日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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虚弱高齢者2
地域在住要介護高齢者におけるフレイル要因および身体各部位筋量の性差の検討
福尾 実人
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p. 80

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抄録

【はじめに、目的】

わが国は諸外国に例をみないスピードで人口の高齢化が進んでいる。高齢になると心身の機能の減衰が原因となるフレイルの割合が高くなる。このフレイルは筋量の減少により進行が速まることが示されている。高齢期におけるフレイルでは身体的側面に加えて精神・心理的および社会的な側面の問題により筋量が減少するサルコペニアにまで至るサイクルを形成する。よって,高齢者の筋量を評価することはフレイルの早期発見および予防のため重要と考えられる。しかし,筋量の減少には性差が存在しており,男性は女性よりも加齢に伴い全身の筋量は減少しているが,大腿部においては男性より女性の筋量の減少率が高いことを報告している。このように,男女の2群間における筋量の減少は身体各部位より異なることが予測される。

しかしながら,地域在住要介護高齢者の身体的および精神・心理的,社会的な3側面を含んだフレイル要因と身体各部位筋量の性差を調査した報告はみられない。そこで,本研究では地域在住要介護高齢者における身体各部位筋量およびフレイルの3側面との性差を検討することを目的とした。

【方法】

対象は要支援1から要介護2までの男性要介護高齢者(男性高齢者)22名(76.6 ± 5.7歳),女性要介護高齢者(女性高齢者)15名(79.8 ± 8.6歳)の計37名とした。測定項目は身長および体重を測定し,BMIを求めた。フレイルの評価には,厚生労働省が示している基本チェックリストを用いた。身体各部位の筋厚の計測は超音波Bモード装置を用いて,上腕前・後部,大腿前・後部,下腿前・後部を測定した。その他の項目としては,握力,日常生活動作の評価指標はBarthel Index(BI)を使用した。統計処理は男性高齢者群と女性高齢者群による2群間の比較には,対応のないt検定またはMann-WhitneyのU 検定,Fisherの正確確率検定を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

基本チェックリスト総合点では,2群間に有意な差は認められなかったが,男性高齢者は女性高齢者よりも閉じこもりの得点のみ有意に高値を示した。さらに,握力では2群間に有意な差を認めた。身体各部位筋量では上腕前部および後部,大腿前部,下腿前部の筋量において男性高齢者群と女性高齢者群の2群間で有意な差を認めた。

【結論】

本研究は地域在住要介護高齢者を対象とし,身体各部位の筋量とフレイルの3側面の性差を検討した。男性高齢者群においては,上腕前部および後部,大腿前部,下腿前部の筋量補正値が女性高齢者群より有意に大きかったが,大腿後部および下腿後部の筋量補正値に有意な差は認められなかった。男性高齢者群では,女性高齢者群と比べて閉じこもりの傾向が高いことが示唆された。そのような特徴をもった男性高齢者群は女性高齢者群と比べて,大腿後部および下腿後部の筋量において性差は認めなかった。

【倫理的配慮、説明と同意】

すべての対象者には,事前に研究の趣旨と目的を十分に説明し,書面により研究参加への同意を得た。研究の参加は自由意志であること,調査に協力しないことや途中で中止した場合であっても対象者には不利益を生じることがないこと,測定中後においても同意を撤回できることを説明した。本研究は,九州大学大学院芸術工学研究院の実験倫理委員会の承認(番号234)を受けて実施した。

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