1993 年 1 巻 1 号 p. 43-46
今回,失明を合併した重度の左片麻痺者の機能訓練について紹介した。失明宣告前後の反応の変化は少なくとも表面的には認められず訓練に支障をきたすこともなかった。日常生活や訓練場面での観察では空間認知障害を疑うことが出来るが,動作におよぼす視覚障害との割合は明確にはできていない。運動学習の能力が低いにもかかわらず,現在,独力での病室内諸動作,病棟内移動を獲得しつつある本症例の訓練過程を通して,視覚障害を伴う片麻痺者にとって,早期からのオリエンテーション・モビリティー訓練の重要さを認識した。