主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 35
【はじめに】
最大二歩幅から得られる2-Step値は、狭い空間でも簡便に歩行能力を推定する指標として信頼性と妥当性が検証されている。一方、小刻み歩行を特徴とするパーキンソン病(PD)においては、歩行時、注意を集中して最大努力下で実施するよりも、特別な意識をせずに遂行する方が歩行困難を強く認める場合がある。そこで今回、PD 患者における通常二歩幅を用いたUsual 2-Step値に着目し、健常および軽度の身体障害を有する高齢者との比較を通じて、本指標が在宅におけるPD患者の歩行をセルフアセスメントする指標として有用であることを確認した。
【方法】
本研究の対象者は、静岡県下3カ所の医療機関に通院・通所するPD患者20名(Hohen-Yahr Stage1が1名、2が10名、3が7名、4が2 名:PD群)、1か所の通所リハ事業所の利用者15名(脳神経疾患3名、整形外科疾患9名、内科疾患3名:軽度身体障害群)と健常高齢者30名(健常群)とした。調査項目は基本条件として性別、年齢、身長、体重を確認した。測定指標は、各群にて通常二歩幅、最大二歩幅、TUGT、3軸加速度センサを用いて実測した快適ストライド長(Usual Stride)と通常歩行速度、および最大努力下でのストライド長(Max Stride)と最大歩行速度とした。通常二歩幅と最大二歩幅は、それぞれを身長で除してUsual 2-Step値と2-Step値を求めた。分析は、3群間における基本条件と測定指標の群間差を比較した後に、各群のUsual 2-Step値と2-Step値について、他の測定指標との相関関係を確認し、危険率5%未満にて有意差ありと判定した。
【結果】
基本条件では、PD群にて男性が多く、軽度身体障害群が他の2群よりも高齢で、PD群は軽度身体障害群より身長が高かった。健常群はUsual 2-Step値、2-Step値、Usual及びMax Strideにおいて、他の2群よりも有意に大きな値を示し、TUGTと快適及び最大歩行速度は有意に早い値を示した。PD群のUsual 2-Step値は2-Step値と同様に、TUGT以外の測定指標と中等度の正の相関を示し、TUGTとは負の相関を示した。健常群のUsual 2-Step値は、2-Step値とUsual Strideおよび快適歩行速度に対して有意な中等度の正の相関を示し、TUGTとは負の相関を示した。軽度身体障害群のUsual 2-Step 値は、2-Step値のみに有意な中等度の正の相関を示した。
【結論】
今回の調査にてUsual 2-Step値は、Strideや歩行速度と同様に、健常群が他の2群より低い値を示した。しかし2-Step値が3群間共通にMax Strideと相関していたことに対し、Usual 2-Step値ではPD群のみに快適および最大歩行におけるStride 及び歩行速度との相関が認められた。この結果から、PD群においてはUsual 2-Step値の測定によって快適速度だけでなく最大速度における歩行状態も推定できることが示された。通常二歩幅から得られるUsual 2-Step値は家庭でも安全に行えるため、歩行に関するセルフアセスメント指標としてPD患者にとって有用と考えられた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は常葉大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2020-012H)。対象者に対しては、書面と口頭にて研究内容に関する十分な説明を行い、測定開始前に同意書への署名を得た。