主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
ICT利用の運動プログラムが地域高齢者の介護予防活動の具体的支援となるために,本研究では,高齢者が自らインターネットを利用してオンラインによる同時双方向の運動プログラムの効果をどのように捉えているか,インタビューによって主観的効果を聴き取り,検討することを目的とした。
【方法】
オンライン運動プログラム (60~75 分/週)に8週以上継続的に参加している地域高齢者16名 (78.9±4.4歳)に対し,半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は,プログラム参加による身体・心への効果についてであった。言語記録から内容を分類し,分析的帰納法を用いて抽出度を高めてカテゴリー化した。
【結果】
インタビュー内容の分析の結果,オンライン運動プラグラムの効果として【身体の変化】【心の変化】【運動の継続】 【つながり】【ICT社会への対応】の5カテゴリーが生成された。
【考察】
【身体の変化】の自覚は《ADLの向上》《IADLの向上》《歩行の変化》《睡眠の変化》《痛みの軽減》《変化なし 》など個人によって様々であり,日々の暮らしの中で効果と自覚されていた。《IADLの向上》で家事動作の語りが多かったのは ,自宅で行えるオンライン運動の効果として自覚されやすく,オンラインの利便性を活かした【運動の継続】も加味された効果であると考えられ,オンライン運動が地域高齢者の自立した生活機能の維持向上に寄与すると考えられる。【つながり】を感じ,指導者や参加者同士からの刺激や連帯感を自覚していたことは,他者との交流や社会参加が可能となる側面がみられ,継続参加や心身への効果を自覚する一要因となったのではないかと考えられる。対象者が自らインターネットに慣れ活用していくことでの【ICT社会への対応】効果は,運動の効果と同様に多く語られた。後期高齢者が《状況対応》をしながら《インターネットへの自信》を高め,「孫や友人とライン交流」し「YouTubeで運動する」などの語りから,対象者の生活への刺激や広がりがあったものと考えられる。介護予防では,運動習慣の獲得を通じて下肢機能を維持するといったアプローチだけでなく,QOLの増進のための社会参加の促進や,日々の生活行為の活性化を支援することが重要であるが,オンライン運動プログラムは両者を満たすものと考えられる。
【結論】
オンライン運動プログラムは,高齢者のICT を活用した新たな介護予防の選択肢となり得ることが示唆された。
【倫理的配慮】
早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認を得た (承認番号:2022-279)