日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
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第10回 日本予防理学療法学会学術大会
オーガナイズセッション[予防]
予防OS1
  • 伍賀 伊織 , 旭 竜馬 , 板垣 環 , 木村 敏之 , 堀中 晋 , 中村 豊 , 金井 優宜 , 浅野 聡
    原稿種別: 予防OS1
    セッションID: YOS-01-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    骨粗鬆症の早期発見には、地域における検診が重要であり、要介護率と骨粗鬆症検診率は負の相関関係があることが示されている。健康増進法に基づく骨粗鬆症検診は、骨量測定や問診が必須項目であり、地域によって検診率が大きく異なる。検診率の向上を図り、骨粗鬆症の早期発見につなげるためには、スクリーニングの簡便化が求められる。本研究では一次検診と二次検診受診者を対象に骨粗鬆症を予測する要因を探索的に検討した。

    【方法】

    対象は2018年度・2019年度に幸手市の骨粗鬆症検診に参加した40歳以上の女性1529名のうち一次検診(橈骨DXA)にて正常 ・要指導と要精検者を判定した。測定項目は握力、歩行速度、 skeletal muscle mass index(SMI)、ロコモ25点、2ステップ値、立ち上がりテスト、phase angle(PA)、fracture risk assessment tool(FRAX)、peak expiratory flow rate(PEFR)、 body mass index(BMI)の測定を行った。また、質問紙にて過去 の最大身長から現在の身長を除した身長低下について確認した。医療機関受診にて骨粗鬆症と診断された者を骨粗鬆症群、診断 されなかった者を非骨粗鬆症群の2群に分類した。統計解析は、骨粗鬆症の有無を従属変数、各測定項目を独立変数とし、二項ロジスティック回帰分析を実施した。

    【結果】

    幸手市における検診率は約10%であった。正常または要指導者が739名、要精検者が790名、要精検者のうち受診勧奨した上で医療機関受診者は491名であった。一次検診にて全項目が測定できた参加者は549名(骨粗鬆症と診断された者176名(骨粗鬆症群)、骨粗鬆症の診断されなかった者373名(非骨粗鬆症群)であった。二項ロジスティック回帰分析にて骨粗鬆症と予測する因子としてFRAX(Odds ratio(OR)=1.057、95% Confidence interval(CI)=1.031-1.084、r<0.001)、SMI(OR=0.552、 95%CI=0.36-0.847、r=0.006)が抽出された。

    【考察】

    女性において骨粗鬆症のスクリーニングとしてFRAXとSMIの骨粗鬆症を判定する上での有用性を明らかにした。

    【結論】

    骨粗鬆症の早期発見にFRAXとSMIが使用できることが示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、日本保健医 療大学研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号P3001)。本研究の主旨と目的などを事前に対象者へ説明を行い、書面にて同意を得た。

  • 湯口 聡, 旭 竜馬
    原稿種別: 予防OS1
    セッションID: YOS-01-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    骨粗鬆症による骨折予防の一つとして、身体機能や四肢骨格筋 量の維持・向上は重要である。特に、四肢骨格筋量の低下は近年のリハビリテーション分野において、サルコペニアへの対策の観点から重要な課題である。Asia Working Group for Sarcopenia 2019 (AWGS2019)では、Dual-energy X-ray absorptiometry (DXA)やBioelectrical impedance analysis (BIA) による四肢骨格筋量の評価を行うことを推奨している。しかし、放射線による侵襲やペースメーカーなどの金属挿入がある場合にはそれらの検査が困難となる場合がある。また、簡便なスクリーニングとして下腿周径を用いることも推奨されているが、浮腫がある場合では妥当性が低下することが指摘されている。 しかし近年、超音波画像を用いた研究が増えてきており、その簡便性や非侵襲性から臨床応用が進みつつある。European consensus on definition and diagnosis 2 (EWGSOP2) は超音波画像による骨格筋の評価について、臨床応用するには十分な根拠が得られていないが、今後新しい評価方法となる可能性があると言及している。そこで、臨床応用への基礎研究として腓腹筋の筋厚を超音波画像によって計測し、全身骨格筋量との関連を検討したので、今まで得られた知見を含めて紹介したい。 地域在住の65歳以上の195人 (平均年齢72.4±4.3y、男性 n=72歳)を対象とした。四肢筋質量指数 (SMI)はBIAを用いて測定し、超音波画像 (ビューズ・アイ,酒井医療株式会社,大阪)に よって腓腹筋の筋厚を測定した。SMIが男性は<<7.0 kg/m²、女性は<<5.7 kg/m²を全身骨格筋量低下とし、低下を認めるものをSMI低下群、認めないものを健常群と定義し分類した。 SMI低下と腓腹筋の筋厚の関連を年齢、性別、体格指数 (BMI)、身体機能および補正筋輝度で調整したロジスティック回帰分析によって分析した。また、SMI低下を示す腓腹筋の筋厚のカットオフ値を、ROC曲線により求めた。 SMI低下群は16.9% (n=33)であった。ロジスティック回帰分析の結果、腓腹筋の筋厚はSMI低下と独立して関連しており、腓腹筋の筋厚のカットオフ値は<11.6mm(AUC: 0.83, 感度: 0.83,特異度: 0.73, p<0.01)であった。 超音波画像による腓腹筋の筋厚はSMIと関連しており、全身骨格筋量の低下を示すカットオフ値は全身骨格筋の低下を評価する代替指標になりうる。

    【倫理的配慮】

    日本保健医療大学倫理委員会にて承認 (承認番号:3001)を得ている。

  • 旭 竜馬
    原稿種別: 予防OS1
    セッションID: YOS-01-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    令和4年版高齢社会白書によると、介護が必要となった主な原因の中で、転倒・骨折による割合は13.0%と示されている。我が国の2022年現在の高齢化率は29.1%となり、超高齢社会に伴い骨折患者数は増加傾向にある。特に大腿骨や椎体の骨折は将来の死亡リスクを高めてしまうことが報告されており、また一度骨折を起こすと再骨折や別の部位を骨折するリスクが高くなる。初発および二次骨折を予防するため、骨粗鬆症、転倒および骨折への対策が重要となる。 このような背景の中、我々は埼玉県の幸手市とともに骨粗鬆症検診での骨粗鬆症早期発見や転倒・骨折予防の取り組みを共同で行ってきた。骨粗鬆症検診において、我々は橈骨遠位部の骨密度や問診とともにロコモティブシンドローム (ロコモ)、筋肉量、歩行速度や握力といった身体機能の評価を行った。アウトカムを1年後の転倒として前向きに調査したところ、ロジスティック回帰分析にてロコモに該当するとオッズ比で2.477倍と転倒の危険性が高まることを示した。 さらに、我々は幸手市内の病院において骨粗鬆症外来患者を対象にロコモや脊椎アライメントの評価、大腿骨や胸腰部椎体骨の骨密度の評価を定期的に実施している。転倒を起因とした骨折は全体の約80%という報告もあり、転倒に関連した骨折 (転倒関連骨折)のリスクを高める要因を検討するため、ベースラインから骨折発生までを後向きに調査した。Cox比例ハザード回帰分析において、ハザード比でロコモの重症度が1.748倍、矢状面上での脊椎アライメント悪化が1.014倍と将来の転倒関連骨折に及ぼす影響が高まることを示した。 市民に対して我々は地域の検診から病院につなげる橋渡しを行いつつ、転倒および骨折にはロコモへの気づきと対策の重要性を発信してきた。本講演では骨粗鬆症、転倒および骨折予防への今までの取り組みと今後の課題を紹介する。

    【倫理的配慮】

    本研究は東埼玉総合病院倫理委員会および日本保健医療大学研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号 :20180005およびP3001)。本研究では事前に対象者へ説明を行い、書面に同意を得た。

  • 加藤 啓祐, 岩本 潤
    原稿種別: 予防OS1
    セッションID: YOS-01-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    平均寿命の将来推計は今後も増加傾向であり、「人生100年時代」と呼ばれるかつてない超高齢社会を迎えようとしている.当院のある群馬県東部に位置する館林市も高齢化率が28.7%と高齢化率の上昇が懸念され、今後も高齢化対策が重要な課題とされている.当院では、健康寿命の延伸を目的に2017年に健康長寿外来を開設した.その後、骨脆弱性骨折の1つである大腿骨近位部骨折に対する二次骨折予防を目的に、2019年10月より骨粗鬆症リエゾンサービス (FLS)を立ち上げた.FLSは骨折の整形外科的治療と共に骨粗鬆症治療を急性期病院から行うことが重要とされ、薬物治療とともに多職種の専門職が直接患者へ介入を行っている.今回骨粗鬆症治療開始率について年次的変化について検討する.

    【対象】

    対象は当院に大腿骨近位部骨折で手術治療を行った患者でFLSに同意が得られた者.期間はFLS導入前の2017年1月~2018年 12月,FLS介入直後の2019年10月~2020年3月を期間1とし, 2020年4月~2022年3月を期間2,2022年4月~2023年2月を期間3とする.各期間における大腿骨近位部骨折後骨粗鬆症治療開始率について算出する.

    【結果】

    FLS介入前の骨粗鬆症治療開始率は83名中17名 (20.5%),期間 1では36名中18名 (50%),期間2では204名中81名 (39.7%),期間3では75名中40名 (53.3%)であった.

    【考察】

    大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療開始率はFLS介入後改善が みられた.期間2では介入率の低下が見られた,これは COVID-19感染流行の影響によるものが考えられ,面会制限等により患者本人以外への直接的な治療説明が不十分であった事が要因と考えられる.また,期間3では改善が見られているが,これは二次性骨折予防継続管理料の新設が影響していると考えられる.管理料が算定できるようになったことだけでなく, FLS介入のエビデンスが裏付けされたことでもあり,整形外科医への大きな働きかけにも繋がった.今後も治療開始率の改善とともに治療継続率の向上にも取り組んでいく.

    【まとめ】

    当院における大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療開始率について検討した.FLS介入後骨粗鬆症治療開始率は向上し,二次性骨折予防継続管理料の新設は大きな影響を与えたことが示唆された.

  • 小林 凌 , 加藤 啓祐 , 小野田 知夏 , 岩本 潤
    原稿種別: 予防OS1
    セッションID: YOS-01-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    当院では「ロコモ」、「フレイル」、「サルコペニア」、「転倒・骨折」を健康寿命延伸のキーワードとし、高齢者を対象として、健康長寿教室 (以下、健康教室)を実施している。今回、当院における健康教室の取り組みと効果について報告する。

    【方法】

    健康教室への参加者は当院の健康長寿外来で募った。健康長寿外来は骨粗鬆症専門医の整形外科医が行う外来で、骨密度、血液・尿検査、身体機能評価をなど実施している。健康教室は医師、理学療法士、作業療法士、レントゲン技師、管理栄養士、薬剤師など多職種で実施した。実施内容は①運動フォームや運動目的を説明しながら行う集団でのレジスタンス運動・ストレッチ、②健康長寿に関連したテーマや栄養など教育を目的とした講話、③楽しみながら運動することを目的としたリズム体操や脳トレ運動とした。自主トレーニング用の運動プログラムの指導も行った。健康教室は1回あたり1時間とし、頻度は1回/ 週、期間は12週間とした。開始前と終了後に身体機能評価を行った。身体機能評価項目は、Skeletal Muscle Mass Index(SMI)値、握力、片脚立位時間、最大歩行速度、Timed Up & Go Test(TUG)、30-Second Chair Stand Test (CS-30)、 Five-Times-Sit-to-Stand Test(FTSS)とした。2018~2022年に健康教室に参加した高齢者105名(平均の年齢:75.2歳、体格指数: 22.3kg/m2)を対象として、身体機能の変化について検討した。統計解析には対応のあるt検定を用い、有意水準は5%とした。

    【結果】

    身体機能評価(参加前/終了後の平均値)では、SMI値(6.0/6.1)、握力(右:20.6kg/20.8kg、左 :19.1kg/20.2kg)、片脚立位時間(右 :25.3秒/30.1秒、左:24.4秒/25.9秒)には有意な変化は認められなかった。最大歩行速度(0.9m/s/1.0m/s)、TUG(9.7秒/8.7秒)、 CS-30(15.9回/21.7回)、FTSS(10.9秒/7.6秒)には有意な改善が認められた。

    【結論】

    高齢者において、週1回 (1時間/回)、12週間の健康教室は、歩行速度、動的バランス、椅子立ち上がり時間などの身体機能を向上させることが確認された。

    【倫理的配慮】

    健康教室の実施に際して、対象者へ安全面の配慮、個人情報の保護、測定データの研究応用等を書面にて説明し、署名にて同意を得た。

予防OS2
  • 山中 美和子
    原稿種別: 予防OS2
    セッションID: YOS-02-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    株式会社ユーフォリアが提供するアスリートのコンディション管理システム「ONE TAP SPOTS」には、チーム内で発生したスポーツ外傷・障害データを集積する機能がある。この機能を利用することにより、日本臨床スポーツ医学会と日本アスレティックトレーニング学会が共同で発表したスポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書の推奨に概ね沿った調査項目に関して外傷・障害データを蓄積することができる。株式会社ユーフォリアでは、特定のリーグに所属する全チームにこの機能を利用してもらい、各チームのメディカルスタッフと連携を取りながら外傷・障害サーベイランスを実施したり、特定の研究目的のために競技横断的に外傷・障害調査を実施している。本セッションでは、我々が実施する外傷・障害サーベイランスの概要を紹介する。

    【方法】

    リーグ単位で外傷・障害サーベイランスを実施するにあたり、株式会社ユーフォリアが施行した取り組みは概して次の3点である。1) 外傷・障害データ入力に関するガイドラインの作成・共有、2) チームのメディカルスタッフと毎月の入力に関するフォローアップ、3) 外傷・障害データに関するレポート作成。

    【考察】

    外傷・障害サーベイランスでは、実施者 (上記の例の場合、株式会社ユーフォリア) がスポーツ現場でのデータ入力に携わらないため、データの質 (e.g., 欠損や入力エラーの有無) は各チームのメディカルスタッフに依存する。そのため、各チームのメディカルスタッフのデータ入力へのコミットメントや外傷・障害調査への理解度を高めることが喫緊の課題であった。毎月のフォローアップはチームのメディカルスタッフに対してデータ入力のリマインド機能を果たした上に、コミュニケーションの契機となり、彼らが抱えるデータ入力に関する不明点をサーベイランス実施者が抽出することができた。また、試合シーズンの中間や終了後にリーグ全体の外傷・障害データの特徴や傾向を発表することで、データ入力へモチベーションを維持・向上することができたのではないかと考察する。

    【結論】

    外傷・障害サーベイランスはそのスポーツの統括・運営組織が選手の健康や安全により配慮した環境を構築し改善し続けるために必要不可欠な取り組みである。サーベイランスの導入段階では、定期的なフォローアップなど、データの入力者への支援が有効であることを我々は経験的に学んだ。

    【倫理的配慮】

    本発表は個人に関する情報に該当しない情報のみを扱う。

  • 菊元 孝則 , 高林 知也 , 久保 雅義
    原稿種別: 予防OS2
    セッションID: YOS-02-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    足関節捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,特に跳躍動作を繰り返すバスケットボールで多く発生する.79%の選手が足関節捻挫を経験していると言われ,その中の55%の選手は,受傷後に医療機関を受診していないとの報告もある.足関節捻挫を繰り返すことで,慢性的な足関節不安定感を呈する慢性足関節不安定症 (CAI)を発症する可能性もあり,受傷実態が把握できていないことが問題視されている.スポーツ外傷予防に対する考え方として,van Mechelenが提唱した4段階モデルが用いられているが,足関節捻挫に関しては,第1段階である発生率や重症度の把握すら不十分な現状である.そこで本研究は,独自に企画開発した携帯電話用のアプリ「バスケ手帳」による通知機能を用い,新潟県バスケットボール協会に所属する選手を対象に足関節捻挫の発生率と重症度を把握することを目的とし,その結果から0次予防へ繋げる一助とした.

    【方法】

    新潟県バスケットボール協会に所属する選手を対象に,2020年2月から4月に足関節捻挫に関する調査を「バスケ手帳」を使用して実施した.調査項目は,年齢,性別,足関節捻挫の既往歴,医療機関への受診の有無,競技復帰状況,また International Ankle Consortiumが定めるCAIの包含基準に必要なアンケート調査を実施した.統計処理にはχ2検定を用い,危険率5%未満を有意差ありとした.

    【結果】

    2,747名(年齢11.56±2.12歳:男性1,446名,女性 1,301名)から有効な回答を得た.足関節捻挫の既往を有する選手は1,072名(39.0%),複数回の既往を有する選手は698名 (25.4%)であった.また受傷後,236名(8.6%)が医療機関へ受診していないと回答した.競技復帰までは平均で9.69±12.38日を有し,疼痛が残存した状態で586名(54.7%)が復帰していた.また,340名(12.4%)がCAIに選定された.

    【考察】

    複数回の足関節捻挫の既往を有する選手が多く,その要因として適切な医療機関に受診せず,疼痛が残存した状態で競技復帰していることが考えられる.足関節捻挫が軽視されている現状があり,その結果,10%超の選手がCAIを発症している可能性が高い.

    【結論】

    バスケットボール競技時における足関節捻挫の再損傷を防ぐため,競技を取り巻く地域や社会が先導する0次予防が必要不可欠である.

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に本 研究の内容を書面にて説明し、同意を得た上で行われた.なお,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認 (18583-210218)を 受けて実施した.

  • 伊計 拓真 , 筒井 俊春 , 鳥居 俊
    原稿種別: 予防OS2
    セッションID: YOS-02-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    疾病の予防は,発生から治療に至るプロセスに対応して,0次, 1次,2次,3次と4つの段階に区分されており,それぞれの段 階で,疾病と因果関係を持つ様々な要因に対応する対策が取られる.スポーツ領域での予防は,疾病ではなく主に障害の発生を防ぐことを目的に,FIFA11+に代表される様々な障害予防プログラムが実践されている.これらの障害予防プログラムは,障害発生のリスク因子を調査した既存の研究成果に基づき考案されている. バドミントンにおける障害調査の多くは下肢関節に障害・外 傷が好発すると報告しており,またサッカーなどのメジャースポーツに比べ報告数は限られるがリスク因子を調査した研究も散見される.こうした研究成果に立脚し,バドミントンにおいても同様に早期の障害予防プログラムの考案・実施が必要である.一方,スポーツ現場でバドミントン選手と関わる中で,障害が下肢だけでなく上肢や体幹に発生する場面を経験することは少なくない.バドミントン選手における障害は,性別や年齢,練習形式によって発生部位が異なることが報告されており,限られた報告の中での障害予防プログラムの考案には限界があることが予想される.つまり,バドミントンの現場レベルではチーム内での様々な要素・条件を考慮し,チーム独自のオリジナルな障害予防プログラムの考案・実装が重要であると考える.本セッションはバドミントンにおける0次および1次予防に着目し発表する.0次予防とは障害発生の原因に関する環境・行動的条件を最小限に留める対策である.現場レベルでは立案された障害予防プログラムを選手自らが意欲的に実践するための方法にあたる.1次予防とは障害発生率を減少させるため,その原因の改善に向け取られる対策である.現場レベルでは障害発生のリスク因子を明らかにし,その改善に向けた障害予防プログラムを立案することにあたる.特殊な器具を必要とせず,スポーツ現場レベルで練習量・内容,タイトネスなどの選手固有のリスク因子を調査し,障害予防プログラムの考案・実装に至るための取り組みを報告する.また,現場レベルでは評価・定量化が難しい項目として,動作観察に基づくリスク評価が挙げられる.バドミントンにおける基本動作であるランジ動作を対象とした研究成果も併せて報告する.

    【倫理的配慮】

    本発表に関わる全ての対象者には予め本発表の目的と内容を説明し, 同意を得た上で計測を行った.

  • 筒井 俊春, 鳥居 俊
    原稿種別: 予防OS2
    セッションID: YOS-02-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    野球選手は繰り返されるオーバーヘッド動作によって肩や肘などに投球障害が、投球・打撃に特徴的な捻転動作の反復よって腰部障害が多く生じることが知られている。特に投球の反復によって引き起こされる投球肘障害は、本邦の小学生年代の野球選手の約25%に発症することが報告されている。発症率の高さゆえに一次予防が重要視され、近年、投球障害予防プログラムの提案がなされている。一方で中学生年代になると、小学生年代とは異なり、投球肩障害や腰部障害の発症率が増える。年代による障害発症部位の違いには、骨成熟の部位による違いや身体発育タイミングの個人差が関与していると考えられる。すなわち、成長期野球選手の障害予防を考えていく上で、「身体発育」指標は成長期特異的な障害の介在因子となるため、発育が完了した成人選手とは異なる視点を持つことが重要となる。我々はこれまでに、成長期の特徴である「身体発育」に着眼した研究を実施してきたため、投球肩・肘障害や腰部障害の予防に向けた取り組みを紹介する。 アスリートは、発育途上の時期であったとしても、競技能力を向上させるために日頃から練習をおこなっている。そのため、 「障害予防」とだけ謳う現場介入は、選手・指導者ともに敬遠 されてしまうケースが少なからずある。我々のような医療関係者と指導者とがWin-Winな関係を保ち、選手にとってメリットのある活動とするため、PSE challenge (Prevent injury、けがを防いで;Strength body and skills、身体とスキルを強化して; Enhance performance、パフォーマンスの向上を目指そう!)という、選手に身体の変化やパフォーマンスの向上を感じてもらう機会を設けるような取り組みを実施してきた。この内容と得られた知見も踏まえ、本セッションでは成長期野球選手における障害予防とパフォーマンス向上に向けた取り組みを共有する。

    【倫理的配慮】

    早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会の承認を得た上で研究活動を実施している。

  • 有馬 正人, 金川 潤也, 大堀 航輔
    原稿種別: 予防OS2
    セッションID: YOS-02-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    アスリートは競技の種類やその競技レベルに関係なく、日常生活や試合以外の時間において、傷害予防を念頭においた競技パフォーマンスの向上が不可欠である。 アスリートのサポートを実施する中で、チームに帯同しトレーニングのみならず日常生活の多くの時間を共有するトレーナーやチームメンバーならびにチームスタッフ間での様々な共有がコンディショニングを実施する上で必要不可欠である。 今回はゴルフのツアーサポートを通じ、日常の「気づき」と障 害予防やパフォーマンス向上につながることについて報告する。

    【対象】

    ゴルフツアー出場者

    【サポート内容と方法】

    ゴルフツアーに参加するアスリートについては、その出場権をかけた予選会等や、ツアー以外の海外遠征等ならびにオフの期間も含めてサポートを行う。サポート内容は、日々のコンディショニングやトレーニング、大会帯同を実施。 アスリートのサポートを実施する上で、他のコーチ陣やスタッフを含めたサポート体制の中で、日常生活や、日常のトレーニングのルーティンを定め、その変化の「気づき」を共有した。共有方法については、アスリートとサポートチームでのSNSを多く活用し、帯同でのサポートが実施できない時間や、アスリートの変化を即時的に共有することを実施した。

    【結果】

    それぞれの立場の「気づき」の深さ、頻度、変化、視点での共有についてはSNSの活用を適宜図りながら、日常的に自身と向き合い、適切に状況を判断することで、障害予防やパフォーマンスの向上につながった。特に女子ツアーにおいては長期間で試合数も多い中、障害予防は必須課題となる。またオフの際やトレーニングの合間でのシュミレーターや計測機器を用い、外部規範に基づくフィードバックも実施した。

    【考察】

    日常生活やトレーニングにおいて、内部規範に基づく「気づき 」や外部規範に基づく「気づき」などそのバランスが、適切な運動評価を実施し、その後の運動計画や、運動の実施に繋げることが非常に大切であると考える。 適切な共有を実施しながら、パフォーマンスの向上に繋げるために、選手のルーティンを細分化し、変化を早期に捉える必要がある。また「気づき」をいかに日常のトレーニングにおいて PDCAを回す取り組みに変えれるかが非常に重要であると考えられる。

    【倫理的配慮】

    本報告は、選手の個人情報保護の観点から、その個人情報の匿名加工する事により選手が特定されないように配慮した。

予防OS3
  • 森下 志穂 , 小原 由紀
    原稿種別: 予防OS3
    セッションID: YOS-03-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    高齢期における口腔機能の低下は、摂食嚥下機能の低下を招き低栄養のリスクを高めると考えられている。本研究は通所介護サービスを利用する高齢者における栄養状態に関連する口腔機能の要因を探索し、効果的な口腔機能向上について検討することを目的とした。

    【方法】

    令和3年10月~12月、東京都および福岡県内の6通所介護事業所を利用する高齢者308名 (男性63名、女性245名,平均年齢 85.8±7.2歳)を対象とした。調査項目は、基本属性、栄養状態 (MNAⓇ-SF)咬合状態、口腔機能 (舌圧、咬合力、改訂水飲みテスト、オーラルディアドコキネシス (ODK タ音)とした。統計解析はカイ二乗検定、一元配置分散分析、二項ロジスティック回帰分析を行った。

    【結果】

    低栄養群 (34名、平均年齢85.6±8.4歳、男性11.8%)では、栄養状態良好群 (131名、平均年齢85.3±7.2歳、男性29.0%)、低栄養のおそれあり群 (143名、平均年齢86.4±6.9歳、男性 14.7%)と比較して、舌圧値が低く、機能歯数 (義歯も含めた歯数)が少なかった (p<0.05)。また、栄養状態の関連因子 (オッズ比、95%信頼区間)として舌圧が低い (0.98、0.95-0.99)ことがあげられた。

    【考察】

    低栄養リスクの関連する口腔機能要因として、舌圧の低下が挙げられた。以上から、通所介護サービス利用者の口腔機能低下および低栄養のリスクへの早期発見・早期対応が、きわめて重要となることが示唆された。

    【結論】

    口腔機能向上に関わる健康教育は単体での実施ではなく、栄養との複合的プログラムの実施が必要であり、栄養と口腔の連携協働によるアプローチの推進が必要であることが示された。

    【倫理的配慮】

    東京都健康長寿医療センター倫理審査委員会承認 (整理番号:R21-015)

  • 福田 昌代, 氏橋 貴子, 江﨑 ひろみ, 破魔 幸枝, 中村 美紀, 宮澤 絢子, 水村 容子, 浅枝 麻夢可, 西保 亜希, 吉田 幸恵
    原稿種別: 予防OS3
    セッションID: YOS-03-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸は我が国の重要な課題であるが、現状では加齢により要介護認定者数は大きく上昇している。介護が必要になった主な原因の1つに転倒があり、転倒予防のためには単純な筋力トレーニングだけではなく、筋肉と脳を連動させる足趾力やバランス力が重要であるとの報告がされている。一方、高齢者の口腔機能の低下は、低栄養、フレイル、サルコペニアのリスクとされ、口腔機能の維持・増進が求められている。我々は、高齢者の身体機能と口腔機能の関連性について明らかにするため、今回は転倒に大きく影響する足趾力と口腔機能の関係について検討した。

    【方法】

    対象は、2018年、2019年にK市で開催された高齢者イベントに参加した125名と2019年、2022年にK大学で開催された健康イベントに参加した156名の計281名 (男性94名、女性187名:65-93歳:平均年齢74.8±5.9歳)である。口腔機能は最大舌圧、残存歯数、オーラルディアドコキネシス/pa/、/ta/、 /ka/、舌左右運動の速さを測定し、足趾力は足趾筋力測定器Ⅱ (竹井機器工業社製:TKK3365b)を用いて、足趾全屈曲による握る動きを左右測定した。加えて、最大握力と、開眼片足立ちについても測定した。足趾力と身体機能ならびに口腔機能との関係については、Spearman相関分析を用いた。統計処理には SPSS Ver26を使用し、統計結果の有意水準は5%とした。

    【結果】

    年齢と今回測定した身体機能ならびに口腔機能すべての項目で有意な相関が認められ、加齢により、すべての機能の測定数値が低下していた。足趾力と身体機能では、最大握力と開眼片足立ちで正の相関が認められた。足趾力と関連が認められた口腔機能は、最大舌圧、舌左右運動、オーラルディアドコキネシス /pa/,/ta/であり、最大舌圧とオーラルディアドコキネシスは正の相関を、舌左右運動では負の相関が認められた。

    【結論】

    加齢とともに、身体機能や口腔機能の低下に注視し、早期から低下予防に関する対策の必要性が示された。また、足趾力と舌の動き、強さならびに口唇や舌の巧緻性との関係が認められたことから、それら機能低下の兆候から足趾力低下の早期発見の可能性や、口唇、舌の機能向上トレーニングにより、足趾力の向上に繋がる可能性が示された。

    【倫理的配慮】

    本研究は神戸常盤大学短期大学部研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号:神常短研倫第18-16号、 19-06号、22-1号)。対象者には事前に書面を用いて口頭で研究の説明を行い、書面にて同意を得た。

  • 森下 元賀 , 三好 早苗 , 國枝 洋太
    原稿種別: 予防OS3
    セッションID: YOS-03-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    全身のサルコペニアと口腔機能は相互に関連していることが多くの報告で示されており、理学療法士は口腔機能低下を全身に影響を及ぼすリスクととらえる必要がある。また、栄養状態に配慮して身体活動、社会参加を促すことによる全身機能の向上は口腔機能にも良い影響を与える可能性がある。我々は全身の活動と口腔機能の関連について調査した。

    【方法】

    研究1では地域の介護予防事業に参加する高齢者113名(平均年 齢: 75.7±7.3歳)を対象とした。ここでは日常の活動範囲のアンケート調査であるThe Life-Space Assessment(LSA)と口腔機能の関連を調査した。口腔機能は随意的最大舌圧、オーラルディアドコキネシス、反復唾液嚥下テスト、口唇閉鎖圧を測定した。身体的フレイルの指標は握力、基本チェックリストの点数とした。LSA、身体的フレイルが口腔機能に関連しているかどうかを重回帰分析で検討した。研究2では別の地域の介護予防事業に参加する高齢者57名(平均年齢: 75.8±5.1歳)を対象とした。ここでは日常の活動量のアンケート調査であるPhysical Activity Scale for the Elderly(PASE)と口腔機能のアンケート調査であるOral Frailty Index-8(OFI-8)の関連を調査した。PASE、 OFI-8、年齢のそれぞれの関連をPearsonの積率相関係数で調べ、 OFI-8でのオーラルフレイルのカットオフ値(4点)以上と未満を分けたPASEの数値をt検定で比較した。

    【結果】

    研究1では、随意的最大舌圧はLSA (B=0.222, p<0.01)、握力 (B=0.266, p<0.01)と関連していたが、その他の口腔機能とLSAとの関連はなかった。研究2では、OFI-8とPASEは弱い負の相関(r=-0.29, p<0.05)を示したが、年齢とOFI-8、PASEの相関はなかった。OFI-8においてオーラルフレイルの可能性が高い群のPASEの数値(103.6±46.2)はそうでない群(154.0±56.6)と比較して有意に低かった(p<0.01)。年齢とOFI-8、PASEとの相関はなかった。

    【考察】

    身体機能と口腔機能は関連するという先行研究があるので、活動量が多く、活動範囲が広い高齢者は全身のサルコペニアに随伴する口腔機能低下を予防できている可能性がある。また、口腔機能が良い高齢者は栄養状態が良くて全身のサルコペニアの進行を抑制できていて、活動的である可能性がある。

    【結論】

    口腔機能と全身の活動量、日常生活の活動範囲は相互に関連しているので、口腔と全身に対して複合的な予防介入が必要である。

    【倫理的配慮】

    それぞれの研究は研究実施時に所属していた吉 備国際大学倫理審査委員会(承認番号: 15-02、22-45)の承認を 得て行い、対象者には研究の趣旨を説明して書面で同意を得た。

  • 白部 麻樹 , 植田 拓也 , 大渕 修一 , 藤原 佳典
    原稿種別: 予防OS3
    セッションID: YOS-03-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    平成27年より、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進するため、介護予防・日常生活支援総合事業が創設され、従来の介護予防から新しい総合事業への移行が行われてきた。この中で、介護予防に資する住民主体の通いの場 (以下、通いの場)の充実に関する取組が全国で展開されている。新型コロナウイルス感染症の影響により把握可能な時点の状況ではあるが、平成30年度に 106,766箇所だった通いの場が、令和3年度は123,890箇所と増加してきている。通いの場は、住民が主体的に運営することで地域での役割創出を狙ったものであり、主な活動内容は、「体操 (運動)」が55.8%と最も多く、次いで「趣味活動」、「茶話会」の順で実施されている。さらに、厚生労働省は「だれが (運営)」、「どこで (場所)」、「なにを (活動)」の3つの視点 から通いの場の活動を類型化し、通いの場の活動を多様化させることを求めている。 一方、「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」では、この通いの場を活用し、令和6年度までに全ての市区町村において「通いの場等に医療専門職が関与することにより、高齢者が自らの健康状態に関心を持ち、フレイル予防等の重要性について浸透することを図る」としている (厚生労働省「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン」より)。地域の介護予防において通いの場は重要な地域資源であり、フレイル予防の視点から今後さらに専門職の関与が求められることになるが、専門職の関わりが増えることで、住民の主体性が低下する可能性もある。我々は、専門職は関わりが増えれば増えるほど、住民の後方支援を担う認識を強く持たなければいけないと考えている。 また、市区町村に派遣される専門職の職種別では、理学療法士 が最も多く、次いで保健師、作業療法士の順となっており、歯科衛生士の実績は少ない。口腔機能低下は低栄養とも関連して、高齢期の生活機能の予後に大きく影響を与えるため、フレイル予防に展開する上でも口腔は重要な策の一つである。地域の介護予防における他の専門職と連携した歯科衛生士の関与の在り方を報告する。

    【倫理的配慮】

    該当なし

  • 川村 孝子, 藤原 元幸, 甫仮 貴子, 山口 柳子, 遠藤 孝子, 小武海 明美, 佐藤 嘉晃, 小原 由紀, 田所 大典
    原稿種別: 予防OS3
    セッションID: YOS-03-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    高齢化率全国1位の秋田県では、生活習慣病による死亡率が高く生活習慣改善が大きな課題である。 2020年度から県内の医療関連会社がITを活用したフレイル判定・予防システムを開発し、希望する市町村が当システムを活用した健診事業 (以下、フレイル健診)を実施している。そこで、フレイル健診の事業を紹介するとともに、歯科衛生士の果たすべき役割と今後の課題について考察する。

    【方法】

    フレイル健診の健診項目は、地区の公民館等で実施した。生活問診 (基本チェックリスト、オーラルフレイル問診票、生活習慣等)、口腔機能 (舌口唇運動機能、舌圧、口腔衛生状態 )、体組成、Short Physical Performance Battery (以下、SPPB)等であった。歯科衛生士は、口腔機能評価および口腔健康管理に関する指導を行った。フレイル健診の一人あたりの所要時間は約2時間で、すべての測定結果はネットワークで共有され、当日に健診結果を受診者に提供し個別指導を行った。

    【結果】

    2022年のフレイル健診は、5~12月、秋田県内8市町村、40会場で実施した。初回健診参加者は、542名 (男性121名、女性423名)、平均年齢は76.4±4.3歳であった。フレイル該当率は3.7%、プレフレイル該当率は37.1%、口腔機能低下者は23.2%であった。

    【考察】

    口腔機能低下・低栄養・運動機能低下は相互に関連し ており、フレイル・サルコペニアの伸展にも影響を与える可能性がある。地域における健康寿命延伸を目的としたフレイル予防の取り組みには、口腔・運動・栄養の連携が重要である。フレイル健診には、行政の担当者のほか、在宅保健師の会の保健師・秋田県歯科衛生士会の歯科衛生士・池田薬局の管理栄養士が参画し、測定を行うとともに測定結果に基づく保健指導を行っている。健診レポートをみながらの個別指導は短時間であるが参加者の意識改革と行動変容の促進効果が期待される。現在、フレイル該当者に対するフォローアップについては、地域により内容に開きがある。今後、理学療法士等も含めた専門職が協同で複合的に関わることで、県民一人一人の意識改革と行動変容を促進し健康寿命延伸と地域による健康格差の縮小が期待されると考えられる。今後は、多職種による保健指導の介入効果についても検討していく必要がある。

    【倫理的配慮】

    該当なし

予防OS4
  • 漆川 沙弥香 , 森 明子
    原稿種別: 予防OS4
    セッションID: YOS-04-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    日本産婦人科学会によると月経困難症による痛みは“月経痛”と表現され,その割合は73.3‒92.0%との報告がある。なかでも原発性月経困難症は「骨盤に識別可能な病理学的変化がない場合に起こる下腹部の痙攣性疼痛」と定義され,原因は「子宮内膜から放出されるプロスタグランジンの産生量増加がもたらす子宮筋の過剰収縮による虚血」とされる。虚血が原因の月経痛に対し,理学療法士がアプローチできる手段の一つに運動療法がある。そこで今回,運動療法に焦点を当て,月経痛に対する予防理学療法の可能性を現在までにわかっている知見をもとに述べる。

    【月経痛に対する運動療法のエビデンスとその問題点】

    月経痛緩和を目的とした代表的な運動に有酸素運動,ストレッ チング,体幹の強化運動があり,1回約45‒60分,週3回以上行うことが推奨されている。しかし,実際に運動を実施している者は,我々の研究において4.6%であった。この背景の一つに,全身運動を継続することが難しい点が考えられる。そこで,局所的な運動による子宮動脈の血行動態の改善を見込んで基礎研究を行ったため紹介する。

    【骨盤底筋群の随意収縮が子宮動脈の血行動態に与える変化】

    骨盤底筋群は内陰部動脈に支配され,子宮動脈と共に内腸骨動脈から分枝する血管で子宮動脈と隣接した解剖学的位置関係にある。そこで,骨盤底筋群の随意収縮が子宮動脈の血行動態に与える変化を検証した。20-45歳の健常成人女性を対象に遅筋 と速筋を組合わせた骨盤底筋群の随意収縮運動を実施した結果,子宮動脈の血流速度の増大を得た。

    【月経痛に対する予防理学療法の可能性と今後の展望】

    虚血が原因の月経痛に対し予防的に運動療法で対処するために は,筋ポンプ作用による循環動態の改善が期待される。骨盤底筋群の随意収縮により子宮動脈の血流速度が増大したことは,虚血を原因とする月経痛を予防する可能性があると考えられる。骨盤底筋群の随意収縮はあらゆる肢位において実施可能であり,全身運動を伴わないことから取り入れやすい。今後は,月経痛を有する者に対する検証が必要になると考える。

    【結語】

    月経痛に対する予防理学療法の学際性は少なく,未発展な分野である。一方,理学療法士にできることの可能性も秘めていることから,今後も日々の対象者に向き合いながら学際性を高める努力をしていきたい。

    【倫理的配慮】

    本演題発表の一部は兵庫医療大学倫理審査委員会の承認を得て実施したものである (承認番号:第20011号,第 20011‒2,第20023号,第20023-2号)。

  • 須永 康代
    原稿種別: 予防OS4
    セッションID: YOS-04-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    妊娠・出産は女性にとって非常に重大なライフイベントであり、妊娠中の胎児の成長に伴う形態的変化は、姿勢や動作に影響を及ぼし、腰背部・骨盤帯痛、尿失禁、股関節痛や膝関節痛などを引き起こす要因となる。また経膣分娩時には骨盤底筋群の伸張負荷や会陰裂傷などにより重度な骨盤底機能障害を呈する可能性もある。 こうした問題に対する妊娠中からの予防的介入に関し、尿失禁 予防のための骨盤底筋トレーニングの妊娠中からの開始において一次予防効果が示されており、専門家による指導下での集中的プログラムの提供は推奨グレードAとされている。一方、腰 背部痛など他の問題に対する予防的介入はエビデンスが未確立であり、少子高齢社会の状況を鑑みても取り組みは急務である。今回、研究と臨床実践の事例から、妊娠期・産後の機能障害に対する予防理学慮右脳の可能性について検討を行ったので報告する。

    【実践例紹介】

    妊婦を対象とした基礎研究において、妊婦の身体的変化に伴い身体慣性パラメータが変化しており、力学的・運動学的にも影響を及ぼす可能性が示された。実際、バイオメカニクス解析を用いて縦断的研究を行った結果、起立動作や歩行中の姿勢制御戦略の変化、動作遂行時の円滑さや安定性の欠如がみられ、身体的負荷の増大による影響が危惧された。こうした研究データを踏まえ、地域における産婦人科や整形外科などとも連携し、妊娠中から産後における機能障害の発現や重症化の予防を目的とした理学療法の実践を進めている。

    【結論】

    妊娠中から産後に生じる症状は、その後継続しさらに加齢に伴う変化が組み合わさることで問題が複雑化することが危惧される。そのため、妊娠中から産後にアプローチすることは、以降の女性のライフステージにおいて生じる健康問題を予防することにつながる。 妊娠中の経過や産後の身体状況は次子の妊娠・出産や復職にも強く影響すると思われ、この時期を身体的トラブルなく快適に過ごせることは、少子化対策の一助となりうると考える。 女性の社会進出の観点から、健康経営を推進するうえでも、妊娠・出産期を生育サイクルとして捉えると、胎児のその後のライフサイクルにも引き継がれることになるため、この時期の女性の健康問題への対応は、次世代への健康に対する投資 (経済産業省,2019)とも捉えることができ、非常に重要な意味がある。

    【倫理的配慮】【倫理的配慮、説明と同意】

    報告に含まれる研究に関しては、研究代表者所属機関において研究倫理委員会の承認を得、対象者に研究内容について十分な説明を行ったうえで同意書への署名により同意を得て実施している。

  • 田舎中 真由美
    原稿種別: 予防OS4
    セッションID: YOS-04-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    更年期・老年期に起こりうる尿失禁・骨盤臓器脱の原因には、 閉経によるエストロゲンの減少も関与している。2014年国際女性機能学会 (ISSWSH:International Society for the Study of Women's Sexual Health)及び北米閉経学会 (NAMS:North American Menopause Society)により、新しく閉経関連尿路生殖器症候群 (Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)が提唱され、GSMに対する治療・研究が取り組まれるようになった。 GSMとは閉経期頃より出現する下部尿路症状と性器症状をいう。 40歳以上の1万人の女性を対象とした我が国の疫学調査では、何らかの症状がある人は44.9%。そのうち失禁は21.7%、頻尿は20.0%であったとしている (H Ohta,2020)。近年、GSM対策として雑誌・WEB等のメディアでも腟ケア・骨盤底筋トレーニングが度々取り上げられ、注目されている。しかし、骨盤底筋トレーニングに関しては、誤った方法で行われていることも少なくないため、症状が不変または憎悪してしまうケースもある。臨床上、更年期・老年期の尿失禁や骨盤臓器脱症例は変形性股関節を有していることをしばしば経験する。これは、股関節外旋筋群である内閉鎖筋が尿失禁予防に重要な骨盤底筋群の一つである腸骨尾骨筋と筋膜連結しており、内閉鎖筋が萎縮しているためである。また骨盤臓器脱のリスク因子に、胸椎・腰椎のアライメントが挙げられる。胸椎の後弯増加や腰椎の前弯減少により、骨盤臓器脱のリスクが上がる。これは脊柱のニュートラルな弯曲が減少することで、骨盤内臓器に対して上部からの腹腔内圧が繰り返しかかるために生じると考えられる。 従って更年期・高齢期以降に生じる骨盤底機能障害例に対応するためには、骨盤底機能だけでなく、胸腰椎のアライメントや股関節の機能向上を考慮した上で、症例に合わせて適切な運動指導を行う必要がある。今回は更年期・老年期で動作時の尿失禁症例、変形性股関節症と子宮脱を有する症例、骨盤臓器脱術後の尿漏れ症例を提示させていただき、臨床で実践している骨盤底機能の評価とトレーニングについて具体的に紹介する。 更年期以降で尿失禁や頻尿症状、性器症状等のGSMが出現した際に、早期に骨盤底機能の向上を図ることは重要である。早期に適切なトレーニングを行うことで、尿失禁や骨盤臓器脱などの骨盤底機能障害だけでなく、変形性関節症をはじめとする運動機能障害に関しても同時に予防・改善できると考える。

    【倫理的配慮】

    発表にあたり、患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、同意を得た。 また、患者が特定されないよう配慮した。

予防OS5
  • 石黒 博也, 鈴木 淳也, 菅 祐紀, 柴田 純志, 近藤 実希
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    変時性不全の患者は運動時に適切な心拍数の増加が得られず,経時的な運動耐容能の低下を招く.運動耐容能を維持するためには運動療法が推奨されるが,変時性不全の患者は十分な運動を実施することが困難である.これに対し,心臓ペースメーカーを留置し,さらにレートレスポンス (RR)機能を付加して運動療法を行う方法があるが,運動耐容能の予防効果は明らかになっていない.今回,変時性不全の患者に対して心臓ペースメーカーのRR機能と運動療法を併用した症例を経験したため報告 する.

    【症例紹介】

    本症例は当院の心リハ外来に通院している心臓ペースメーカー植え込み術後の変時性不全患者であった.心リハ外来開始前に CPXを行ったところ,運動耐容能低下を認め,漸増運動に伴う心拍数の増加も得られなかった.そのため,心臓ペースメーカーのRR機能 (DDDCLS50-130)を付加し,心リハ外来において有酸素運動とレジスタンス運動を1回/週実施した.6ヶ月後に再度CPXで運動耐容能の評価を行い,さらに膝伸展筋力とMRC息切れスケール, Life Space Assessment (LSA)を評価し,RR機能付加と運動療法の併用効果を介入前後で比較した.

    【結果】

    心リハ外来前後のCPXにおいて,Peak VO2は10.8から23.6 ml/min/kgに増加,VE vs VCO2 slopeは36.8から23.1に改善,一回拍出量の指標である最高酸素脈は9.88から21.53 ml/beatsに増加し,運動耐容能の改善を認めた.膝伸展筋力は変化しなかったが,MRC息切れスケールはGrade 3から1に改善した. また,運動耐容能の改善によって復職に至り,LSAも28から58点に増加し,生活範囲の拡大を認めた.

    【考察】

    心臓ペースメーカーのRR機能付加により漸増運動に伴う心拍 数の増加が得られ,ATレベルでの有酸素運動が可能になった.また,継続的な有酸素運動は運動時の一回拍出量を増加させ, Peak VO2の向上に寄与したと推察される.以上より,心臓ペースメーカーのRR機能と運動療法の併用によって運動耐容能の向上およびADL低下予防に寄与したことが考えられる.

    【倫理的配慮】

    個人情報の取り扱いはヘルシンキ宣言に基づき,対象者に本発表の目的を口頭および書面で説明し,同意を得た.

  • 中西 亮介 , 田中 雅侑 , Badur un Nisa , 平林 卓己 , 田中 稔 , 前重 伯壮 , 藤野 英己
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    長期間の過食はエネルギー摂取量が消費量を上回り,過剰な皮下脂肪の蓄積だけでなく,骨格筋内に脂質の蓄積を引き起こす.骨格筋内の脂質蓄積はインスリン抵抗性と強く関係し,血糖値の上昇を誘発する.骨格筋内の脂質蓄積の予防はインスリン抵抗性や血糖上昇の抑制に重要である.先行研究では交流磁場が肝臓で代謝活性を促進すると報告され,エネルギー消費において重要な役割を担う可能性を有する.そこで,交流磁場が骨格筋においても代謝活性を促進させ,骨格筋内の脂質の蓄積を予防することで過食に起因する肥満に伴うインスリン抵抗性を改善するかを検証した.

    【方法】

    4週齢のC57BL/6Jマウスを通常飼料摂取群(ND),通常 飼料摂取に60Hz交流磁場を照射する群(ND+EMF),高脂肪食摂取により肥満を誘発した群(HFD),高脂肪食摂取により肥満を誘発し60Hz交流磁場を照射する群(HFD+EMF)の4群に区分した.交流磁場の照射は1日8時間を16週間実施した.交流磁場は最大磁束密度180mTの機器 (ホーコーエン)を用いた.実験開始 14週目にインスリン抵抗テストを実施し,実験終了後に前脛骨筋の筋内脂肪量を定量化した.さらにAMPKのリン酸化, CPT1bのタンパク質発現量,およびFAT/CD36の細胞膜上発現量の解析を行なった.

    【結果】

    HFD+EMF群はHFD群に比較してインスリン抵抗性および筋内脂肪の蓄積量を有意に低下させた. さらにHFD+EMF群はHFD群に比較して骨格筋のAMPKのリン酸化,CPT1bのタンパク質発現量を有意に増加させ,FAT/CD36の細胞膜上発現量を増加させた.

    【考察】

    交流磁場はAMPKのリン酸化を活性化させた.AMPKのリン酸化は脂肪酸をミトコンドリア内輸送に関連するCPT1bタンパク質発現量を増加させるとともに脂肪酸受容体である FAT/CD36の細胞膜上発現量を増加させることが報告されている.本研究では交流磁場がAMPKのリン酸化を活性化させ,脂肪酸輸送・代謝を促進し,筋内脂肪蓄積を抑制させた.本研究の結果から交流磁場は肥満に伴うインスリン抵抗性を改善させる方法であることが示唆された.

    【倫理的配慮】

    この研究は神戸大学の動物管理使用委員会によって承認され (P180802),本施設の動物管理使用プロトコルに従って実施された.

  • 成瀬 宏司 , 深作 哲貴 , 磯村 隆倫 , 小林 豊
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    訪問リハビリテーションでは,利用者の精神・運動機能やADL 能力などを評価し,利用者の身体機能を把握している。しかし,従来の評価方法では測定に多くの時間を要することや評価場所の確保が容易ではないため,定期的な評価になってしまい,連続的に利用者の身体機能を把握することが難しいという課題がある。本研究では,訪問リハビリテーションにおける要支援高齢者を対象に,身体活動量計を用いた介護予防アプローチの有用性を検証した。

    【方法】

    対象は訪問リハビリテーションを利用している施設入所中の要支援高齢者6名 (87.2±8.9歳;男性1名・女性5名)であり,介 護度は要支援1が2名,要支援2が4名,MMSEは27.5±3.8点で,すべての対象者は屋内歩行が自立レベルであった。従来の運動機能評価として,下肢機能指標 (SPPB),歩行能力指標 (10m歩行速度),ADL能力指標 (FIM)を評価した.また,これらの指標に加えて,身体活動量評価の指標として歩数,座位活動時間 (1.5METs以下),低強度活動時間 (1.6METs~2.9METs),中高強度活動時間 (3.0METs以上)を身体活動量計 (Active style Pro HJA-750C:オムロンヘルスケア)を用いて7日間測定し,1日あたりの平均値を算出した。

    【結果】

    従来の身体機能評価では,SPPBは10.7±1.9点,10m歩行速度は9.6±0.9秒,FIMは114.2±9.5点であり,すべての項目で良好な結果が得られた。一方,身体活動量の評価では,歩数は 1734.5±835.6歩,座位活動時間は801.1±171.5分,低強度活動時間は196.4±73.5分,中高強度活動時間は4.9±2.4分であり,低活動状態であることが確認された。

    【考察】

    本研究の対象者は運動機能評価では良好な結果を示しているにも関わらず,身体活動量評価においては座位活動時間が非常に長く,更に低強度活動時間および,中高強度活動時間は極めて短い状態であることから要支援高齢者では運動機能が身体活動量と直結しないことが明らかとなった。したがって,訪問リハビリテーションにおいて,身体活動量計を用いて利用者の活動量を経時的な評価を行うことは,効果的な介護予防のアプローチへつながる有用な方法であると考えられた。

    【倫理的配慮】

    個人情報の取り扱いはヘルシンキ宣言に基づき,対象者に口頭及び書面で説明し,同意を得た。

  • 中山 和彦 , 舟橋 雄大 , 磯村 隆倫 , 小林 豊
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    運動麻痺は日常生活動作の制限のみならず,趣味活動の喪失をもたらす。運動麻痺に対しては神経筋電気刺激療法の有効性が報告されているが,機能改善に着目した報告が多く,趣味活動に言及した報告は少ない。今回,上肢の運動麻痺が生じた患者に対して神経筋電気刺激療法を用いた介入により趣味活動の喪失を予防した症例を経験したため報告する。

    【症例紹介】

    症例は頚部脊柱管狭窄症により左側の第5頚髄領域に運動麻 痺が生じた70代男性であった。左肩関節の関節可動域 (ROM)は屈曲10°,外転10°であった。左上肢筋力 (MMT)は左三角筋2,回旋腱板2,上腕二頭筋3であり,握力は35kgであった。日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準 (JOA)スコアは 13.5/17点であった。また,患者の趣味はゴルフであり,趣味活動を維持することを強く希望されていた。このゴルフに対するカナダ作業遂行測定 (COPM)では,重要度8/10,遂行度 0/10,満足度0/10であった。

    【経過】

    術前は受傷後3日目から外来リハビリテーションを開始し,受 傷後17日目に前方頸椎除圧固定術を施行された。作業療法では術前から随意運動介助電気刺激装置 (IVES)を使用し,麻痺側の三角筋,上腕二頭筋,回外筋に対して,治療的電気刺激としてのノーマルモードとバイオフィードバックを目的としたトリガーモードを併用した。また,段階的にトリガーモードの感度設定を変更して難易度を漸増させていった。受傷後24日目に退院し,その後は外来で作業療法 (3回/週)を継続し,受傷後52日目からゴルフ練習場でのスイング練習を開始した。受傷後103日目において,左肩関節のROMは屈曲150°,外転160°まで改善した。左上肢MMTは三角筋4,回旋腱板4,上腕二頭筋5まで改善し,JOAスコアは15/17点であった。趣味活動ではゴルフコースを回ることが出来るようになり,COPMは遂行度8/10,満足度8/10まで増加した。

    【考察】

    本症例は術前から神経筋電気刺激療法を用いることにより,良好な運動学習を行うことができた。また,麻痺筋の機能が改善することで協調的な練習を行うことができるようになり,趣味活動の再開へ繋がった。このことから,医療デバイスを用いた介入は,趣味活動の喪失を予防する一助となったと考える。

    【倫理的配慮】

    患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭 にて意義、方法、不利益等について説明し同意を得て実施した。

  • 太田 友幸 , 萩原 妃里子 , 橋本 司 , 中澤 宏之 , 市川 研太 , 車谷 容子
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    心疾患患者において再発や症状増悪による入退院することで ADLが低下していくため、再入院リスクを低減させることは非 常に重要な課題であり、運動耐容能向上や再発・再入院予防を目的とした心臓リハビリテーション (心リハ)が推奨されている。本研究では入院中に心リハを行った患者を対象とし、退院後に再入院に至る要因を調査することを目的とした。

    【方法】

    対象は2019年4月から2022年6月に当院入院中に心リハを実施し、かつ退院後に当院外来心臓リハビリテーションを新規処方 された患者27名とした。退院後150日以内における再入院の有無を診療記録から後方視的に調査した。対象者を再入院群と非再入院群に分類し、基本属性、血液データ、投薬状況、心機能、身体機能などを群間比較した。統計学的解析はFisherの正確検 定、マン・ホイットニーのU検定を用いた。また再入院群に関しては再入院に至った要因や傾向についても併せて調査を行った。

    【結果】

    再入院率は28.5%であった (非再入院群:21名、再入院群:6名 )。血液データのeGFR値において、再入院群は非再入院群よりも有意に高値であったが、その他の項目に対する比較においては統計学的な有意差を認めなかった。再入院群では非再入院群と比較して若年で就労している患者が多い傾向にあった。また再入院に至った経緯に着目したところ、再入院群では①全例が心不全患者、②退院後30日以内の早期に再入院、③心リハ外来でCPX実施前という特徴があった。また退院後にCPXを実施後 1年間では再入院に至った症例は6名中1名のみであった。

    【考察】

    今回の調査では比較的若年かつ就労をしている心不全患者が再入院に至る可能性が高い傾向にあった。しかしCPX後に再入院率が減少している特徴から、CPX結果を基にした運動・生活指導を行うことは心不全増悪による再入院を予防するための重要な因子である可能性が示唆された。心疾患におけるリハビリテーションガイドラインにおいて心不全患者は点滴加療終了後に症候限界性運動負荷試験の実施が推奨されている。今回の結果から就労しているような活動性が比較的高い患者には退院後、可能な限り早期にCPXを実施することが再入院率の低減につながる有益な介入方法であると考える。

    【倫理的配慮】

    甲府共立病院倫理審査委員会の承認を得た

  • 伊藤 達之 , 三木 貴弘 , 山田 純也 , 作井 大介 , 金居 督之 , 萩原 悠太
    原稿種別: 予防OS5
    セッションID: YOS-05-6
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    生活習慣病保有者において、オンライン完結型生活習慣改善支援プログラムが着目されている。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、外出自粛等による活動量低下が懸念されている、動画サービスによる運動支援が近年注目されている。本研究は、生活習慣病保有者を対象としたオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムにおいて、運動動画サービスの導入を追加した効果を検証し、視聴状況との関連を検討することを目的とした。

    【方法】

    PREVENT社が提供する6ヶ月間のスマートフォンアプリによるオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムに参加した者のうち、2020年11月~2021年7月に自社制作の運動動画を視聴した者を対象とした。プログラムを完遂できなかった者は除外した。対象者にはウェアラブル端末(Fitbit Inspire)等を用いて歩数、中等強度活動時間等をアプリに記録してもらった上で、看護師、管理栄養士、理学療法士等の専門職が、2週間に1回の電話面談やチャットにて個別で疾病管理の支援を行った。運動動画サービスは有酸素運動や筋力トレーニングに関する動画を制作し、運動指導の一助として対象者に紹介した。統計解析は、プログラム前後の変化量をウィルコクソンの符号付き順位検定にて、動画の視聴状況とプログラム介入前後の変化量の関連を Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。変化量の測定値は BMI、血圧、平均歩数、中等強度活動時間、HbA1c、LDLコレステロール値、 HDLコレステロール値、中性脂肪値、L/H比であり、動画の視聴状況は、視聴回数、合計視聴時間、視聴日数であった。

    【結果】

    対象者は297名(平均年齢:55.64±6.56歳)であった。介入前後で BMI、収縮期血圧、平均歩数、中等強度活動時間、HbA1c、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値はそれぞれ有意な改善を認めた。変化量と視聴状況との関連は視聴日数と拡張期血圧(ρ=-0.11)、視聴日数とL/H比(ρ=-0.12)が弱い相関を認め、その他の変化量では有意な相関を認めなかった。

    【考察】

    生活習慣病保有者に対するオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムにおいて、介入前後で有意な変化量を認めたものの、追加の運動動画サービスの視聴状況と変化量に有意な相関はほぼ認められなかった。その理由として、動画視聴は対象者の任意であったことや対象者特性に応じた動画の紹介をしていなかったことが要因として考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき実施され、参加者はプログラム開始時に、プログラム上で収集したデータを今後の研究に使用する可能性があることを明記したプライバシーポリシーに同意した。また、本研究は甲南女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。

予防OS6
  • 堤本 広大
    原稿種別: 予防OS6
    セッションID: YOS-06-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【概要】

    2001年に、Friedらがフレイルの表現型モデルに関する概念を提唱し、その後、2007年にはRookwoodらによって障害蓄積モデルの概念が取りまとめられた。本邦においては、世界に先駆けて施行されていた介護保険も相まって、これらの定義が上手く融合し、フレイルを障害蓄積モデルの概念を用いて、健常高齢者と要介護高齢者の中間的な状態であると定義しつつ、身体的側面、心理・精神的側面、社会的側面に細分化した際に、身体的側面に関するフレイルについて、表現型モデルの考え方を取り入れている。本発表においては、フレイルの概念を整理しつつ、上述した通り、フレイルの様々な側面が細分化されて評価されており、その中でも、社会的側面に焦点を当てて議論を進める。まず、フレイル全般の概念の整理し、その後、社会的フレイルの概念について現状の提示を行う。また、日本人の地域在住高齢者を対象としたコホート研究から得られた知見を紹介する。具体的な治験としては、国立長寿医療研究センターで実施しているコホート研究NCGG-SGSのデータを活用する。 NCGG―SGSにおいては、社会的フレイルを「昨年と比較して、外出頻度が減った」「友人の家を訪ねることがない」「家族・友人の役に立っていると思えない」「1人暮らしである」「誰とも会話をしない日がある」の項目において、1項目該当した場合を社会的プレフレイル、2項目以上該当した場合を社会的フレイルと操作的に定義した。地域在住高齢者を、健常高齢者と社会的フレイル高齢者に分類し、追跡調査を行った結果、2年間での要介護認定移行リスクは1.7倍、4年間でアルツハイマー型認知症発症リスクについては1.5倍のリスクを有することが示唆された。つまり、身体的フレイルや認知的フレイル同様に、社会的フレイルを有することが、高齢期の健康問題に対して影響を持ち得ることが分かってきた。総括すると、フレイルには、身体的、精神・心理的、社会的といった様々な側面を有しており、本発表で紹介した社会的フレイルを有している高齢者については、健常高齢者と比して、健康問題を生じる可能性が高く、今後、介入対象として注目すべきであると考える。

    【倫理的配慮】

    国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を得た。

  • 牧野 圭太郎 , 土井 剛彦 , 堤本 広大 , 片山 脩 , 山口 亨 , von Fingerhut Georg , 山際 大樹 , 牧 ...
    原稿種別: 予防OS6
    セッションID: YOS-06-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    近年、高齢期の健康状態の指標として、身体、認知、心理的な健康度に加え、社会的な健康度を評価することの重要性が認識されており、これを表す概念の1つとして社会的フレイルが提唱された。社会的フレイルは障害発生や死亡のリスクに影響することが報告されているが、社会的フレイルの発生に影響する因子については未だ十分に検討されていない。本研究では、高齢期に経験するポジティブおよびネガティブなライフイベントが社会的健康度に及ぼす影響について、操作的に定義した社会的フレイルを用いて検討した。

    【方法】

    対象はベースライン時点で社会的フレイルのない地域高齢者 2,174名とした。社会的フレイルは、1)独居である、2)外出頻度の減少、3)友人を訪ねることがない、4)誰とも話さない日がある、5)家族や友人の役に立っている気がしない、の5項目のうち2項目以上に該当する場合と定義し、ベースライン (2011年)と4年後 (2015年)において評価した。ライフイベントは先行研究に基づき、ポジティブなイベントの有無 (「子や孫の結婚」「孫やひ孫の誕生」「新たな友人との出会い」のうち1つ以上)と、ネガティブなイベントの有無 (「経済的困難さの増大 」「配偶者の病気や怪我」「家族や友人の死」のうち1つ以上)を、ベースラインから15カ月間について評価した。

    【結果】

    多変量ロジスティック回帰分析の結果、ネガティブなライフイベントの経験 (1つ以上)は社会的フレイル発生と関連しなかった (オッズ比: 1.17、95%信頼区間: 0.83-1.59)が、ポジティブなライフイベントの経験 (1つ以上)は社会的フレイル発生のリスク低下と関連した (オッズ比: 0.48、95%信頼区間: 0.34-0.67)。さらに、ポジティブなライフイベントと社会的フレイルとの関連は、同期間にネガティブなイベントも経験した対象者 (1,059名)に限定した感度分析においても保たれた (オッズ比: 0.55、95%信頼区間: 0.34-0.88)。

    【考察】

    ポジティブなライフイベントは社会的フレイル発生に保護的に働く可能性があり、社会的健康度の維持向上に向けた戦略立案に有用な知見が得られたと考えられる。一方、本研究ではネガティブなイベントは社会的フレイルと関連しなかったが、先行研究では社会的孤立や孤独感との関連が報告されており、今後は個々のライフイベントの内容や社会的健康度の評価指標の違いを加味した追加検証が必要である。

    【倫理的配慮】

    本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員 会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。

  • 隅井 太亮, 藤田 直也
    原稿種別: 予防OS6
    セッションID: YOS-06-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    社会的フレイルは外出や社会的交流の減少を中心としたもので身体的・精神心理的要素に先行して起こり予防の重要性が示されている。しかし、定義や判断基準において未だ十分なコンセンサスが得られていないとされ、十分な検討がなされているとは言えない。今回、NPO法人Ubdobeの介護予防事業へ専門職アドバイザーとして参画し、高齢者と大学生、専門職など多世代で交流する地域実践活動を行ったので報告する。

    【方法】

    I 介護予防事業の内容 2022年9月~2023年3月に、岡山県総社市にて実施。 対象①:地域在住高齢者3名 (地域包括センターから紹介の高齢者1名・地域で声をかけて参加した高齢者2名)。そこへボランティア募集で集まった近隣大学の学生が高齢者の興味・嗜好に合わせて一緒に活動することで、心身への変化に影響するのかを検証した。大学生が、地域高齢者宅へ実際に訪問し農業体験や、興味のあるテーマでの意見交換会などを行った。 対象②:同市社協と個人からの紹介で2つの地域サロン。大学生に介護予防の講義を行い、学生達で考案した企画を持ってメンバーとの交流を行った。 II 理学療法士の活動 大学生に対して介護予防の講義を行い、社会的フレイルを学んだうえで活動してもらった。また、地域高齢者1名 (80歳代・男性:以下A氏)への訪問に合わせて同行し10月と1月に介護予防事業評価ツールE-SASを用いて評価を実施した。

    【結果】

    対象①のA氏は、初回評価より、「ころばない自信」の項目で低下がみられ、身体機能低下の自覚とともに趣味の農業への意欲低下の発言もあった。最終評価では、E-SASの点数に変化なく維持できている結果となり、大学生と交流することで「会いにきてくれる事でやらなきゃと前向きになれる」と発言があった。対象②では、大学生との活動を通して「若い方が入ると雰囲気が変わり高齢者には良い刺激になった。」などの前向きな声が聞かれた。

    【考察】

    理学療法士の役割は、介護予防事業における効果検証と、介護 予防の知識・視点を普及することにあると考える。本事業により、地域高齢者の社会的なつながりの維持、意欲・活動性低下の予防、また、サロンでの運営のマンネリ化や継続面といった地域課題解決の一助となる可能性を得た。今回の課題としては、まだ活動例が少なく検討に不十分であった。2023年4月以降も、同地域にて活動を継続し、社会的フレイルに対する効果検証を取組んでいく。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    各事業開始時には、研究目的、研究方法の説明及び研究協力の依頼を書面または口頭で行った。また、研究協力は任意であること、拒否によって不利益を被らないこと、個人情報の保護について書面または口頭により説明し、書面にて同意を得た。

  • 谷出 敦子 , 清野 諭 , 横山 友里 , 小島 みさお , 倉岡 正高 , 植田 拓也 , 森 裕樹 , 秦 俊貴 , 山中 信 , 藤 ...
    原稿種別: 予防OS6
    セッションID: YOS-06-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    高齢者の社会参加は、身体・認知機能、精神的健康に有効であ ることが報告されている。加えて、高齢者では地域レベルの要因が個人の身体活動や認知症発症と関連することが示されているが、精神的健康との関連はよく分かっていない。本研究では、地域レベルの社会参加割合と高齢者個人の精神的健康の関連を検討することを目的とした。

    【方法】

    2021年11月に、東京都A区に在住する65歳以上で要介護認定を受けていない全ての住民75,343人を対象に実施された郵送 調査データを用いた。回答者51,741人のうち、社会参加と精神的健康に欠損のない45,770人 (男性20,093人、女性25,677人、平均年齢75.7±6.8歳)を解析対象とした。社会参加は、ボランティア活動、スポーツ活動、趣味活動、学習・教養サークル、通いの場、シニアクラブ、町内会・自治会のうち、いずれかのグループに月に1回以上参加を「社会参加あり」、月に1回未満を「社会参加なし」とした。精神的健康は、WHO-5精神健康状態表簡易版を用いて、15点満点中8点以上を精神的健康 「良好」、7点以下を「不良」とした。地域レベルの社会参加割合は、115の町丁目ごとに算出した。説明変数は、地域レベルの社会参加割合 (10%単位)、個人レベルの社会参加の有無、地域レベル×個人レベルの社会参加 (クロスレベル交互作用)とし、年齢、性、家族構成、教育期間、所得区分、BMI区分、就労、フレイル、疾患数を調整したマルチレベルポアソン回帰分析を行った。

    【結果】

    対象者のうち、社会参加ありは16,477人 (36.0%)、精神的健康不良は15,505人 (33.7%)であった。社会参加割合は、19.2 ‐61.1%の地域差があった。調整済み有病割合比 (95%信頼区間)は、地域レベルの社会参加割合 (10%増加ごと)が0.95 (0.91-0.99)、個人レベルの社会参加が0.67 (0.65-0.70)、地域レベルと個人レベルの交互作用は1.00 (0.92-1.09)であった。

    【考察】

    本結果より、社会参加割合が10%高い地域に住む高齢者は、個人の社会参加の有無にかかわらず、精神的健康不良が5%低いことが明らかとなった。地域全体の社会参加が増えることは、在住高齢者の良好な精神的健康に関連することが確認され、生活圏域レベルまたは自治体レベルでの社会参加の促進の重要性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究では、当該自治体が実態把握・分析の目的で収集したデータを二次利用した。よって、本研究で使用する情報は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の「既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合」に該当し、インフォームド・コンセントを受けることを要しない。また、本研究の実施については、当該自治体および東京都健康長寿医療センターの研究倫理委員会の承認を得ている。

  • 井上 優, 倉地 洋輔, 加藤 剛平, 平上 尚吾, 井上 栄子
    原稿種別: 予防OS6
    セッションID: YOS-06-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    COVID-19の流行により、これまで可能で あった社会参加や身体機能維持のための活動機会が制限され、身体的・心理的な機能低下が深刻な問題として顕在化している。一方、そのような状況下でも社会活動を行い、身体機能を維持できている者もいる。これまで地域在住高齢者における実情を把握する調査はいくつかなされているものの、COVID-19流行後の社会活動に関連する環境要因について、地域による違いを加味した検討は十分なされていない。そこで本研究では、国内 2地点の地域在住高齢者を対象に、社会活動と環境要因の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    本研究では地域在住高齢者を対象に無記名式アンケー ト調査を実施した。対象者は、岡山県倉敷市社会福祉協議会または東京都町田市地域包括支援センターを通じて回答に同意を得た通いの場参加者とした。質問紙は基本情報、心理的要因、環境要因から構成した。COVID-19流行後の心理的変化につい て、主観的体力低下・COVID-19感染への不安を尋ね、環境要因として家族構成やLubben Social Network Scale-6への回答を求めた。社会活動の程度は、社会関連性指標を用いて調査した。社会活動と環境要因の関連性は、社会関連性指標スコアを従属変数、基本情報、心理・環境要因を独立変数として、地域別に重回帰分析 (ステップワイズ法)を実施した。

    【結果】

    アンケート調査の結果、岡山県倉敷市52名 (77.9± 7.0歳、女性42名)、東京都町田市93名 (76.9±5.3歳、女性74名)から回答を得た。主観的体力低下を感じた者は倉敷38.5%・町田35.5%、COVID-19への感染の不安を抱える者は50.0%・ 58.1%であった。世帯構成として単身世帯は19.2%・18.3%、二人世帯は48.1%・49.5%、3人以上の世帯は32.7%・32.3%と類似した構成であった。年齢や性別を調整した重回帰分析を実施した結果、両地域に共通して、「困ったときに助けてくれる友人の数」が社会関連性指標スコアと有意に関連した。

    【考察・結論】

    生活する地域によって高齢者を取り巻く様々な環境が異なることが考えられる。しかし地域が異なっても、支援を得られる友人の数は、COVID-19流行後の社会活動に関連する要因であることが示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究の目的と、無記名式アンケートで個人情報を含まず、不参加となっても不利益を被らないことを書面を用いて説明し、同意を得たうえで実施した。

  • 植田 拓也
    原稿種別: 予防OS7
    セッションID: YOS-07-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    令和元年度の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ」において,高齢者の価値観や趣向・ライフスタイルが多様化を背景に,通いの場は「行政が介護保険による財政的支援を行っているものに限らない多様な場が含まれるもの」として,行政による通いの場の把握の範囲の拡大が明文化された.一方で,行政が把握し,支援・連携すべき通いの場の 概念や類型は明確でないことが課題であった.これを踏まえ,令和2年度に東京都健康長寿医療センター研究所から研究所版類型が,令和3年度に厚生労働省から厚労省版類型が発信された.本発表では,通いの場の概念と類型及び活用を紹介する.

    【方法】

    令和2年度に我々は通いの場の概念整理検討委員会を設置し,概念として「通いの場とは,高齢者をはじめ地域住民が,他者とのつながりの中で主体的に取り組む,介護予防やフレイル予防に資する月1回以上の多様な活動の場・機会のことをいう」と定義した.類型は,住民の主体的な「運営」を前提として,3つのタイプ (タイプⅠ:趣味活動,就労的活動,ボランティア活動の場等の「共通の生きがい・楽しみを主目的」,タイプⅡ:住民組織が運営するサロン,老人クラブ等の「交流 (孤立予防)を主目的」,タイプⅢ:住民組織が運営する体操グループ活動等の「心身機能の維持・向上等を主目的」)に分類し,必要な通いの場の戦略策定への活用が目的である.一方,令和3年度に厚生労働省から発出された類型は,『運営主体,場所,活動内容』の3つの視点を踏まえ,既存の通いの場の把握の推進を目的としている.

    【結果】

    この2つの類型は,相補的に活用することが可能である.まず,厚生労働省版の類型で,通いの場の総数を把握,地域の通いの場の多様性を確認し,その上で,主目的別での類型ごとの多寡を把握する.加えて,地域の生活課題や健康課題,ニーズを踏まえて,どの類型の通いの場を戦略的に立ち上げていくのかを系統的に考えていくことにつながる.また,主目的による研究所版類型を活用することで,通いの場の効果評価に向けたアウトカム指標の選定にも役立つと考えられる.

    【結論】

    通いの場の概念と類型の活用方法について紹介した.アフターコロナにおける通いの場の推進に向けて,改めて PDCAサイクルに沿った,地域診断,効果評価による通いの場推進が重要であり,本発表が一助になればと考える.

    【倫理的配慮】

    本発表は、公開データに基づく報告であるため、倫理審査の対象とならない。

  • 清野 諭
    原稿種別: 予防OS7
    セッションID: YOS-07-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【はじめに、目的】

    令和元年に公表された「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ」では、一般介護予防事業 (通いの場)等をPDCAサイクルに沿って推進することが重要視されている。しかし、その具体的な推進方策や、標準化された評価の枠組みは明示されていなかった。そこで、令和2年度老人健康増進等事業および令和3~4年度厚生労働科学研究 (代表:藤原佳典)を通して、「通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って評価するための枠組み」が提案された。本発表では、本枠組みの概要を紹介する。

    【方法】

    枠組みの作成に先立ち、ワーキング・グループ (WG) が先行研究・評価指標をナラティブ・レビューし、枠組みの構築に活用可能な評価モデルや指標を抽出した。これらをもとに WGが作成した枠組み案について、研究分担者らによる検討委員会で協議し、WGが修正するという手順が繰り返された。令和2年度内にWG検討会は計15回、検討委員会は計4回、それぞれ開催された。これらの手順を経て作成した枠組み案について、 29自治体の担当者から意見が聴取され、編集者を交えて構成や文言が再度修正された。

    【結果】

    本枠組みは、以下の6つの評価局面から構成された。 1)「理解」:介護予防・フレイル予防の要点や通いの場の必要性について理解する局面、2)「調査・計画」:地域アセスメントによって地域の強み・課題を明らかにし、課題解決の具体的な計画を立案する局面、3)「体制・連携」:課題解決に必要となる行政内外の組織と連携し、体制を構築する局面、4)「実施 」:課題解決に必要な取組を実施する局面、5)「評価」:取組による直接の成果 (アウトプット)と効果 (アウトカム)を確認する局面、6)「調整・改善」:評価結果をもとに計画や体制、取組内容、目標を再検討する局面。各局面において、自治体担当者が留意することが望ましいと考えられる計10のコア項目とそれに付随する小項目が「ACT-RECIPE (アクトレシピ)」として提示された。

    【結論】

    本枠組み (ACT-RECIPE)の概要を紹介した。すでに公開済みの「PDCAサイクルに沿った通いの場の取組を推進するための手引き (自治体向け)」では、ACT-RECIPEの概要についても解説されている。本枠組みや手引きの活用によって、 PDCAサイクルに沿った通いの場等の取組や効果評価が、より一層進むことを期待する。

  • 駒井 敦, 岡持 利亘
    原稿種別: 予防OS7
    セッションID: YOS-07-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【はじめに】

    埼玉県では、平成26年度から「地域リハビリテーション支援体制」の整備および、「地域づくりによる介護予防」を推進してきた。平成28年度からは、「埼玉県地域包括ケアシステムモデル事業」により、介護予防や地域ケア個別会議による自立促進と、生活支援体制整備を進めてきた。結果、全市町村 (63市町村)で、地域の特色を活かしながら介護予防に取組中である。今回、通いの場の効果評価と、市町村内の多事業連携に向けた取り組みを報告する。

    【通いの場の効果:個人・グループ・市町村】

    個人への効果:①自主グループ活動へ参加することで、体力測定結果の向上 (3ヶ月間の前後評価)、②心身の変化に対するアンケートから、「連続歩行可能時間が1時間以上可能となった、生活に張りが出た」などの変化を感じている人が多い。 グループや市町村全体への効果:①グループ参加者と一般市民を比較した際に、自主グループ参加者の方が主観的幸福感や健康感で、より高い結果を示した。②介護予防サポーターや自主グループのフォローアップを行う中で、「地域の課題や取組について意見交換・提案される」など、能動的な行動変容も見られた。

    【多事業連携に向けて】

    活動の経過から、住民や関係者より以下の意見が示された。 ①参加者には虚弱化が進んでいる方もいる、②気になる人を地域包括支援センターに相談している、③通所型サービスC事業 (以下、通所C)があり、通いの場との関わりが気になる、④地域の様々な活動とつながるにはどうしたらよいか (通所C利用者 46名中、16名がつながった)、⑤本人のしたい事を叶えるために私達は何ができるか? これらから、市民にとって、より効果的な介護予防事業とするために、様々な地域資源 (多事業)の関係者と、対話や連携を始めた市町村が増えてきた。

    【まとめ・今後の展望】

    通いの場の効果評価は、心身機能の変化、運動・外出・社会 参加の頻度、健康感・幸福感の変化など、個人・グループ・市町村それぞれのレベルで行い、その結果を関係者と共有し、継続的に行うことが必要と考える。また、介護予防の取り組みをきっかけに、周辺の住民・関係者の共通認識づくりや、連動・連携につながるプロセスも、「地域づくりによる介護予防」の効果ではないかと考える。今後も個人・グループへの効果および、市町村全体への効果に対する議論 (評価)を行っていきたい。

    【倫理的配慮】

    本報告はヘルシンキ宣言に基づき実施した。また、データは匿名化処理を行い、個人情報保護に十分配慮して管理した。

予防OS7
  • 倉地 洋輔 , 中澤 幹夫 , 天野 樹 , 添田 結美子 , 濱田 守人 , 植田 拓也
    原稿種別: 予防OS7
    セッションID: YOS-07-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    我が国における急速に進む高齢化は喫緊の課題であり、東京都町田市 (人口約40万人)も例外ではない.町田市の高齢化率は2020年に26.9%であったものが2025年には約28%、2040 年には約37%に達すると予測されている.また、2010年から 2019年で要支援要介護認定者数は7,500人増加し、今後も高齢者人口の増加に伴いその数は増え続けることから、介護保険制度を持続可能なものとするためにもその対策は急務である.この対策の一環として、町田市では2016年から地域づくりによ る介護予防事業を開始した.この事業では「高齢者の心身機能の維持・改善といきいきと安心して暮らせる町づくり」を目的とし、住民主体による週1回開催の体操をきっかけとした通いの場づくりを推進してきた.取り組んできた通いの場の効果を検証するため、通いの場参加者の5年間の要介護(要支援含む)新規認定 (以下,新規認定)状況調査を行なうことにした.

    【方法】

    対象は、町田市の高齢女性のうち2016年時点の要介 護(要支援含む)未認定者43,975名とした.分析は全高齢女性と通いの場の継続参加者(587名)における2016年度~2021年度の5年間の新規認定率を比較した.なお、通いの場の参加者は、 ①月1回以上の通いの場の参加者、②月1回以上の体操の通いの場参加者、③週に1回以上の体操の通いの場の参加者の3つに分類し、平成30年に東京都介護予防推進支援センターが発行した効果検証シートを活用し分析した.

    【結果】

    5年後の年齢調整新規認定率は、高齢女性全体で 16.4%に対し、月1回以上の通いの場参加者で11.0%、月1回以上の体操の通いの場参加者で10.9%、週に1回以上の体操の通いの場の参加者で7.8%であり、高齢者全体に比較し有意に低値を示した.

    【考察】

    通いの場の参加は、5年後の新規認定を抑制する可能性があり、特に週1回以上の体操の通いの場への参加の新規認定の抑制効果が高いことが明らかとなった.一方、本発表では通いの場の脱落者についての言及はできていないため、今後の検討課題である.年齢調整新規認定率は通いの場への参加の意義を示すとともに、介護給付費の抑制効果を示すことにもつながるため行政事業の評価指標として非常に重要なものとなる.データを追跡する作業は大変であるが行政職と協力してデータ分析をすることが望まれる.

    【倫理的配慮】

    本発表の内容については、関係者に口頭で説明し同意を得た。

  • 根本 裕太
    原稿種別: 予防OS7
    セッションID: YOS-07-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    地域住民が定期的に集まり多様な活動を行う通いの場は、介護予防・フレイル予防の柱である。しかし、住民調査に基づく事業の効果検証や事業改善の取り組みについての報告は非常に少ない。そこで本研究では、多時点で実施した住民調査のデータを用いて、通いの場の効果を検証するとともに、通いの場事業における課題について検討した事例を紹介する。

    【方法】

    調査対象地区は山梨県都留市である (人口29,971名,高齢化率 29.6%)。都留市では、「いーばしょ」という名称の住民主体 の通いの場が市内に35ヶ所ある。効果検証および通いの場不参加者の特徴を把握するため、市内の全ての自立高齢者を対象に 2016年・2018年・2019年・2022年に郵送調査を実施した。通いの場に月1回以上参加している者を参加者とし、①参加者と不参加者のフレイル発生頻度の比較、②不参加者の特徴 (基本属性、健康状態、健康行動、社会的要因)について検討した。

    【結果】

    2016年・2022年調査の両方に回答した3,705名のうち、9.4% が通いの場に月1回以上参加していた。通いの場の効果において、一般化推定方程式の結果、通いの場参加者の方が不参加者よりもフレイル発生リスクが20%低いことが示された (OR [95% CI], 0.80 [0.64, 0.99])。通いの場不参加者の特徴について、修正ポアソン回帰分析を実施した結果、身体不活動者、独居者、生活機能低下者は通いの場に参加しにくく、歩きやすい場所が多い地区に住む者、運動に適した公園や歩道が多い地区に住む者、多様な社会的ネットワークを持つ者では通いの場に参加しやすいことが示唆された。

    【考察】

    通いの場に参加している者ではフレイル発生リスクを低減でき る可能性が示唆された。しかし、参加者は全体の9.4%と低く、普及において課題があると考えられた。通いの場不参加者の特徴としては、心身機能低下者、通いの場に通うことが困難な者、他者とのつながりが希薄な者への支援が必要であると考えられた。これらの結果に基づき、都留市では、①移動支援事業の導入、②心身機能低下者対応マニュアルの作成、③他課連携により地域活動促進に取り組むこととなった。

    【結論】

    住民調査に基づく通いの場の効果評価および事業改善は、通いの場による介護予防効果を高めるとともに、運営主体である住民のモチベーション維持にもつながるため、行政および住民にとって大きな意義を持つと考えられる。

    【倫理的配慮】

    埼玉県立大学倫理員会の承認を得た。

予防OS8
  • 清水 裕子
    原稿種別: 予防OS8
    セッションID: YOS-08-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    健康づくりは情報提供だけでは効果がない.さらにハイリスクアプローチとして健診結果などから高リスク者を医療機関につないでも行動変容は十分でないこともわかってきた.行動経済学的見地から,効果的な健康づくりには,「自然とやりたくなる環境づくり」,「ヒトとのつながり」,「効果の見える化」が必要だと考えられる. そこで本市は「みんなで進める健康寿命日本一のまちづくり」をスローガンに掲げ,“市民力を生かした健康づくり”を展開している.平成28年度からは,健康づくり,介護予防,社会参加の観点から,ICT活動量計を用いた健康ポイント事業を実施している.

    【方法】

    令和4年度の健康ポイントには,40歳以上の約3,400人が参加している.参加者にはICT付活動量計を無償貸与し,市内27か所に設置した端末にかざすことで歩数,早歩き歩数 (3Mets以上の歩数)等がクラウドに記録される.14か所には体組成計,12か所には血圧計が接続されており,参加者は自由に計測し,自動で記録が残せる. すでに8年目に入っており,参加者は当初からの活動度や血圧 などの経年変化を端末から確認ができる.本システムの特徴は,かざすことでこれまでの歩数や血圧などの見える化を進め,楽しく行動変容を促す点が挙げられる. 事業参加者を中心に地域の健康づくりリーダーの育成講座を実施し,各地域でNordicウォーキング(NW)のサークルを立ち上げ約130名が活動し,地域コミュニティと健康づくり活動を推進している.

    【結果】

    本事業の成果として,歩数,活動量の増加が見られ, 筋力アップにつながり,転倒リスク,フレイルの予防を実現した.コロナ禍で活動量は若干減ったが,歩数は維持されていた.参加者の継続率は9割と非常に高い参加率を維持し,医療費削減効果として事業開始7年目で国保は約55,000円/人であった.正しく歩くためのNWサークルは,市民が運営,虚弱高齢者も 受け入れ活動している.NW全国大会を行政主導から市民主体で実施できるよう行政が応援し,令和4年度で第7回実施.日本一大きな大会に発展した.

    【考察】

    【結論】

    本事業は,ICTを用いた歩行,活動状況を把握できるシステムを導入したことで参加者の日常生活機能の変化や認知症リスクの推定を実現できた.科学的根拠のある健康支援を行うこと,市民が楽しく行動変容を促せる街づくりに寄与できたと考える.

    【倫理的配慮】

    志木市役所

  • 山下 知子, 山下 和彦
    原稿種別: 予防OS8
    セッションID: YOS-08-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに・目的】

    高齢者の転倒骨折が課題である.転倒骨折 は要介護要因であるため,転倒予防の教室等が行われているが,定量的な評価は十分ではない.一方,いつまでも自分の足で歩き続けるためには足部と足爪が重要となるが,外反母趾や巻き爪など問題を抱えている高齢者が多く存在する.足部や足爪に問題があると,足指の機能低下により身体機能の低下および転倒リスクが高まることが報告されている.そこで本研究では, A市の病院,地域包括支援センター,高齢者施設と連携し足部 ケアを行うことによる身体機能の改善および行動の変化を定量的な観点から調査することを目的とした.

    【方法】

    対象者は身体機能が低下した要支援,要介護者を含む高齢者74名 (83.0±7.5歳)である.計測は足部ケア介入前と介入後に実施した.計測項目は転倒予防の観点から,下肢筋力 (足指力,膝間力)と足圧分布,重心動揺 (CoPの面積,前後方向の動揺範囲 (AP (ML))等)とした.また,介入前後の足部や膝の痛み,心理的変化を捉えるためのアンケート調査も実施した.

    【結果】

    介入により巻き爪などの足爪の状態は改善した.その結果,下肢筋力は1.1~1.2倍向上し,転倒リスクの低下が確認できた.足圧分布では足指の床面への接地により,前後方向の動揺範囲が減少し,バランスのよい立ち方への変化が確認できた.一方,セルフケアの実施,友人との趣味活動,ボランティア活動など積極的な社会参加が見受けられ,気持ちの面での変化も認められた.

    【考察・結論】

    足部に関心を持ちセルフケアに取り組んだ結果,足指の可動域の向上,気持ちが前向きに変化し,下肢筋力や足 圧分布の改善につながった.さらに,足部の痛みや足爪の見た目の改善により,自らも社会の役に立ちたいなど気持ちの変化が表れた.また,計測デバイスを用いることで,転倒予防の効果を定量的に示すことできた.以上より,足部ケアは身体機能の改善および歩行機能の向上に有効であり,気持ちの面でも前向きな行動変容を促すことに有効であることが示唆された.

    【倫理的配慮】

    本研究は,東都大学の研究倫理審査委員会の承認を得て行った (承認番号:R0309).対象者は実験開始前に説明を受け,同意書に署名を行った.

  • 山下 和彦
    原稿種別: 予防OS8
    セッションID: YOS-08-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    超高齢社会における健康づくりが社会的課題である.高齢化率は2022年は29.1%であり,2040年には35.3%, 85歳以上人口は1,024万人と予測される.あわせて15-64歳の生産年齢人口は2040年までに20%(約1,200万人)減少する.85歳以上の要介護認定率は現状で57.8%である.すなわち,あと 17年間で要介護高齢者は急増する一方,ケアや支援する人財は急減する.使えるコストも減少傾向にある. 要介護リスクを高め,日常生活機能を低下させる主要因は歩行機能の低下である.歩行機能が低下する高齢者は,①下肢筋力低下,②バランス機能低下,③外反母趾等の足部変形,④巻き爪などの足爪異常,⑤転倒骨折リスクが挙げられる. 積極的な歩行機能の維持・向上の支援には足部の健康を守る必要がある.しかし,足部はほとんど観察されておらず,効果的な支援も行われていない.

    【方法】

    本研究では,転倒予防を目指し様々な装置を開発してきた.一例としてスマートフォンを用いた足部骨格3D計測を実現した.精度は1.7mm,角度は0.1°であり,扁平足や外反母趾リスクの評価を行えるシステムを開発した. 本システムを用いて592名(64.3±11.9歳)の足部骨格の特徴量を計測した.着目点は,舟状骨高,舟状骨の横方向のずれ,足部骨格のずれ,横アーチ幅と高さ,拇趾先端-第1中足骨頭-踵(拇指角)等である.

    【結果・考察】

    成果の一例として,変形性膝関節症(膝OA)や膝 の痛みがある対象者は,舟状骨の横方向のずれ,足部骨格のずれが大きいことが明らかになった.拇指角は舟状骨高に加えて,舟状骨の横方向のずれ,横アーチ幅とも関連があった. 舟状骨の横方向のずれは第1足根中足関節(第1TMT関節)の不安定性を引き起こし,さらに,横アーチの扁平化(開張足)は第1中足骨頭の回転を誘発することの2つの要因が外反母趾の発生リスクを高める可能性が推察された.

    【結論】

    スマートフォンによる足部骨格3D計測は,外反母趾や膝OAのリスク予測を実現でき,効果的な健康支援,リハビリの実践により予防の実践につながる可能性がある.さらに,地域で経時的な計測が簡便に実施できるため,運動指導の効果を見える化できると考えられる.現状・今後の大人数の支援が必要な高齢者に対し,少人数の専門職が健康づくりに寄与するスキームが求められる.

    【倫理的配慮】

    東都大学の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号R0309)

予防OS9
  • 肥田 光正 , 今岡 真和 , 中村 美砂 , 久保 峰鳴 , 田崎 史江 , 堺 景子 , 中尾 英俊 , 長谷川 歩菜 , 山坂 宏太 ...
    原稿種別: 予防OS9
    セッションID: YOS-09-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    慢性痛 (CP)患者の身体活動量の低下は機能障害や能力障害の増悪に関連しているため,身体活動量増大のための運動プログラムが勧告されている.しかし,身体活動量が低下しているCP保有者の原因は十分に明らかにされていない.そこで本研究は, CPを有する地域在住高齢者のうち身体活動量低下の関連因子を抽出するとともに,分析に人工知能分析を加えてその精度を検証した.

    【方法】

    対象は70歳以上でCPがあり,ADLが自立している者89名 (77.4 ±5.0歳)である.CPは国際疼痛学会の定義を引用し,3ヶ月以上継続する痛みを有する者をCPありとした.身体活動量の評価には国際標準化身体活動質問紙環境尺度日本語短縮版 (IPAQ-SF)を用いた.また,参加者の測定データから,CPの関連因子である年齢,性別,BMI,The Central Sensitization Inventory-9 (CSI-9),Tampa Scale for Kinesiophobia Japanese version (TSK-11),握力,歩行速度,Athens Insomnia Scale,変形性関節症の既往や転倒経験を分析に用いた.分析のため, IPAQ-SFの結果から,低身体活動群と中等度あるいは高強度活動群の2群に分け群間比較し,有意差あるいは有意な傾向のある変数を独立変数として階層性ロジスティック回帰分析を (LR)実施した.人工知能を用いた分析は多層パーセプトロン分析 (MLP)を用いた.各変数はLRと同様の変数を用い重要度分析を実施した.LRとMLPの精度の比較は,正解率,受信者動作特性曲線から算出する曲線下面積 (AUC),感度,F1スコアを用いた.

    【結果】

    LRの結果,CPの低身体活動は転倒経験 (オッズ比5.98)が有意に関連していた.一方,MLPの結果,CPの身体活動量低下の関連因子として,重要度が高いものとしてBMI,転倒経験, CSI-9,TSK-11が順に抽出された.LRとMLPの精度の比較では,正解率 (81.8% VS 84.6%),AUC (0.75 VS 0.89), 感度 (0.67 VS 0.87), 特異度(0.84 VS 0.78),F-1 score (0.79 VS 0.87) であっ た.

    【考察】

    CPを有する地域在住高齢者の身体活動低下に関連する因子は転倒経験であった.よって,身体活動レベルを改善させるために転倒予防の種々の方策が重要であると考えられた.また人工知能による分析はLRよりも予測モデルの精度が優れていた.今後の研究は,より良好な精度を有するモデルを構築するため複数の解析を並行して実施することが有用であると考えられた.

    【倫理的配慮】

    本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学倫理審査委員会から承認(OKRU30-A016)されており,参加者には書面にてインフォームドコンセントを実施した.

  • 芦澤 遼太 , 本田 浩也 , 武 昂樹 , 吉澤 康平 , 亀山 裕斗 , 山下 翔太 , 若林 稔幸 , 吉本 好延
    原稿種別: 予防OS9
    セッションID: YOS-09-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    軽症脳梗塞患者の再発予防として座位行動(Sedentary Behavior :SB)を減少する必要がある.我々は軽症脳梗塞患者に対して SBの減少を促すアプローチのランダム化比較試験を行い,SBの減少を促すアプローチの有効性を示唆した.しかし我々の研究では,SBが減少することで脳卒中の再発が予防できるか否かは明らかにしていない.先行研究ではSBが多くなることで脳卒中発症リスクが高くなることが示されているが,脳梗塞後のSBが脳卒中の再発に影響するかについては明らかではない.本研究の目的は軽症脳梗塞患者の退院後のSBが脳卒中再発に影響するか否かを明らかにすることであった.

    【方法】

    研究デザインは症例対照研究であった.本研究は過去の介入試験に参加し,研究を完遂したNational Institute of Health Stroke Scale(NIHSS) 6点未満の軽症脳梗塞患者73名を対象とした.本研究のアウトカムは,脳卒中による再発の有無であり,過去の研究終了後(2020年6月~2021年12月)から,2022年12月31日までの再発の有無を後方視的に調査した.本研究の曝露因子は,急性期病院退院6か月後のSBと身体活動量であった.統計解析は,まず再発群と非再発群の2群間を比較し,次に従属変数を脳卒中再発の有無(再発無,0;再発有,1),独立変数を SB,軽強度活動(Light intensity physical activity:LPA),中高強度活動,歩数として単変量および多変量Cox比例ハザード分析を行った.また,カットオフ値を算出した上で,Kaplan-Meier曲線を描出し,Log-Rank検定を用いて2群間の再発率を比較した.

    【結果】

    7名が脳卒中を再発し(再発率9.5%),全対象者の平均追跡期間は792.4日であった.再発群は非再発群と比較してSBが多く(再発群:69.0%,非再発群:53.1%,p=0.005),LPAが少ない結果であった.単変量および多変量Cox比例ハザード分析において SBとLPAは再発に影響する因子として抽出された(多変量;SB :ハザード比:1.096,95%信頼区間:1.024-1.172,p値 =0.008).SBのカットオフ値は64.4%であり,SB64.4%未満群は64.4%以上群に比べ有意に脳卒中の再発率が低かった (p< 0.001).

    【考察】

    SBが脳卒中の再発因子である動脈硬化や血圧などに影響することから本結果は妥当であると考えられる.

    【結論】

    軽症脳梗塞患者の退院6か月後のSBが脳卒中の再発に影響することが示され,再発予防の目標値として,SBを約64%まで減少する必要性が示唆された.

    【倫理的配慮】

    本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいて実施され,聖隷三方原病院と聖隷クリストファー大学の倫理委員会の承認 を得た(22-59).オプトアウトにて対象者の同意を得た.過去の 我々の研究についても聖隷三方原病院と聖隷クリストファー大学の倫理委員会の承認を得て(19-46,19057),University hospital Medical Information Network(UMIN)に事前に登録した(登録番号:UMIN000031461).

  • 吉田 啓志, 井戸田 弦, 近藤 駿, 増田 裕里, 浜岡 克伺, 淺枝 正浩
    原稿種別: 予防OS9
    セッションID: YOS-09-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    入院患者の身体活動促進は、日常生活動作の向上や長期的な健 康効果に重要である。また近年、ヘルスリテラシーが様々な健康効果の重要な決定要因として示されてきているが、身体活動量とヘルスリテラシーの関連については明らかではない。さらに身体活動促進には、運動継続に関する自己効力感である運動セルフエフィカシー (運動SE)が重要な要因として考えられるが、身体活動量と運動SEの関連についても明らかではない。 そこで本研究では回復期病棟入院患者の身体活動量とヘルスリテラシーおよび運動SEの関連について検討することを目的とした。

    【方法】

    対象は当院回復期病棟から退院した患者とした。方法は、退院時に年齢、性別、Functional Ambulation Categories (FAC)、身体活動量、ヘルスリテラシー、運動SEを評価した。身体活動量は、活動量計を用いて強度別活動時間 (座位行動:1.5METs以下、軽強度活動:1.6~2.9METs、中高強度活動:3.0METs以上)を測定した。ヘルスリテラシーは、Health Literacy Scale-14 (HLS-14)を用いて包括的ヘルスリテラシーを評価した。運動SEは、運動SE尺度を用いて定期的な運動実施に対する自己 効力感を評価した。 統計解析は、身体活動量とヘルスリテラシーおよび運動SEの関連について検討するために、各強度別活動時間を従属変数、年齢、性別、FAC、HLS-14、運動SE尺度を独立変数とした強制 投入法による重回帰分析を行った。有意水準は5%に設定した。

    【結果】

    解析対象者は49名であり、平均年齢78.8歳、女性33名であった。重回帰分析の結果、座位行動が従属変数の場合、運動SE尺度 (β=-0.312、p=0.032)と性別 (β=-0.464、p=0.001)が有意な関連要因として抽出された (R2=0.337)。また軽強度活動が従属変数の場合も、運動SE尺度 (β=0.326、p=0.022)と性別 ( β=0.513、p=<0.001)が有意な関連要因として抽出された (R2=0.368)。中高強度活動が従属変数の場合は、年齢 (β =-0.494、p=0.006)が有意な関連要因として抽出された (R2=0.304)。HLS-14は各強度別活動時間の有意な関連要因として抽出されなかった。

    【考察】

    回復期病棟入院患者の身体活動量とヘルスリテラシーおよび運動SEの関連について検討した。身体活動量とヘルスリテラシーの詳細な関連性についての検討は不十分であったが、運動SEに着目した介入の検討により身体活動は促進される可能性が考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は千里中央病院倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号:2022-12)。また、ヘルシンキ宣言に従って、対象者には研究の趣旨について説明を行い、同意を得た。

  • 木村 祐紀 , 古谷 英孝 , 山下 耕平 , 柏木 秀彦 , 渡邉 英憲 , 三枝 洋喜 , 小島 厳 , 寺尾 友佑 , 木田 亮輔 , ...
    原稿種別: 予防OS9
    セッションID: YOS-09-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    本研究の目的は,心疾患患者における自己効力感と運動耐容能の組み合わせが身体活動量に及ぼす影響を明らかにすることとした.

    【方法】

    研究デザインは横断研究とした.対象は,当院の外来心臓リハビリテーションを実施している心疾患患者とした.除外基準は,歩行困難な者,医師より運動制限の指示がある者,骨関節疾患を有する者,指示理解が困難な者とした.アウトカムは、 1日あたりの歩数とした.活動量計 (Fitbit社)を1週間装着し,1日あたりの平均歩数を算出した.要因は,6MWDおよび自己効力感の良好・不良の組み合わせによる4群 (Group1: 6MWD不 良・自己効力感不良,Group2: 6MWD良好・自己効力感不良, Group3: 6MWD不良・自己効力感良好,Group4: 6MWD良好・自己効力感良好)とした.統計解析としては,前述の4群間で身体活動量に差があるか検討するため一般線形モデルを用い,事後検定にはBonferroni法を用いた.この際,調整変数として年齢,性別,BMI,糖尿病の有無,NYHAを投入した.

    【結果】

    解析対象者は89名 (女性39名,年齢72.1±7.3歳,BMI 24.8± 4.2)であった.1日あたりの歩数は5,677.9±4,267.1歩/日,6 分間歩行距離は388.1±95.2m,自己効力感は13.3±4.0点であった.一般線形モデルの結果,1日あたりの歩数は交絡要因で調整した上でも4群間で有意な差を認め (F値=2.90,p=0.034), Group1と比較してGroup3 (p=0.018)・Group4 (p<0.001)が, Group2と比較してGroup3 (p=0.043)・Group 4 (p<0.001)が,それぞれ有意に高いことが示された.

    【結論】

    心疾患患者における身体活動量には,運動耐容能および自己効力感が関係していることが示された.つまり,運動耐容能が低値であっても,自己効力感を向上させることで身体活動量を増加させることができる可能性を示唆しており,理学療法による介入の余地があると考えられた.

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に則り,研究の目的や方法について説明を十分に行い,同意を得て実施した.

  • 山田 純也 , 三木 貴弘 , 金居 督之 , 清水 琴絵 , 作井 大介 , 萩原 悠太
    原稿種別: 予防OS9
    セッションID: YOS-09-5
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    虚血性心疾患の継続的な管理は重要であるが、その課題に対し、スマートフォンアプリを活用した疾病管理が注目されている。 本研究は、虚血性心疾患保有者を対象として、専門職によるスマートフォンアプリを用いたオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムの効果を評価することを目的とした。

    【方法】

    本研究は後方視的調査である。2018年12月~2022年10月に PREVENT社が提供する6ヶ月間のスマートフォンアプリを用いたオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムに参加した者のうち、レセプト病名に虚血性心疾患を有した者270名を対象とした。6ヶ月間のプログラムを完遂できなかった者は除外した。スマートフォンアプリを活用したオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムでは、対象者に体重や家庭血圧に加え、ウェアラブル端末 (Fitbit Inspire2)と塩分測定器 (減塩モニタ、河野ME研究所)を用いて歩数、脈拍、睡眠状態、塩分推定摂取量などをアプリに記録してもらったうえで、看護師、保健師、管理栄養士、理学療法士などの専門職が、2週間に1回の電話面談やチャットにてマンツーマンで疾病管理に関する指導を行った。アウトカムはLDLコレステロール値、サブアウトカムは、 HDLコレステロール値、中性脂肪値、HbA1c、尿酸値、平均睡眠時間、平均歩数とした。統計解析は、介入前後にて対応のあるt検定を行った。

    【結果】

    4名が除外され266名が対象となった (平均年齢:56.5歳)。終了時において、LDLコレステロール値 (開始時112.4± 34.4mg/dL、終了時103.7±30.4mg/dL) 、中性脂肪値 (開始時 161.6±96.9mg/dL、終了時138.5±77.6mg/dL)、平均歩数 ( 開始時8751.8±3814.7歩/日、終了時9880.7±4246.0歩/日)で有意な改善を認めた。一方、HDLコレステロール値 (開始時 54.3±15.1mg/dL、終了時57.1±15.6mg/dL)、HbA1c (開始時 6.7±1.2%、終了時6.4±0.9%、尿酸値 (開始時5.9± 1.3mg/dL、終了時6.1±1.3mg/dL)、平均睡眠時間 (開始時5.7 ±1.1時間、終了時5.8±1.0時間)においては有意な改善を認めなかった。

    【考察】

    虚血性心疾患保有者を対象として専門職によるスマートフォンアプリを用いたオンライン完結型生活習慣改善支援プログラムが有効である可能性が示された。今後は対照群を設けるなど更なる検討が必要である。

    【倫理的配慮】

    本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき実施され、参加者はプログラム開始時に、アプリで収集したデータを今後の研究に使用する可能性があることを明記したプライバシーポリシーに同意した。また、本研究は甲南女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:2021008)。

予防OS10
  • 布施 裕子 , 時田 幸之輔 , 小島 龍平 , 影山 幾男 , 相澤 幸夫 , 熊木 克治 , 平﨑 鋭矢
    原稿種別: 予防OS10
    セッションID: YOS-10-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【緒言】

    臨床経験の中で、疾患や重症度に関わらず腰痛を訴える患者は多いと感じる。ヒトは二足直立姿勢を獲得した中で腰椎が前彎し、腰痛の発生しやすい構造となった。胸腰椎の運動には固有背筋が関わる。固有背筋は脊髄神経後枝によって 支配され、外側枝は腸肋筋や最長筋、内側枝は横突棘筋群(半 棘筋、多裂筋、回旋筋)を支配する 。ヒトの固有背筋の構造、特に横突棘筋群は 二足直立位を獲得する過程で特殊化したと推測される。そこで四足歩行動物の構造と比較することで、ヒトの特徴を再考し、腰痛予防の理学療法を提案する。

    【方法】

    ヒト(肉眼解剖学セミナー新潟)1体1側、ニホンザル(京都大学ヒト行動進化研究センター共同利用・共同研究)1体1側の液浸標本を使用した。これらの横突棘筋群と、脊髄神経後枝内側枝を肉眼解剖学的に詳細に観察した。記録は線描画にて行った。

    【結果】

    ヒトでは、第2胸椎棘突起には直下から10個尾側までの各椎骨横突起より起始する計10本の筋束が付着した。尾側より起始した筋束ほど浅層を構成した。第3胸椎棘突起以下では、付着する筋束数は徐々に減少し、第11胸椎棘突起で最小となり 3本付着した。第12胸椎棘突起では5本筋束が付着し、以降再 び減少した。内側枝は、1つの椎骨棘突起に付着する筋束数に応じた筋枝を分岐した。内側枝の走行経路は、上位胸神経は半棘筋―多裂筋間を、下位胸神経より尾側では回旋筋の深層となった。ニホンザルの横突棘筋群は、第1胸椎棘突起に12本の筋束が付着した。より尾側で減少し、第7胸椎棘突起には3本の筋束が付着した。以降再び筋束数は増加し、第12胸椎棘突起に9本の筋束が付着した。内側枝は、1つの椎骨棘突起に付着する筋束数に応じた筋枝を分岐した。内側枝の走行経路は上位胸神経では半棘筋―多裂筋間を、下位胸神経より尾側では回旋筋の深層を走行した。

    【考察】

    腰部では、1分節の内側枝が支配する横突棘筋群に着目すると、椎骨数の違いからニホンザルよりもヒトの方が飛び越す椎骨数は少ない。ヒトでは、1分節の内側枝の分布が狭いと予測され、疼痛は局在的に発生しやすいと考えられる。その為、体幹の粗大的な運動よりも、各分節の分離運動を行う方が腰痛予防に効果的であると考えられる。

    【結論】

    ヒトの腰部は、各分節の分離運動の獲得により疼痛を予防することができる。

    【倫理的配慮】

    ヒトは、日本歯科大学新潟生命歯学部解剖学第一講座の医学教育と研究の為に供された実習体を使用した。これらの所見の使用にあたっては、日本歯科大学新潟生命歯学部解剖学第一講座、影山幾男教授の許可を得ており、「死体解剖保存法」と「医学および歯学教育のための献体に関する法律」に準拠し調査を行った。ニホンザルの使用にあたり京都大学ヒト行動進化研究センター利用・共同研究拠点専門委員会の審査を受け、承認されている。

  • 姉帯 飛高, 坂井 建雄, 市村 浩一郎
    原稿種別: 予防OS10
    セッションID: YOS-10-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【はじめに】

    大殿筋は強力な股関節伸展筋として知られ、ヒトの直立二足歩行においては大腿骨を後方牽引する重要な役割を担う。しかし解剖学の成書では、一般に大殿筋の大半の筋束は大腿骨ではなく腸脛靱帯に停止すると説明され、これは大殿筋が強力に大腿骨を牽引することと矛盾する。そこで本研究では、大殿筋の筋構造、特に停止構造を再評価し、機能解剖学的に検討した。

    【対象と方法】

    順天堂大学医学部の解剖学実習に供された解剖体25体25肢を用いて、大殿筋の筋構造を観察した。あらゆる方向から筋構造を観察するため、①大殿筋以外の全ての筋を取り外した骨盤・大腿部標本、②骨格から完全に取り外された大殿筋の筋標本を作製し、それぞれで精査した。また、筋機能の指標として、②の筋標本を用いて生理学的筋断面積 (PCSA)と筋線維長を計測した。

    【結果】

    大殿筋の上部3/4程度の筋束は、強靱な停止腱を形成していた。この停止腱は浅層上部の一部の線維が腸脛靱帯と一体化し、表面的な観察では腸脛靱帯に停止しているように見えた。しかし腱線維を注意深く追跡すると、ほとんどの線維は腸脛靱帯の深層で大腿骨の大転子の後外側を下行した後、大腿骨の殿筋粗面に停止していた。その際この停止腱は、大腿の屈筋 ・伸筋を隔てる外側大腿筋間中隔とも一体化し、その上端を構成していた。このように上部由来の停止腱、腸脛靱帯、外側大腿筋間中隔は強靱な停止腱を主体とし大腿骨に付着する密性結合組織の複合体を形成し、さらに大転子と接する部分には滑液包が見られた。一方で残りの大殿筋下部1/4の筋束は、上部由来の停止腱を含む上記複合体に直接停止していた。大殿筋上部と下部におけるPCSAの比率は、上部が76.77±4.27%、下部が 23.23±4.27%と上部が有意に大きく、また大殿筋の下部は筋線維長が有意に長かった。

    【考察】

    大殿筋の停止構造の特徴と筋機能指標から、大殿筋 上部は大腿骨に直接的かつ強力に作用して股関節の運動に大きく貢献し、下部は筋収縮能に優れ、上部の作用をサポートするものと考えられる。従来の大殿筋に関する運動学的情報は、今回明らかになった大殿筋の解剖学的特徴に基づき再解釈する必要がある。また、大殿筋上部由来の停止腱を主体とする密性結合組織複合体と滑液包の局所関係の理解は、弾発股や大転子部の滑液包炎の病態理解や障害予防に役立てられると期待される。

    【倫理的配慮】

    本研究で用いられたすべての解剖体は、生前に故人またはその家族から書面による同意を得て、医学教育および研究のために順天堂大学医学部に献体されたものである。本研究のプロトコルは、順天堂大学医学部倫理審査委員会の審査を経て承認されている (承認番号:2014138)。

  • 堤 真大, 工藤 慎太郎, 二村 昭元, 秋田 恵一
    原稿種別: 予防OS10
    セッションID: YOS-10-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    変形性関節症に代表される関節疾患の進行予防において、関節 の安定性を保つことは重要である。我々は「関節包」に着目し、関節支持機構について解剖学的再考を試みてきた。可動性を有する滑膜性の関節は関節包に覆われる。関節包の内層は滑膜、外層は線維膜という解剖学用語で呼ばれ、関節包=膜性の袋として考えられることが多い。そのため関節包は靱帯や筋に比べて関節支持機構としての役割について注目されることが少なかったといえる。 たとえば、股関節を例にあげてみると、教科書では関節包は寛 骨臼縁に線状に付着するように描かれる。対して、股関節の安定性に寄与する構造としては関節包よりも靭帯が着目され、なかでも腸骨大腿靭帯はヒトで最も強靭な靭帯ともされる。しかし実際には、腸骨大腿靭帯が付着するとされてきた下前腸骨棘の下方には、関節包自体が幅広く付着し、その形態が機械的ストレスに順応したものであることがわかってきた。このように関節包の骨への付着は線状でなく、多くの関節で従来考えられてきたよりも付着幅が広いことがわかってきている。また、腸骨大腿靭帯が存在するとされる関節包前面には、いわゆる“靭帯”を想起するような、逆Y字型の線維束様の構造は観察され ない。一方で、関節周囲の筋と関節包の関係に着目すると、小殿筋腱と腸腰筋深層腱膜が関節包前面に結合している。そして、関節包自体の厚みが一様でなく、小殿筋腱や腸腰筋深層腱膜が結合することによって厚みをなした関節包部分が腸骨大腿靭帯に相当することがわかってきた。一般には、関節の動きに合わせて張力を発揮する「筋」を “動的”支持機構、一定の可動域に達した場合に作用する「靭帯」を“静的”支持機構と区分する。しかし、腱や腱膜が筋張力の影響を受ける構造であることを念頭におくと、腸骨大腿靭帯に相当する関節包部分は関節の動きにあわせながら作用する“動的”支持機構ともいえる。このように、多くの関節において、いわゆる靭帯は関節包の特徴の一部を捉えたものに過ぎず、“静的”/“動的”支持機構という区分も構造的には曖昧であることがわかってきた。 本演題では、股関節に限らず、同様に荷重関節である膝関節や足関節を例にあげ、関節包は①付着部に幅がある、②関節周囲の腱・腱膜と連続する、という解剖学的特徴から、支持機構としての関節包の重要性について概説したい。

    【倫理的配慮】

    全ての研究は、東京医科歯科大学の倫理審査委 員会の承認を得た後に行われた (M2018-044、M2018-243-01、 M2020-382)。また、「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、日本解剖学会が定めた「解剖体を用いた研究についての考え方と実施に関するガイドライン」に従い、実施した。

  • 江玉 睦明
    原稿種別: 予防OS10
    セッションID: YOS-10-4
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    代表的な腱障害の一つとしてアキレス腱 (AT)障害が挙げられる. AT障害は,慢性化しやすく難治性であるため,有効な予防法 の確立が急務である.また,2018年にFCバルセロナと国際サッカー連盟が共催で実施したカンファレンスにおいて,AT障害発生メカニズムの解明と,予防法の確立の必要性が強く世界に発信されたことから,AT障害の予防は,スポーツ愛好家からトップアスリートまで幅広い層において最重要課題であるという認識が急速に広まった. AT障害の発生要因については,AT中央部の血流が乏しく横断面積が小さい部位が,AT障害の好発部位であるという解剖学的特徴から,これまでは後足部外がえしによってATに強い負荷が加わることでAT障害が発生すると考えられてきた.さらに近年では,下腿三頭筋活動時のAT内の負荷が不均一であることから,ATの特徴的な3次元構造である「捻れ」が発生要因の一つとして注目されている. そこで我々は,このATの捻れ構造に着目して,大規模な解剖学的検討を実施し,ATを腓腹筋・ヒラメ筋に区分して捻れの走行と踵骨形状を指標とすることで,軽度・中等度・重度の3つの捻れのタイプに分類した(Edama M, SJMSS, 2015a; 2015b; J Anat, 2016).さらに,3D構築したATのシミュレーションから,中等度の捻れのATは,強い衝撃や大きな可動性に対応できているのに対して,軽度と重度の捻れのATでは,後足部外がえしの時に加わる負荷が強く不均一であることを明らかにした(Edama M, Surg Radiol Anat, 2019).これらの結果から,程よく捻れている「中等度」のATは,強い衝撃や大きな可動性に耐えうる機能を有しているが,捻れの程度が弱い「軽度」と捻れの程度が過度な「重度」のATは,AT障害発生のリスクが高まる可能性が示唆された. 次に,ATの捻れの程度と力学的特性との関係を検討した.力学的特性としては,腱の硬さを表すスティフネスとヤング率,腱のバネとしての性質を表すヒステリシスを計測した.その結果,ATの捻れの程度が「軽度」では力学的特性が低下していた.胎児遺体を対象に捻れ構造を検証した結果,胎児において既に高齢遺体と同様の捻れ構造を呈していた(Edama M, Surg Radiol Anat, 2021).したがって,AT障害は様々な年代で発症する疾患であるため,可塑的変化が期待できる力学的特性にアプローチすることで発育・発達過程を含め,一生涯を通して腱障害発生を予防できることに繋がる可能性が示唆された

    【倫理的配慮】

    新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した.

予防OS11
  • 森 優太
    原稿種別: 予防OS11
    セッションID: YOS-11-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】

    暮らすまちによってフレイル該当者、要介護リスク者の割合が 異なることが分かっている。また、健康なまちの条件として、例えば地域介護予防活動支援事業が積極的に実施されていたり、歩きやすい歩行コースが多い市町村ほど、フレイル高齢者が少ないことが報告されている。このように地域単位で評価することで地域の課題や対策が明らかになることがある。今回、理学療法士に求められる地域診断の必要性とその取り組みについて企画した。

    【内容】

    本セッションにおいては、まずは地域診断に関して紹介をしていく。地域診断とは、「公衆衛生を担う専門家が、地域活動を通して地域課題を明らかにし、地域活動を通して個人のケアに留まらず、集団あるいは地域を対象にケアを行い、地域課題を軽減・解消していく一連のプロセス」である。近年、理学療法士の働き方は多様化されており、地域で集団・組織等に関わる機会も増加している。今回、「地域診断とは何か」、「地域診断のメリット」、「地域診断の流れ」、「地域診断の進め方」について紹介を行う。特に、地域診断を実施する上でどのような項目を評価するのかが重要である。例えば、JAGES (日本老年学的評価研究)は2019年度に64市町村と共同し、市町村間比較をした。調査対象は、要介護認定を受けていない64市町村の高齢者約19万人弱である。集計単位は市町村で、その結果、例えば「暮らすまちによってフレイル該当者 (要介護リスク者)の割合が2.6倍も多いまちがある」ことが分かってきた。また、フレイル該当者割合と相関関係を示す要因を探索した。その結果、様々な社会参加のグループに参加している人が多い市町村ほど、フレイル該当者割合が少ないという負の相関を認めていることが分かった。これらのようにデータを用いて地域ごとに比較を実施することで課題も明らかになることがわかる。セッションの後半では地域診断・地域づくりを実際に実施して介入した事例を通して、理学療法士がどのような形で地域づくりに関与すれば良いのかも紹介していきたい。

    【セッション参加で期待される効果】

    理学療法士が個人のみではなく、地域といった集団に対して評価ができること、またその結果から地域づくりに貢献できることが期待できる。また、これらのノウハウを知り得ることで、地域で理学療法士が関与する割合が向上して、より他職種との連携が円滑になることが望まれる。

  • 太田 幸子, 山下 遥, 西薗 博章, 横田 千晶
    原稿種別: 予防OS11
    セッションID: YOS-11-2
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【背景】

    近年、急性脳卒中患者に対する再灌流療法を含めた診療の進歩 により、約半数例が急性期病院より直接自宅退院となっている。我々は、自宅退院患者の退院3ヶ月後リハビリテーション外来 にて機能評価を行っているが、円滑な社会復帰困難例が少なくないことに気づいた。そこで、自宅退院患者に対して、3か月後の身体活動量の低下要因を調べたところ、退院時のアパシーが関連することを明らかにした (Yokota C, et al, 2021)。2022年より、脳卒中学会が中心となって、脳卒中患者支援に向けた 「相談窓口」を日本各地に開設する動きが始まった。

    【取り組み】

    当院では2019年より、医師・看護師・薬剤師で構成されていた入院中の脳卒中集団指導に、理学療法士が加わり、独自に作成した冊子を用いた個別の生活・運動指導を開始した。更に 2021年11月より、吹田市と提携し、地域包括支援センター・保健センター (以下、地域センター)と連携した「吹田フレイル予防ネット」を立ち上げた。具体的な内容は、3か月後の当院外来までに2回、地域センターのスタッフが患者宅を訪問し、患者の困りごとを聴取し、必要に応じて生活指導、地域保健活動の紹介を行っている。更に、企業の協賛を得て、希望者には運動習慣を身につけるため、スポーツジムでの集団運動や自宅でのtelerehabilitationを3ヶ月間無料で参加してもらった。 2022年9月までに吹田フレイル予防に登録した患者は40例 (平均66.5±2.0歳、男性23例) (スポーツジム参加18例、 telerehabilitation参加13例)である。患者アンケートを行い、社会復帰状況を調査した結果、病前に仕事をしていた25例中、完全復帰例は17例 (68%)、入院前より趣味活動をしていると答えた29例中、入院前に戻ったと回答した例は23例 (79%)であった。地域センターの訪問により、退院時に介護保険は不要と思われた例でも、退院後、介護サービスの調整がスムーズ受けられたや、家族の困りごと相談、地域運動活動の情報提供が良かったという感想を得た。2022度からは、吹田市に加えて摂津市との「フレイル予防ネット」の提携が成立した。

    【展望】

    今後、近隣の自治体との「フレイル予防ネット」の提携を拡げ、地域に特化した患者の療養に関連する医療、福祉、社会資源 ( スポーツ関連)を効果的に繋げ、活動性維持による患者の完全な社会復帰を目指したい。

    【倫理的配慮】

    当院の倫理委員会の承認を得ており、「フレイル予防ネット」事業の参加希望の患者に対しては、 提携する自治体に個人情報の提供に関して、本人同意を取得している。

  • 清水 夏生, 新井 智之, 三浦 佳代
    原稿種別: 予防OS11
    セッションID: YOS-11-3
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
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    【目的】

    本研究はA市内141地区を対象に, 代表地点から算出されたWalk score®がその地区の閉じこもりやフレイルの発生状況をどの程度説明可能かを検証するとともに, Walkabilityと閉じこもり, およびフレイルの発生状況との関連構造を横断的に検証することを目的とした.

    【方法】

    2013年から2014年に実施されたA市内全高齢者を対象に実施された基本チェックリスト調査 (n = 49401, 有効回答率 55%) から市内141地区の居住区における閉じこもりの該当率とフレイル割合を算出した. 各居住区の歩行環境はWalk score®のホームページに各居住区の代表地点を入力し, 各居住区のWalkabilityを0~100点で算出した. 統計解析では, 居住区のWalk score®と閉じこもりの該当率 , 及びフレイル割合との関連をSpearmanの順位相関係数および単回帰分析にて検証した. また, X (独立変数:Walk score) –M (媒介変数:閉じこもり該当率) – Y (従属変数:フレイル割合) の媒介モデルを作成し, 媒介分析 (ブートストラップ法, リサンプリング数2000) にてWalkability, 閉じこもり, フレイルとの関連構造を検証した.全ての解析の有意水準は5%とした.

    【結果】

    全地区における各指標の中央値 (範囲) はWalk score®が70.0 (14.0 – 98.0) 点, 閉じこもりが4.7 (0.0 – 16.2)%で, フレイル割合が9.0 (1.0 – 25.8) %であった. 相関分析では, Walk score®は閉じこもり該当率(rs = -0.342), フレイル割合 (rs = -0.204)と有意な負の相関を示した. また, 単回帰分析では Walk score®は閉じこもり該当率 (β = -0.295) とフレイル割合 (β = -0.281) に対する有意な説明変数として認められた. さらに,媒介分析の結果, Walk score®はフレイル割合に対して有意な総合効果を認めた. また, X-Yに有意な直接効果を認め, X-M-Yに有意な間接効果が認められた.

    【考察】

    居住区の代表地点から算出されたWalk score®は, その居住区における閉じこもりとフレイル割合を予測するため の地域診断指標の1つになる可能性が示唆された. また, X-M-Yに部分媒介モデルが成立したことから, 不良なWalkabilityは閉じこもりリスクの助長によるフレイル発生の源流的な危険因子の1つとなり得ると考えられ, Walkabilityの改善は地域における介護予防の施策立案における着眼点の1つになると考えられる.

    【倫理的配慮】

    本研究は埼玉医科大学保健医療学部倫理委員会の承認(申請番号89,89-2)を得て行った。

予防OS12
  • 飛田 和基
    原稿種別: 予防OS12
    セッションID: YOS-12-1
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/03/31
    会議録・要旨集 フリー

    肺高血圧症 (Pulmonary hypertension; PH)は、平均肺動脈圧が 上昇し労作時の息切れを主症状として運動耐容能低下や Quality of Life (QOL)の低下を招く難病である。かつては生命予後が悪く、病態悪化のリスクがあるため安静が推奨されてきた。しかし、治療法の進歩により生命予後が延長し、さらには専門施設におけるモニタリング下での運動療法もガイドラインで推奨されるようになっている。PH患者における運動療法では、心疾患患者同様にレジスタンストレーニングや有酸素運動、呼吸筋トレーニングなどが行われている。このような運動療法により、運動耐容能向上やQOL向上などの効果が示されている。一方で、運動療法が有効な患者や運動強度、運動療法の長期的な効果などは明らかではなく、特に治療開始早期の病態が安定していない段階での積極的な運動療法は推奨されない。PH患者の急性期においては病態悪化のリスクを鑑みて安静が重視されることもある。しかし、過剰な安静は廃用症候群進行のリスクもあるため、治療開始早期においては病態と安静に伴う廃用症候群進行のリスクを天秤にかけながら理学療法介入を行うことが求められる。PH患者において廃用症候群による運動耐容能低下は生命予後へ影響する可能性も否定できず、急性期からの予防的な理学療法介入は重要である。PH患者の運動耐容能に対しては、病態のみならず下肢筋力を始めとする末梢機能が関与することも示されている。そのため、PH患者においては病態の不安定な急性期の段階から、病態を把握した上で筋力トレーニングを行うことや活動量を可能な限り確保することが求められる。本演題においては、PH患者に対する急性期からの予防的な理学療法介入の可能性を示したい。

    【倫理的配慮】

    本演題で紹介する研究については、杏林大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した。

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