主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 116
【はじめに】
ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)は要介護リスクを高め、サルコペニアや骨粗鬆症など運動器疾患との関連が報告されている。ロコモの予防に関しては、運動習慣や食生活の改善が重要とされており、高齢者向けのロコモ教室なども各地で実施されている。しかし、中年層から高齢者の運動習慣の有無と実際のロコモテストを用いて比較検討した報告は少ない。そこで、2019年6月より当院で開始したロコモ健診において運動習慣の有無がロコモ罹患に影響するかを年代別に比較検討を行った。
【方法】
対象は当院人間ドックにてロコモ健診を受診した者のうち、40歳から79歳の者(平均年齢は61.2±10.8歳、男性140名、女性65名)とした。その後年代別に40代、50代、60代、70代に群分けし、それぞれの年代において運動習慣とロコモ罹患について比較検討を行った。ロコモの判定は2ステップテストが1.3未満の者、または立ち上がりテストにて片脚で40cmから起立困難であった者をロコモあり群とした。ロコモ度2に該当する者は除外した。運動習慣の有無に関しては、30分以上の運動を週に2回以上実施し、6ヶ月以上継続出来ている者を対象とした。
評価項目としては、背景因子として年齢、性別、体重、身長、安静時疼痛の有無、運動習慣の有無を調査した。身体機能項目は、歩行速度、歩幅、歩行時の股関節伸展角度、大腿四頭筋筋力(以下、下肢筋力)、握力とした。統計学的解析処理はShapiro-Wilk検定にて正規性の検討を行った後に運動習慣あり群と運動習慣無し群に群分けして対応のないt検定またはMann-Whitney-U検定、カイ二乗検定を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
運動習慣有り群と無し群を各年代において比較した結果、ロコモ罹患についてはどの年代でも有意差は認められなかった。しかし、40代においては運動習慣の無い者がロコモに罹患する傾向を認めた。その他の身体機能に関しては、40代では右下肢の筋力(2.1対1.6、P<0.05)と有意差を認めた。60代では平均歩幅(61.7対58.7、P<0.05)と理想歩幅との差(12.7対15.6、P<0.05)に有意差を認めた。70代では歩行速度(67.2対59.6、P<0.01)、平均歩幅(57.8対52.1、P<0.01)、理想歩幅との差(15.0対21.2、P<0.01)、右下肢筋力(1.6対1.5、P<0.05)に有意差を認めた。50代では両群間に有意差を認める項目は無かった。
【結論】
本研究において、運動習慣の有無はロコモ罹患に影響を与えていないことが示された。60歳以上の高齢者になるにつれて運動習慣の有無が歩行速度や歩幅など移動機能に影響を与えていることが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」を遵守している。得られたデータは本研究の目的以外には使用せず、研究の結果を公表する際も被験者を特定できる情報は使用しない。また、本研究は当院臨床研究審査委員会における【承認番号3335号】を取得している。自施設既存情報を用いる研究であるため、倫理指針に従って当院ホームページにて情報公開し、拒否機会を付与している。