骨髄,MSCならびに産総研が独自に開発した培養骨の移植を行い,周産期致死型の患者を救命することに世界で初めて成功した.しかし,海外の症例と同様に我々の症例も骨の石灰化の改善は部分的なものであり,満足すべきものではなかった15)

しかし,我々の症例を含めて3例のこれまでの経験では,骨髄とMSC以外に骨や培養骨なども移植していることから治療方法が複雑で治療効果が何に起因するのかが不明であった.そこで,骨髄移植(bone marrow transplantation; BMT)後にMSCのみを移植して,骨が再生するかを明らかにするために,厚生労働省・ヒト幹細胞を用いる臨床研究に申請し許可を受けた後,「重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植」の臨床研究を行った.MSCと骨髄移植を併用する理由として,同種骨髄移植後のMSCは患者由来のままであること,同種骨髄移植のみでは骨は形成されないこと,骨形成能が正常な他人(同種)のMSCが生着するために患者由来MSCを除いてかつ同種MSCの拒絶を防ぐ必要があることなどが挙げられる.

2. 重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植16)

対象は,重症HPPの2例で,呼吸障害を認め,ALP活性がほとんど消失しているALPL遺伝子変異(c.1559delT/c.1559delT)を有していた.この変異を有する症例は1歳前後で致死的な経過を取ることが報告されている3).方法としては,BMTを行った後に同じドナーの骨髄から培養増殖させた間葉系幹細胞移植を行った.ドナーはいずれも両親のいずれかでALPL遺伝子変異を1アレル有する保因者であったが,臨床的には正常な骨構造を有していた.BMTの前処置として,抗がん剤(シクロフォスファミド,フルダラビン)およびウサギ由来の抗胸腺グロブリンを使用した.GVHDの予防として,タクロリムスおよびメソトレキセートを用いた.MSCはドナーの骨髄液20–40 mlから培養して,患者体重(kg)当たり106個のMSCを経静脈的に投与した.なお,臨床的に症状が改善しないあるいは悪化した場合,ドナーから再度骨髄液を採取し,培養したMSCを繰り返して移植した.実際には,それぞれの患者に,4回,9回のMSCを移植した.主要評価項目は,3年生存率,副次的評価項目は,臨床症状と骨の石灰化の改善度,および有害事象とした.

結果は2例ともに,3歳まで生存して,致死的な状態から回復することが出来た.臨床的には,骨の石灰化の改善だけでなく筋肉量も増えて,呼吸障害が改善し,1例は歩行器を使用して歩行可能となった.また,精神発達も改善がみられた.画像検査において,上半身X線写真(Fig. 4)では,生直後から長幹骨の変形・短縮と骨端部のくる病変化および狭胸郭を認めており,それらの所見がすべて移植直前の生後6か月には悪化しており,X線写真上は胸郭を形成する骨は消失しているほどに低石灰化が進行していた.しかし,移植後1年が経過した1歳6か月では,骨の石灰化が回復した.この所見は全身骨CT写真(Fig. 5)でも同様に移植後には全身骨の石灰化が改善していることが明らかとなった.特に,扁平骨である頭蓋骨の改善が顕著にみられた.なお,興味深いことに,ドナー由来MSCが骨髄に存在していたことから,ドナー由来MSCが骨髄へ遊走して骨の石灰化に寄与していることを明らかとなった.なお,複数回のMSCを静脈内投与することによる有害事象は認められなかったため,MSCは乳幼児にも安全に使用出来る細胞であることを示すことができた.しかし,健常児レベルの骨構造にまでは到達しておらず,血清ALP値は低値のままで,他の骨形成マーカーも回復していなかった.原因としては,骨へ遊走し,長期間生着できるMSCが少なかったこと,生着したMSCが骨芽細胞へ分化する能力が低かったことなどが考えられた.

Fig. 4 

移植前後の上半身X線写真

A:生後1か月.B:生後6か月(移植直前).C:生後18か月(移植1年後).

Fig. 5 

移植前後の全身骨CT写真

A:生後6か月(移植直前).B:生後18か月(移植1年後).

3. 他の先天性骨系統疾患に対する同種間葉系幹細胞移植

HPP以外の先天性骨系統疾患に対して同種間葉系幹細胞移植が行われている.Horwitzらは,骨の主要なコラーゲン成分である1型コラーゲンを規定する遺伝子,あるいは1型コラーゲンの成熟に関与する遺伝子の異常に起因する骨形成不全症(osteogenesis imperfecta; OI)に対してBMTを併用した同種間葉系幹細胞移植を行った17).OIを発症し‍た6人の患者にBMTを行った後,移植するMSC‍の生着を確認するために,neomycin phosphotransferase maker geneを発現させたMSCを経静脈的に2回投与した.この疾患の代表的な特徴である低身長が改善する結果が得られたが,骨や皮膚の組織から移植したMSCの生着率は1%を超えなかった.また,骨だけでなく中枢神経系や筋肉にも障害をもたらす疾患である,Hurler症候群(5人)およびmetachromatic leukodystrophy(6人)に対してBMT後に同種間葉系幹細胞移植を行った18).前者はarylsulfatase A欠損,後者はα-L-iduroidase欠損により,細胞内にそれぞれsulfatide,heparan sulfate/dermatan sulfateが蓄積して細胞障害を引き起こす疾患である.BMTでも心臓や肝臓の病変に関してはある程度の効果が得られたが,中枢神経系と骨の障害は改善しなかった.1回の同種間葉系幹細胞移植により,骨密度は維持されるか軽度上昇したが,身体精神発達の改善はみられなかった.ドナー由来MSCの生着率は,11人中2名のみで,その割合は0.4~2%であった.これら3つの疾患に対する同種間葉系幹細胞移植の結果からも,臨床効果が限定的なのは,MSCの生着率が非常に低いためである可能性が示唆される.

4. 今後の同種MSCを用いた治療

HPPを含めた先天性骨系統疾患に対する同種MSCを用いた治療の臨床的効果を高める方法として,生着率やMSCの質の向上が挙げられる.Mabuchiらは,ヒト骨髄からセルソータを用いてLNGFRとTHY-1が共発現している MSCをsingle cell sorting後に培養し,早期に増殖する細胞増殖能が優れたMSC(rapidly expanding cell; REC)を同定した19).この細胞は,通常の培養方法で得られるMSCに比べて分化・増殖能および遊走能が極めて高く,骨への分化能が優れていることが証明されており,超高純度MSCと言える.このRECを用いた重症HPP患者に対する治療を現在検討しており,通常の培養方法で行った間葉系幹細胞移植よりも効果が高いことが予想される.また,我々は,患者のMSCに対して,正常ALPL遺伝子を導入することにより,遺伝子導入MSCが正常骨形成能を回復することも報告している20).さらに,HPP患者由来iPS細胞を樹立して,ゲノム編集技術を用いてALPL遺伝子変異を修復した.その遺伝子変異が正常化したiPS細胞から樹立した骨芽細胞はALP活性および石灰化能が回復することを明らかにした21)

これらの,質の高いMSC(REC)や遺伝子改変したMSCなどを用いることにより,HPPを含めた先天性骨系統疾患に対するMSCを用いた細胞治療を確立できると思われる.さらに,この体性幹細胞としてのMSCの治療法の発展がiPS細胞を用いた再生医療のさらなる実現につながると考えている.

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