日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
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第11回 日本予防理学療法学会学術大会
一般演題(口述・ポスター)
口述1
  • ~可視化した機械学習モデルと複合変数の検討~
    池本 祐貴, 木下 裕矢, 小笠原 圭吾, 笹岡 正弘, 志賀 舞, 竹林 秀晃
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 01
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    歩行能力は行動範囲を規定し,種々の身体機能と関連する.歩行自立判定には複数の評価指標による判断基準が必要とされており,療法士にとって自立可否を予測する知見は重要である.本研究では,臨床評価を特徴量に,高齢者施設内にて独歩・杖歩行自立可否を予測する機械学習モデルを構築し,3D partial dependence plot(以下pdp)やSHAPpdpから結果を解釈した.また,重要度の高い2つの特徴量を複合変数に変換し,複数の評価指標が歩行自立予測の寄与度を向上させるのか確認した.

    【方法】

    対象はR4年4月~R6年5月に施設のデイケア・短期入所・一般入所サービスを利用した高齢者78名(年齢:86.1±7.3 歳,BMI:21.7±4.2kg/m2,女性:49名,要介護度中央値:要介護 2)とした.なお,重度な神経学的疾患や急性疾患,荷重痛を有する者,装具着用者,認知症状が著明な者は除外した.歩行自立基準は日常的に独歩・杖歩行を行う者とした(BI歩行,FIM歩行/車椅子でも判断)(自立=1,35名).特徴量はvifと交絡因子を考慮し,年齢,性別,FIMセルフケア合計点,握力/体重,等尺性膝伸展筋力/体重,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワー(0.9×g× (身長×0.5-椅子高)/30s×n of re-p1×s 0.5)とした.

    解析はランダムフォレストを使用し,内的検証を行った.また,寄与度の高い特徴量2つを傾向スコアで複合変数に変換し,単 一の特徴量と比較した.解析にはR ver.3.6.3,Python3.8を使用した.

    【結果】

    モデルの判別指標精度はAUC88.7%,感度87.5%,特異度96.0%,交差検証AUC88.6%であり,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワーは歩行自立への寄与度が高かった(主疾患バイナリ投入でも上位).3D・SHAPpdpでは努力歩行速度 1.0m/s,相対的立ち上がりパワー2.0W/kg付近から寄与度が向上する傾向であり,以上2つの特徴量を複合変数とした.複合変数を用いたROC曲線AUC,SHAP寄与度を単一の特徴量と比較すると,複合変数が高い値となった(単一AUC90.0-92.0%,複合変数AUC93.2%,単一寄与度0.2~0.3,複合変数寄与度0.4~0.5).

    【考察】

    機械学習3D・SHAPpdp,複合変数投入を用いて,歩 行自立に関する特徴量の寄与度を分析した結果,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワーは判定材料としての重要性を示した.複合変数の比較から,2つの評価を合わせて実施する事は,単一の評価より,理学療法士の歩行自立可否の判断をサポートできる可能性がある.

    【倫理的配慮】

    本研究は,対象者に書面と口頭にて説明を行い,同意を得た.また,高知県健康科学大学研究倫理委員会の承認 を受けた.

  • ~基本チェックリストによる調査から~
    岩﨑 孝俊, 上原 七帆, 小林 琢, 倉田 裕子, 横山 千裕
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 02
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    介護予防・日常生活支援総合事業 (総合事業)は2017 年 から全国の市町村で開始され、事業対象者と要支援1・2の方にサービスが提供される。事業対象者は市町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談し、基本チェックリスト (KCL)の結果に基づき選定される。

    国内の大規模調査では、事業対象者は高齢者全体の9.3%に該当したが、我々は外来通院中の高齢者は事業対象者の割合がさらに多いと推測し、本研究は、KCLを用いて外来通院高齢者の事業対象者の実態を明らかにすることを目的とする。

    【方法】

    医師の依頼により、生活習慣病を有する65歳以上の外来患者 1467例に対して、理学療法士による運動・生活評価および指導を実施。評価項目は、KCL、生活習慣、運動への意識、身体組成、運動機能 (握力、片脚立位保持時間、30秒立ち座りテスト)で構成された。

    KCLの結果に基づき、「事業対象者」と「非該当者」に分類し、各群の評価項目を比較。さらに、事業対象者を従属変数、両群間で有意な差が認められた項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお、介護保険利用者は本研究から除外した。

    【結果】

    介護保険利用61例とデータ欠損17例を除外し、1389例 (事業対象者:772例 (55.6%)を対象とした。疾患の内訳は心疾患 1047例、糖尿病305例、高血圧827例、脂質異常症794例であった (複数回答)。プレフレイルに487例 (35.0%) 、フレイルに 210例 (15.1%)が該当した。

    事業対象者の特徴は高齢、運動習慣の欠如、日中TV視聴時間の長さ、外出頻度の低さであった。また、体力に自信がなく、運動不足を自覚していることが多かった。全ての運動機能で低値が認められ、BMIやSMIは低く体脂肪率は高かった。

    ロジスティック回帰分析の結果、年齢、日中TV視聴時間、30秒立ち座りテスト、握力、体力の自信、外出頻度が抽出された。

    【考察】

    生活習慣病を保有する高齢者は事業対象者の割合が多いことが示唆された。高齢者の中には、外来通院が可能な状態から運動機能の変化や生活行為に課題を抱える例が多く、運動機能向上の助言に留まらず、個別の生活行為を評価し、支援を構築することが重要と考えられる。

    事業対象者は市町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談して認定されるが、定期的な通院やフォローアップ通院の高齢者に対して、理学療法士が関わることで「些細な衰え」を早期に発見できる可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    みなみ野循環器病院倫理審査委員会の承認を得て実施した承認番号:MJ-070

  • 井上 大樹, 薛 載勲, 大藏 倫博
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 03
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【目的】

    本研究の目的は、DIgital Trail Making Peg test (DTMP)による認知機能低下した高齢者を把握するための基準値を検討することとする。

    【方法】

    2020~2023年に開催された健診事業に参加した高齢者528名のうち、DTMPおよびファイブ・コグ検査が欠損している者64名、基本情報のデータが欠損している者7名を除外した457名 (平均年齢75.7±5.4歳、女性56.7%)を対象とした。DTMPはペグアモーレ (株式会社ニューコム社製)を用いて、DTMP part A (DTMP-A)およびpart B (DTMP-B)を測定した。DTMP-Aは、合図とともに近位盤の表示パネルに「1~25」の数字が表示される。対象者は遠位盤のペグを片手で1本持ち、片手のみで近位盤に表示された数字の昇順 (1→2→3・・・24→25)に差し込んでいくテストである。 DTMP-Bは、合図とともに近位盤の表示パネルに「1~13」の数字と「あ~し」のひらがなが表示される。DTMP-Aと同様の方法で近位盤に表示された数字とひらがなを交互に (1→あ→2→い→3・・・12→し→13)に差し込んでいくテストである。 いずれも片手で25本すべてを移動させるまでの時間を計測した。認知機能の評価には、ファイブ・コグ検査を使用し当該検査の 5要素合計得点を認知機能スコアとした。先行研究を参考に認 知機能スコアが平均値-1.0標準偏差以下に該当する者を認知機能低下者と定義した。Receiver operating characteristic (ROC)解析を用いて性、年齢、body mass index、教育年数を共変量として調整したDTMP-AおよびBの傾向スコアをそれぞれ算出してROC曲線を求めた。Area under curve (AUC)およびROC曲線における最適なカットオフ値をYouden Indexに基づいて算出し、カットオフ値での感度、特異度を求めた。

    【結果】

    健常高齢者は396名 (86.7%)、認知機能低下した高齢者は61名 (13.3%)であった。DTMP-AのAUCは0.847 (0.803-0.891)であ り、カットオフ値は83.5秒、感度は90.2%、特異度は66.4%であった。DTMP-BのAUCは0.868 (0.825-0.910)であり、カットオフ値は146.0秒、感度は77.0%、特異度は80.6%であった。

    【結論】

    感度の高い検査でスクリーニングし、特異度の高い検査で確定診断することが一般的とされているため、DTMP-Aはスクリーニング法として有用といえる。DTMP-Aは、約5分で実施可能であり、地域で多くの高齢者を対象とする場合においても活用できると考えられる。

    【倫理的配慮】

    本研究は筑波大学体育系研究倫理委員会の承認 (承認番号:第体30-5号)の下で実施された。研究対象者には書面および口頭にて説明をおこない、同意書に署名を得た。

  • 河合 恒, ゴン ルイ, 今村 慶吾, 江尻 愛美, 大渕 修一
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 04
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    我々は日常生活における歩行速度測定に着目し、スマートフォン内蔵のGPSを用いた歩行速度計測アプリ を利用して、屋外での日常生活歩行速度測定に関する研究を行ってきた。しかし、GPSを用いた計測は屋外でのみ可能であり、フレイルの評価には屋内での日常生活歩行速度測定も有用であると考えられる。本研究では、屋内歩行計測が可能なアンクルバンド型加速度計による日常生活歩行速度測定の妥当性を検証するために、アンクルバンド型加速度計とスマートフォン内蔵 GPSによる日常生活歩行速度の一致度について検討した。

    【方法】

    地域高齢者のコホート「お達者健診2011」の2022年調査において、アンクルバンド型加速度計による日常生活歩行速度測定の参加者を募った。参加者にはアンクルバンド型加速度計 (WALK X, ACOS社製)を配布し、歩行速度 (WALKX歩行速度)を分単位に測定した。スマートフォン利用者には内蔵GPSによる歩行速度計測アプリを各自のスマートフォンにインストールしてもらい、ステップカウンタが安定歩行を検出した際に歩行速度 (GPS歩行速度)を計測した。GPS歩行速度は分データに分割し、WALKX歩行速度と時間でマッチングした。連続した時間に計測された歩行速度は平均値を算出し、WALKX歩行速度とGPS歩行速度のペアデータを作成した。統計解析は2つの歩行速度のPearsonの相関係数、級内相関係数 (2,1)、Bland-Altman Plotを用いた。

    【結果】

    2つの歩行速度がマッチングできた分析対象者は99名 (男性38名、女性61名、平均年齢 (標準偏差):71.5 (4.9)歳)で、 1629ペアデータを作成した。1人あたりのデータ数の平均は16.5データ、1データあたりの歩行距離の平均は358.6mであった。WALKX歩行速度とGPS歩行速度の相関係数r=0.735、級内相関係数ICC(2,1)=0.538であった。WALKX歩行速度-GPS歩行速度を縦軸としたBland-Altman Plotは負の方向へ偏った分布を示した。WALKX歩行速度-GPS歩行速度の平均値は-0.179m/sであった。

    【考察・結論】

    WALKX歩行速度とGPS歩行速度は高い正の相関を認めたが、一致度は中程度であった。WALKX歩行速度は GPS歩行速度に比べて約0.18m/s遅く、加算誤差があることがわかった。したがって、アンクルバンド型加速度計とスマートフォン内蔵GPSで測定した歩行速度は、適切な補正を行うことで比較・交換が可能であることが示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会の承認を受けて実施した (承認番号:R22-094)。本研究の参加者には、本研究について口頭および説明文書にて研究内容について説明し、書面にて同意を得た。

  • 藤井 一弥, 原田 健次, 森川 将徳, 西島 千陽, 垣田 大輔, 島田 裕之
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 05
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    就労やボランティアなどのproductive activity はwell-beingの改善に寄与すると報告されている。近年、well-beingは認知症発症に対する保護因子となることも報告されており修正すべき重要な因子である。しかし、認知機能が低下したハイリスク者においてもproductive activityがwell-beingの改善に寄与するかは不明である。そこで、本研究はMild Cognitive Impairment (MCI)を有する高齢者におけるproductive activityとwell-beingの関連性について明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    対象者はMCIを有する地域在住高齢者762名 (平均年齢74.7± 5.5歳;女性44.6%)とした。認知機能評価は、記憶、注意、実 行機能、処理速度で構成される多領域認知機能テストを実施し、 1つ以上の認知領域で、学歴・年齢で調整した基準値を下回った場合をMCIと定義した。Well-beingは生活満足度の指標であるLife Satisfaction Scale(LSS)を用いて評価した。LSSは13項目の質問を4件法 (1点:まったく満足してない~4点:とても満足している)で回答する指標である。得点が高いほど生活満足度が高いことを示す。LSSは合計点39点をカットオフ値として二値化した。本研究では、1)有償労働、2)ボランティア、3)子供の世話、4)他者の支援をproductive activityとして定義し、過去1年間における従事を聴取した。LSSを従属変数、 productive activityへの従事を独立変数としてwell-beingに関連するproductive activityを二項ロジスティック回帰分析にて検討した。共変量は年齢、性別、病歴、独居、世帯収入、教育歴とした。

    【結果】

    MCI高齢者におけるLSS≧39点の割合は、45.7%であった。各 productive activity のLSSに対するオッズ比 (Odds Ratio: OR)と 95%信頼区間 (Confidence interval: CI)は、有償労働 (OR:0.80、 95%CI:0.55-1.15)、ボランティア (OR:1.75、95%CI: 1.26-2.44)、子どもの世話 (OR:1.48、95%CI:1.08-2.03)、他者の支援 (OR:1.06、95%CI:0.73-1.53)であり、ボランティアと子どもの世話がLSSと有意な関連を認めた。

    【考察】

    ボランティアと子供の世話がMCI高齢者の生活満足度にポジティブな影響を及ぼす可能性があることが示唆された。MCI高齢者の社会参加を促す際にはボランティアや子どもの世話の実施を考慮することでMCI高齢者のwell-being改善に寄与する可能性がある。今後は縦断的な検証を行い、関係性を明らかにする必要がある。

    【倫理的配慮】

    国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認 (承認番号1440-5)を得て実施した。

  • 今村 慶吾, 河合 恒, 江尻 愛美, 笹井 浩行, 平野 浩彦, 藤原 佳典, 井原 一成, 大渕 修一
    原稿種別: 口述 1
    セッションID: O - 06
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    情報通信技術 (ICT)を利用しない高齢者はフレイルのリスクが高いことが報告されており、ICTの利用を通じた健康づくりが注目されている。一方で社会的孤立状態にある高齢者は健康情報へのアクセスが制限されやすいためフレイルになりやすいことが知られている。しかし、社会的孤立状態にある高齢者においてICTの利用がフレイルのリスクを抑えられるかについては十分に検討されていない。そこで本研究では、地域在住高齢者においてICT利用と社会的孤立の組み合わせとフレイルの発生との関連を縦断的に調査することを目的とした。

    【方法】

    地域高齢者を対象とした包括的健康調査「板橋お達者健診 2011コホート」の2015年または2016年調査のいずれかに参加し、ベースライン時にフレイルでなく、かつ2023年まで毎年実施された追跡調査に参加した782名(女性:59.1%、平均年齢:72.5歳)を解析対象とした。フレイルは基本チェックリスト (KCL)で評価した。ICTの利用はJST版活動能力指標の「新機器利用」の4つの項目で評価し、4つ全て使用できると回答した場合を満点群、それ以外を非満点群と定義した。社会的孤立は 6項目のLubben social network scale短縮版で評価し、12点未満を社会的孤立と定義した。そしてICT利用と社会的孤立の組み合わせから対象者を4群に分類した。アウトカムはフレイルの発生とし、追跡調査でKCLが8点以上になった場合をフレイルと判定した。社会的孤立と情報通信技術の利用の組み合わせとフレイルの発生との関連ではCox比例ハザード回帰分析を行った。

    【結果】

    追跡期間中 (中央値:84カ月)に225名 (28.8%)でフレイルが認められた。非社会的孤立×満点群を参照群とした場合、社会的孤立の有無に関わらず、ICT利用の非満点群は有意にフレイルの発生と関連していた(非社会的孤立×非満点群;ハザード比 (HR):1.49、95%信頼区間(CI):1.04-2.14、社会的孤立×非満点群;HR:1.95、95%CI:1.32-2.89)。一方で、社会的孤立状態にあっても、ICT満点群は有意な関連を示さなかった(社会的孤立×満点群;HR:1.33、95%CI:0.87-2.04)。

    【考察】

    ICTの非利用は社会的孤立の有無に関わらずフレイルの発生と関連していた。しかし、社会的孤立状態にあってもICTが利用できていた高齢者は関連を示さなかったことから、社会的孤立状態にある高齢者に対してICTの利用がフレイル対策に有用である可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は,東京都健康長寿医療センター研究所の倫理審査委員会の承認を得て実施したものである (承認番号迅7, 迅18).また,本研究の対象者には書面にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.

口述 2
  • 村上 達典, 今岡 真和, 中村 美砂, 久保 峰鳴, 一ノ瀬 航, 高松 昌太朗, 伊藤 里紗, 近藤 颯人, 西居 壱真, 松本 凱貴
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 07
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    加速度計による客観的睡眠評価と質問紙による主観的睡眠評価を行い、地域在住高齢者の身体的プレフレイルとの関連を検証した。

    【方法】

    地域在住で60歳以上の高齢者34名を対象に、同地域で実施したヘルスチェックの結果を分析した。

    身体的フレイルの評価はFriedらの提唱した体重減少、疲労感、活動量低下、歩行速度低下、握力低下、の5項目 (CHS基準)より、1つ以上の該当でプレフレイル群、該当無しでロバスト群とした。

    客観的睡眠評価は腕時計型活動量計 (Fitbit AltaHR)を3~7晩着 用して睡眠を行い、睡眠時間が中央値を示す日の睡眠時間 (分)、睡眠効率 (%)、睡眠潜時 (寝つきの時間) (分)、中途覚醒 (分)、 徐波睡眠 (深い睡眠)割合 (%)を算出した。

    主観的睡眠評価はピッツバーグ睡眠質問票より総合得点が5点以下を睡眠良好、6点以上を睡眠不良とした。

    統計解析は、プレフレイル群とロバスト群において、連続変数である客観的睡眠評価はMann-WhitneyのU 検定を、カテゴリ変数である主観的睡眠評価はPearson のカイ2乗検定で比較した。副次的解析として身体的プレフレイルの下位5項目それぞれの該当、非該当においても同様の比較を行った。

    【結果】

    プレフレイル群は21名 (61.8%)であり、ロバスト群は13名 (38.2%)であった。客観的睡眠評価である睡眠時間は (プレフレイル群/ロバスト群で表記。数値は中央値 (四分位範囲))417.0 (380.0-455.5)分/431.0 (359.5-460.0)分、睡眠効率は88.0 (87.0-91.0)%/89.0 (85.5-90.5)%、睡眠潜時は10.0(7.5-17.5)分/8.0 (5.5-11.0)分、中途覚醒は43.0 (28.0-59.0)分/51.0 (37.0-62.0)分、徐波睡眠割合は10.0 (7.5-12.5)%/8.0(7.0-15.0)%であり、いずれにおいても2群間で有意な差は認められなかった。主観的睡眠評価の結果は、プレフレイル群で睡眠不良が13名 (61.9%)に対しロバスト群では睡眠不良が3名 (23.1%)であり、2群間には有意な差が認められた (p=0.031)。副次的解析の結果、身体的フレイル下位5項目の内、疲労感の該当者で主観的睡眠評価の睡眠不良の割合が有意に多かった。

    【考察】

    質問紙による主観的睡眠評価は疲労感を通して身体的プレフレイルと関連することが示唆された。一方、機器を用いた客観的睡眠評価をプレフレイル予防で活用するためには、測定結果の関連因子等についてさらなる検討が必要であると考える。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者には研究の目的・方法・内容を書面と口頭で十分に説明し、署名をもって同意を得た。また、本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理審査委員会の承認を得ている (承認番号: OKRU-RA0064)。

  • 福榮 竜也, 小野田 哲也, 愛下 由香里, 宇都 良大, 田中 梨美子, 中村 大輔, 下津曲 聡子
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 08
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【目的】

    フレイル表現型のうち,社会的フレイルは環境面や経済面などを含めた社会的側面を表す。先行研究より,幼少期の戦争経験により生じた住環境の変化や貧困などの被害は,社会的な構造に変化が生じ,心身の長期的な不健康状態や包括的なフレイル状態に発展すると報告されている。我々は,幼いころに経験した直接的あるいは間接的な戦争被害は,高齢期の社会的フレイルに関連すると仮説を立て調査を行った。

    【方法】

    本研究は,要介護状態と精神疾患を呈している者を除 外した126名の高齢者 (平均年齢75.5±13.5歳,女性82.6%)を 対象とした横断研究である。社会的フレイルは,先行研究より,「独居である」,「昨年に比べ外出頻度が減っている」,「友 人宅を訪ねている」,「家族や友人の役に立っていると思う」,「誰かと毎日会話をしている」のうち,2項目以上有効回答を認める者とした。戦争被害の設問は,先行研究より,「死を間近に感じた」,「睡眠障害を経験した」,「身の危険を感じた」,「死亡/負傷した人を知っている」,「引っ越しを余儀なくされた」,「水や食料が不足した」,「激しい空爆地域に住んでいた」の設問において2件法にて回答を求めた。1項目以上「はい」と回答した者を戦争被害ありとした。なお,PTSDの診断基準を参考に,戦争被害ありは,家族の戦争経験により自身の生活や健康状態に変化が生じた場合も包含した。統計解析は,社会的フレイルの有無にて群間比較を行った。また,従属変数を社会的フレイルの有無,独立変数を戦争被害の有無としたロジスティック回帰分析を行った (共変量:性別,年齢,教育歴,多剤併用)。

    【結果】

    社会的フレイルは33名 (該当割合26.1%)であった。社会的フレイル群は非社会的フレイル群と比較して戦争被害を有する割合が高かった (P=0.002)。ロジスティック回帰分析の結果,戦争被害と社会的フレイルの調整モデルのオッズ比は3.34であった (95%信頼区間1.29-8.70,P=0.012)。

    【考察,結論】

    戦争被害を有することは社会的フレイルの該当割合の高さに関連した。幼いころに経験した戦争被害によるトラウマ体験や生活様式の変化などは,高齢期の社会的フレイルに関連する可能性がある。高齢者において,幼いころの戦争被害を理解することは,社会的フレイルを予防するための知見になるかもしれない。

    【倫理的配慮】

    当院倫理委員会の承認を得た(承認番号 202204)。調査に先立ち,プライバシーは固く守られること,研究の参加は任意であること,研究の参加を同意した後でも辞退は可能であることを説明し,対象者から書面で同意を得た。研究趣旨と戦争経験に対する設問があることを事前に説明し,精神的苦痛を与えぬよう配慮した。調査による心理負荷を考慮し,専門家による相談窓口を設け,必要に応じてフォローができる体制を整えた。

  • ―基本チェックリストを使用した実態調査-
    鬼木 貴也, 飛永 有美子, 川端 春輝
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 09
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【目的】

    近年では機械化・自動化の進展,移動手段の変化等によって,身体活動量が減少しやすい社会環境にあり,運動習慣者の割合が横ばいから減少傾向であることが問題とされている.今回,フレイルに陥らない高齢者は,どのような運動を行っているのか実態調査を行い,運動の頻度や時間,運動種目とロバストとの関連性について検証し,フレイル予防に対する運動指導の一助とすることを目的とした.

    【方法】

    対象は健康教室に参加されている65歳以上でデータに欠損値がない115名(年齢76.5±5.8歳)とした.フレイル状態は基本チェックリストを用いて評価を行い,3点以下をロバスト群(62名,75± 5.6歳)4点以上を非ロバスト群(53名,78.4±5.5歳)とした.在宅運動については独自で考案したアンケートを用いて,運動の有無, 1週間の運動回数,1回の運動時間,運動の種類を調査した.運動の有無については「身体活動以外で体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施しているもの」と判断できるもの以外は「運動なし」と判定した.運動の種類を「ストレッチ」「筋力トレーニング」「ウォーキング」「ジム」「スポーツ」「集団体操」に分類した.運動の有無,運動の種類をχ²検定,1週間の運動回数,1回の運動時間をMann-WhitneyのU検定にて比較した.また,ロバストに与える影響を検討する為に,従属変数をロバストの有無,独立変数を運動の有無,1週間の運動回数,1回の運動時間,運動の種類とし,ロジスティック回帰分析を行った.有意水準は5%とした.

    【結果】

    非ロバスト群と比較して,ロバスト群は運動の有無,1週間の運動回数,1回の運動時間,「ウォーキング」「スポーツ」「集団体操」が高値を示した.(p<0.05)ロジスティック回帰分析では関連因子として「ウォーキング」(Odds:6.09,95%CI:1.7-21.8)「スポーツ」(Odds:9.99,95%CI:1.90-52.5)「集団体操」(Odds: 6.04,95%CI:1.21-30.2)が抽出された.

    【考察】

    今回の結果より,地域高齢者におけるロバストに与える影響として,在宅運動の中でも一人で行う運動だけでなく,他者と共に運動が行える「ウォーキング」「スポーツ」「集団体操」が選択される結果となった.その理由として,他者との交流の機会を得やすいことによって,身体的フレイルのみでなく,認知的フレイル,社会的フレイル等の予防にも貢献すると考える.よって,フレイル予防の運動指導には,個別の運動のみでなく,社会的交流を伴う運動も促していく必要があると考える.

    【倫理的配慮】

    本研究は,新吉塚病院倫理委員会にて承認を受け,対象者に対して研究内容を口頭および書面にて十分説明し同意を得て実施した.

  • 横手 翼, 西村 天利, 大淵 雅子, 西 淳一郎
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 10
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    本研究の目的は、高齢心血管疾患患者において、退院後のうつ症状の変化が再入院に対して影響するのかを調査することである。

    【方法】

    本研究は後ろ向き縦断研究である。当院に心疾患で入院し退院後、外来心臓リハビリテーション (以下、リハ)に通院を継続している65歳以上の者を対象とした。再入院は、退院後1年間の心血管疾患による治療を要する入院と定義した。うつ症状は、退院前日および外来心リハ終了時にPatient Health Questionnaire-9を用いて評価し、維持・悪化群と改善群に分類した。うつ症状の変化2群における再入院率の差はカプランマイヤー曲線を作成しログランク検定を用いて解析した。うつ症状の変化と再入院との関連はCox比例ハザードモデルによって解析した。調整因子は年齢、性別、体格指数、認知機能、疾患の種類、退院前の腎機能、通院期間、退院後の運動習慣の有無とした。

    【結果】

    退院時のうつ症状が0点であった例を除外し、最終解析対象者は98名 (平均年齢74.4±5.9歳、女性31名)であった。維持・悪化群は34名 (34.7%)、改善群は64名 (65.3%)であった。再入院の割合は維持・悪化群が11名 (32.4%)、改善群が14名(21.9%)であった。うつ症状改善の有無において、強心薬投与日数、呼吸器装着日数、退院時血清アルブミン値、退院時握力、退院後の握力改善率、退院後の運動頻度に有意差がみられた。Cox比例ハザードモデルでは、維持・悪化群と比較して改善群における再入院のハザード比は0.41 (95%信頼区間:0.16-0.90)であり、調整後のハザード比は0.30 (95%信頼区間:0.11-0.87)であった。

    【考察】

    うつ症状は自律神経異常を引き起こし、心血管疾患の発症に影 響することが先行研究によって報告されている。さらに退院後にうつ症状が改善しない者は、疾患自体が重症であること、低栄養かつ運動頻度が少なさにより身体機能の改善が乏しいこと、などによって再入院リスクを高めたと考えられる。したがって、うつ症状が改善しない場合は、より専門的な介入が必要である可能性がある。今後は外来心リハ期間におけるうつ症状の改善を一つの目標とし、うつ症状が改善しない患者に対する対策の検討が必要である。

    【倫理的配慮】

    研究に関する情報および説明と同意は、厚生労 働省のガイドラインに基づき、当院のホームページで公開され、当院の倫理委員会の承認を受けた (承認番号:20126)。

  • 藤井 紀文, 塚本 学, 池尻 好聰, 吉岡 徹, 木藤 伸宏, 沖本 信和
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 11
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    骨粗鬆症治療において、運動と栄養は重要である。運動や栄養が骨に与える影響を調査した報告の多くは、対象者を"骨粗鬆症患者"という1つの集団とする場合が多い。しかし、骨粗鬆症患者の骨密度や骨微細構造の状態は様々である。そのため、骨粗鬆症患者の骨の状態に応じた運動や栄養の介入は、治療効果を引き出すために重要である可能性がある。本研究目的は、骨粗鬆症と診断された閉経後女性の集団を骨密度・骨微細構造の状態に応じてサブグループに分類し、各群の特徴を明らかにすることとした。

    【方法】

    シムラ病院の骨粗鬆症外来で骨粗鬆症と診断された閉経後女性 113名を対象とした(72.4±8.8歳)。脛骨の体積骨密度および骨微細構造評価にはHigh Resolution peripheral Quantitative CT (HR-pQCT)が使用された。HR-pQCTによって得られたパラメータ (体積骨密度、骨量、骨梁幅、骨梁数、骨梁間距離、皮質骨厚、皮質骨面積、皮質骨多孔性)を用いて、階層的クラスター分析を実施した。被験者間の非類似度はユークリッド平方距離により算出し、サブグループ間の非類似度の定義にWard法を用いた。サブグループの特徴を明らかにするために、各群の各パラメータに対して一元配置分散分析を行い、多重比較検定を行った。有意確率5%未満を統計学的に有意とみなした。

    【結果】

    階層的クラスター分析の結果、4つのサブグループに分類された (A群[n=10]、B群[n=27]、C群[n=32]、D群[n=44])。すべての群において年齢、身長、体重に有意な差はなか った。B群は海綿骨・皮質骨体積骨密度が高く、皮質骨多孔性が低い特徴を示し、相対的に良好な骨の状態を示した。一方で、 C群においては、海綿骨・皮質骨体積骨密度が低く、皮質骨の多孔化が強い特徴を有しており、より骨折リスクの高い群であることが示唆された。A群とD群については、全体的にB群とC群の中間に位置する骨の状態を示した。

    【考察・結論】

    本研究により、骨粗鬆症と診断された閉経後女性の集団は、骨密度・骨微細構造の状態に応じて4つのサブグループに分類されることが明らかとなった。C群のような、特に骨の状態の悪い者に対しては、より個別的な運動や栄養の対応が必要である可能性がある。また、今後行われる骨粗鬆症に関する縦断的研究では、骨粗鬆症患者を1つの集団とするのではなく、骨の状態に応じたサブグループごとに治療効果を検証する必要があると思われた。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき、シムラ病院の倫理審査委員会の承諾を得て行われた (承認番号2023-1)。

  • 池上 泰友
    原稿種別: 口述 2
    セッションID: O - 12
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ)退院後、生活期の装具利用者が安心して暮らせるようにするには常に適切な状態で使用できなければならい。しかし、装具の調整、修理に関して他者に指摘されるまで気づかないケースや作り変えのタイミングや連絡先を知らない等でそのままになっているケースがある。装具分野においては、地域の医療・介護従事者と関りをもつことは重要である。そこで今回、回復期リハの脳血管疾患患者において、退院後の装具外来受診に医療・介護サービスの利用が影響するのか検討する。

    【方法】

    対象は2021年4月から2022年3月に当院で装具を作製し、自宅退院した脳血管疾患患者75名とし、カルテを後方視的に分析した。退院後に利用した医療・介護サービスは外来リハビリテーション、訪問リハビリテーション、訪問看護、デイケア・デイサービスとした。主要アウトカムを医療・介護サービスとし、交絡因子を調整するために年齢、性別、居住地に関して傾向スコア (propensity Score:PS)を用いて疑似ランダム 化を行った。PSマッチング後に装具外来の受診に関して医療・介護サービス利用の有無で群間比較を行った。尚、本研究に関して当院倫理審査委員会より承認を得た。

    【結果】

    傾向スコア法では、サービス利用の有無ではそれぞれ 17名がマッチングされた。傾向スコアマッチング後における装具外来の受診はサービス有群23.5%、サービス無群52.9%で差はなかった。退院後装具外来までの受診日数はサービス有57.8±22.1日、サービス無128.5±150.5日で差はなかった。

    【考察・結論】

    医療・介護従事者との関わりにより生活期の装具利用者が装具外来の受診につながるかは認められなかった。生活期でお医療・介護従事者との関りがあることで装具に関するサポートを受けられていたのかは今回の研究では明らかにできないが、今後家族、サービス内容を含めた検討を行っていきたいと考える。

    【倫理的配慮】

    当院倫理委員会の承認を得た

口述 3
  • 若田 哲史, 中野 英樹, 原 奈央
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 13
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    サルコペニアは加齢に伴う骨格筋減少と定義され(Rosenberg, 1989)、進行により転倒、骨折、障害、死亡などを引き起こす (Schaap et al., 2018)。また、サルコペニアは生活習慣によっても影響を受けると報告されており(Wong et al., 2008)、その中でも、特に喫煙はサルコペニアに重大な影響を与える(Locquet et al., 2021)。一方職業と生活習慣は密接に関連し、職業間で身体活動、生活習慣、生理学的特徴、および社会的要因が異なる(Tsutsumi et al., 2001)。しかし職業の中でも京都の西陣織職人の健康状態に関する報告は少ない。西陣織職人における喫煙とサルコペニアの関連性を理解することは、地域医療の観点から最も重要である。本研究の目的は、西陣織職人におけるサルコペニアと喫煙の関係を明らかにすることである。

    【方法】

    本研究は横断調査とした。対象は2022年4~12月に当施設の健康診断を受診した60歳から92歳までの167人とした。参加者のサルコペニアはAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)2019に準拠して評価された。また参加者の喫煙習慣について質問が実施された。解析は目的変数をサルコペニア、説明変数を職業、共変量を喫煙の有無、性別、年齢、退職からの年数としてロジスティック回帰分析を実施した。

    【結果】

    参加者における職業の内訳は西陣織職人、ブルーカラー、ホワイトカラー、その他の労働者で、それぞれ15人、71人、25人、 56人であった。ロジスティック回帰分析の結果、西陣織職人はサルコペニア有病者 (オッズ比=1.87、95% CI=0.89~2.11、 p=0.04)、喫煙 (オッズ比= 1.82、95% CI=0.72 ‒ 2.51、 p=0.01)、年齢 (オッズ比 = 0.22、95% CI=0.05 ‒ 4.18、p=0.00)が影響因子として抽出された。

    【考察】

    西陣織職人の健康状態についての先行研究は少ない。西陣織職人の多くは自営業であり退職を躊躇し働き続けている。また、家族経営による形態が多いことから関係者の多くは限られた学歴しか持たず、この問題の一因となっている可能性があると考えられる。Murakami et al. (2023)は個人の学歴が健康に影響を与える可能性があることを示している。西陣織職人のサルコペニアを防ぐためには、職場での戦略の促進が不可欠である。

    【倫理的配慮】

    本研究は、京都民医連中央病院臨床研究部の研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:131)。また、対象者には書面や口頭にて説明を行い、同意を得て実施した。

  • 船山 結衣, 井上 達朗, 堀田 一樹, 和泉 徹, 神谷 健太郎, 椿 淳裕, 藤田 卓仙, 窪田 杏奈, 宮田 裕章
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 14
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    本研究の目的は,地域在住中高齢者における視力低下と身体機能、特に歩行速度低下との関連を明らかにするものである.

    【方法】

    研究デザインは地域コホートの横断研究とした.対象者は 2020年1月から2023年12月にフレイル克服体力測定会に参加 した40歳以上の佐渡市民とした.視力は視力検査表を用いて測定し,標準値は1.0とした.本研究では,視力を<0.7,0.7-0.9, 1.0≦の3群に分類した.身体機能は5回立ち座りテスト,10m快適歩行速度,10m最大歩行速度を測定した.統計解析は,3群間の比較にKruskal-Wallis検定を実施した.また,5回立ち座りテスト,10m快適歩行速度,10m最大歩行速度,骨格筋量,握力に対する重回帰分析を実施した.

    【結果】

    佐渡市民269名(男性95名:年齢中央値72歳(四分位範囲65-75.5歳),BMI 23.8 (21.6-25.1) kg/m2,女性174名:年齢68 (62-73)歳,BMI 22.7(21.0-25.2)kg/m2が解析対象となった.対象者の視力は,<0.7群は66名(24.6%),0.7-0.9群は95名 (35.3%),1.0≦群は108名(40.1%)であった.快適歩行速度 (1.0≦群:1.527m/sec vs <0.7群1.432m/sec,p=0.005)と最 大歩行速度(1.0≦群 2.012 m/sec vs <0.7群 1.916 m/sec, p=0.002)ともに<0.7群は1.0≦群と比較して有意に低かった.一方で,5回立ち座りテスト,筋力,骨格筋量は3群間で有意な差はなかった.重回帰分析の結果,視力<0.7群は快適歩行速度(Ref: 1.0≦群 β=-0.09,95%CI -0.16―-0.02,p=0.008)と最大歩行速度(Ref: 1.0≦群 β=-0.09,95%CI -0.18―-0.003, p=0.04)と有意に関連した.

    【考察】

    本研究の結果から,視力低下は歩行速度の低下と有意に関連し ていた.しかしこの結果は更に縦断的な検証も必要としている.

    【考察・結論】

    本研究の結果から,視力低下は歩行速度の低下と有意に関連し ていた.しかしこの結果は更に縦断的な検証も必要としている.

    【倫理的配慮】

    本研究は新潟医療福祉大学倫理審査委員会の承認(承認番号:18558-201221)を得て実施された.

  • ~MRIによる基礎的事項の検討と地域在住中高齢者での検証~
    古澤 芽依, 井上 達朗, 堀田 和樹, 児玉 直樹, 櫻井 典子, 和泉 徹, 神谷 健太郎, 椿 淳裕, 藤田 卓仙, 宮田 裕章
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 15
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    本研究の目的は,健常若年女性の母指球筋が全身の骨格筋量を反映するか否かを検索し(研究1),開発した母指球筋指標が地域在住中高齢者の筋量ガイド指標として妥当か否か(研究2)を検証することにある.

    【方法】

    研究1の対象者は右利き健常女子大学生5名 (平均年齢 20.8±0.8歳)である.まず,3テスラMRIを使用して母指球筋 を撮像し(T2強調画像,スライス厚3mm,30スライス),母指球筋の容積(cm³ )を測定した.同様に全身の骨格筋量の指標として大腿筋(大腿四頭筋,ハムストリングス)の容積も測定した。次に,母指球筋測定検査を臨床的に確立するために、超音波画像を用いて母指球筋最大厚(mm)を計測し,母指球筋容積および大腿筋容積との相関関係を明らかにした.研究2では,2021年12月から2023年12月の間にフレイル克服体力測定会に参加した40歳以上の新潟県佐渡市在住の女性地域住民118名(年齢中央値68歳、四分位範囲63.3-74歳)を対象とした。そして、研究1の母指球筋厚測定の妥当性を検証し、全身の骨格筋量ガイド指標としてはBIA法で測定した四肢骨格筋量(ASM)と母指球筋厚との相関性を検索した.

    【結果】

    研究1,若年女性のBMIは 20.4±2.1kg/m²であった. MRIで撮像された母指球筋容積(21.4±3.4cm³ )は大腿筋容積 (3589.8±233.9cm³ )とr=0.96 (p=0.015)の正相関,母指球筋厚 (16.6±1.7mm)とはr=0.88 (p=0.047)と正相関した.研究2の解析対象者のBMIは 22.5±3.0kg/m²であった.超音波で測定された母指球筋厚実測値とASM実測値 はr=0.202 (p=0.027)の相関に留まった.そこで,母指球筋厚とASMをそれぞれ身長の二乗(m² ),体重(kg),BMI (kg/m² )で補正したところ,体重補正 (r=0.47,p<0.001),BMI補正(r=0.58,p<0.001)と臨床的優位性が高まった.

    【考察】

    本研究の結果から,母指球筋は全身の骨格筋量を反映する臨床的ガイド指標との有用性が確認された.また,実装する際にはBMIで補正した母指球筋厚によるBMIで補正した四肢骨格筋量推定が最も有用性が高いと判断される.

    【考察・結論】

    本研究の結果から,母指球筋は全身の骨格筋量を反映する臨床的ガイド指標との有用性が確認された.また,実装する際にはBMIで補正した母指球筋厚によるBMIで補正した四肢骨格筋量推定が最も有用性が高いと判断される.

    【倫理的配慮】

    新潟医療福祉大学倫理審査委員会の承認(承認番号:18558-201221)を得て実施された.

  • 神谷 俊次, 土橋 仁, 中野 暖, 戸次 鎮宗, 佐野 有哉, 天野 恵介, 川口 巧, 松瀬 博夫
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 16
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    フレイルは肝疾患患者の予後に関わる.我々は運動療法が肝細胞癌 (HCC)患者のサルコペニアを改善させることを報告してきたが、フレイルの改善効果は不明である.本研究の目的は,肝動脈化学塞栓術 (TACE)を施行した入院HCC患者に対する運動療法がフレイルに及ぼす影響を検討することである.

    【方法】

    本研究は、多施設共同後ろ向き観察研究である。TACEを受けたHCC患者165名のうち、年齢、性別、BMIを共変量とした傾向スコアマッチングにて調整したExercise群58名とNon-exercise群 58名を解析対象とした。レジスタンストレーニングと持久力トレーニングを組み合わせた運動療法を20- 40分/日、週5回実施した。フレイルはLiver Frailty Index (LFI)にて評価した。入院時と退院時のLFIの差をΔLFIとし、両群を比較した。さらに、LFI改善に関わる因子をロジスティック回帰分析にて検討した。

    【結果】

    Exercise群のΔLFIはNon-exercise群と比較して有意に改善していた (-0.23 vs. -0.03, P=0.0067).ロジスティック回帰分析では、Exercise (OR 2.52, 95%CI 1.11-5.91, P=0.0268)、女性 (OR 3.08, 95%CI 1.28-7.99, P=0.0328)、およびChild-Pugh class A (OR 3.34, 95%CI 1.21-9.77, P=0.0193)がLFI改善の独立因子であった.Exercise群 において、転倒や肝予備能悪化などの有害事象は認めなかった。

    【考察・結論】

    本研究により、運動療法はTACEを施行したHCC患者のLFIを改善させることが明らかとなった。既報にて、Exercise群はΔLFIを有意に改善させなかったことが報告されているが、その運動内容は、ビデオを用いた在宅プログラムかつレジスタンストレーニングのみであった。本研究が、監視下でレジスタンストレーニングと持久力トレーニングを組み合わせたことがΔLFI改善の一因と考える。さらに、ロジスティック回帰分析の結果から、肝予備能が保たれている段階から運動療法を行うことが効果的なフレイル予防につながる可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守した。研究を実施するにあたり、久留米大学臨床研究センターの承認を得た (承認番号19098)。本研究は後ろ向き観察研究であり、対象者から直接文書による同意取得は行わなかったが、代わりに研究内容をホームページ上に公開し、対象者が今後の診療等に不利益が生じることなく研究参加を拒否できる機会を保障した。

  • 林 知輝, 片岡 裕貴
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 17
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    サルコペニアは退院後の再入院に相関することが示されている。しかし、先行研究では急性期病棟入院患者や地域高齢者が対象 であり、回復期リハビリテーション(以下:回リハ)病棟入院患者 を対象にしたものは少ない。

    本研究の目的は、回リハ病棟入院患者においてサルコペニアの 合併が退院後の再入院を予測するかを明らかにすることである。

    【方法】

    対象は京都民医連あすかい病院の回リハ病棟に2020年3月1日~2021年8月31日の間に入院し、自宅退院した279名とした。対象はサルコペニアの診断が可能かつ、退院後の追跡が可能なものとした。サルコペニアの定義は、2019 年アジアサルコペ ニアワーキンググループ(AWGS2019)の基準を採用した。再入院は退院日から再入院までの日数を計算し、観察期間は2020 年3月1日~2022年12月31日までとした。期間内に再入院した患者を「再入院群」、それ以外を「非再入院群」とした。再入院に対するサルコペニアの影響は、カプラン・マイヤー法にて推定し、単変量解析にはログランク検定、多変量解析にはCox比例ハザードモデルを採用した。解析には RStudioを採用した。

    【結果】

    合計131名が選出された。非再入院群は119名、男性45人 (38%)、女性74人(62%)、再入院群は12名、男性8人(67%)、女性4人(33%)であった。非再入院群では60人(50%)がサルコペニアであり、再入院群では7人(58%)がサルコペニアであった。 750日後の生存率 (再入院していない割合)は、サルコペニア群では0.87、サルコペニアなし群では0.93であった。ログランク検定より p 値は 0.63 であった。

    再入院リスクのハザード比は、サルコペニア(HR 1.74[95%CI:0.5~5.83])と男性(HR 3.00 [95%CI:0.18~11.1])で再入院リスクの増加と関連があった。整形外科疾患に基づく脳血管疾患は(HR 1.79[95%CI:0.49~6.52])であった。

    【考察】

    統計的に有意ではないが、サルコペニアは再入院リスクの増加 と関連していた。先行研究(Yang,2017)(HR1.81[95%CI:1.17~ 2.80])と比較すると点推定値での顕著な差はなくサルコペニア は、回リハ病棟退院後の再入院の予測因子となる可能性がある。また、回リハ病棟入院患者のサルコペニア有病率が50%以上である(Yoshimura,2017)ことや、入院中のサルコペニアは日常生活動作(ADL)の回復を阻害する(Yoshimura,2019)と言われていることから、サルコペニアは臨床的判断及び介入措置において考慮すべきと考える。

    【倫理的配慮】

    京都民医連中央病院の倫理委員会より承認を得た (ID:137)

    本研究は、新たに試料・情報を取得することはなく、既存情報のみを用いて実施する研究であるため、研究対象者から文書または口頭による同意は得ない。研究についての情報を研究対象者に公開 (病院内に掲示又は病院ホームページへの掲載)し、研究が実施されることについて、研究対象者が拒否できる機会を保障した。

  • 高山 拓也, 呂 隆徳, 村岡 法彦, 大谷 将秀, 横尾 英樹, 大田 哲生
    原稿種別: 口述 3
    セッションID: O - 18
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    胃がん患者においてサルコペニアは予後不良因子とされているが,術前のサルコペニアが術後長期の身体機能・QOLにどのような影響を与えるかはわかっていない.本研究では胃がん患者における術前サルコペニアの有無が術後長期の身体機能およびQOLにどのような影響を与えるかを調査した.

    【方法】

    2018年10月~2023年3月までに当院消化管外科で根治目的の手術が施行された胃がん患者のうち,理学療法が処方され,術前と術後1年に理学療法評価を実施し,データ欠損のなかった30例を調査した.調査項目は年齢,性別,身長,体重,がん進行度,既往歴,ALB値,手術情報,術前・術後1年の身体機能 (握力,歩行速度,6分間歩行距離:6MD)・QOL (EORTC-QLQ C30使用)・活動量 (国際標準化身体機能評価表Short版使用)で,サルコペニア該当群(サルコ群)とサルコペニア非該当群(非サルコ群)に分けて比較した. 解析はMann-WhitneyU検定,χ2検定を用いた.また術前・術後それぞれで6MDが400m以上の者 (6MD維持)と400m未満の者 (6MD低値),総身体活動量が600Mets・分/週以上の者 (中身体活動)と600Mets・分/週未満の者 (低身体活動)に分け,サルコペニアとの関連を調べた.

    【結果】

    サルコ群は10例,非サルコ群は20例であった.サルコ群は非サルコ群と比較して年齢が高く低体重であった(p<0.05).その他の基本情報に差はなかった.術前の身体機能はサルコ群で握力・6 MDが低く(p<0.05),術後1年もサルコ群の6MDは低かった (p<0.05).QOL・総身体活動量は術前・術後1年ともに2群間で 差はなかった.術前の6MD低値とサルコペニアは関連していなかったが,術後1年の6MD低値はサルコペニアと有意に関連していた(p<0.05).低身体活動とサルコペニアの関係も6MDと同様であった(p<0.05).

    【考察・結論】

    サルコ群で術後に1年6MD低値の者が増加した原因として,サルコ群では低身体活動群の者も増加しており,手術後に活動量が低下していたことが考えられる.サルコペニアを有する者は術後の運動耐容能・活動量が低下するリスクが高いため,退院時に本人の生活に即した運動指導やメニューの提示,定期的な運動機会を提供する必要があると考える.

    【倫理的配慮】

    本研究は旭川医科大学倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:17259).

口述 4
  • ―理学療法士だからできること―
    北澤 岬
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 19
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    近年,企業における健康経営が注目されている.経済産業省が 行っている健康経営優良法人認定制度では,大規模法人に関して「業務パフォーマンス指標の開示」項目が新たに追加された.このことからも生産性低下の防止は企業の課題となることが予測される.今回,健康経営の重要性に着目し,プレゼンティーズム(健康問題による出勤時の生産性低下)の改善から生産性の 向上に向けた取り組みを行ったのでここに報告する.

    【方法】

    当院の在宅(訪問・通所)リハビリテーション課に所属している PT・OT・STを対象に,集団ストレッチがプレゼンティーズムに与える影響を調査した.対象者は男性13名と女性9名の合計 22名である.期間は3カ月間,毎朝の朝礼時に約3分間の集団ストレッチを実施した.事前に,対象者に対してアンケート調査を行い,東大一項目版を用いてプレゼンティーズムの程度を測定した.さらに,実施1カ月ごとに,効果を評価するためにアンケート調査を行い,プレゼンティーズムの程度の変化を追跡した.以上の手順により,朝礼時の集団ストレッチがプレゼンティーズムに与える影響を定量的に評価した.

    【結果】

    当院の在宅リハビリテーション課のプレゼンティーズムは,実施前のアンケートにて平均で22.2%であった.実施後のアンケート結果を分析すると,1カ月後ではプレゼンティーズムが平均で14.3%,2カ月後は13.9%,3カ月後は14.0%であった.朝礼時のストレッチを導入後,プレゼンティーズムが有意に改善 (p<0.05)を示す結果となった.期間が長くなるにつれての変化は観察されなかったものの,導入して1カ月といった期間で改善傾向が確認された.

    【考察】

    古井ら (2018)らは,企業経営の視点では職場の労働生産性の損失コストを抑えるために,プレゼンティーイズムの改善につながる取組が重要であると指摘している.経済産業省(2016)の調査結果によれば,大企業におけるプレゼンティーズムの平均割合は15.1%と報告されている.当院の在宅リハビリテーション課では,これに比べて損失割合が高い傾向が見られていた.今回,朝礼時に集団ストレッチを実施したことで,日本の平均を下回る割合に改善され,労働生産性の向上が見込まれた.経済産業省の報告では,ストレッチや体操がプレゼンティーズムの改善につながることを示唆しており,朝礼時に集団ストレッチを実施したことが,プレゼンティーズムの改善に寄与したと考える.

    【倫理的配慮】

    アンケート内にデータの公表の可否について回答を得る質問を設け,同意を得たデータのみを使用した.

  • 山崎 貞一郎, 岩倉 正浩, 鄭 松伊, 澤口 駿, 津田 直輝, 野村 恭子
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 20
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    本邦のトラック運転者における腰痛や肩こり等の筋骨格系障害 (Musculoskeletal Disorders, MSDs)に関する報告は少なく、またMSDsが労働生産性に与える影響はこれまでに報告されていない。そこで男性トラック運転者のMSDs有訴率を記述し、プレゼンティーズムとの関連を検討した。

    【方法】

    対象は男性トラック運転者とし、調査票への回答と調査への同意が得られ、適格基準を満たした2152名を対象とした。MSDsは腰痛、肩こり、その他の関節や筋の痛みの有無、有りと回答した場合はその程度をnumerical rating scale (NRS)で尋ね、NRS6以上をMSDsありとした。プレゼンティーズム (%)はSingle-Item Presenteeism Question 東大1項目版 [100%-過去4週間の仕事の出来 (%)]で評価した。線形回帰分析を用い、 MSDsありの場合のプレゼンティーズム[β (95%信頼区間)]を 推定した。共変量は、Model1は睡眠時間、不眠症状有無、年齢、婚姻歴、同居者・子供有無、自覚的社会階層、トラック運転範囲、身体活動量、座位時間、果物・野菜・食塩・アルコール各摂取量、喫煙歴、BMIとし、Model2はこれらに加え不安抑うつ (K6)を用いた。欠損値は多重代入法で補完した。

    【結果】

    対象者の特性は年齢52歳、トラック運転時間7時間/日、運転範囲は秋田県内63%・東北内外各15%、プレゼンティーズム20%であった。MSDs有訴率は何らかのMSDが1つ以上17%、肩こり7%、腰痛6%であった。多変量線形回帰分析の結果、MSDが1つ以上ある場合のプレゼンティーズムは、 Model 1は5.11 (2.84‒7.37)であったが、Model 2では1.91(-0.26‒4.08)と有意ではなかった。腰痛、肩こりについても同様であった。事後解析としてModel2にMSDsとK6との掛け算項を追加した結果、K6が高い場合にプレゼンティーズムがより 高いという相加的な効果修飾が観察された[掛け算項のβ:5.09 (0.60‒9.58)]。

    【考察】

    本研究の男性トラック運転者におけるMSDs有訴率は先行研究と比較し低かった。不安・抑うつが高いトラック運転者を対象にMSDs改善のための介入をすることで労働生産性向上に寄与する可能性が示唆された。

    【倫理的配慮】

    本研究は秋田大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:2456)。全ての対象者に書面による説明と同意書による同意取得を行った。

  • 呂 隆徳, 髙橋 佑弥, 及川 欧
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 21
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    急性期におけるリハビリテーション治療の新しい取り組みとして、我々は心拍変動(HRV; Heart Rate Variability)に注目しており、自律神経系の変化をリハビリテーション治療効果判定の一つとして用いている。今回、当院における実際の取り組みについて報告する。

    【方法】

    対象は、当院に入院しリハビリテーションを処方された患者群。簡易型HRV測定器を用いてHRVを測定し、周波数解析を行う。 周波数解析は自己回帰法と高速フーリエ変換法の解析によって、自律神経系のバランスをグラフと数値で表示できる。リハビリテーション開始日に1回目 (ベースライン)を測定し、通常のリ ハビリテーションを行った上で、7~14日後に2回目を測定する。主にTP (total power; 自律神経系の全体パワー)、VLF(very low frequency; 交感神経系の指標)、HF(high frequency;副交感神経系の指標)、LF/HF比 (高ければ交感神経優位、低ければ副交感神経優位と見なす)のベースラインからの変化を捉え、自律神経系の変化を評価する。

    【結果】

    症例1:70代男性。閉塞性動脈硬化症。1回目(Day1)はTP157、VLF80、HF50、LF/HF比0.52。2回目 (Day11)はTP640、VLF584、HF9、LF/HF比4.60。症例2:70代男性。混合性結合組織病。1回目(Day1)はTP185、VLF71、HF44、LF/HF比1.57。2回目 (Day11)はTP103、VLF69、HF13、LF/HF比1.49。

    【考察】

    症例1は、心疾患・動脈硬化系の典型例である。ベースラインでは全体のパワーは弱めで、LF/HF比から副交感神経優位状態である。2回目の測定では1回目に比べて全体としてのパワーは増加し、交感神経系が強化されている。症例2は、がんや膠原病など全身消耗状態の典型例である。ベースラインでは全体のパワーは弱めで、LF/HF比からやや交感神経優位状態である。 2回目の測定では全体のパワー、交感神経系、副交感神経系はむしろ低下している。HRV測定は、疾病からの回復過程における自律神経系の働きを可視化することで、転帰先やリハビリテーション内容の検討、運動負荷量の調整が適切な時期に行え、活動量の調整およびADLの低下予防、ヘルスプロモーションとしての役割が期待される。

    【倫理的配慮】

    ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護に十分留意した。対象者に説明を行い、同意を得た。本研究は、旭川医科大学倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号17021)。

  • 横田 俊輔
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 22
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    医療・介護現場で働く職員の人手不足は深刻であるが、腰痛は離職に繋がる原因の一つであり労働生産性にも大きく影響する事象である。当院の衛生委員会では、平成27年度より腰痛対策チームによる職員の腰痛予防に向けた取り組みを行っている。今回、5年分の取り組みについてまとめ、年度ごとの腰痛罹患率を調査した。

    【方法】

    調査期間は令和元年5月~令和5年3月までとし、職員の腰痛罹患率について各年度末にアンケートを実施した。

    腰痛対策チームは、理学療法士、介護主任2名で構成され、月 1回のミーティングで対策を協議し多部門が参加する衛生委員会で報告した。

    取り組み内容は、令和元年は負担が多い作業についてのラウンド、就業前に行う腰痛体操の見直し、令和2年度は厚労省の腰痛予防対策チェックの結果を踏まえて病棟毎の要因や対策を検討、部屋にあるチェスト撤去による作業環境の改善、令和3年度はスライドボード普及の取り組みとラウンド、令和4年度は腰痛がある職員のメディカルチェック、令和5年度は希望者全員のメディカルチェックと、その後の研修会によるフォロー (全8回)を実施した。令和4年度以外は毎年度腰痛に関する研修会を実施。その他、マッスルスーツや立位補助機のデモなど福祉用具の導入も検討した。

    【結果】

    腰痛罹患率は、令和元年55% (看護57%、介護71%、他44%)、令和2年度49% (看護51%、介護67%、他30%)、令和3年度48% (看護46%、介護62%、他37%)、令和4年度53% (看護60%、介護73%、他35%)、令和5年度48% (看護50%、介護62%、他 38%)であった。

    【考察】

    令和2年度までに腰痛リスクの高い項目の洗い出しとチェスト撤去により作業スペースが確保されたことで、令和3年度のスライドボード普及について促進が進み、これまで抱え上げを主としていたストレッチャー移乗について対策を講じることが出来た。一方、令和4年度に実施したメディカルチェックについては継続的なフォローがなかったこともあり業務に直接結びつきづらい点が罹患率に影響した可能性がある。令和5年度において結果を元に、移乗やオムツ交換など作業姿勢についてのフォロー研修を行い、具体的な対策を講じたことで一定の成果を上げることができたものと思われる。一方、腰痛体操の普及に関しては看護、介護職以外の実施には至っていない。今後は、病棟職員以外の取り組みも検討していきたい。

    【倫理的配慮】

    本研究は、当院倫理委員会の承認を得ている。また、アンケートは匿名とし個人を特定できる質問は除外するとともに、研究内容については当院衛生委員会で各部門より了承を得ている。

  • ~腰椎、仙腸関節の疼痛誘発テストに着目して~
    武下 真拡, 横田 俊輔, 成兼兼 結, 高野 涼太, 鈴木 浩斗, 羅津 涼太
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 23
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    当院では、病棟職員に対し腰痛軽減・予防を目的に理学療法士による運動機能テストを実施している。近年、腰痛をサブグループに分類し、それに適した特異的な介入を行う考え方が提唱されており、腰痛が腰椎由来か仙腸関節由来かの鑑別に疼痛誘発テストがしばしば用いられる。そこで、運動機能テストに疼痛誘発テストを加え、痛みの発生要因や各身体機能テストとの関連性からその有用性について検討した。

    【方法】

    対象は、当院に勤務する看護・介護職員で、今回の取り組みに参加を希望した25名(男性6名 女性19名)。理学療法士6名が 20分程度で個別に運動機能テストを実施した。

    疼痛誘発テストとして腰椎部の椎間関節ストレステスト (以下、 Spring test)でいずれかの分節に痛みがあったもの、仙腸関節ストレステスト4項目 (仙腸関節引き離しテスト、仙骨スラスト テスト、圧迫テスト、大腿後方スラストテスト)のうち2項目 に痛みがあったものをそれぞれ陽性群、なかったものを陰性群に分類した。各テストの陽性、陰性群において、①痛みの発生要因についての問診、②自動運動(前屈、後屈、側屈、回旋)の制限と疼痛有無、③股関節屈曲、SLR、足関節背屈、肋骨角の参考可動域到達の可否、④Thomas test、⑤active SLR test、⑤ Luomajokiらによるmotor control testの実施可否を調査した。結果について、Fisherの正確確率検定を用いて比較検討した(p<0.05)。

    【結果】

    Spring testの陽性群は11名 (44%)、仙腸関節ストレステストの陽性群は4名 (16%)であった。

    腰椎spring testの陽性群は、自動運動における後屈痛 (81.8%)、側屈痛 (63.6%)を伴う方が優位に多い結果となった (p<0.05)。仙腸関節ストレステストは、どの項目とも有意差はみられなかった。

    【考察】

    腰痛に関する評価は数多く報告されているが、多くの職員を対 象とした運動機能テストを実施するにあたっては解釈に戸惑うことがあり、検査種目の選定に難渋することも少なくない。今回の結果ではSpring test陽性群の当該分節の痛みが過小運動性 によるものか、過剰運動性によるものかは明らかに出来ていないが、後屈・側屈時による自動運動の痛みと関連がある事から、 joint playなどの他動運動テストを合わせて行う事で、ある程度サブグループ化した上で個別介入できる可能性が示唆された。今後は、心理社会的因子の評価を組み合わせて行う事で腰痛対策の一助としていきたい。

    【倫理的配慮】

    本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、及び、個人情報の保護について、文書と口頭で説明を行い、書面にて同意を得た。

  • ~運動機能テストと姿勢認識との関連について~
    鈴木 浩斗, 横田 俊輔, 成兼 結, 高野 涼太, 羅津 涼太, 武下 真拡
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 24
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    当院では、看護、介護職員に対し腰痛軽減・予防を目的に理学療法士による運動機能テストを実施している。一昨年の事業では参加者の多くがスウェイバック姿勢であったことから、各運動機能テストとの関連性と姿勢認識について調査し対策の一助とする。

    【方法】

    対象は、当院に勤務する看護・介護職員で、今回の取り組みに参加を希望した25名 (男性6名 女性19名)。理学療法士6名が個別に運動機能テストを実施した。

    姿勢認識の評価は、Kendallの分類を参考に、正常・後弯前弯・フラットバック・後弯・スウェイバックの5つについて参加者にイラストを用いて説明した後、自分がどの姿勢に該当すると思うかを聴取した。

    姿勢評価は、壁またはストレッチポールを後頭隆起又は骨盤に垂直に当て、腰椎および頭部、大転子の位置関係から姿勢を評価し、上記5つの分類で判定した。

    スウェイバック姿勢を陽性群、非陽性群に分け、①痛みの発生要因についての問診、②自動運動(前屈、後屈、側屈、回旋)の制限と疼痛有無、③股関節屈曲、SLR、足関節背屈、肋骨角の参考可動域到達の可否、④Thomas test、⑤active SLR test、⑤ Luomajokiらによるmotor control testの実施可否を調査した。結果について、Fisherの正確確率検定を用いて比較検討した(p<0.05)。

    【結果】

    姿勢認識では、後弯11名 (41%)、後弯前弯7名 (26%)が多くス ウェイバックは3名 (11%)であった。一方、実際の姿勢評価で はスウェイバック10名 (40%)、後弯前弯9名 (36%)が多かった。スウェイバック陽性群と非陽性群では、motor control test の四つ這いから尾側への移動において全員が実施不可であった ( p<0.05)。また、どの場面で腰痛を感じるかの問いに対しては、「たまに」と回答した割合が4名 (40%)と非陽性群0名に対して優位に多い結果となった (p<0.05)。

    【考察】

    スウェイバック姿勢は、日常生活の習慣と関連が深く、靭帯や関節包などの非収縮組織に依存した姿勢と言われている。実際にスウェイバックと認識している参加者は少なく、motor control testの結果からも、自身の静的・動的アライメントの認識にズレが生じている可能性が示唆された。看護、介護業務による繰り返しの負荷によって知らずのうちに痛みを生じている可能性もあり、姿勢認識を高め、腹横筋や多裂筋といった収縮組織を働かせることで、理想的な静的・動的アライメントを獲得していく必要がある。

    【倫理的配慮】

    本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、及び、個人情報の保護について、文書と口頭で説明を行い、書面にて同意を得た。 本研究は、倫理委員会の承認を得て、被検者が特定されないよう配慮した。

  • 田島 敬之, 原田 和弘, 齋藤 義信, 武田 典子, 小熊 祐子
    原稿種別: 口述 4
    セッションID: O - 25
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】

    国民の身体活動実践を支援するツールとして,厚生労働省が2013年に策定した「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(現指針)があり,現在は新指針へ改訂作業中である.これらの指針の認知し,理解することは,身体活動の信念や行動意図を介して身体活動の促進に寄与できる可能性がある.ただしこの仮説は横断的検討に留まり,因果関係が明確でない.本研究では,指針の提示が知識,信念,行動意図,身体活動量に及ぼす影響を検証した.

    【方法】

    社会調査会社の登録モニターを無作為抽出し,適格基 準(20歳~64歳の男女,現指針の認知がなく身体活動制限のな い者)を満たす1333名を対象とした.介入前(T1)調査では,指針の知識,身体活動の信念,行動意図,身体活動量,ヘルスリテラシー,個人属性をオンライン上で調査した.その後,現指針提示群,新指針案提示群(厚労科研研究班案),食事バランスガイド提示群(対照群)に無作為割付し,提示資料の熟読を求めた.介入直後(T2)と1週間後(T3)調査では,知識,信念,行動意図をオンライン上で再調査し,T3時点は身体活動量も調査した.統計解析は,知識,信念,行動意図,身体活動量をアウトカムとし,提示群,時点,提示群×時点の交互作用項,ならびに調整変数に個人属性を投入した線形混合モデルを実施した.さらに指針の提示が知識の変容を媒介して,信念,行動意図,身体活動量の変容に影響を及ぼすか共分散構造分析で検討した.

    【結果】

    現指針提示群は対照群よりT2時点の知識と行動意図, T3時点の知識と余暇身体活動時間が有意に高かった.加えて知識の変容は,信念,行動意図,身体活動の変容をもたらしたが,知識,信念の変容に及ぼす影響は,ヘルスリテラシーが低い群 で顕著であった.一方,新指針案提示群は対照群よりT2時点の知識が有意に高かったが,知識の変容と信念,行動意図,身体活動の変容との関係は明確でなかった.

    【結論】

    現指針の提示は,知識,信念,行動意図の変容を介し て身体活動の促進に寄与できる可能性がある.ただしヘルスリテラシーが知識,信念の変容に修飾作用を及ぼす可能性があり,指針を活用した身体活動介入ではこの点に留意が必要かもしれない.一方で新指針案の提示は,介入直後の知識の向上に寄与するに留まった.本研究で用いた新指針案は最終版ではないため,さらなる改良を経て行動変容の促進に寄与できる指針となることが期待される.

    【倫理的配慮】

    本研究は,神戸大学大学院人間発達環境学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号:709).インターネットによるアンケート調査の最初のページ (Web 画面)で,本研究の説明した画面を提示し,内容を十分理解した上で研究参加に同意が得られる場合のみ,次ページ以降のアンケート画面に進むよう教示した.

口述 5
  • 東野 一成, 瀧口 述弘, 永田 達, 杉山 主馬, 島村 麻希, 柴田 航輔, 江木 翔平
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 26
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    腰椎固定術患者は、術後に腰椎の可動性が減少し、腰椎前屈を伴うADLが制限されやすい。腰椎不撓性由来のADL困難感の評 価には、日本語版Lumbar Stiffness Disability Index (LSDI)が用いられ、術前と比較して術後に腰椎不撓性によるADL制限が認められることが報告されている。しかし、具体的にどのADLが制限され困難さを感じているかは明らかになっていない。制限されるADLが明らかとなれば、リハビリテーションの評価・介入、患者の退院後のADL向上に貢献できる情報になると考える。そこで、腰椎固定術後患者における術前と術後6ヶ月のLSDIを各項目別に調査した。

    【方法】

    対象は腰椎変性疾患に対して、腰椎固定術を施行された者とした。腰椎手術の既往、重篤な併存疾患を有する者は除外した。腰椎不撓性由来のADL困難感の評価にはLSDIを用いた。LSDIは腰椎前屈を伴う10項目のADL時の困難さを0点 (全く影響しな い)~4点 (全くできない)の5段階で回答する質問票である。総合得点を100点に換算し、得点が高いほど患者がADL時に困難さを感じていることを示す。評価時期は術前、術後6ヶ月とした。統計解析は、術前と術後6ヶ月のLSDIの得点に差があるかを Wilcoxonの符号付順位検定で検定した。有意水準は5%とした。

    【結果】

    46名 (男性22名、平均年齢69.7± 9.8歳、平均固定椎間数1.6)を対象とした。統計解析の結果、LSDIの得点は、術前と比較して術後6ヶ月 (p<0.05)で有意に高かった。LSDIの各項目に関して、「下着及びズボンを履く動作」 (p<0.05)、「入浴時の下半身の洗浄動作」 (p<0.01)において、術前と比較して術後6ヶ月でそれぞれ有意に高かった。

    【考察】

    本調査においても腰椎固定術後患者は、術前と比較して術後6 ヶ月に腰椎不撓性によるADL時の困難さをより強く感じていた。特に、下着及びズボンを履く動作と入浴時の下半身の洗浄動作で困難さを感じていることが明らかとなった。電気角度計を用いた体幹可動域とADLの調査で、靴下の更衣は35~50度の体幹の深屈曲の可動域を要すことが報告されている。本調査で特に困難さを感じた下着及びズボンを履く動作と入浴時の下半身の洗浄動作も、靴下の更衣と同様に体幹の深屈曲の可動域を要する動作であると考えられ、腰椎固定による体幹可動域制限によって困難さを感じたことが考えられる。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言を順守した。また、対象者には、書面及び口頭にて研究の趣旨を説明し、同意を得た上で実施した。

  • 後藤 和也, 増本 磨紀, 石井 沙織
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 27
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    近年理学療法評価に関する機器は様々なものがあり、従来の療法士個人による定性的評価に頼らない評価が増えてきている。介護予防を考える上で歩行評価は重要であるが、歩行分析を行う機器は高価なものが多く、介護保険施設などの限られた環境における定量的評価は課題となっている。技術の進歩に伴い簡便に歩行評価が可能なアプリが開発されているが、その結果と臨床で多く用いられている各種身体機能評価との関連性は検討課題である。そこで、本研究の目的は、AIを用いた歩行測定ツールである「トルト(株式会社エクサホームケア)」を使用し、身体機能評価との関連性を検討することでその歩行測定ツールの有用性を確認することである。

    【方法】

    対象は通所リハビリテーション利用中の方、22名(男性10名、女性12名)、平均年齢78.5±9.6歳であった。取り込み基準は本研究に同意が可能で認知機能に低下がなく歩行可能である者とし、除外基準は同意が得られない者及び認知機能に低下がある者とした。方法は、トルトを用いて歩行測定を行い、アプリ上で判定を行った。身体機能評価はTimed up and Go Test(TUG)、左右の握力とし、TUGは至適速度(nTUG)と最速(fTUG)で測定を行った。統計学的検定はEZR ver.1.65を使用し、有意水準は5%未満とした。トルトの点数を従属変数、身体機能評価を説明変数としてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。

    【結果】

    トルトの点数(15.2±2.2点)とnTUG (23.8±16.5秒)、 fTUG(21.1±16.0秒)においては有意な負の相関を認めた。握力 (右側16.8±10.1㎏/左側18.4±8.9㎏)は有意な相関を認めなかった。

    【考察・結論】

    本研究において、トルトと各身体機能との相関を検討した。そ の結果、TUGでは有意な負の相関を認めた。これより、トルト はTUGと関連があることが示唆された。トルトにおける歩行評価は、要介護者の転倒予防やフレイルなどにおいて有益な評価ツールになる事が考えられる。トルトは特殊な機器や環境制限等なく計測が可能であり、使用における制約がほとんどないため施設での評価でも有益なツールとなる可能性がある。しかし、本研究では対象者が少ないこと、トルトの下位項目やバランス機能や下肢筋力などその他の機能評価との関連性は不明であることなどが挙げられる。今後は、対象者数を増やし検討を続けると共に、他のフレイルやサルコペニア関連評価との相関や因果関係を明らかにしていきたい。

    【倫理的配慮】

    倫理的配慮として、対象者のご家族にデータの 使用について匿名化や適正使用に関する説明を行うとともに、対象者には口頭にて十分な説明を行い、同意を得た上で行った。

  • 堀口 怜志, 井上 直人, 井尻 朋人, 鈴木 俊明
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 28
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    我々は介護付有料老人ホームでのPTの個別介入効果を報告した (井尻,2022)。制度上、PT介入へ介護保険請求はできず、各施 設に内包されたサービスとして提供する必要がある。そのため、介護予防や転倒・誤嚥性肺炎等の発症予防に費用対効果が求められる。近年、集学的・包括的治療の効果が示されており、施設環境を考慮すると施設内活動に着目した包括的介入の効果が期待される。そこで今回、個別介入から包括的介入への変更による費用対効果を検討した。

    【方法】

    対象は介護付有料老人ホーム (56床)のR4.4~R6.3までの入居者とし、PTは提携医療機関より週5日・半日派遣された。介入方法はR4年度:全入居者に対して1回15分以上 (1回/週)の個別介入のみ、R5年度:定期評価(1回/月)へ変更、加えてカンファレンス・褥瘡ラウンド等へ参加し、包括的に介入した。費用指標は、医療機関からの派遣のため単位時間当たりの人件費のみとし、増分費用を算出した。なお時給額は令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金:時給換算 (厚生労働省)を元に 1770円/時とした。効果指標は、BI低下率・介護度低下率・誤嚥性肺炎発症数・転倒件数とし、R4年度からR5年度の増分効果を抽出した。さらに、増分費用効果比 (増分費用/増分効果)を算出し、費用対効果を評価した。

    【結果】

    平均要介護度はR4: 3.44、R5:3.32であった。増分費用は 89680円とR5年度で増加を認めた。改善を認めた各効果指標はBI低下率R4:40%、R5:17%、介護度低下率R4:7%、R5:3%、誤嚥性肺炎発生数R4:7名、R5:2名、転倒件数R4: 37、R5:44であった。増分効果はBI低下率:23%減、介護度低下率:4%減、誤嚥性肺炎発生数:5人減で、増分費用効果比は、BI低下率:3899円、介護度低下率:22420円、誤嚥性肺炎発生数:17936円であった。

    【考察・結論】

    包括的介入ではBI低下予防を主に、高い費用対効果を認めてい た。当施設のような比較的重度な入居者を有する施設においては、包括的介入へ切り替える方が、予防効果が高いことが示唆された。当報告は介護付有料老人ホームでの予防に対する、一般的な個別介入ではない新たな介入方法を提示した報告である。 1施設における小さなサイズでの検討であるため結果の一般化が困難であることや、自施設内でPTを雇用する場合とは費用率等が異なる点に留意する必要がある。

    【倫理的配慮】

    本研究にあたり、対象者の属性情報保護を厳守し、分析を実施した。また当施設におけるPT介入方法変更時には、入居者ならびに家族へ紙面を用いた説明会を開き、質疑時間を設け、否定的意見がないことを確認した。

  • 霜野 昌博, 大野 大地, 黒澤 祝, 片岡 義明
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 29
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    超高齢社会の訪れとともに,健康寿命を延伸することが求められる.健康寿命の延伸を目的とした取り組みの中で,呼気中に発声を繰り返しながらお腹を凹ませる運動である「あへあほ®体操 」を開発し,介護予防や健康増進活動を行っている.本体操は,高齢者でも習得しやすく,大人数でも取り組むことができ,ポジティブな気分の変化が得られることが利点である.しかし,「あへあほ®体操」が,加齢に伴い低下する体幹筋群の筋機能や呼吸機能に及ぼす効果は明らかになっていない.そのため,「あへあほ®体操」が体幹筋群の筋活動や呼吸機能に及ぼす即時効果を検討し,高齢者の健康寿命延伸に向けた根拠を提供することを目的とした.

    【方法】

    健常成人13名 (年齢30.0±14.4歳)を対象とした.対象者には,運動介入として10秒間「へ」・「ほ」と言いながらお腹を凹ませる「あヘあほ®体操」を10回3セット実施した.運動介入前後に,スパイロメータを用いて最大呼気時の努力性肺活量 (FVC),1秒量および1秒率を算出し,呼吸機能を評価した.同時に,最大呼気時の内腹斜筋-腹横筋,腹直筋および外腹斜筋 の筋活動量を表面筋電計にて計測した.筋活動量は最大等尺性収縮時筋活動により標準化した.さらに,運動介入前後の腹囲周囲径も測定した.統計学的解析として,運動介入前後での体幹筋群の筋活動量,呼吸機能および腹囲周囲径の比較に対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.

    【結果】

    運動介入前と比較して,運動介入後では内腹斜筋-腹横筋 (p=0.014)および外腹斜筋 (p=0.023)の筋活動量が有意に増加した.一方,腹直筋の筋活動量に有意差は認められなかった (p=0.479).呼吸機能に関して,運動介入後にはFVC (p=0.034)が有意に増加したが,1秒量 (p=0.374)および1秒率 (p=0.106)に有意差は認められなかった.さらに,運動介入後には腹囲周囲径は有意に減少した (p=0.003).

    【考察】

    体幹深層筋である内腹斜筋-腹横筋の筋活動量が即時的に増加し,「あヘあほ®体操」は通常の腹部引き込み運動と同様の傾向を示した.さらに,「あヘあほ®体操」は発声を伴う運動であるため,呼吸機能を示すFVCが有意に増加した.

    【考察・結論】

    高齢者でも習得しやすい「あヘあほ®体操」は,体幹筋群の筋機能や呼吸機能に対して即時的効果を示し,介護予防や健康増進に大きく貢献することが示唆された.

    【倫理的配慮】

    本研究は日本理学療法学会連合倫理審査委員会の承認 (承認番号:R05-007)を得たうえで,被験者に対して十分に説明した後に書面で同意を得た.

  • 岡﨑 陽海斗, 大坂 祐樹, 古谷 英孝, 星野 雅洋
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 30
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに,目的】

    閉じこもりは要介護移行率が高いため,予防が必要である.高齢者では腰椎変性疾患を罹患しやすく生活空間が狭小化することが報告されている.我々は第10回日本予防理学療法学会学術大会で腰椎変性疾患患者の生活空間は,術後に十分な改善が得られないことを報告した.しかし術後の生活空間に影響する要因は不明である.本研究の目的は,高齢者における腰椎変性疾患術後の生活空間に影響を及ぼす術前要因を明らかにし生活空間狭小化の予防に役立てることとした.

    【方法】

    研究デザインは前向きコホート研究とした.対象は腰部脊柱管狭窄症,腰椎変性すべり症,腰椎椎間板ヘルニアに対して後方除圧術または腰椎椎体間固定術を受けた65歳以上の者とした.再手術,整形疾患手術の既往,歩行不可能,都内近郊外在住者は除外した.調査項目は,生活空間の評価尺度 (LSA: Life space assessment),患者基本属性 (年齢,性別,BMI),併存疾患指数 (Charlson Comorbidity Index),要介護度,同居者の有無,固定椎間数,腰痛・下肢痛 (Visual Analogue Scale),腰痛によるADL制限 (ODI: Oswestry Disability Index),歩行に対する自己効力感 (mGES: modified Gait Efficacy Scale),30秒椅子立ち上がりテスト (CS-30),Functional Reach Test (FRT),等尺性体幹筋力 (屈曲・伸展)とした.統計解析は,術後の生活空間に影響を及ぼす術前要因を明らかにするため単変量及び多変量解析 (Stepwise)を用いた.従属変数を術後3か月のLSA (術後 LSA)とし,単変量解析で抽出された要因+基本属性を独立変数として多変量解析を行った.有意水準は,単変量解析が20%,多変量解析で5%とした.

    【結果】

    45名 (女性28名,平均年齢±標準偏差75.7±5.5歳)を対象とし た.単変量解析の結果,術前LSA (p<0.01),同居者の有無 (p=0.11),ODI (p=0.06),mGES (p=0.01),体幹伸展筋力 (p=0.15)が抽出された. 多変量解析の結果,術前LSA (p=0.03),年齢 (p<0.01),性別 (p=0.01),mGES (p=0.01)が抽出された.

    【結論】

    本研究の結果,高齢者における腰椎変性疾患術後の生活空間には術前LSAや年齢,性別,mGESが影響を及ぼすことが示された.今回,術前の筋力やバランス能力などの身体機能は生活空間に影響を与えず,歩行に対する自己効力感が要因として抽出された.このことから,生活空間の狭小化を予防するためには自己効力感に対する介入が必要だと考える.

    【倫理的配慮】

    本研究は,苑田会倫理審査委員会の承認 (承認番号第157号)を受け,ヘルシンキ宣言に基づき,すべての対象に本研究の旨と方法に関して十分な説明を行い,同意を得た後に実施した.

  • 植田 拓也, 根本 裕太, 小林 江里香, 田中 元基, 倉岡 正高, 谷出 敦子, 山中 信, 秦 俊貴, 森 裕樹, 藤原 佳典
    原稿種別: 口述 5
    セッションID: O - 31
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに,目的】

    令和元年度に多様な通いの場の推進が示された。通いの場の範囲が拡大されたことに伴い,各通いの場の目的や内容等によって対象者が異なることが考えられるが,そうした参加者の特性は十分な検討がされていない。そこで本研究の目的は,主目的による通いの場のタイプごとの参加者の特性を探索的に検討することとした。

    【方法】

    本研究の対象は,東京都内の4自治体に在住し,無作為に抽出された65~84歳の住民24,268名とし,2021年, 2022年に実施した郵送調査の回答者の内,データ欠損のない 9,775名(平均年齢;73.9±5.4歳)とした。「月1回以上参加している」と回答があった通いの場を,主目的による通いの場の類型(タイプⅠ:生きがい・楽しみ,タイプⅡ:交流 (孤立予防),タイプⅢ:心身機能の維持向上)に基づき分類した。通いの場のタイプごとの参加の有無を従属変数として,年齢,性別,フレイルの有無,精神的健康状態,主観的健康感,就労状況,最終学歴,暮らし向き,居住期間,住居形態,主観的な役割期待感を投入し,多重ロジスティック回帰分析を実施した。

    【結果】

    通いの場へ参加している者の割合は,主目的類型別 ( タイプⅠ,タイプⅡ,タイプⅢ)で,それぞれ2,845名(31.6%), 186名(2.2%),722名(8.1%)であった。タイプⅠの参加には女性,高学歴,精神的健康状態が良好,フレイルなしが正の関連を示し,月20日以上の就労,住居形態 (分譲マンション,民間賃貸),居住期間11年未満,主観的健康感が不良が負の関連を示した。タイプⅡの参加には居住期間11年未満が負の関連を示した。タイプⅢの参加には女性,年齢が高い,精神的健康状態が良好が正の関連を示し,月20日以上の就労,住居形態 (分譲マンション,民間賃貸)が負の関連を示した(p<0.05)。

    【考察・結論】

    通いの場の主目的による類型で,参加者の特性 が異なることが明らかとなった。タイプⅠは,高学歴であることや心身の健康状態が良好な高齢者が参加しており,タイプⅡ,タイプⅢは,学歴やフレイルの有無に差はなく参加していることが示唆された。一方で,タイプⅡ,Ⅲの通いの場は少ないため,タイプⅡ,Ⅲの場の立ち上げや,タイプⅠを心身機能の低下者も参加できる形にバージョンアップするような支援方策を検討する必要がある。

    【倫理的配慮】

    当該自治体が地域活動と健康に関する調査の目的で収集したデータを二次利用した。よって,本研究で使用する情報は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の「既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合」に該当し,インフォームド・コンセントを受けることを要しない。データの二次利用については,各自治体および東京都の承認を得ている (4福保高在第269号)。また本研究の実施にあたっては,東京都健康長寿医療センター倫理審査委員会の承認を受けて実施した (承認番号:2健イ事第2688号)。

口述 6
  • 野口 泰司, 小松 亜弥音, 岡橋 さやか, 金 雪瑩, 進藤 由美, 斎藤 民
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 32
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    高齢期において外出は社会参加や健康維持の点から重要であるものの、高齢者の外出場所やその多様性についての報告は乏しい。外出は自動車などの移動手段による影響を受け、車を運転ができない場合、外出場所やその多様性が制限される可能性がある。本研究は、地域在住高齢者における自身の運転での移動の制限と外出場所の多様性との関連および他の移動手段における効果修飾を検討することを目的とした。

    【方法】

    研究デザインは横断研究であり、郊外の1自治体にて要介護認 定を受けていない地域在住の高齢者で、郵送による自記式質問紙調査に回答した432名を対象とした。外出場所は Participation in ACTivities and Places OUTside Home Questionnaire (ACT-OUT)に基づき、①日常生活とセルフケアの場所 (スーパーや銀行、役所など9か所)、②医療とヘルスケアの場所 (病院や歯科など5か所)、③社会的・文化的な場所 (友人宅、寺院、博物館など12か所)、④余暇と運動の場 (公園や温泉、山河など8か所)の合計34か所について、過去1年間の訪問の有無を尋ね、合計個所数を算出、標準化した。目的変数を外出箇所数および分類別外出箇所数、説明変数を自身の自動車運転による移動の可否とし、基本属性、社会経済状況、健康状態、他の移動手段を調整した線形回帰分析を行った。

    【結果】

    対象者の平均年齢は74.8歳 (SD=6.0)、女性は52.8%だった。対象者のうち24.5%は自身で車を運転して移動できなかった。 ACT-OUTで評価された過去1年間の外出個所数は平均21.5か所 (SD=5.1)であった。多変量解析の結果、自身の運転での移動がないことは少ない外出個所数と関連した (β=-0.40, p<0.001)。外出場所の分類別では、日常生活とセルフケアの場所 (β=-0.32, p=0.007)および社会的・文化的な場所 (β=-0.44, p<0.001)と負の関連を示した。他の移動手段として、公共交通機関が利用できることはこの関連性を緩和したが、友人・家族の車への同乗による効果修飾は認められなかった。

    【考察】

    地域高齢者において自動車運転の制限は外出場所の多様性と負の関連を示し、その特徴として日常生活に関わる場所や社会的・文化的な場所への訪問が低かった。移動資源の制限を受けても外出場所が制限されないような環境整備や人的支援が必要である。

    【倫理的配慮】

    国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認のもと実施した (承認番号:1744)。

  • 田中 みどり, 菅原 基晃, 清水 隆明, 森脇 裕美子, 関原 啓介, 石井 海斗, 山本 航暉, 淵本 純平, 仁木 清美
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 33
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    一般的に60歳を超えると心機能は低下していく事が先行研究で分かっており,これを予防・改善するのは健康寿命延伸に大切である.

    【目的】

    左室の収縮性変化を体操前後で計測し,左室収縮性の改善について検証する事である.

    【方法】

    1回20分間の体操を週5回以上実施できた,地域在住の中高齢者26名 (男性6名,平均年齢69±8歳)の3か月間の体操前後で,頸動脈で得られる心収縮性指標W1を計測した.体操内容は5分のストレッチと7分30秒のレジスタンストレーニング,7分30秒の有酸素運動で構成されている.W1とは,心臓 と血管の干渉された血行力学的指標で,血圧をP,血管直径変化をUとすると,WI = (dP/dt) (dU/dt) で算出される波形の収縮期初期のピーク値である.心臓カテーテルで計測される心収縮性指標Peak dP/dtと強い相関がある.頸動脈エコーで計測できるので非侵襲的に計測できる.体操後の変化をWilcoxon signed-rank testで検定し,W1の変化率に関与する強因子を重回帰分析で検出した.

    【結果】

    W1は8884 ± 4013から 7088 ± 3358 mmHg*m/s3 (p < 0.001)と体操前の82%に低下した.W1変化率に影響する因子を他の頸動脈エコー指標と血圧,心拍数の変化率でW1との単相関を見ると,心拍数,R-F (前駆出時間に相当),Nega (下肢からの反射波),最大血流速度,スティッフネスパラメータβ (血管弾性指標)が挙げられた.これらを説明変数として重回帰分析をかけると,重相関係数R = 0.73, 決定係数R2=0.54でβと最大血流速度が残った.

    【考察】

    体操によって生じた安静時の心収縮性指標W1低下は,血管の弾性改善により後負荷が下がり,血流速度が減少したのが大きな要因と考えられた.高齢者の心拍出量の低下には,左室の拍出に対する大動脈のWindkessel機能が大動脈硬化のために低下している事が関与していると言われているが,本研究はこの現象を捉え,改善する体操の実践についての報告となる.

    【結論】

    1回20分の体操を週5回以上,3か月間継続する事で,心収縮性指標W1が下がり,安静時心収縮性のエネルギー効率の向上が示唆された.その原因となったのは,血管の弾性改善により後負荷が下がったことが大きな理由と考えられた.

    【倫理的配慮】

    研究計画書には以下の内容について記載するとともにこれを基に被験者への説明を行い,同意文書への記名をもって同意としている.

    ・研究の概要・予想される臨床上の利益及び不利益・研究協力の任意性・研究協力の撤回の自由・個人情報、研究データの取り扱いについて・研究成果の公表・研究の資金源・費用の負担・謝礼の有無・守らなければならない事項・研究者の連絡先・問い合わせ先等

  • 岡田 はな, 浅尾 章彦, 星 真行, 木村 夏実, 中野渡 達哉, 堀越 裕子, 安藤 雅峻, 植田 拓也, 曽根 稔雅, 柴 喜崇
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 34
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    社会的孤立は様々な健康状態と関連し, 死亡率を上昇させることが明らかになっている (Nakagomi A, 2023)。日本では独居高齢者が増加すると予想されており (社人研, 2024)、これに伴い社会的孤立を経験する高齢者も増加すると考えられる。社会的孤立は老年症候群を引き起こす一つの原因である。基本チェックリストの7領域はそれぞれ老年症候群のリスク要因であるが、基本チェックリストを用いてリスク要因と社会的孤立との関連を検討したものは見当たらない。そこで本研究は、社会的孤立と老年症候群のリスク要因との関連を検討することを目的とした。

    【方法】

    福島県在住の65歳以上の174名を対象とした横断研究である。 調査項目は、年齢、性別、既往歴の有無、主観的健康観、社会参加の有無、基本チェックリスト、日本語版 Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6)、K6質問票 (K6)、Japanese version of Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)である。 LSNS-6合計得点が12点未満を社会的孤立有とした (栗本ら, 2011)。基本チェックリストの下位項目 (日常生活関連動作、 運動機能、栄養、口腔機能、閉じこもり、認知機能、うつ)の各得点を算出した。年齢、性別、既往歴の有無、主観的健康観、社会参加の有無を調整変数、社会的孤立の有無を独立変数、従属変数をリスク要因の各得点とし重回帰分析を行った。

    【結果】

    MoCA-J合計得点が25点以下かつK6合計得点が5点以上の者を除外、解析対象者157名とし、社会的孤立有は13名 (8.3%)であった。重回帰分析の結果、「日常生活関連動作」、「認知機能」において社会的孤立有 (B=0.70、p<0.01)、 (B=-0.41、p<0.05)が抽出された。

    【考察】

    社会的孤立有と「日常生活関連動作」が低いこと、「認知機能」が高いことと関連した。どちらも人間関係が希薄であることが要因であると考えられた。「日常生活関連動作」ではLSNS-6と類似した人間関係に関する質問に該当したことが、「認知機能」では社会的孤立を経験している者は他者による社会的支援を受けずに生活を送っていることが考えられた。

    【結論】

    社会的孤立を経験している高齢者の対人関係の改善、特に友人における交流の機会を増やし、健康問題やリスク要因に繋がらないようにする必要があると考えた。しかし社会的孤立を経験している高齢者の孤立した背景を考慮した支援を提供するために縦断的な追及が必要であると考えた。

    【倫理的配慮】

    本研究は、福島県立医科大学倫理審査委員会に て承認された (承認番号2022-123)。参加者にはオプトアウト 手続きを行い、データ利用否認の申し出がない者を対象とした。

  • -高崎調査からの示唆-
    村山 明彦, 樋口 大輔, 齊田 高介, 田中 繁弥, 篠原 智行
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 35
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
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    【はじめに、目的】

    我々は、新型コロナウイルス感染症 (以下、 COVID-19)拡大下での地域在住高齢者の健康に関する調査を継続している (以下、高崎調査)。今回、COVID-19対策期間中に 介護保険認定に移行した地域在住高齢者の特性を調査することで、新たな知見を得ることを目的とした。

    【方法】

    2021年5月から実施した高崎調査 (以下、ベースライ ン)のデータを用いた。1815名の地域在住高齢者に対して自己記入式の質問紙調査を送付して、942名から回答を得た。また、 2023年5月からフォローアップ調査 (以下、フォローアップ)を実施して、フォローアップまで追跡が可能であった330名を対象とした。ベースラインの時点で介護保険認定を受けていた88名を除外したうえで、欠損値は多重代入法にて補完を行った。介護保険認定に移行する予測因子として、ベースラインの年齢、性別、併存疾患、家族との同居、転倒歴、簡易フレイルインデックス、生活変化の質問票 (以下、QCL)を調査した。QCLは運動量、下肢筋力、食事量、コミュニケーション機会、不安の5項目で構成されている。さらに、フォローアップにおける介護保険認定 (要支援・要介護)の有無 (以下、アウトカム)を評価した。そのうえで、ロジスティック回帰モデルを構築した。

    【結果】

    介護保険認定群 (n=25)と自立群 (n=217)の群間比較の結果、年齢とQCL (下肢の弱りの自覚)に有意差が認められた。アウトカムを目的変数、有意差が認められた2項目を説明変数 として強制投入した二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果は、年齢OR1.15(95%CI:1.06-1.25)、QCL (下肢の弱りの自覚)OR2.32(95%CI:1.24-4.36)であった。

    【考察】

    COVID-19拡大下では、地域での介護予防活動の縮小・中止が余儀なくされた。このような状況下でも、地域在住高齢者の年齢や下肢の弱りの自覚に留意し、予防に視座を置いた方策が望まれる。要支援・要介護区分ごとの解析でないという課題は否めないが、今回の知見は、新たな感染症危機の際にも援用できるかもしれない。

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言を遵守して計画され、高崎健康福祉大学研究倫理委員会審査会の承認を得た (許可番号2009号、2259号)。研究参加の同意取得は質問紙への氏名の記載をもって行った。

  • 徳永 瑞樹, 北森 太樹, 松沢 良太, 畑山 浩志, 永井 宏達
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 36
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    主観的幸福感とは、その人の人生全体の様々な要素に関する認 知的評価であり、感情的な経験も含まれるQOLの主観的な要素の一つである。 主観的幸福感は様々な要因と関連しており、 なかでも 経済状況の悪化は主観的幸福感の低下に密接に関与していることが報告されている。また、 近年では趣味活動を含む生きがいが主観的幸福感に関与することが報告されており、これらは経済状況と主観的幸福感の関連性を干渉する可能性がある。しかし、経済状況と主観的幸福感の正の関連を趣味・生きがいがどのように修飾するかは明らかでない。 本研究では、高齢者の経済状況と趣味・生きがいによる主観的幸福感への関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    本研究は、洲本市の5つの圏域のうち2圏域に住む高齢者を対象とした悉皆調査 (6128名)に基づく横断研究である。本研究では主観的幸福感、経済状況、趣味・生きがいを評価項目とした。 主観的幸福感の評価方法としては、介護予防・日常生活 圏域ニーズ調査に用いられる10点法を採用した。経済状況は、同調査に用いられる6段階のリッカート尺度にて評価した。 趣味・生きがいは、同調査に用いられる2択の質問にて評価した。統計解析は、経済状況と趣味・生きがい、主観的幸福感に関する記述統計を行った。 また、従属変数を主観的幸福感、経済状況と趣味・生きがい、経済状況 趣味・生きがいの交互作用項を独立変数とした一般線型モデルによる分析を行った。共変量として年齢、性別、独居、身長、体重、フレイル、併存疾患を投入した。 有意確率は5%未満とした。

    【結果】

    返答のあった2406名 (回収率39.3%)からデータ欠損のあるものを除外し、解析対象者は1724名となった。一般線型モデルによる分析の結果、経済状況 (p < 0.001、偏η2=0.10)と趣味・生きがい (p < 0.001、偏η2=0.01)は主観的幸福感に有意に関連していた。 同モデルにおいて、経済状況と趣味・生きがいによる有意な交互作用が確認され、経済的に苦しい人ほど、趣味・生きがいを持つことが高い主観的幸福感に関連していた (p = 0.031、偏η2=0.01)。

    【考察】

    経済状況と趣味・生きがいはそれぞれ独立して主観的幸福感に関連していた。 また、経済的に苦しい人ほど、趣味・生きがいを持つことで、主観的幸福感の低下を抑制できる可能性が明らかとなった。

    【倫理的配慮】

    研究の趣旨を書面にて説明し、調査票の返送をもって同意を得たものとした。本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会 (承認番号 第4103号 202303-189)の承認を受けて実施した。

  • 千葉 一平, 李 相侖, 裵 成琉, 牧野 圭太郎, 片山 脩, 原田 健次, 冨田 浩輝, 森川 将徳, 山城 由華吏, 高柳 直人, 須 ...
    原稿種別: 口述 6
    セッションID: O - 37
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    認知症は高齢化に伴い今後世界的な有病率の増加が予想される中、非薬物介入として身体活動の促進が注目されている。しかし、身体活動が低下しやすく認知症発症リスクも高い軽度認知障害 (MCI)を有する地域在住高齢者の活動状況や認知症発症との関連は不明である。そこで、本研究では地域在住のMCIを有する高齢者において客観的に測定した身体活動量の経時的変化と認知症発症との関連を検討した。

    【方法】

    調査開始前に認知症の発症が見られた者および身体活動データ が測定されなかった者を除くMCIを有する60歳以上の地域在住高齢者485名 (平均年齢72.6±6.3歳、女性59.0%)を対象とした。身体活動は3軸加速度計により計測し、ベースライン調査後約 60ヶ月間の歩数および強度別平均身体活動時間 (低強度身体活動時間[LPA]および中高強度身体活動時間[MVPA])を用いた。認知症発症は診療報酬明細情報 (ICD-10コード)、及び介護保険制度の認知症高齢者の日常生活自立度を用い、ベースライン調査後60ヶ月間の新規発症を追跡した。統計解析として、1)各身体活動量の変化の軌跡は集団軌跡モデルを用いて分類し、2)各身体活動量の軌跡グループと新規認知症発症の関連をLog-rank検定および多変量Cox回帰分析にて検討した。

    【結果】

    集団軌跡モデルを用いたグループ化の結果、歩数・LPA・ MVPAはいずれも2群 (高活動群、低活動群)に分類され全ての群で顕著な変化なく推移した。歩数において高活動群は8000歩/日前後、低活動群は5000歩/日前後であった。MVPAは高活動群で50分/日前後、低活動群で30分/日前後であった。追跡期間中に54名の新規認知症発症が見られた。Log-rank検定の 結果、歩数 (p=0.005)およびMVPA (p=0.016)の高活動群で有意に認知症発症が少ない傾向が見られた。多変量Cox回帰分析の結果、全ての身体活動変数で活動量の軌跡と認知症発症に有意な関連は見られなかった。

    【考察・結論】

    身体活動の経時的変化では低活動や高活動の2群が抽出され、顕著な活動の増減を示す群は抽出されなかった。身体活動の経時的変化と認知症発症に関して、本研究では明らかな関連は認めなかったが、活動が多い群では認知症発症が少ない傾向が見られた。今後はより大規模な集団での観察により、介入方法の検討が可能になると考える。

    【倫理的配慮】

    本研究の実施にあたり国立長寿医療研究センター倫理委員会の承認を得た。 (承認番号:1440‒2)

口述 7
  • 今岡 真和, 肥田 光正, 中村 美砂, 堺 景子, 安在 絵美, 市瀬 嵩志, 橘 伸彦, 程 彦, 長谷川 芳則
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 38
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    本研究は地域在住高齢者を対象に、対面による週1回の運動プログラムのみ参加群と、運動プログラムに加えてソイプロテインを毎日摂取する群におけるランダム化比較試験を行い、身体的プレフレイル有症の改善および運動機能の改善効果に違いがあるか検証することとした。

    【方法】

    対象は60歳以上の参加同意した87名 (女性68名)、平均年齢 75.5±6.3歳とした。運動実施期間は3ヵ月とし、週1回1時間の運動教室を全10回実施した。また、ランダムに2群割り付けを行い運動教室参加のみの教室群43名 (以下:教室群)、教室参加に加えソイプロテイン (20g/日)を90日間摂取する摂取群44名 (以下:摂取群)とした。

    測定項目は、歩行速度、四肢骨格筋量指数、体幹筋量、握力、体重減少、易疲労感、運動習慣、全般的認知機能 (Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment: MoCA-J)とした。また、身体的フレイル該当数についても調査した。基本属性は介入前に調査・測定を行なった。統計学的検討は、2群の比較 に二元配置分散分析を行い、交互作用および主効果の検定を実施した。なお、ベースライン時点で2群間に測定項目の有意差がないことを確認した。有意水準は5%未満とした。

    【結果】

    87名のうち4名を除く合計83名 (教室群43名、摂取群40名)について分析を行った。事前事後比較では歩行速度が教室群で事前1.27±0.23 m/s、事後1.28±0.22 m/s、摂取群で事前1.20±0.19 m/s、事後1.28±0.19 m/sと交互作用を認めた。その 他の測定項目は2群ともに四肢骨格筋量、体幹筋量、握力、身体的フレイル該当数、MoCA-Jに主効果を認めた。なお、身体的プレフレイルから健常に移行した率はそれぞれ教室群16.2%、摂取群22.5%であった。

    【結論】

    地域在住者を対象に運動とソイプロテインを組み合わせた介入を実施すると、摂取群は歩行速度が運動群に比べて有意に改善する可能性が示唆された。2群ともに身体的フレイル該当数、身体的プレフレイル有症率は有意に減少した。また、摂取群は教室群と比較して四肢骨格筋量指数、体幹筋量、握力の事前事後変化率が大きい傾向が確認された。

    【倫理的配慮】

    本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理委員会の承認 (OKRU‐RA0057)を得て実施し、参加者には書面と口頭にて説明を十分に行い、同意を得て実施した。

  • 広瀬 環, 沢谷 洋平, 石坂 正大, 橋本 奈織, 久保 晃, 浦野 友彦
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 39
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    我々はCOVID-19拡大後の2021年と2022年にフレイルが増加し (Hirose et al. J Am Geriatr Soc 2023)、フレイル悪化の要因は趣味や地域活動の未実施であることを明らかにした (Hirose et al. Geriatr Gerontol Int 2024)。本研究ではコロナ禍における新規フレイル発生率が年代によって異なるかを明らかにするため、70歳と75歳の5年後の新規フレイル発生率とその要因を検討することを目的とした。

    【方法】

    栃木県A市在住で2017年 (ベースライン)に70歳と75歳の要介護認定非該当者全数に基本チェックリスト (KCL)を用いたフレイル調査を実施し、5年後の2022年 (フォローアップ、コロナ禍)の75歳と80歳時に同様のフレイル調査を行った。KCLの結果より、8点以上をフレイルと判定した。解析対象者は両調査時に回答が得られた者のうち、ベースラインでフレイルに該当する者を除外し、70歳から75歳で336名、75歳から80歳で 191名とした。ベースラインのKCLが7点以下で5年後にKCLが8点以上を新規フレイル発生 (新規フレイル発生群)、ベースラインおよび5年後のKCLがともに7点以下を非新規フレイル発生 (維持群)に群分けした。統計解析は、2つの年代の新規フレイ ル発生率をカイ2乗検定で比較した。次に、2つの年代それぞれで新規フレイル発生群と維持群における比較をMann-Whitneyの U の検定にて行った。また、従属変数を新規フレイル発生の有無、独立変数を群間比較で有意差を認めたベースラインの KCL7領域の得点とし、ステップワイズ法による二項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。

    【結果】

    新規フレイル発生率は、2017年の70歳から2022年の75歳で 8.6% (29/336名)、2017年の75歳から2022年の80歳で19.9% (38/191名)であり、75歳から80歳の新規フレイル発生率が有 意に高値であった (p<0.001)。また、二項ロジスティック回帰分析の結果、70歳から75歳の新規フレイル発生率の要因は、閉じこもり (p=0.001)、認知機能 (p=0.016)、口腔機能 (0.002)、 75歳から80歳の新規フレイル発生率の要因は、口腔機能 (p=0.008)、運動器の機能 (p=0.001)がそれぞれ抽出された。

    【考察】

    コロナ禍に75歳を境に新規フレイル発生率は増加することから、後期高齢者の方がコロナ禍においてフレイル化の影響を受けて いる可能性が示唆された。また、70歳からと75歳からの5年間ではフレイルの発生要因は異なる傾向を見出した。

    【倫理的配慮】

    国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認済みで (21-Io-38-2、22-Io-25)、ヘルシンキ宣言に定められたガイドラインを遵守して実施された。オプトアウト方式により対象者に同意を得た。

  • 北森 太樹, 徳永 瑞樹, 松沢 良太, 畑山 浩志, 永井 宏達
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 40
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    近年フレイルの予防や対策の重要性が認知され、各自治体でフレイルに対する様々な取り組みが広まっている。フレイルの認知度は地域や自治体によって異なり、フレイル予防に関する取り組みを積極的に行っている地域では認知度が高い傾向がある。地域在住高齢者のフレイルに関する認知を高めることは、フレイルの予防に寄与する可能性がある。しかし、フレイルの認知度と実際のフレイル該当の関連は明らかでない。本研究の目的は、地域在住高齢者におけるフレイルの認知度とフレイルの関係を明らかにすることである。

    【方法】

    本研究は、洲本市の5つの圏域のうち2圏域に住む高齢者を対象とした悉皆調査 (6128名)に基づく横断研究である。フレイルの認知度は「フレイルという言葉と意味を知っていますか」という質問を用い、①言葉も意味も知っていた、②言葉は知っていたが意味は知らなかった、③言葉も意味も知らなかった、の 3択にて評価し、①を認知度Ⅰ群、②を認知度Ⅱ群、③を認知度Ⅲ群とした。またフレイルは後期高齢者質問票、オーラルフレイルはOral frail index-8を用いて評価した。 統計解析は、各変数の記述統計を行った後に、フレイルの認知度と実際のフレイル、オーラルフレイルの有無の関連を明らかにするために、従属変数をフレイルおよびオーラルフレイル、独立変数をフ レイルの認知度としたロジスティック回帰分析を行った。共変量として年齢、性別、BMI、独居、併存疾患、経済状況を投入した。

    【結果】

    返答のあった2406名 (回収率39.3%)からデータ欠損、要介護認定されているものを除外し、解析対象者は1758名となった。フレイルの該当率は32.6%、オーラルフレイルの該当率は55.5%であった。 フレイルの認知度は、認知度Ⅰ群が675名 (38.4%)、認知度Ⅱ群が321名 (18.3%)、認知度Ⅲ群が762名 (43.3%)であった。認知度Ⅰ群を基準とした認知度Ⅱ群のフレイルのオッズ比は1.57 (95%CI 1.16‒2.13)、認知度Ⅲ群のオッズ比は2.06 (95%CI 1.60‒2.64)だった。また、認知度Ⅰ群を基準とした認知度Ⅱ群のオーラルフレイルのオッズ比は1.58 (95%CI 1.20‒2.08)、認知度Ⅲ群のオッズ比は1.91(95%CI 1.53 ‒2.40)だった。

    【考察】

    フレイルの認知度が低いほどフレイルやオーラルフレイルの該当率は増加していた。 今後は、フレイルの認知度向上の取り組みが、フレイルのリスクの低下に寄与するかを明らかにする必要がある。

    【倫理的配慮】

    研究の趣旨を書面にて説明し、調査票の返送をもって同意を得たものとした。本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会 (承認番号 第4103号 202303-189)の承認を受けて実施した。

  • 永田 達也, 宮本 龍太郎, 三谷 祐史
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 41
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    当院では大腿骨近位部骨折(以下HF)患者に対して,骨折リエゾンサービスクリニカルスタンダードに則りフレイル等の各種評価を施行している.しかし,急性期においては疼痛や補助具等により正確な評価がしにくい.その中で鳥羽らによって開発された「転倒スコア」は,転倒リスクを評価する質問紙法であり,認知機能が良好な場合,容易に評価可能である.そこで,我々はこの転倒スコアが高い場合,転倒への恐怖により活動量が低下し,延いては歩行能力低下につながるのではないかと仮説を立てた.よって,本研究の目的は,HF術後1週の転倒スコアから術後6か月における歩行能力低下を予測可能か検証することである.

    【方法】

    2022年4月から2023年5月までの1年2ヶ月間で当院にて脆弱性HFで手術適応となった連続234例(男性50名,平均年齢81,98±9,75歳)のうち,Abbreviated Mental Test Score7点以上且つ術後6か月の追跡調査が可能であった51例(男性9名,平均年齢 78.47±9.11歳)を対象とした.術後6か月での歩行能力(補助具の程度)を術前と比較し,「歩行維持群」と「歩行低下群」の2群に分け,群間比較した.評価指標は性別,年齢,病前歩行状況,介護保険等級,術後1週と術後6か月におけるロコモティブシンドローム,サルコペニア,フレイル,転倒スコア,各評価の6か月間での推移 とし,後方視的に調査した.統計解析はSPSS Statistics 26を用い,有意水準は5%未満とした.なお,欠損値は除外した.

    【結果】

    歩行維持群は39名(男性6名,平均年齢77.10±9.59歳),歩行低下群は12名(男性3名,平均年齢82.92±5.55歳)であった.2群間で有意差を認めたものは,歩行維持群/低下群の順に術後1週転倒スコア9.84±3.61/12.58±4.48(p=0.047),6か月後転倒スコア 9.0±3.64/11.67±2.77(p=0.033),介護保険等級の維持24名 (61.54%)/3名(25.0%)(p=0.027),フレイルの改善20名(54.05%)/2名(16.67%)(p=0.024)であった.術後1週の転倒スコアは仮説立証のため単回帰分析を施行し,p=0.053(オッズ比0.839,信頼区間0.702~1.002)と有意差を認めなかった.

    【考察】

    両群での年齢や術前状況に有意差は無いものの,歩行低下群では転倒スコアが高く,フレイルが進行し介護保険等級が悪化しており,我々の仮説を支持するものであったが,単回帰分析における関連性は有意とは言えなかった.これは,症例数の少なさ等が影響している可能性があるため,今後も症例集積を継続して,さらなる検証に臨みたい.

    【倫理的配慮】

    ヘルシンキ宣言に基づき,対象者の保護には十分留意し,説明と同意などの倫理的な配慮を行った.

  • 松岡 寛樹, 佐藤 佑太郎, 渡邊 康介, 松田 涼, 谷津 圭祐, 樫木 雅美, 佐藤 佑樹, 福嶋 篤
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 42
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    通いの場は介護予防の場として期待されている.札幌市は,介護予防に資すること,住民主体であること,月1回以上の活動があることを満たしているものと定義している.令和4年では1749か所を把握し,参加者の8割が女性であった.通いの場の内容は体操 ,会食,茶話会,認知症予防,趣味に分類され,内容別の効果は,体操を実施した場合に縦断的な身体機能への効果が報告されている . また,スポーツ等への参加による転倒,認知症等の低下が報告されている.しかし,後期高齢者の女性に限局したフレイルとの関連について通いの場の内容が重要であるかの報告はみられない.これを検証することで実践的な介護予防の内容について明らかにできる可能性がある.本研究の目的は後期高齢者の女性を対象に通いの場の内容がフレイルに関連するかを検討することとした.

    【方法】

    対象は通いの場に参加した後期高齢者の女性で,令和4年と5年の質問紙調査に回答があり,令和4年の後期高齢者の質問票 (以下,質問票)から非フレイルと判定された454名とした.調査項目は年齢,BMI,既往歴,通いの場以外の活動の参加有無,他活動種類数,通いの場の内容,要介護度,通いの場参加頻度,令和4年の握力, 5回立ち上がりテスト (以下,5STS),歩行速度,Timed up & go testとした.令和5年に非フレイルを維持した維持群,フレイルに移行した悪化群の2群に分類した.フレイル判定は質問票の No.1,2,12を除いた12項目の合計が4点以上をフレイルと判定する先行研究の方法で行った.統計解析は維持群を0,悪化群を1として多重ロジスティック回帰分析を実施した.有意水準は5%とした.

    【結果】

    維持群は395名,悪化群は59名であった.通いの場の内容はモデルの変数として抽出されなかった.それ以外の項目では 5STS(OR:1.27),町内会活動 (OR:0.45)が抽出された.判別の的中率は87.0%であった.

    【考察】

    通いの場に参加する後期高齢者の女性では,通いの場の内容はフレイルの新規発生に関連がないことが示唆された.一方で,起立が遅い場合はフレイルに移行する可能性が高く、町内会活動への従事はフレイルへの移行を抑制する可能性がある.5STSの増加は身体機能低下を意味し,身体的フレイルの要因になる可能性がある.町内会活動の従事者は地域愛着が高い傾向にあることがわかっている.地域愛着はソーシャルキャピタル (以下,SC)に含まれ,SCが醸成されることがフレイル予防に重要である可能性が報告されている.

    【倫理的配慮】

    ヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った.取得したデータは匿名加工情報に該当し,データの利用については事業実施時に対象者より書面にて同意を得ている.また,本発表については事業主体である札幌市介護保険課の了承を得ている.

  • 福嶋 篤, 松岡 寛樹, 谷津 圭祐, 渡邊 康介, 佐藤 佑太郎, 松田 涼, 佐藤 佑樹, 樫木 雅美
    原稿種別: 口述 7
    セッションID: O - 43
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    通いの場に参加する高齢者の1年後のフレイル状態を予測する因子を検討する。高齢化により通いの場の参加者のフレイル高齢者が増加することが予想され、フレイルの予測要因を明らかにすることで、早期発見と健康寿命の延伸が期待される。

    【方法】

    札幌市の通いの場に参加する高齢者のうち、令和4年度時点の フレイル非該当者を対象に、令和5年度のフレイル該当の有無を目的変数として、令和4年度時点の年齢、性別、BMI、同居の有無、後期高齢者の質問票 (以下、質問票)の回答、活動状況、既往歴、指輪っかテスト、握力、5回立ち座り、TUGの測定結果を説明変数としてランダムフォレストで分類モデルを構築し、重要な10変数を特定した後、SHAP値の絶対値平均を算出し、部分依存プロット (PDP)を作成した。モデル評価はAUC、感度、特異度、正確度、カッパ係数、F1スコアを用いた。質問票の No.1、2、12を除く12項目について健康リスクがある回答1つにつきフレイルスコア1点とし、4点以上をフレイルとした。

    【結果】

    分析対象者は1,247名 (女性86.2%)、年齢は中央値80 (75-83)歳であった。令和5年時点でフレイル該当は181名、非該当は 1,066名であった。モデルの評価結果はAUC0.87、感度0.95、特異度0.61、正確度0.84、カッパ係数0.54、F1スコア0.89であった。重要な変数とSHAP値の絶対値平均は、質問票No.10認知機能 (0.083)、質問票No.11認知機能 (0.08)、質問票No.4口腔機能 (0.074)、質問票No.7運動・転倒 (0.048)、握力 (0.047)、 BMI (0.039)、5回立ち座り (0.03)、趣味活動 (0.029)、通いの 場の参加頻度 (0.028)、TUG (0.023)。PDPにより、質問票 No.4 (口腔機能)とNo.10、11 (認知機能)の3変数がフレイルに大きく影響し、他の重要変数もフレイル抑制に影響していた。

    【考察】

    モデルの高い予測性能が確認された。SHAP値やPDPの結果から、認知機能がフレイル発生の予測に最も重要な因子であることが明らかになった。また、口腔機能も重要であり、定期的な評価と介入が必要であることが示唆された。また、身体機能が良好であること、趣味活動や通いの場への参加がフレイル予防に寄与する可能性が高い。これらの指標を定期的に評価し、早期介入を行うことが健康寿命の延伸につながると考えられる。

    【倫理的配慮】

    【倫理的配慮、説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。取得したデータは匿名加工情報に該当し、データの利用については事業実施時に対象者より書面にて同意を得ている。また、本発表は事業主体である市介護保険課の了承を得ている。

口述 8
  • 浦谷 明宏, 浜野 泰三郎, 山本 遼, 山本 諒, 白石 明継, 乾 香織
    原稿種別: 口述 8
    セッションID: O - 44
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    我が国の座位行動時間は世界20か国で最長であり長時間の座位行動の是正や身体活動の促進に取り組むことは健康作りの観点から喫緊の課題である.現在,身体活動量に関する検討は非感染性疾患発症の前段階である中年層を対象にした検討は限定的である.そこで本研究の目的は中年層の運動器健診受診者の身体活動量と座位時間を把握し,身体機能や生活習慣病関連因子に与える影響を明らかにすることである.

    【方法】

    対象は2022年4月から2024年3月までに当法人人間ドックにて運動器健診を受診した40歳~64歳の179名 (男性81名女性98名 平均年齢53.6±6.6歳)を解析対象とした.調査項目は基本属性が年齢・性別・身長・体重・BMI・体脂肪率,生活習慣病関連因子が腹囲・血圧・空腹時血糖・中性脂肪・HDL-C,身体機能項目が握力・CS30・片脚立位時間・2ステップ値・指床間距離とした.身体活動は国際標準化身体活動質問紙を用い週あたりの総身体活動時間と1日あたりの座位時間を算出した.統計はまず高強度の身体活動が75分/週以上の群 (高強度群)とそれより少ない群 (高強度未実施群)に分けた.次に中等度以上の活動を 150分/週以上実施した群 (中等度以上活動群)とそれより少ない群 (不活動群)に分けた.最後に座位時間が480分/日以上の群 (座位長時間群)とそれより少ない群 (座位短時間群)の2群間に分け,全ての検討は性別毎に対応のないt検定で有意差を確認し効果量 (d)を算出した.統計はSPSS20を用い有意水準を5%未満とした.

    【結果】

    高強度群の割合は男性27.5%女性14.4%,中等度以上活動群の割合は男性35.8%女性17.3%であった.座位長時間群の割合は男性38.2%女性31.3%であった.高強度活動の有無による比較では男性のみ握力 (P=0.03,d=0.57)・片脚立位時間 (P=0.01,d=0.49)・指床間距離 (P=0.01,d=0.66)に有意差を認め,中等度以上活動の有無による比較では男性が指床間距離 (P <0.01,d=0.96)・腹囲(P=0.03 d=0.39)・最低血圧 (P=0.03,d=0.17)に女性が握力(P=0.02,d=0.67)に有意差を認めた.座位時間は女性のみHDL-C(P=0.03 d=0.48)に有意差を認めた.

    【考察】

    高強度の運動を短時間実施した群は筋力・バランス能力・柔軟性を高く維持でき,不活動群は柔軟性が低下し生活習慣病関連因子が有意に増加していた.身体機能の評価指導と身体活動量の促進を強みとする理学療法士が健診領域で将来の健康被害を予測し介入する意義は高い.

    【倫理的配慮】

    本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,当院の臨床研究審査委員会の承認 (承認番号:4386号)を受けるとともに,収集した個人情報に関しては,当院の個人情報保護規則を遵守し取り扱った.また,当院所定の様式を用いて,研究の目的と概要,対象患者,研究に使用されるカルテ情報等を文面化したものを倫理指針に従って当院ホームページにて対象者へ情報開示を行った.

  • 堀 平人, 今井 沙耶, 中村 俊介, 小林 恵美, 小林 勇太, 田中 厚吏
    原稿種別: 口述 8
    セッションID: O - 45
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    日本で働く外国人労働者は年々増加しており2024年には200万人を超えており、在留資格のうち技能実習は20.1%を占めている。2017年より介護技能実習生の受け入れが始まったが、介護や製造業等重労働を伴う外国人技能実習生は来日初期の調査前半に筋骨格系の不調があり (相田2023)、労働災害の約5割が実習開始から1年未満に発生していると報告されている。今回、当院にて受け入れた外国人技能実習生に対して研修を行う機会を得た。その経験から外国人技能実習生に対して理学療法士が関わる意義について検討する。

    【方法】

    対象はミャンマー国籍の技能実習1号の女性2名 (平均年齢29.5歳)。研修期間は2023年9月から2024年4月までの計5回。研修内容は身体介護業務及び安全衛生業務であり、いずれも指導責任者の管理下で実施し、初回の研修を除く2回目より記入式のアンケート調査を計4回実施した。調査内容は、現在自覚する疼痛について部位、発生時期、程度Numeric Rating Scale (以下 NRS)、ケスラー心理尺度 (以下K6)、Utrecht Work Engagement Scale (以下UWES)とした。

    【結果】

    初回の調査では、2名共に疼痛部位はなく、NRSとK6は0点で ありUWESはそれぞれ47点と48点であった。2回目の調査時に 2名ともに腰痛の自覚を確認出来た。それぞれNRSは2と3であり、K6は0→2点、0→1点、UWESは47→44点、48→44点となっていた。研修内容を一部変更し腰痛教育と介護技術の確認、自主トレーニングの指導を行った。

    3回目の調査時にはそれぞれ腰痛は消失しており、NRSは2→0、3→0、K6は2→0点、1→0点、UWESは44→49点、44→49点であった。4回目の調査でも腰痛の再発はなく技能実習を継続することができていた。

    【考察・結論】

    これまでの報告と同様に来日初期にあたる実習開始3ヶ月後に腰痛を自覚したが、理学療法士との継続的な関りを持っていたことで腰痛への対処、再発予防をすることができた。

    職業性腰痛には身体的負荷以外にも仕事の満足度や精神的ストレスをはじめとする社会心理的要因が関与すると指摘されており、文化や言語の異なる環境で労働する外国人技能実習生は日本人労働者と比較して腰痛発症や慢性化のリスクが高い。

    今後、さらなる増加が見込まれる技能実習生が健康に過ごすための支援として理学療法士が継続的に関わることは、技能実習生の健康管理に貢献することができるのではないかと考える。

    【倫理的配慮】

    対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、研修内容及びアンケート調査結果を研究発表として報告する旨の説明を書面にて行い、個人が特定されないことを説明し同意を得た。

  • 時田 遥菜, 岡 知紀, 石川 高, 大森 章一, 川口 桂蔵, 山本 一輝, 高瀬 完
    原稿種別: 口述 8
    セッションID: O - 46
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    睡眠時間の低下は高齢者の転倒リスクを増加すると言われている。また、年齢と共に睡眠パターンが変化し、バランス感覚や運動機能にも影響を与えるとされている。適切な睡眠時間の確保は高齢者の安全と健康維持に重要と考える。そのため本研究は、睡眠時間と運動機能との関連性を明らかにし、転倒予防の一助とする。

    【方法】

    対象者は当院へ来院されている下肢・脊椎の疾患を主疾患とする65歳以上の男女146名 (男性34名女性112名)とした。除外基準は、独歩困難な者、脳血管疾患、認知症、パーキンソン病、過去1年以内に整形外科的手術を受けた者、上肢疾患とした。調査項目は、年齢、性別、睡眠時間、握力、4m歩行テスト、 Timed Up and Go test(TUG)を測定した。睡眠時間の評価はピッツバーグ睡眠質問票日本語版より抜粋し行った。 統計学的処理は、握力・4m歩行テスト・TUGを目的変数とし た重回帰分析を行った。また、交絡因子である年齢・性別を分析モデルに強制投入し調整を行った。睡眠時間は、6時間未満、 6時間以上8時間未満、8時間以上の3つに分け、6時間以上8時間未満を基準とした分析を行った。それぞれの独立変数の有用性は標準偏回帰係数 (β)により判定した。統計解析にはR4.3.2を用い、有意水準は5%とした。

    【結果】

    重回帰分析の結果、握力は睡眠時間が6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p<0.05, β=-0.641)、8時間以上 (p<0.05, β=-0.384)で有意に低かった。

    4m歩行テストは睡眠時間6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p=0.08, β=-0.156)、8時間以上 (p=0.17, β=-0.122)では有意差がなかった。

    TUGは睡眠時間6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p= 0.31, β=0.091)、8時間以上 (p=0.31, β=0.091)では有意差がなかった。

    交絡因子投入後も、握力は6時間未満 (p<0.05, β=-0.640)、8時間以上 (p<0.05, β=-0.380)で有意差に低かった。

    【考察】

    本研究は、睡眠時間6時間未満と8時間以上で握力との関係が認められたが、4m歩行テスト、TUGは睡眠時間6時間未満と8時間以上で関係は認められなかった。握力は、睡眠が筋肉の回復と修復に重要な役割を果たすと言われている。十分な睡眠は成長ホルモンの分泌を促進し、筋力の向上や維持に寄与する。歩行速度とバランス能力に対する睡眠時間の影響が認められなかったのは、筋力だけでなく、神経系の機能、視覚、前庭機能など多くの要因に関わるためと考える。

    【倫理的配慮】

    研究の実施にあたり、個人情報の取り扱いには十分配慮したうえで実施した。また、本研究は医療法人社団三水会倫理審査委員会の審査了承を得て実施した。

  • -骨密度・体組成測定と運動習慣等との関連について-
    内間 康知, 加藤 剛平, 松坂 利之
    原稿種別: 口述 8
    セッションID: O - 47
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    当センターでは、職場に出張し社員の健康増進を目的とした各種の健康測定を実施している。今回は測定結果と運動習慣との関わりを検討した。

    【対象】

    2011年3月から2018年8月までの間に体組成測定と骨密度測定および質問票を同日に実施した20歳から65歳の勤労者、男性 327名 (平均42.0±9.8歳)、女性382名 (平均38.3±7.9歳)の709名とした。

    【方法】

    体組成の測定には、BIA法の体成分分析装置インボディ720 (イ ンボディジャパン)を用いた。測定項目は、身長、体重、BMI、全身の筋肉量、四肢体幹の部位別筋肉量、体脂肪量、体脂肪率、導出項目として骨格筋指数 (SMI)を求めた。骨密度の測定には、超音波測定装置ビーナスα (日本光電)を用いた。

    また問診票による情報として、運動習慣 (あり・なし)とその頻度 (週5回以上・週2~4回・週1回・月1~3回)と強度 (軽め・ややきつめ・きつめ)を得た。

    分析は、運動習慣の有無で2群化したものと、運動無し、低、高で3群化した運動頻度と運動強度の体組成と骨密度の値を、T検定または一元配置分析にて比較した。骨密度においては他の指標との関連を重回帰分析にて解析した。

    【結果】

    運動習慣の有無では、男性で習慣有り群が無し群よりも、全身筋肉量、下肢筋肉量、SMIで高く、体脂肪量、体脂肪率で低かった。女性では同様に全身筋肉量、上下肢体幹筋肉量、SMIで高かった。

    運動頻度では、男性で高頻度群が他2群に対して、体脂肪量、体脂肪率で低かった。

    女性では低頻度群が無し群に対して、全身筋肉量、上下肢体幹筋肉量、SMI、骨密度で高かった。

    運動強度では、男性で高強度群が無し群に対し、全身筋肉量、 SMI、骨密度で高く、体脂肪率では低くて、低強度群に対しては骨密度でも高かった。また、体脂肪率は低強度群でも無し群に対し低かった。

    女性では高強度群が無し群に対し全身筋肉量、上下肢体幹筋肉量、SMI、骨密度で高く、SMIでは低強度に対しても高かった。骨密度と他の指標との関連では、男性の骨密度は運動強度と正に、年齢と身長には負に関連し、女性では運動強度とSMIに正に関連していた。

    【考察】

    筋肉量は運動強度と、体脂肪は運動頻度との関わりが強く、また、骨密度は運動強度との関連から骨への強めの刺激の必要性が推察された。

    測定結果は概ね運動習慣を反映する内容となっており、上手く動機付けに活用し健康増進の一助とする事が望まれる。

    【倫理的配慮】

    調査で用いたデータは、当施設により企業への 出張健康測定の際に得られたデータを用いている。企業に対してはこれらのデータが将来的に個人を特定しない形で研究等に用いることを事前通達し同意を得た上で測定を実施しており、また個人に対してはアンケートの提出をもって同意を得ている。

  • 浜野 泰三郎, 山本 遼, 浦谷 明宏, 山本 諒, 白石 明継
    原稿種別: 口述 8
    セッションID: O - 48
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    肥満はメタボやロコモをはじめ様々な健康障害を合併するため,肥満改善/予防に対する取り組みの重要性が高まっている.一方,標準体重であっても体脂肪率が高い正常体重肥満(以下,かくれ肥満)が近年注目されており,肥満と同様に健康障害を合併する可能性が高いとされている.本研究の目的は中年期男性を対象に肥満タイプ別の特徴を調査することである.

    【方法】

    対象は当院人間ドックにてロコモ健診を受けた40歳~64歳の男性250名とした.体組成検査のBMIと体脂肪率を用い肥満タイプの群分けをした.本研究ではBMI25未満/体脂肪率20%未満を標準群,BMI25未満/体脂肪率20%以上をかくれ肥満群,BMI25以上/体脂肪率20%以上を肥満群とし,3群で身体機能の比較検討を行った.

    調査項目は年齢,腹囲,運動習慣/ロコモの有無,筋力(膝伸展・握力),四肢骨格筋指数(SMI),血液検査(HbA1c,HDLコレステロール,中性脂肪),血圧とした.また,メタボ該当者と予備群を調査した.統計学的処理は正規性の検定を行い,Tukey HSD検定 ,Kruskal-wallis検定,X2検定にて群間の変数を比較した.統計は SPSS20を用い有意水準を5%未満とした.

    【結果】

    標準群80名,かくれ肥満群68名,肥満群100名であった.身体機能ではロコモ有の割合で肥満群(41.0%)が標準群(18.8%)より有意に高値であった(P<0.01).下肢筋力(Nm/kg)ではかくれ肥満群 (1.9)と肥満群(1.8)が標準群(2.1)より有意に低値であった (P<0.05).SMIでは肥満群(8.6)がかくれ肥満群(7.7)と標準群(7.5)より有意に高値であった(P<0.01).運動習慣では有の割合が標準群38.8%,かくれ肥満群22.0%,肥満群29.0%であり,かくれ肥満群が一番低い傾向にあった(P=0.056).メタボ該当者は肥満群53名,かくれ肥満群11名,標準群0名,メタボ予備群は肥満群31名,かくれ肥満群9名,標準群2名であった.

    【考察】

    肥満群は他の群に比べ筋肉量は多いが,ロコモ有の割合が標準群に比べ有意に高く,メタボとその予備群が84%と高い結果となった.先行研究からメタボとロコモは密接に関連すると報告されており,肥満群でも同様の傾向が確認された.かくれ肥満群では,ロコモ有の割合で他の群と有意差はないが,下肢筋力は標準群に比べ有意に低く,また運動習慣有の割合が低い傾向にあり,同世代の全国平均値を下回る結果となった.またメタボとその予備群が29%いることが判明した.かくれ肥満群ではロコモ無が多くBMIが標準であるため体質改善への意識が低い可能性があり,潜在的なメタボやロコモのリスクが高い群と考えられた .

    【倫理的配慮】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」を遵守している.得られたデータは本研究の目的以外には使用せず,研究の結果を公表する際も被験者を特定できる情報は使用しない.また,本研究は当院臨床研究審査委員会における【承認番号4383号】を取得している.自施設既存情報を用いる研究であるため,倫理指針に従って当施設ホームページにて情報公開し,拒否機会を付与している.

口述 9
  • 伊藤 晃, 土本 真, 小山 樹
    原稿種別: 口述 9
    セッションID: O - 49
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    近年、先進諸国を中心に高齢化率が高まっており、日本でも人 口オーナスが問題となっている。この問題に対して我々ができることは要介護予防や要介護者の自立支援を最大限に促すことだ。自立支援には入浴・排泄・食事・移動介助等の多様な介助スキルが求められ、これらの介助スキルを全て提供できる場が通所介護といえる。要介護者は多様なニーズを求めて通所介護に来所し、半日もしくは1日を通じて集団体操、機能練習やレクリエーション等の綿密なプログラムに取り組み自立を目指す。これらプログラムは主に抑うつ改善、精神心理機能維持に効果があると知られている。しかし身体機能・活動レベルへの十分な効果は知られていない。

    そこで本研究では、自立支援を促すためにADLの最低限の基盤となる身体機能・活動レベルに効果的なプログラムを明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    弊社の4つの通所介護、計137名において定期的な体力測定を実施して利用者様の身体機能・活動レベルを測定した「30秒椅子から立ち上がり(CS-30テスト)、Timed up&go test(TUG)、機械を使用した定量的筋力測定(大腿四頭筋・腸腰筋)、握力、体重の5項目」。加えて各通所介護はそれぞれ特色のあるプログラムを実施しているため、体力測定結果を元にどのようなプログラムが身体機能・活動レベルに効果があるかを解析した。 統計は、post-hoc Tukey HSD testを用いた多重比較検定とT testで各群間の有意差を解析した。

    【結果】

    定期的な体力測定結果と各プログラムを比較しその効果を解析した。その結果、3つの通所介護においてCS-30テストが向上し、そのうちの1つの通所介護ではTUGと大腿四頭筋筋力も向上した。しかし1つの通所介護ではすべての項目において変化がなかった。

    【考察】

    座位でのエクササイズ・ストレッチ・スリング体操を中心に行 う通所介護では身体機能向上に汎化されにくいことが示唆され、一方で反復した基本動作練習や立位バランス練習のどちらかを 20-30分以上行う通所介護では身体機能が向上することが示唆 された。 加えて通所介護において身体機能を簡易評価するツールとして体力測定は有効であり、機能訓練指導員を中心に全職員で実施することが必要不可欠であり、利用者様の状態をより把握し自立支援を促すことができると期待される。

    【倫理的配慮】

    臨床研究は弊社の倫理審査会の承認を得て行われた。

  • 冨田 浩輝, 下田 隆大, 中島 千佳, 川上 歩花, 島田 裕之
    原稿種別: 口述 9
    セッションID: O - 50
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/30
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    加齢による視聴覚機能低下に伴う二重感覚障害は、日常生活の様々な活動や参加を制限することや、フレイルと関連することが報告されている。また、二重感覚障害は、将来の生活範囲の狭小化と関連することが報告されており、新規要介護発生リスクを高める可能性がある。しかし、二重感覚障害と新規要介護発生との関連については十分に検討されていない。本研究は、地域在住高齢者における二重感覚障害の簡便な評価方法と新規要介護発生との関連について検討することを目的とした。

    【方法】

    本研究は、大規模コホート研究 (NCGG-SGS)の参加者より、ベ ースラインにおいて要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の4,380名(平均年齢:75.9 ± 4.3歳、女性:51.8%)を対象とした。我々は、以前の報告において、心身機能や認知機能低下と関連する二重感覚障害を簡便に評価する自己申告式の質問紙表を開発した。この質問紙表は、視聴覚機能に関連する6つの日常生活活動における困難感を聴取するものであり、フレイル、歩行速度、転倒恐怖心、うつ傾向、認知機能低下と関連することが示されている。今回、この質問紙表により定義した二重感覚障害が、新規要介護発生と関連するのかを、5年後の新規要介護発生の有無を目的変数としたCox回帰分析にて検討した。

    【結果】

    5年後の新規要介護発生 (1,000人年あたり)は、それぞれ以下の通りであった:視聴覚機能低下なし群37.0 (95%CI:34.1-40.2)、聴覚機能低下のみあり群74.1 (95%CI:55.5-98.8)、視覚機能低下のみあり群59.3 (95%CI:51.5-68.2)、二重感覚障害群123.1 (95%CI:92.0-164.7)。関連要因で調整したCox回帰分析において、視聴覚機能低下なし群と比較して、二重感覚障害群は、5年後の新規要介護発生と有意な関連を示した (HR:1.37、95%CI:1.03-1.81)。

    【考察・結論】

    簡便な質問紙表により定義した二重感覚障害は、地域在住高齢者の新規要介護発生と関連することが示された。本研究で使用した評価表による二重感覚障害は、心身機能や認知機能低下と関連し、新規要介護発生とも関連が示されたことから、対象者の介護予防戦略や生活の質向上を考える上で、重要な理学療法評価の1つになると考えられる。

    【倫理的配慮】

    本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した (承認番号:1440-5)。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。

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