主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに、目的】
当院小児科では,以前から呼吸器疾患患児 が入院すると薬物療法や酸素療法に加え,無気肺や重症化予防目的に多くの症例に対して呼吸理学療法 (以下,RT)が処方されている.年少児では保護者の付き添いが必要となる場合が多いが,2020年から本邦でも拡がりをみせた新型コロナウイルス感染症により,付き添いの交替にも陰性確認が必要となった.また基本的には病室内のみの生活を強いられることにより,患児も保護者も精神的負担が大きくなった.そこでより早期の退院を目指すべく,今回RT介入状況について振り返ることとした.
【方法】
2020年4月から2023年3月までに当院に入院し,RT が処方された12歳以下の健常児を対象とした.調査内容は年齢,性別,診断名,呼吸管理 (酸素療法の有無およびデバイス),入院期間,入院からRT開始までの期間,RT介入期間,介入内容,保護者の反応について診療録より後方視的に調査を行った.
【結果】
のべ42例 (男性27例,女性15例)が対象となり,平均 年齢は1歳7カ月±1歳5カ月だった.診断名は気管支炎/細気管支炎22例,肺炎13例,気管支喘息発作7例であった.なお,細菌以外の起因ウイルスとしてはRSウイルスが26例と最多で,ほかライノ/エンテロウイルス5例,ヒトメタニューモウイルス 4例などであった.酸素療法実施は32例 (酸素マスク31例,ネブライザ機能付き酸素吸入器1例),入院期間5.5±1.0日,入院からRT開始までの期間2.3±1.0日,RT介入期間3.0±1.0日だった.また,介入中に重症化する症例はいなかった.介入内容としては家族指導29例,排痰介助 (抱っこによるポジショニングの変更を含む)25例,呼吸介助8例,上肢運動4例,ボール遊び4例,歩行1例などだった.保護者からは食欲が出てきました,ゼーゼー言わなくなってきました,咳はまだ出るので家でもゴロゴロ寝返りさせます,などの改善を裏付ける,或いは家族指導した内容を継続実践していただけるような発言が聞かれた.
【考察】
今回は対照群を設けることができない上に,侵襲の観 点から胸部写真や採血は入院時しか行っていない症例が大多数だったため,明確な効果判定は困難だった.しかし,明らかに重症化して入院が長期化した症例はおらず,家族指導を行うことによるRT実施時間以外の保護者の対応も含め,薬物療法や酸素療法に加えたRTは重症化予防に貢献する可能性が示唆された.
【倫理的配慮】
本研究で得られた全てのデータは匿名化による管理を行い,個人を特定できないよう配慮した.また,本研究発表は当院倫理委員会の承認を得た (第2023008番).