日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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介護・転倒の予防3
転倒歴のない高齢者における転倒恐怖感と身体機能および運動機能との関連
福榮 竜也宇都 良大小野田 哲也愛下 由香里神田 勝利
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p. 67

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抄録

【はじめに、目的】

転倒恐怖感(Fear of falling: FOF)は転倒後症候群の一つとされ、高齢者の歩行機能や身体活動と関係する重要な健康問題である。諸家の報告にて、FOFが社会活動や余暇活動の制限に繋がる事から、FOFを解消する事が重要であるとされている。FOFの要因として第一に転倒歴があげられるが、高齢者は転倒歴が無くともFOFを抱きやすい事が報告されている。しかし転倒歴のないFOFをもつ高齢者のFOF発生要因は定かではない。今回は転倒歴のない地域在住女性高齢者を対象に、骨格筋量、筋力、身体機能とFOFの要因を分析する事を目的とした。

【方法】

地域在住女性高齢者100名の内、除外基準に該当しない68名(72.0±5.2歳)を対象とした。その内、基本チェックリストの#10「転倒に対する不安は大きいですか」に該当する者を転倒恐怖群、それ以外を非該当群とした。計測機器は体組成計MC-780AN、運動分析装置BM-220(いずれもタニタ社)を使用した。BM-220は椅子座位から最大努力起立時の地面反力変数に基づき、筋力や運動機能の評価が可能である。評価項目はSMI、下肢筋力として起立時の最大荷重量を体重で除した値(以下、F/w)と、起立動作中の力発揮速度を体重で除した値(以下、RFD/w)を算出した。その他、歩行速度・握力・年齢を評価した。統計分析は、正規性を評価し2群比較を行い、ロジスティック回帰分析にて転倒恐怖感の要因を検討した。独立変数は上記5項目とした。

【結果】

対象者の内、20名(28.9%)がFOFを認めた。2群間比較は握力とF/Wにおいて有意に非該当群が秀でた結果であった(握力: P<0.01、F/w: P<0.05)。多重ロジスティック回帰分析は握力(OR: 0.76,95% CI: 0.62‐0.89, P<0.01, VIF: 1.06)とF/w(OR: 0.34, 95% CI:0.13‐0.76, P<0.05, VIF: 1.06)が採択され判定的中率は76.5%であった。

【結論】

転倒歴の無い女性高齢者のFOF発生要因として握力とF/wが採択され、上下肢筋力がより重要である事が示唆された。低筋量より低筋力の患者が歩行および起立動作能力が低い事が報告されており、ADL能力と筋力は密接に関連しているとされる。今回の対象者のFOF発生には筋力が最も重要であり、地域在住高齢者の筋力評価の重要性をさらに裏付ける結果となった。高齢者のFOF発生を予防し社会参加促進を促す為にも、活動量を保ち上下肢筋力を維持する事は重要であると示唆される。

【倫理的配慮、説明と同意】

当院倫理委員会の承認後(承認番号3006)),対象者には事前に研究趣旨を説明し書面で同意を得た.COIは無い.

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