主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第46回日本臨床薬理学会学術総会
開催地: 東京都千代田区
開催日: 2025/12/05 - 2025/12/06
p. 98-
糖尿病の治療目標は、糖尿病でない人と変わらない寿命とQOL(Quality of Life)の確保である。そのためには血糖、血圧、脂質、体重の包括的な管理を行い、合併症を予防することが重要となる。わが国のKumamoto Studyなどの結果から、合併症予防のための血糖管理目標はHbA1c 7.0%未満が推奨されている。 現在、わが国で使用可能な糖尿病治療薬は多岐にわたるが、近年の大規模臨床試験により薬剤間での合併症予防効果の差が明らかとなってきた。一部のGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬において心血管疾患の発症、腎機能低下の予防効果などが証明されている。血糖管理のみならず合併症予防の観点からこれらの薬剤を積極的に活用することが現代の治療戦略の要となっている。 本シンポジウムではGLP-1受容体作動薬に焦点を当てる。GLP-1受容体作動薬は血糖依存的にインスリン分泌を促進するため単独では低血糖リスクが低いことに加え、前述のように合併症に対する予防効果も示されている。我々の施設ではこれらのGLP-1受容体作動薬の特性を活かし、強化インスリン療法(Basal Bolus Therapy:BBT)から基礎インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の併用療法(Basal-supported Prandial GLP1-RA Therapy: BPT)への切り替えを積極的に行っている。BBTは生理的なインスリン補充療法であるが、頻回注射に伴う患者負担や低血糖、体重増加が臨床的な課題がある。当院でのデータから、BBTで良好な血糖マネジメントが得られている症例では、HbA1c、グリコアルブミン(GA)などの血糖管理指標、持続血糖モニター(CGM)から算出された血糖変動指標を悪化させることなく、BPTへの切り替えが可能であると考えられた。またBPTへの切り替え時には十分に空腹時血糖値を低下させておくことが食後高血糖を抑制するうえで重要であると示唆された。糖尿病治療満足度質問票(Diabetes Treatment Satisfaction Questionnaire: DTSQ)を用いた治療満足度調査ではスコアが改善していた。BBTから基礎インスリン製剤とGLP-1/GIP共受容体作動薬(Tirzepatide)の併用療法への切り替えにおいても血糖管理指標を悪化させることなく切り替え可能であったが、一部の症例では夜間低血糖をみとめ基礎インスリン製剤の減量が必要であった。 以上よりBPTは2型糖尿病の薬物療法において有用な治療選択肢の一つであると考える。
シンポジウム 24