日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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内側半月板の逸脱が増大する年代の解明
風間 碧璃太田 恵佐伯 純弥建内 宏重市橋 則明
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キーワード: MME, 変形性膝関節症, 加齢
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p. 111

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抄録

【はじめに、目的】

内側半月板の逸脱(medial meniscal extrusion; MME)は変形性膝関節症の発症を予測する因子になるといわれており、健常者においても加齢に伴いMMEが増大するという報告がある。しかしMMEの増大が顕著となる年代は明らかになっていない。健常者においてMMEが増大する年代を特定することは、変形性膝関節症予防のための介入時期の指標になると考える。そこで本研究では、変形性膝関節症が女性に多いことを考慮し、20代から60代までの健常女性を対象としてMMEの増大する年代を明らかにすることを目的とした。

【方法】

健常女性95名(平均年齢 50.3±11.4歳,身長157.8±4.9cm,体重54.1±8.8kg)を対象とし、画像が不鮮明でMMEを計測不能だった3名を除外し、92名のデータを分析に用いた。被験者を20・30代群(平均年齢33.8±5.3歳,身長158.9±5.3cm,体重55.3±8.3kg)19名、40代群(平均年齢45.5±2.6歳,身長159.3±4.9cm,体重55.8±10.2kg)25名、50代群(平均年齢54.8±3.0歳,身長157.2±4.3cm,体重54.6±8.8kg)25名、60代群(平均年齢64.3±2.6歳,身長155.8±4.1cm,体重51.8±7.1kg)23名の4群に分けた。各群の身長、体重、BMIについて群間差を認めなかった。測定には超音波診断装置(GE Healthcare社製)を使用し、仰臥位および立位にて各被験者の右膝関節の内側関節裂隙に10MHzの超音波プローブを長軸方向に当て、内側半月板を撮像した。仰臥位では膝関節屈曲0° 位、立位では両脚に均等に荷重するように指示した。撮像した超音波画像において、脛骨の皮質骨から近位方向に水平に見通し線を引き、内側半月板の関節包側の最外縁と見通し線の距離をMMEとして計測した。年齢とMMEの相関を検討するためにSpearmanの順位相関係数、肢位間の比較のために対応のあるt検定、年代間の比較のために一元配置分散分析および多重比較検定を実施した。有意水準は5%とした。

【結果】

年齢と各肢位のMMEとの相関について、いずれの肢位においても有意な正の相関を認めた(臥位:ρ=0.41,立位:ρ=0.39; p<0.01)。肢位間の比較では、20・30代群において仰臥位と比較して立位におけるMMEが有意に高値であった(p<0.05)。年代群間の比較では、仰臥位においては20・30代群と比較して50代群および60代群のMMEが有意に高値であり、立位においては20・30代群と比較して60代群でMMEが有意に高値であった(p<0.05)。

【結論】

立位・臥位のいずれにおいてもMMEは年齢とともに増大しており、20・30代群と比較して仰臥位では50代群、60代群、立位では60代群で有意にMMEが増大することが明確となった。また20・30代群では仰臥位と比較し立位におけるMMEが有意に高値であり、40代群以降では有意差が認められなかった。これは内側半月板の弾力性が低下し、荷重量の変化に合わせた柔軟な変形が困難になったことが原因と考えられる。内側半月板の変性は40代以降で生じ、内側半月板の逸脱は50代から顕著であることが示唆された。

【倫理的配慮と同意】

事前に本学倫理委員会の承認を受け、対象者には十分に説明し同意を得た(承認番号R1674)。

【倫理的配慮,説明と同意】

事前に京都大学倫理委員会の承認を受け、対象者には十分に説明し同意を得た(承認番号R1674)。

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