日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-23-2
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予防ポスター23(健康)
幼児期肥満と粗大運動発達の関連性
安中 聡一十文字 雄一長沼 誠杉原 敏道対馬 栄輝
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抄録

【はじめに】

2020年度の学校保健統計調査によると,全国の幼稚園と幼保 連携認定こども園における幼児 (5歳児)の肥満傾向児の割合は, 3.51%と報告されている.肥満は,虚血性心疾患をはじめとする非感染性疾患 (non-communicable disease: NCD)の原因になるといわれており,WHOの指針によると,幼児期はNCDのリスク要因に対し予防効果が期待できる重要な介入時期とされている.幼児期の肥満に影響を及ぼす要因は様々考えられるが,発達過程で粗大運動を獲得する時期も,乳幼児期の活動性に直接関連し,肥満の一要因となることが予測される.以上のことから本研究の目的は,粗大運動の獲得時期と,幼児期の肥満との関連性を明らかにすることである.

【方法】

保育施設 (保育園,幼稚園等)に通う園児の母親25名を対象としてgoogle formsを用いたアンケート調査を行った.質問内容は,園児の基本情報 (生年月日,性別,身長,体重)と粗大運動獲得 の月齢とした.粗大運動の項目は,定頸,寝返り,座位保持,ハイハイ,つかまり立ち,始歩の6項目とした.園児の基本情 報の身長と体重から肥満度を算出し,粗大運動の各項目の獲得月齢と,肥満度との関連性をみるために,相関係数を求めた.統計解析にはR 4.2.2 (CRAN,freeware)を使用し,有意水準は 5%とした.

【結果】

シャピロ・ウィルク検定により,肥満度と寝返りの獲得月齢は正規分布に従うことを確認したが,その他の項目は正規分布に従わなかった.肥満度と寝返りの獲得月齢はピアソンの相関係数を求め,その他の項目とはスピアマンの順位相関係数を求めた.肥満度と最も高い相関関係を認めたものは始歩の獲得月齢 (r=0.55,p<0.01)であり,次いでハイハイ (r=0.47,p<0.05),座位保持 (r=0.44,p<0.05)の順に高い値を示した.

【考察】

今回の結果から,粗大運動の獲得時期は全般的に肥満と関連があった.また,肥満度と相関関係を認めた3つの項目は,通常生後6か月以降に獲得することから,出生直後よりも生後6か月以降の発達が肥満に影響しやすい可能性がある.今回は肥満度と粗大運動獲得の月齢を比較したが,普段の生活環境等も含めて肥満に影響を及ぼす要因を明らかにすることで,肥満予防のための手段を検討する一助になると考える.

【倫理的配慮】

弘前大学倫理委員会の承認を得た (承認番号: 2022-022).

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