主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 26
【はじめに】
2017年度に発刊された慢性便秘症診療ガイドラインでは、食事や運動による生活習慣の改善は推奨されている(エビデンスレベルC)。しかし、運動においては便秘に効果的なものは明確に提示されたものは少ないのが現状である。また便秘は心血管疾患や腎臓病等の危険因子になるとも言われている。本研究では、便秘と運動の関係をアンケート調査し、運動の有無により便秘重症度との関係を明らかにすることを目的とする.
【対象と方法】
2021年5月~9月までの4ヶ月間にわたってアンケート調査を実施した。アンケートはGoogleフォームを使用し、対象は16歳以上で回答した556名(平均年齢35.6±17.2歳,男性114名)とした。アンケート項目は、厚生労働省の質問票を参考に構成し、「運動していますか」に「はい」と回答した249名(44.6%)を「運動群」、「いいえ」と回答した307名(55.8%)を「非運動群」とした。便秘重症度はconstipation scoring system(以下C S S)を使用した。両群間の比較は、Mann-WhitnyU検定を使用し、C S Sを従属変数、年齢・性別・Body Mass Index(以下B M I)・運動の有無・治療中の疾患の有無およびウォッシュレットの使用頻度を独立変数とし、重回帰分析にてC S Sに関与する因子を検討した。
【結果】
運動群44.6%(38.7±17.4歳、男性72名)、非運動群55.8%(33.2±16.2歳、男性71名)であり、運動群の方が高齢であった。C S Sは、運動群では4.3±3.9点、非運動群では5.6±4.1点であり、非運動群に比べ、運動群のC S Sは低かった(p<0.001)。重回帰分析ではC S Sの関連因子として女性(p<0.014)・運動の非実施(p<0.001)、治療中の疾患有り(p<0.001)が示唆された。
【結論】
性別・運動の実施・治療中の疾患の有無が便秘重症度に影響を与えることが示唆された。女性の便秘症は男性に比べ3.5倍もみられるとされ、ライフステージにおいてもダイエット・妊娠・出産により便秘が生じやすいとされている。また、慢性便秘症をきたす疾患には精神疾患や内分泌・代謝疾患、膠原病、変性疾患等の多岐に渡り、治療中の疾患を有していることは、薬剤性や二次性便秘に陥りやすくなると考えられる。性別・治療中の疾患について、本研究は先行研究を支持する結果になったと考える。運動の実施は、消化管の活動性を高めるとされ、便秘の抑止効果があるとされている。本研究では運動群においてC S Sが高く同様の結果となったが、運動内容についてはさらに介入研究を実施していく必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院の倫理審査委員会の承認(承認番号 : 第20120870号)を得た。対象者にはアンケート実施にあたり、趣旨を書面にて説明し 、十分理解した上で同意書を得た 。