日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-26-5
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予防ポスター26(基礎)
地域在住高齢者の降段動作の表現型は高度なバランス能力と筋力によって決定づけられる
田中 貴広長谷 公隆森 公彦脇田 正徳有馬 泰昭久保 峰鳴田口 周
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抄録

【はじめに、目的】

高齢者の階段昇降中の転倒は、平地よりも重篤な外傷に繋がりやすい(Startzell 2000)。とりわけ降段は昇段よりも3倍危険性が高いことから、降段時の転倒予防が重要である(Masud 2001)。高齢者の降段動作の表現型と身体機能との関係性を明らかにすることは、降段動作中の転倒予防の重要な知見になりうる。本研究の目的は階層性クラスター解析を用いて高齢者の降段動作を類型化し、各表現型の身体機能および降段中の力学的特徴を明らかすることである。

【方法】

運動器、神経疾患を有さない82名の地域在住高齢者 (年齢: 72.1±4.8歳)を対象とした。アニマ社製3次元動作解析装置お よび床反力計にて降段動作を計測した。身体機能は歩行速度、 Timed Up and Go Test (TUG) およびCommunity Balance and Mobility Scale (CB&M)により移動およびバランス能力を測定し、筋力計にて股伸展、外転、膝伸展、足底屈筋力を測定した。降段の単脚支持終了時の角度データを抽出し、階層性クラスター解析で類型化した。その後、各類型の身体重心データ、身体機能および転倒リスク陽性率を一元配置分散分析とFisher’s exact testにて比較し、有意差を認めた場合、Tukey HSD検定または残差分析にて事後検定を実施した。有意水準は5%とした。

【結果】

高齢者の降段動作は上半身のアライメントからNeutral type (NT; 24%)、Extension type (ET; 52%)、Rotation type (RT; 23%)に類別された。降段時の身体重心の前方変位量はET, RT、垂直加速度はRTがNTに比べ有意に増加していた。筋力や歩行速度、 TUGは類型間に有意差を認めなかった。CB&MはET, RTがNT に比べ有意に低かった。さらにサブ解析により、ET, RTはCB& Mの筋力要素とバランス要素が有意に低かった。転倒リスク陽性率はET; 18.6%、RT; 26.3%でNT; 0%に比べ有意に高かった。

【考察】

降段中の身体重心の前方移動量や加速度は安定性の指標であ り、ET, RTの高齢者はNTに比べ降段動作が不安定と考えられる。さらにET, RTは転倒リスク陽性率も高いことから、予防的介入の必要性が高い高齢者であると考える。CB&Mの結果はET, RTが複雑な運動課題における筋力とバランス能力の低下を有していることを示唆し、これらを標的とした運動療法が降段における転倒予防に貢献する可能性がある。加えて、本研究で明らかとなった降段動作の表現型は転倒リスクの高い高齢者の早期発見(二次予防)にも有用な指標になりうる。

【倫理的配慮】

本研究は関西医科大学倫理委員会によって承認され(#2020294)、ヘルシンキ宣言に従って実施した。

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