日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YOS-18-5
会議情報

予防OS18
地域に根ざした産業保健活動:高齢労働者の転倒•腰痛予防
岩倉 浩司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

いつのまにか、私が働く地域では「転倒・腰痛予防といったら岩倉」と呼ばれるようになった。そのきっかけになったのは信楽町朝宮地区の茶農家に関する厚生労働省の調査研究事業であった。当時大学院生として在籍していた滋賀医科大学衛生学部門で調査し、その成果を日本産業衛生学会近畿地方会で発表した際に若手奨励賞を受賞した。この受賞がきっかけとなり、滋賀県産業保健総合支援センターの所長をしていた産業医から自分の存在が認識されるようになった。その後、高齢就労者を多く含む介護現場での安全衛生管理や滋賀県医師会主催で医師向けに高年齢雇用に伴う転倒防止に関する情報提供の機会を得るようになった。さらに、在宅訪問をする美容師や福祉的配慮に特化した旅館の女将からの相談、甲賀市との事業などの経験を経て相談される存在であり続けたことが冒頭の通称名を得るに至った理由と思われる。 実は、演者は元々積極的に理学療法士なろうとは思っていなかった。幼少期から車が好きで、大学では工学の道に進んだが、学習内容に納得感が得られず、続けていく自信をなくし休学した。その期間、アジア諸外国を周遊する中で、人と触れ合うことがかけがいのない経験となり、人と関わり役に立つ仕事がしたいと思うに至った。その後、理学療法士となり一年目に腰痛を発症した。腰痛を抱えながら行う日々の業務は大変つらく、この問題を何とかしなければと思った。そして、職業性腰痛予防の研究をしている滋賀医科大学衛生学部門の存在を知り修士課程に進学した。職業性腰痛予防の研究は、医学と工学の融合分野であり、大学で学んだ機械工学と理学療法士の知識が活かせる分野であった。キャリアの一貫性のなさにしんどい気持ちを持っていたが、今は自分にとって全てが意味のある経験であり、そのような経過を経て、理学療法士になって良かったと思うようになった。 産業保健で当たり前のことが、理学療法では当たり前になっていない。産業保健の前提知識を理解しないまま高齢労働者の転倒・腰痛予防対策を訴えていくことは難しい。産業保健は、理学療法士だけでなく、雇用主と労働者が重要な存在であり、それぞれ立場が異なれば関心事や優先度が異なる。異なるニーズを顕在化させ、ニーズを精確に把握するプロセスの一部を企業 ・医療機関・デイサービスなどの例から紹介する。

【倫理的配慮】

対象者には、ヘルシンキ宣言を順守し、研究の目的・プライバシーの保護・自由意志による参加と同意の撤回の自由、結果の公表について説明し回答をもって同意を得た。

著者関連情報
© 2024 日本予防理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top