主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに,目的】
胃がん患者では,術後に体重減少が必発する.栄養状態の悪化は運動耐容能の低下につながり,QOLや生命予後にも影響することが報告されているが,術後長期の運動耐容能低下にどのような因子が影響しているかは十分に調査されていない.そこで,本研究では胃がん術後の運動耐容能低下に影響する因子を調査した.
【方法】
対象は2018年10月~2022年9月までに当院消化管外科で根治目的の手術を施行した胃がん患者で,リハビリテーションを実施した34例とした.調査項目は年齢,性別,身長,体重,術前のがん進行度,既往歴,ALB,CRP, ,術前身体機能 (握力,歩行速度,6分間歩行距離:6MD),胃の全摘除術の有無 (胃全摘)とした.また,術前の活 動量を国際標準化身体活動質問票Short版で評価し,総身体活動が600Mets・分/週以上の者を中身体活動とした.運動耐容能は 6MDで評価し,6MDが術前から術後6ヶ月で15%以上低下した者を低下群,維持されていた者を維持群とした.2群間の比較は Mann-WhitneyU検定またはχ2検定を用いて統計解析を行った .6MD低下の要因分析は,6MD低下を従属変数として,年齢,性別,身長,体重,既往歴を独立変数とした傾向スコアを算出した.次に胃全摘,中身体活動の因子を従属変数として,6MD低下と傾向スコアを独立変数として強制投入法による二項ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%とした.
【結果】
維持群は24例,低下群は10例であった.低下群では維持群と比較してがんの進行度が高く,術前のALBは低く,CRPが高く,胃全摘 が多く,中身体活動該当者は少なかった.二項ロジスティック回帰分析にて,胃全摘 (オッズ比:117.6,p<0.01)で有意な独立変数となるモデルが構築された.正判別率は88.2%だった.
【考察】
運動耐容能低下に影響する因子に胃全摘が抽出された.胃全摘は部分切除に比べて体重減少率が大きいと報告されていることから栄養状態の悪化により運動耐容能低下に繋がったと考えられた.低下群では術前がんの進行度が高いことで胃全摘につながり ,悪液質によるALBの低下・CRPが増加したと考えられた.また,低下群では中身体活動該当者が少なく,術後6ヶ月の運動耐容能低下に影響を与えたと考えられた.
【倫理的配慮】
旭川医科大学倫理委員会の承認を得た (承認番号:23030番)