主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第45回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: さいたま市
開催日: 2024/12/13 - 2024/12/14
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CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法とは、患者自身のT細胞に遺伝子改変を行い作製された、免疫細胞療法製品を用いたがん免疫療法である。日本国内でも血液がんにおいて厚生労働省より承認となった製品が、新たな治療法として実施されている。現在承認されているCAR-T製品では、T細胞への遺伝子導入の際にウイルスベクター法を用いて作製している。 信州大学医学部附属病院(以下、当院)では、ウイルスを使用せず、よりコンパクトな設備で安価に作製が可能なトランスポゾン法(Piggy Bac法)を用い、当院の先端細胞治療センター(以下、CPC)にて作製したCAR-T細胞による、二つの医師主導治験を実施している。血液がんのCD116 陽性の急性骨髄性白血病患者を対象としたGMR CAR-T治験、固形がんのHER2陽性の婦人科悪性腫瘍、および骨軟部腫瘍患者を対象としたHER2 CAR-T治験であり、いずれも第Ⅰ相試験である。 2020年に血液がん対象のGMR CAR-T治験を、小児科医師、CPC、臨床研究支援センター、および調整事務局のコアメンバーを中心に立ち上げ、その経験を基に2022年よりHER2 CAR-T治験を開始した。医師主導治験では、企業治験における治験依頼者の役割である実施体制の構築を「自ら治験を実施する医師」が担うため、その準備工程の院内整備に関わる支援は、最も苦労した点である。さらにGMR CAR-T治験では小児科および血液内科、HER2 CAR-T治験では、小児科、産婦人科、整形外科と複数診療科医師との協働が必要であったため、診療科間の役割分担を考え実施手順を整備することにも時間と労力がかかった。また、治験製品の作製から投与までに数週間を要することから、その間の治療を含め、被験者がより良い状態で投与が出来るよう主治医と連携する必要があった。治験コーディネーターとしては、治験準備段階より医師が治験を実施する環境や手順を共に整備し、院内外のスタッフと適切に連携を取り、治験全体の進捗や状況を把握したうえで、的確な指示や依頼を主導的に行っていくことが、治験の円滑な実施に必要と考えられた。 今回は、当院でのCAR-T療法の医師主導治験を経験して学んだ、治験開始前から実施に至る院内の実施体制・運用整備の支援過程や苦労した点、複数診療科医師、関係スタッフが役割を十分発揮できるような協働の方法、さらに第Ⅰ相治験を一般病棟で実施していくための安全性を考慮した被験者対応等について紹介する。
シンポジウム 17