医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
ISSN-L : 1881-3658
原著
The Litigation Background Influencing the Time Until Resolution of Medical Litigation Filed in Chiba District Court of Japan: How Can Time-Consuming Medical Disputes be Resolved Early?
平賀 秀明秋本 義雄植草 秀介松尾 和廣吉尾 隆
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2020 年 15 巻 3 号 p. 240-251

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抄録

背景:多くの国では医療紛争及び医療訴訟の解決までに長期間要することが問題となっているが,医療訴訟の長期化要因を詳細に解析した報告はない.そこで本研究では,医療紛争及び医療訴訟の時間的負担の軽減を目的として,医療訴訟の期間に影響を与える訴訟背景を調査した. 方法:2004~2008年に千葉地方裁判所に提訴され,判決により解決した民事訴訟39件を重回帰分析及びスピアマンの順位相関係数を用いて解析した. 結果:過失行為から提訴までの期間(以下,提訴期間),提訴から解決までの期間(以下,訴訟期間)及び過失行為から解決までの期間(以下,解決期間)の中央値は,それぞれ2.78年,2.37年及び6.03年であった.男性患者の提訴期間は女性患者よりも短く(β=-0.723,95%CI:-1.219~-0.227),争点増加により提訴期間は延長した(β=0.173,95%CI:0.052~0.294).同様に上訴(β=0.457,95%CI:0.178~0.735)及び患者側の弁護士の存在(β=0.933,95%CI:0.611~1.255)は,訴訟期間を延長させた.提訴期間と解決期間の間には,強い正の相関関係が認められた(rs=0.87,p<0.01). 結論:医療紛争及び訴訟の早期解決のためには,提訴前に男性患者の懸念に対応し,争点を減らし,弁護士及び被害者の訴訟活動を支援することが重要である.

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