主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
我が国の高齢化率は今後も上昇が見込まれ、特に後期高齢者の 割合が増大することが指摘されている。また、認知症の有病率は年齢とともに高まることが知られており、早期に認知機能低下を発見し対処することは、介護予防の観点からも重要である。我々は令和3年度から札幌市の事業として市内の通いの場に参 加している高齢者の健康状態などを把握する目的で健康・身体状況のデータを収集している。札幌市の通いの場に参加する高齢者のうち73.2%を後期高齢者が占めており、認知機能低下を予防する意義は大きい。そこで、我々は通いの場における認知機能低下の早期発見に向けて認知機能低下を予測するモデルの構築を試みた。
【方法】
札幌市内の通いの場に参加した65歳以上の高齢者でデータに欠損のない4,012名を対象とした。 認知機能低下に影響する因子を抽出するため決定木分析 (Classification and Regression Tree:CART法)を行った。決定 木分析では、認知機能低下の有無を目的変数とし、性別、年齢、後期高齢者の質問票のNo.10とNo.11を除いた13項目、指輪っかテストを説明変数とした。決定木分析ではトレーニングデータとテストデータに分割し、k分割交差検証により分類モデルの精度を評価した。なお、後期高齢者の質問票に関する2つの質問 (No.10、No.11)のどちらかに「はい」と回答した者を認知機能低下ありとした。
【結果】
認知機能低下の予測モデルには、口腔機能の質問No.5 (お茶や汁物等でむせることがありますか)と運動・転倒の質問No.7 (以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか)の2変数が有用であることが示された。モデルは3つのサブグループに分類された。口腔機能の質問No.5に「はい」と回答し、運動・転倒の質問No.7に「はい」と回答した場合に認知機能低下ありの割合が52.7%と最も高かった。
【考察】
構築した認知機能低下の予測モデルより、口腔機能の低下から 歩行能力の低下を経て認知機能低下に至ることが示唆された。このことから、認知機能低下の予防にはまず口腔機能、特に嚥下機能低下を予防することが重要であると考えられた。今後は、本研究で得られた結果をもとに、通いの場における認知機能低下の早期発見、早期対処に向けた具体的な支援策を検討していく。また予防的取り組みに向けた縦断的データによる検証も行っていく。
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。本研究については事業主体である市介護保険課の了承を得て実施した。取得したデータは連結不可能匿名化されており、データの利用については事業実施時に対象者より書面にて同意を得てい る。