主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第46回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: 東京都千代田区
開催日: 2025/12/05 - 2025/12/06
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フィンランドで開発された「オープンダイアローグ」は、近年急速に注目を集めつつある統合失調症急性期への統合的アプローチである。1980 年代から実践されており、入院治療や薬物治療を行わずに、きわめて良好な治療成績を上げているとの報告がある。 その基本的手法は以下の通りである。発症直後の急性期、患者や家族からの依頼があってから24 時間以内に、「専門家チーム」が結成され、患者の自宅を訪問する。本人や家族、そのほか関係者が車座になって座り「開かれた対話」を行う。この対話は、クライアントの状態が改善するまで、ほぼ毎日のように続けられる。 オープンダイアローグの主たる対象は急性期の統合失調症であるが、統合失調症に限らず、うつ病やひきこもりに至るまで、その適用範囲は多岐にわたる。演者らはすでに外来診療においてオープンダイアローグ的な手法の導入を進めており、とりわけ思春期事例などにおいて、従来型の治療よりも高い有効性を実感している。 オープンダイアローグの特徴は、診断やアセスメントに重きを置かない、疾患非特異的な「ケア」である点である。それゆえ治療目標を設定せず、ケアの「プロセス」を重視する。このとき改善や治癒は、あくまでも副産物として起こる。しばしばゴールの押しつけになりがちな思春期事例において、治療チームがプロセス重視の姿勢を重視することで信頼を勝ちえ、巧まずして成果に繋がっているのではないだろうか。 本来の対象疾患である統合失調症に対してオープンダイアローグはきわめて有効である。現在演者は自身のクリニックにおいて多くの統合失調症当事者と対話実践を行っているが、幻覚妄想が改善ないし消失し、消失しない場合でも症状の切迫感や衝動性は著しく緩和されることが多い。薬物療法を施行せずになぜこうした変化が起こるのか、十分な解明がなされたわけではないが、以下のような機序が考えられる。①異常体験の言語化と共有による症状の緩和、②当事者と家族のネットワークが修復され、安全保障感が高まる、③さまざまな意見が共存するポリフォニーの余白において、当事者の主体性が回復される、④妄想のような「小さな真理」を、ランダムな対話の運動が揺さぶりをかける。 以上の機序について、当日は事例に基づいて報告を試みたい。
特別講演 7