日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 92
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口述 21
地域在住高齢者に当院オリジナル体操を実施しロコモ度が改善した1症例
―ロコモ度改善に関連する要因の検討―
*濱野 夏美西山 駿斗アルテス 阿鈴伊藤 一成太田 雄介
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抄録

【はじめに】

運動器障害で寝たきりや要介護となるリスクが高 まる状態をロコモティブシンドローム (以下、ロコモ)と定義さ れ、近年、ロコモ予防事業を行う施設・自治体が増加している。当院ではオリジナル体操 (以下、豊中体操)を作成し、地域在住高齢者のロコモ予防に取り組んでいる。ロコモーショントレーニング (以下、ロコトレ)は下肢筋力やバランス向上を目標に作成されている。地域在住高齢者に対しロコトレによる疼痛やロコモ度の改善効果は示されているが、それらの関連性について検討した報告は多くない。本報告では、豊中体操によりロコモ度改善に至った症例の要因を検討した。

【症例紹介】

症例は、ロコモ予防教室に参加した地域在住 (ADL自立)の70代女性であり、毎日1時間程度の運動習慣を有していた。体格指数19.1であり、30代頃より肩と膝に慢性疼痛が認められた。介入は3か月間 (週1回、計11回)とし、豊中体操 (準備体操、バランス運動、二重課題、下肢レジスタンス運動)を実施した。介入期間中、1か月ごとに運動機能検診 (ロコモ25、立ち上がりテスト、2ステップテスト、握力、下腿周径)を計3回実施した。介入後、アンケート調査にて疼痛の程度を聴取した。

【経過】

ロコモ25は各項目0~4点と点数が低いほど良好であ る。初回では、7点とロコモ度1であり、ロコモ25の痛み項目にて上肢3点、下肢1点と回答した。介入後、ロコモ25は5点に減少しロコモ度は正常となった。また、痛み項目にて上肢2点、下肢0点であり、介入後に実施したアンケート調査では疼痛が 「かなり軽減した」と疼痛軽減を認めた。更に、計3回実施した運動機能検診では、2ステップテストが180cm→200cm→ 200cmと介入後にはロコモ度に関連するカットオフ値を満たした。一方で、立ち上がりテスト、握力、下腿周径は3回を通して大きな変化はなく、介入による筋力改善は認めなかった。また、介入期間中の体格指数、運動習慣 (頻度・内容)に変化はなかった。

【考察】

本症例は、運動機能検診の経過から筋力増強の効果は認められなかったが、疼痛項目が軽減し、ロコモ度の改善に繋がったと推察する。ロコモ度改善のための介入として下肢筋力やバランスなどの改善が目標とされる場合が多いが、一方で本症例のように筋力改善を認めずともロコモ度が改善する症例の存在が示唆された。

【倫理的配慮】

本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者に対し て書面にて十分な説明を行い参加の同意を得たうえで実施した。

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