日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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職場における健康管理2
建設関連会社の職長研修会にて行った腰痛予防の講演におけるアンケート調査
工藤 篤志石橋 晃仁
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キーワード: 腰痛, アンケート, 講演
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p. 54

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抄録

【はじめに、目的】

腰痛は身体的問題だけでなく業務効率の低下による経済損失も社会的問題である。松平らは2019年に年間3兆円と試算している。また、腰痛の原因を厳密に特定できない場合を非特異的腰痛とする報告が出された際に、精神的な問題との報道もあった。しかし、医療従事者の間で話題となったが一般的には知られていない。腰痛による経済損失、非特異的腰痛、恐怖回避思考の認知度、腰痛の原因と考えられる仕事動作、講演を聞いての感想などに関してアンケート調査を行ったので報告する。

【方法】

2019年2月に行われた建設会社主催の関連企業との職長研修会にて腰痛予防に関する講演を40分行った。その際に参加者に対して自作した腰痛予防に関するアンケートにて調査した。講演前に用紙を配布し、事前に恐怖回避思考の調査として日本語版Tampa Scale for Kinesiophobia(以下、TSK)と腰痛に繋がる原因となる仕事動作と健康のために行っている運動習慣に関する内容に選択式で回答していただいた。講演後に腰痛による経済損失、非特異的腰痛、恐怖回避思考を講演前から知っていたか、講演を聞いて予防トレーニングについての感想を選択式で回答していただいた。腰痛の有無で2群にわけ、年齢、TSK、仕事動作、運動習慣について統計解析をt検定、χ2乗検定を用いて行った。有意確率は5%とした。

【結果】

200人の参加者の内158人から回答がありすべて男性で、回収率は79%であった。平均年齢は46(21-75)歳、腰痛の有病率は73%、TSKは平均38.5(17-56)、37以上が107名68%、健康のための運動習慣があるのは36%であった。腰痛の有無による年齢、TSK、仕事動作、運動習慣に有意差はなかった。用語の認知度は経済損失27%、非特異的腰痛5%、恐怖回避思考9%であった。腰痛の原因となる動作の理解は93%ができた、講演の内容を誰かに話そうと思うのは75%であった。講演を有料で受けるとしたらいくら払いますかという項目については0円7%、100円10%、300円14%、500円44%、1000円26%であった。

【考察】

吉村らによると腰痛の有病率は男性34%であり、今回の対象は73%と高い有病率であり、建設関連の仕事が腰痛と関係していると思われた。TSKのカットオフ値である37以上が68%と多かったが、腰痛の有無で有意差はなかった。仕事動作、運動習慣も有意差がなく、より詳細な調査が腰痛予防には必要である。非特異的腰痛の認知度は5%で一般の認知度が低いことがわかった。講演内容は93%が理解でき、今回の講演内容に対して500円が44%と最も多く、理学療法士が腰痛予防方法だけでなく経済損失や恐怖回避思考も含めて有益な情報提供をできる可能性が示唆された。

【結論】

建設関連会社の研修会にて腰痛に関するアンケート調査を行った。有病率は73%と高った。非特異的腰痛の認知度は5%と低かった。予防のための情報提供に理学療法士が関われることが示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】

アンケートへは「回答は任意であり、ご協力いただけなくても何ら不利益を被ることはありません。なお、本アンケートに関する利益相反はありません。また、アンケート結果は、北海道理学療法士会の活動や学会発表等に使用することがありますが、個人や会社名などが特定されないように管理します。」として同意を得た。

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