医療の質・安全学会誌
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原著
インセンティブスパイロメトリーによる呼吸訓練が開腹術後の呼吸機能の回復に及ぼす効果:ランダム化比較試験
大木 裕子小島 有子山北 美穂堂口 美由紀山下 克也
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2019 年 14 巻 2 号 p. 139-147

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抄録
目的:インセンティブスパイロメトリー(IS)を用いた呼吸訓練が,開腹術後の呼吸機能の回復に及ぼす効果を確かめること.
デザインと対象:ランダム化比較試験により,介入群と対照群の2群を設置した.対象は平成27年9月~平成28年5月に入院した,全身麻酔下で待機的に開腹術を受けた患者である.
介入:全対象が早期離床や深呼吸の促しなどを含む通常の呼吸器合併症予防プログラムを受けた.介入群へは術後1~7日目まで,1セット10回,1日4セットの呼吸訓練を追加した.ISはコーチ2(R)(PORTEX)を使用した.
プライマリーエンドポイント:術後3日目の最大吸気量(IC)の,術前ICに対する回復率とした.その後,IC回復率に関与する要因の探索的解析を行なった.
結果:対象は各群36名であった.術後3日目のIC回復率の平均値±SDは,対照群54.1±23.7%,介入群55.0±22.5%(p=0.86)で両群の有意差はなかった.探索的解析の結果,対照群では初回歩行日が術後2日目以上の群は1日目群に比べ術後3日目のIC回復率が有意に低かった[40.9±22.5%,60.8±21.7%(p=0.015)]のに対し,介入群では有意差はみられなかった[51.9±27.3%,55.9±21.4%(p=0.662)].
結論:待機的な開腹術の術後に,ISによる呼吸訓練を1セット10回,1日4セット行ったが,術後3日目の最大吸気量を通常プログラム群より回復することはなかった.しかし,IS訓練が離床の遅れをカバーしていた可能性があり,今後は術後早期に離床が進まない患者を対象とした検討が必要である.
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