日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 50
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口述 9
加齢による視聴覚機能低下に伴う日常生活活動の困難感と新規要介護発生との関連
*冨田 浩輝下田 隆大中島 千佳川上 歩花島田 裕之
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抄録

【はじめに、目的】

加齢による視聴覚機能低下に伴う二重感覚障害は、日常生活の様々な活動や参加を制限することや、フレイルと関連することが報告されている。また、二重感覚障害は、将来の生活範囲の狭小化と関連することが報告されており、新規要介護発生リスクを高める可能性がある。しかし、二重感覚障害と新規要介護発生との関連については十分に検討されていない。本研究は、地域在住高齢者における二重感覚障害の簡便な評価方法と新規要介護発生との関連について検討することを目的とした。

【方法】

本研究は、大規模コホート研究 (NCGG-SGS)の参加者より、ベ ースラインにおいて要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の4,380名(平均年齢:75.9 ± 4.3歳、女性:51.8%)を対象とした。我々は、以前の報告において、心身機能や認知機能低下と関連する二重感覚障害を簡便に評価する自己申告式の質問紙表を開発した。この質問紙表は、視聴覚機能に関連する6つの日常生活活動における困難感を聴取するものであり、フレイル、歩行速度、転倒恐怖心、うつ傾向、認知機能低下と関連することが示されている。今回、この質問紙表により定義した二重感覚障害が、新規要介護発生と関連するのかを、5年後の新規要介護発生の有無を目的変数としたCox回帰分析にて検討した。

【結果】

5年後の新規要介護発生 (1,000人年あたり)は、それぞれ以下の通りであった:視聴覚機能低下なし群37.0 (95%CI:34.1-40.2)、聴覚機能低下のみあり群74.1 (95%CI:55.5-98.8)、視覚機能低下のみあり群59.3 (95%CI:51.5-68.2)、二重感覚障害群123.1 (95%CI:92.0-164.7)。関連要因で調整したCox回帰分析において、視聴覚機能低下なし群と比較して、二重感覚障害群は、5年後の新規要介護発生と有意な関連を示した (HR:1.37、95%CI:1.03-1.81)。

【考察・結論】

簡便な質問紙表により定義した二重感覚障害は、地域在住高齢者の新規要介護発生と関連することが示された。本研究で使用した評価表による二重感覚障害は、心身機能や認知機能低下と関連し、新規要介護発生とも関連が示されたことから、対象者の介護予防戦略や生活の質向上を考える上で、重要な理学療法評価の1つになると考えられる。

【倫理的配慮】

本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した (承認番号:1440-5)。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。

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