日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動4
COVID-19禍における介護予防事業の活動報告-PTが参画する意義の考察-
森田 新平武井 圭一寺下 美麗天野 志穂稲生 実枝
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p. 105

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抄録

【はじめに,目的】

当院は,埼玉県朝霞市にある一般病棟及び回復期病棟77床を有する地域医療の中核病院である.近隣に同法人の介護老人保健施設・居宅介護支援事業所・特別養護老人ホーム・地域包括支援センター(包括)・有料老人ホーム・シニアルームがあり,地域の医療・介護を支えている.今回COVID-19禍において介護予防事業へ参画する機会を得たため,活動内容およびPT参画の意義について考察を加えて報告する.

【方法,結果】

1.介護予防事業の内容

法人内の包括主催の事業である.毎週火曜日8:30~8:45でラジオ体操を実施していたが,2020年4月の緊急事態宣言期間は事業を中止した.参加者の身体機能低下が危惧されたため,包括から当院理学療法士(PT)へ依頼を受け,10月からPT3人が参画した.PT参画後は従来のラジオ体操に加え,利用者の意向を確認し転倒予防を目的とした運動を追加した.3月から健康ノートの配布,希望者に対し身体機能・活動評価を開始し,時間を40分間へ拡大した.内容は,1)包括職員による準備体操・ラジオ体操15分.2)PTによる運動指導5分.3)評価15分である.なお,2021年1月の緊急事態宣言期間は事業を継続した.感染対策は健康チェック表の提出,会場で検温・手指消毒を実施している.

2.PTの介入内容

身体機能・活動評価の結果から,握力(平均)は男性27kg・女性19.8kg,歩行速度(平均)は1.2m/s, Social Frailty Screening Index(平均)は1.2点であり,参加者は身体的フレイル(筋力・歩行速度項目)に非該当,社会的プレフレイルに該当した.Life Space Assessment(LSA)は平均85.9点,IADL低下カットオフ値(56点)以下が4人いた.その4人はShort Physical Performance Batteryにてバランス項目(平均)が1.75点と低下していたため,現在はバランス機能に特化した運動を導入した.また,事業以外での健康増進を目的に健康ノートを導入した.これは,自身の健康増進に興味を持ち,運動習慣化を図る目的にプロフィールシート,評価結果,健康コラム,運動記録シートで構成した独自に作成したノートである.毎回参加者が持参し,PTがコメントを記入している.

3.緊急事態宣言下の参加状況

2020年12月が26人(平均),2021年1月が21人(平均)であり,81%は継続参加している.また参加者に感染者はいない.

【結論】

PTが介護予防事業へ参画する意義として,身体機能・活動の評価から対象者特性を把握し,適切な運動を実践できること,事業以外の運動促進へ介入できることが考えられた.今後の課題は,事業の効果判定を実践することである.COVID-19禍では生活範囲の広さを示すLSAを指標にすることは難しく,地域在住高齢者の健康維持・増進はより一層地域密着型に取り組む必要がある.PTが参画することでより効果的な運動機会を提供し,健康維持・増進へ貢献できる可能性が示唆された.

【倫理的配慮、説明と同意】

本報告にあたり朝霞市の許可を得た.利用者には口頭・書面ににて説明し,同意書にて許可を得た.

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