主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
p. 40-
【目的】近年、高齢者の薬物治療において、ポリファーマシーによる口内乾燥、便秘、食欲不振、摂食・嚥下障害や認知機能低下などの抗コリン性有害事象の回避のため、抗コリン負荷スコアの重要性が指摘されている。実際に、高齢患者が服用する薬剤には抗コリン作用を示すものが多く、広範な薬効プロファイルを有する600以上の薬剤(催眠薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬や抗うつ薬などの精神作用薬、循環器系作用薬、コルチコステロイド薬、抗生物質など)が抗コリン作用を示すことが報告されている。我々は、高齢患者に頻用される260薬剤を用いて、薬剤のムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)結合活性と薬剤服用後のヒト血液中薬物濃度を加味した抗コリン負荷スコアを開発し(Geriatric Gerontol Int, 23: 558-564, 2023)、その有用性を検証した。【方法】ラット組織細胞膜を用い特異的かつ高比活性放射性標識リガンドの[3H]N-methylscopolamine (NMS)によるmAChR結合測定法に従い、各薬剤によるmAChR結合活性を調べた。受容体結合活性を示した薬剤につきラット摘出膀胱や回腸平滑筋におけるコリン作動性収縮抑制作用の有無を調べた。さらに薬剤服用時のヒト血中薬物濃度(Cmax)(添付文書参照)を調査した。【結果・考察】薬剤のラット脳におけるmAChR結合活性を調べ、50%受容体結合活性(IC50)とCmaxからスコア0~3を定義した。その結果、低濃度でmAChR結合活性(IC50)を示し、概ねCmaxと近似した薬剤をスコア3として定義した。過活動膀胱治療薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、鎮痙薬、気管支拡張薬などの33薬剤であった。Cmaxより3倍以上の濃度でmACh結合活性を示した37薬剤をスコア2として定義した。以上の薬剤はラット摘出膀胱および回腸平滑筋のカルバコール収縮を濃度依存的に抑制した。mAChR結合活性がmMオーダーの26薬剤をスコア1として定義し、残りの164剤は高濃度においてもmACh結合を示さなかったのでスコア0とした。本スコアを用いて、抗コリン性有害事象を認めた患者の服用薬剤における総スコアを検証した。【結論】薬理学的および薬物動態学的根拠に基づく抗コリン負荷スコアは、ポリファーマシー患者における抗コリン性有害事象の発現予測と回避や減薬に向けた実臨床での有用性が期待された。
一般演題(口演) 5