日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
会議情報

最優秀発表賞選考セッション  10/8(水)12:55~15:30(オーラル)、15:45~17:00(ポスター)
COコンドライトType I コンドリュールの26Al年代と全岩組成の関係
*倉橋 映里香木多 紀子永原 裕子森下 祐一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 15

詳細
抄録
太陽系の起源および進化を解明するうえで、初期太陽系物質がいつどこでどのように形成されたかを知ることは大変重要である.特にコンドライトの主要構成物質であるコンドリュールは初期太陽系の情報を保持していると考えられる.普通コンドライト(OC)はコンドリュールが65_-_75%を占めている一方で、炭素質コンドライト(CC)は35_-_45%しか占めていない.さらに、OCにはFeO-richコンドリュール(Type II)が多くを占めるのに対し、CCではFeO-poorコンドリュール(Type I)が優勢である.これらの違いの原因として初期太陽系星雲内での元素分布の違いや形成年代の違いなどが考えられるが実質的な証拠は未だに得られていない.初期太陽系星雲内の元素分布やコンドリュール形成メカニズムを解明するために、コンドリュールの形成年代およびバルク組成を詳細に調べることは大変重要である.
コンドリュール形成年代に関して、近年では Al-Mg年代測定法を用いた詳細な研究が行なわれている.最も変成度の低いOC中のコンドリュールはCAIs形成後約200万年で形成し [1, 2, 3]、コンドリュールの年代が若くなるほどSiや揮発性元素に富むことがわかっている[3, 4].一方で、CC中コンドリュールに関しては、Type IIコンドリュールの形成年代がOCに比べ若い年代が得られている[5].しかし、CC中コンドリュールの多くを占めるType Iについては詳細な年代測定は行なわれていない.そこで、本研究では、最も変成度の低い非平衡炭素質コンドライト(CO3.0)を用いてType Iコンドリュールについて詳細なAl-Mg年代測定を行ない、コンドリュールバルク組成と比較することで、組成の系統的な変化と年代との関係について考察する.
Al-Mg年代測定は5個のType Iコンドリュール(Porphyritic olivine pyroxene (POP)4個、Barred olivine (BO)1個)と1個のAl-richコンドリュールについて行なった.POPコンドリュールはolivine (Ol)、pyroxene (Px)、metalおよびmesostasis(plagioclase (Pl)およびCa-rich Px)、BOのmesostasisはPlおよびCa-rich Px、Al-richコンドリュールはPlおよびCa-rich Pxで構成されている.各コンドリュールのPlにおいてAl-Mg年代測定を行なった結果、CAIs形成後約100-200万年でType Iコンドリュールが形成したことが初めて明らかになった.これはOC中コンドリュールの形成年代とほぼ同じである一方で、CO中Type IIコンドリュールで得られている年代よりも明らかに古い値である.さらに、コンドリュールバルク組成分析から、Type IはType IIに比べCa・Al・Ti含有量の変化が大きく、Mn・Na・K含有量の変化は小さいことがわかった.
上記の結果を用いて、コンドリュールのバルク組成と形成年代を比較してみると、Ca-Al-richになるほど年代が若くなる傾向があるという重要な結果が得られた.OC中コンドリュールにおいて年代が若くなるほどSiや揮発性成分に富むことはコンドリュールの蒸発・再凝縮で説明が可能である [4].しかし、今回の結果は単純な元素の蒸発・凝縮では説明できない.CCのコンドリュールについては初期太陽系星雲内のコンドリュール発生領域の元素分布が時代とともに変化している可能性がある.さらに、CC中コンドリュールにおいてType IとType IIではバルク組成だけでなく形成年代にも相違がみられることから、これらは異なるコンドリュール形成過程を経た可能性が示唆される.
[1] Kita et al., (2000) GCA, 64, 3913-3922 [2] McKeegan et al., (2000) LPSC #2009[3] Mostefaoui et al., (2002) MPS, 37, 421-438 [4] Tachibana et al., (2003) MPS, in print [5] Kunihiro et al., (2003) LPSC #2124
著者関連情報
© 2003 日本惑星科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top