2017 年 56 巻 5 号 p. 217-224
本論文では,異なる長さの波長を用いて取得された合成開口レーダ(SAR)画像を併用して,高精度に地盤沈下を推定する手法を提案する。差分干渉SAR解析に使用できる画像枚数が少なくなるにつれて,波長が短いSAR画像では位相を復元する際に生じるアンラッピングエラーが発生する可能性が高まる。一方,波長が長いSAR画像では地盤面の小さな変動が検出されにくくなる。提案手法では,まず二種類のSAR画像から個別に変動速度を推定する。次に,類似の変動速度を示す領域のクラスタを個別に生成する。その後,二種類のSAR画像におけるクラスタ間で平均地盤変動速度が一致するように補正を加え,最終的に波長の短いSAR画像によって得られた結果を採用する。提案手法をX,LバンドSARであるTerraSAR-X,PALSAR-2の8枚ずつの画像に適用して,関西国際空港の地盤変動速度を推定した結果,各々の単独解析結果よりも高精度に推定できることが判明した。