医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
ISSN-L : 1881-3658
原著
確認不足によるインシデントとリスクテイキング行動との関係
藤井 眞砂子秋野 裕信桑原 宜美寺﨑 和代北浜 紀美子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 15 巻 2 号 p. 103-114

詳細
抄録

目的:確認不足によるインシデントと日常場面,交通場面,内服場面,注射場面,転倒・転落場面の5場面におけるリスクテイキング行動との関係について検討した. 方法:対象は,A病院に勤務するすべての看護師(609名)で,自記式調査票を用いた調査で検討した.調査内容は,対象者の背景,過去3ヶ月での確認不足によるインシデントの経験の有無とリスクテイキング行動であり,リスクテイキング行動は5場面の危険を認識しながらも危険を冒す確率(リスク敢行確率)で因子分析を行い,抽出された因子パターンの因子得点で評価した. 結果:467名(77%)がすべての項目に回答し,完全回答者の平均年齢は33.3±10.3歳(平均±標準偏差),経験年数は10.9±9.8年,夜勤実施者は388名(83.1%)で,206名(44%)が確認不足によるインシデントを経験していた.確認不足のインシデント経験の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,“経験年数”(p<.01),“夜勤の実施の有無”(p<.001)が影響していた.また,リスクテイキング行動の背景要因の中では,“不確実な指示の読み取り”因子が確認不足によるインシデントの有無に影響していることが明らかになった(p<.001). 結論:確認不足によるインシデントは,看護師経験や,夜勤をしていること,指示の読み取りが不確実なことが背景となりリスクテイキング行動をとることで発生する可能性があることが示唆された.

著者関連情報
次の記事
feedback
Top