医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
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15 巻, 2 号
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原著
  • 藤井 眞砂子, 秋野 裕信, 桑原 宜美, 寺﨑 和代, 北浜 紀美子
    2020 年 15 巻 2 号 p. 103-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー
    目的:確認不足によるインシデントと日常場面,交通場面,内服場面,注射場面,転倒・転落場面の5場面におけるリスクテイキング行動との関係について検討した. 方法:対象は,A病院に勤務するすべての看護師(609名)で,自記式調査票を用いた調査で検討した.調査内容は,対象者の背景,過去3ヶ月での確認不足によるインシデントの経験の有無とリスクテイキング行動であり,リスクテイキング行動は5場面の危険を認識しながらも危険を冒す確率(リスク敢行確率)で因子分析を行い,抽出された因子パターンの因子得点で評価した. 結果:467名(77%)がすべての項目に回答し,完全回答者の平均年齢は33.3±10.3歳(平均±標準偏差),経験年数は10.9±9.8年,夜勤実施者は388名(83.1%)で,206名(44%)が確認不足によるインシデントを経験していた.確認不足のインシデント経験の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った結果,“経験年数”(p<.01),“夜勤の実施の有無”(p<.001)が影響していた.また,リスクテイキング行動の背景要因の中では,“不確実な指示の読み取り”因子が確認不足によるインシデントの有無に影響していることが明らかになった(p<.001). 結論:確認不足によるインシデントは,看護師経験や,夜勤をしていること,指示の読み取りが不確実なことが背景となりリスクテイキング行動をとることで発生する可能性があることが示唆された.
報告
  • 渡部 健二, 北村 温美, 家平 裕三子, 新開 裕幸, 徳永 あゆみ, 中島 和江, 和佐 勝史
    2020 年 15 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー
    医療安全には知識の習得と経験の蓄積が必要である.初期研修医は臨床経験が浅くインシデントが発生しやすいと考えられるが,その特性は十分に検討されていない.臨床研修制度が必修化された平成16年から平成30年までに,大阪大学医学部附属病院の初期研修医が報告したインシデント270件を分析した.インシデントの種類で最多は他の職種と同様に「薬剤関連」であったが,その他は初期研修医の臨床プラクティスを反映する「臨床検査」「処置・手技」「輸血関連」の頻度が高いのが特徴的であった.インシデントの要因の多くが確認行動に関連したものであった.医療安全対策として初期研修医の臨床プラクティスに合わせた,確認行動に関する継続的かつ複合的な教育体制の必要性が示唆された.
短報
  • 宮部 芳之, 山村 佳子, 日比野 剛, 上田 幸夫
    2020 年 15 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー
  • −転落防止チェーン「やまと」を用いた物理的ベッド柵上げ忘れ防止策の有効性−
    林 美和子, 古菅 美納, 佐藤 幸子, 桑原 光代, 松永 正人, 奥野 智則
    2020 年 15 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー
    ベッドからの転落は生命に関わる重大事故に繋がる危険性がある.危険に対する安全行動をとることが難しい重症心身障害児(者)は,ベッド柵を上げ忘れると転落する危険性が高い.当センターではベッド柵上げ忘れ防止策として注意喚起や指差し呼称などの取り組みを行ってきた.しかし,毎年当センター全体で30件以上のベッド柵上げ忘れインシデントが発生していた.全4病棟のうち最もインシデント数の多かったA病棟では,転落防止チェーン「やまと」を考案しベッド柵上げ忘れ防止策として活用したところ,大きくインシデント数を減少させた. そこで当センターでは転落防止チェーン「やまと」の適用を全病棟に拡大し,その効果を検討した.ケアに入る前に本チェーンを装着すれば確実にベッド柵の上げ忘れに気付くことができ,ベッド柵上げ忘れインシデントは著減した. 以上より,転落防止チェーン「やまと」は重症心身障害児(者)のベッドからの転落防止に有効であると考えられた.
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