日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-20-1
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予防ポスター20(中枢)
回復期リハビリテーション病院退院時の脳卒中患者におけるサルコペニアと転倒関連自己効力感の関連
小池 将吉田 優斗福澤 純三澤 慎姫野 蒼大仲村 歩華原井 瑛広大渕 修一
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抄録

【はじめに,目的】

脳卒中患者は,動作を転倒せずに遂行できる自信である転倒関連自己効力感 (Fall efficacy:FE)が低下することが言われている.FEの低下と生活範囲の狭小化は関連することが報告されており,身体機能のほかにFEに着目する必要がある.TrombettiらはFEの低下はサルコペニアの構成要素に包含される骨格筋量,筋力,身体機能の低下と関連することを報告した.サルコペニアとFEの関連に関する報告は地域在住高齢者に限られ,脳卒中患者における検討はない.本研究では,脳卒中患者のFEをサルコペニアの有無で比較し,サルコペニアを有する脳卒中患者の特徴を明らかにすることを目的とした.

【方法】

対象は,当院入院中の脳卒中患者とし,金属,ペースメーカー類が体内にある者,測定に影響を及ぼす既往がある者,認知機能の低下により指示理解が困難な者を除外した.サルコペニアの判定は ,2019年Asian Working Group for Sarcopeniaの基準 (AWGS2019)に基づき,非麻痺側握力,6m通常歩行速度,Skeletal Muscle mass Index (SMI)から,対象者をサルコペニア群(S群)・非サルコペニア群(NS群)に分類した.SMIの測定は,医療用体組成計seca (seca株式会社,千葉)を使用した.FEは日本語版Falls Efficacy Scale - International (FES-I)で測定した. 測定はいずれも退院時に行った.FES-I総合点と下位項目の比較には,対応のないt検定行った.統計解析ソフトはRを使用し,有意水準は5%未満とした.

【結果】

対象者17名のうち3名 (17.6%)がサルコペニアと判定された .Functional Balance Scale (FBS)総合点,FES-I総合点の平均値± SDはそれぞれ,S群で47.3±6.1点,34.7±6.1点,NS群で46.2±6.8 点,30.9±9.2点で,いずれも有意差は認めなかった.FES-Iの下位項目で有意差が認めたのは,「電話の呼び出し音が鳴り止む前に ,受話器を取る.」で,S群2.3±0.6点,NS群で1.2±0.6点であった (P<0.05).

【考察】

本研究では,S群とNS群のFES-I総合点に有意差はなく,下位項目で有意差がみられたのは1項目のみであった.脳卒中を対象としたFES-Iの転倒のカットオフ値は27点と報告されている.両群ともにFES-I総合点がカットオフ値を上回っており,サルコペニアの有無を問わずFEが低下していた.FEの関連要因の一つとしてバランス能力が報告されている.本研究対象者のFBSは両群ともに転倒のカットオフ値である45点を上回っていた.脳卒中患者においては,サルコペニアの有無にかかわらずFEを高める介入が必要である.

【倫理的配慮】

本研究は,赤羽リハビリテーション病院倫理委員会の承認 (承認番号2022B-003)を受けており,対象者に,本研究に関して文書と口頭で十分な説明を行い,同意を得て実施した.

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