主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
通所リハビリテーション (以下;通所リハ)は居宅要介護者の心 身の機能回復と維持を図り,日常生活の自立を促すことを目的としている.とりわけ歩行速度の改善は日常生活の自立において重要な要素の一つである.一般に複数の併存疾患を罹患することで歩行速度は低下するとされるが,通所リハ利用者における歩行速度と併存疾患との関連は不明である.本研究の目的は,併存疾患指数が通所リハ利用者の歩行速度の変化に与える影響を調査し,治療介入の一助とすることとした.
【方法】
対象は,当院通所リハを2021年1月から2022年12月の間に新 規利用した91名とし,診療録を後方視的に調査した.除外基準は利用開始から3か月以内の通所リハ終了者およびデータ欠損者とした.調査項目は基本属性として初回利用時の年齢,性別,主疾患,併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index; CCI),紹介元,他サービス利用頻度,通所リハ利用頻度とした.身体機能評価として,4m快適歩行速度,認知機能評価として,初回利用日と3か月後にMini mental statement test(以下; MMSE), IADL評価としてFrenchay Activities Indexを実施した.4m快適歩行速度の変化量は,3か月後の歩行速度から初回の歩行速度を減じて求めた(Δm/sec).統計学的分析は,CCIの点数により高値群 (>0)と低値群 (=0)の2群に分類し,各群の基本属性および評価項目を対応のないt検定またはカイ二乗検定を用いて比較した.さらに歩行速度の変化量を目的変数,年齢・性別・ CCI・初回MMSE・初回4m快適歩行速度を説明変数とした重回帰分析を強制投入法にて行った.統計学的有意水準は5%とした.
【結果】
3か月以内の利用者5名,データ欠損者4名を除外した82名 (平 均年齢79.8 ± 7.9歳, 女性61%)を解析対象とした.2群間比較の結果,4m快適歩行速度の変化量はCCI低値群が有意に高値であった.重回帰分析の結果,有意な説明変数としてCCI (標準化係数=-0.29)が選択された(p<0.05).決定係数は0.20であった.
【結語】
通所リハ利用者の歩行速度の変化量にはCCIが影響し,CCIが高いほど歩行速度が改善しにくいことが示唆された.
【倫理的配慮】
本研究は倫理委員会の承認を得て実施し、患者が特定されないよう配慮した. (承認番号93)