主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 3
【はじめに、目的】
一過性運動後の糖代謝および脂質代謝などの生理学的反応は,身体組成による影響を受けると報告されている.近年,サルコペニアおよび肥満が動脈硬化性疾患の有病率を上昇させると報告されており,これらの身体組成を改善する最適な運動プログラムが必要である.そこで本研究では,有酸素性および無酸素性の運動効果をコンバインドさせた,ステップエクササイズ(StEx)トレーニングが身体組成の異なる対象者に及ぼす影響を検討した.
【方法】
健康教室に参加した健常高齢者の女性265名にうち,参加率85%未満を除外した220名を解析対象者とした.Body mass index(BMI)による四分位範囲による下位25%を痩せ型群(51名,年齢: 67.8±5.9歳,BMI: 19.1±1.1kg/m 2 ,サルコペニア該当者: 84.9%),上位25%を肥満型群(57名,年齢: 68.9±5.1歳,BMI: 27.1±2.0kg/m 2 ),中位25-75%を標準型群(112名,年齢: 67.4±5.6歳,BMI: 22.3±1.3kg/m 2 )に分類した.健康教室は,ウォーミングアップ,StExおよびクールダウンから構成しており,1回60分,週2回,8週間実施した.StExは,レペティション形式で3分間(75%HRmax)および1.5分間の休息時間から構成され,合計6セット実施した.トレーニング前後の測定は,身体組成(in Body)およびbaPWVなどをそれぞれ実施した.各群の比較には分割プロットデザイン(SPSSver24.0)を用いた.なお,危険率は5%未満を有意水準として採用した.
【結果】
痩せ型群,標準型群および肥満型群のSkeletal muscle mass index は5.48±0.35から5.58±0.37,5.90±0.57から6.04±0.55,6.52±0.77から6.56±0.75kg/m 2 であり,すべての群でトレーニング前後に有意差が認められた(痩せ型,標準型: P<0.01,肥満型: P<0.05).また,標準型群と肥満型群との間に有意な差が認められた(P<0.01).baPWVは,1453±204から1390±168,1515±252から1447±214,1556±226から1525±196 cm/secであり,痩せ型群および標準型群のトレーニング前後に有意差が認められた(P<0.01).また,標準型群と肥満型群との間に有意な差が認められた(P <0.05).
【結論】
StExトレーニングは,身体組成に関係なく骨格筋量を増加させており,サルコペニアを改善できる可能性が示唆された.一方,肥満型への有酸素性トレーニング効果は,身体組成の影響を受ける可能性が示唆された.一般的に内臓脂肪が蓄積すると炎症性サイトカインの増悪により,動脈スティフネスが低下すると報告されており,この働きがトレーニング効果を減弱させた一つの原因と考えられる.本研究により,StExトレーニングは高齢女性のサルコペニアおよび動脈硬化性疾患の危険因子を改善させる可能性が示唆された.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に沿った研究であり,徳島県鳴門病院における研究倫理委員会の承諾(受付番号: 1327)を得たものである.対象者には,インフォームドコンセントを得た後に研究を開始した.