抄録
脳血管障害による片麻痺患者への運動療法において立位バランス能力と上肢機能を評価し,訓練プログラムを作成することは重要である。今回,立位バランスに問題のある右片麻痺患者に対して,主要な問題点を患側股関節周囲筋の低緊張に絞り骨盤の後退を抑制させながら立ち直り反応を促通し,上肢の連合反応を減少させ患側上肢機能の向上を図った。その結果歩行スピードの向上や肩の挙上範囲の拡大,痛みの軽減がはかられた。この症例を通して片麻痺患者のバランス訓練に際し,患側上肢の潜在能力を評価し訓練場面を設定することの重要性を再認識した。