医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
ISSN-L : 1881-3658
15 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 和田 哲郎, 髙橋 伸二, 後坊 健太, 濱中 浩之, 池田 雅枝, 矢﨑 旬子, 嶋田 沙織, 山口 剛, 田尻 和子, 本間 覚
    2020 年 15 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:2016年の医療法施行規則改正に伴い,高難度新規医療技術の提供に関する規程を作成し実施することが求められている.しかし,具体的なシステムの検討や実践した結果に関する実用的な報告はこれまでに見られない.筑波大学附属病院では,2015年5月から高難度新規医療技術等の評価院内制度を発足させた.導入後約4年の経過を振り返り,本院における制度設計並びに運用の工夫点とその有効性を検討する. 対象と方法:制度概要:評価委員会は曜日毎に4つのユニット制をとり,診療科からの申請は企画申請と実施申請の2段階に分けて審査した.最初の5例は診療科から実施報告を求め,担当部門が有害事象の発生を把握し,継続の可否を判断した.調査項目:申請件数,審査に要した期間,技術難易度の評価,有害事象の影響度別分類と継続の可否をretrospectiveに調査した. 結果: 平成27年(2015年)5月から令和元年(2019年)8月までに企画申請78件,内70件が承認された.実施申請は246件承認された.企画申請から委員会開催まで中央値12日,企画承認まで4日,実施申請から承認まで4日であった.影響度3b以上の有害事象は12件,評価委員会に再審査が諮問されたのは2件あった. 結論:ユニット制により評価委員の負担軽減と迅速な評価委員会開催を目指した.2段階審査により十分な審議と迅速な実施判断の両立を目指した.実施後の有害事象確認と継続の可否判断も行われ,これまでに32件の技術が確立した.
  • 加藤 剛, 藤井 達也, 小林 雅也, 亀森 亀森, 大庭 明子, 渡邉 誠之, 増山 智之, 八塩 章弘, 遠山 信之, 讃井 將満
    2020 年 15 巻 3 号 p. 234-239
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    院内搬送においてベッド移乗は患者トラブルを引き起こすリスクを有するが,その情報は限られている.われわれは,院内搬送におけるベッド移乗の安全性向上のためのチェックリスト作成のため,ベッド移乗に関連したインシデントを調査した.院内のインシデント報告分析支援システムを用いて院内搬送における移乗に関連したインシデントを同定し,患者影響度が高いまたは割合が高いインシデントを抽出した.44357件のインシデント報告の中から124件の移乗関連インシデントが同定された.血管内留置カテーテル関連(26.6%),チューブ/カテーテル関連(25.8%),酸素投与関連(21.0%),ベッドストレッチャー関連(17.7%)が多く,発生場所は手術室が最多(39.5%)であった.静脈内留置カテーテルやチューブ/カテーテルの牽引・事故抜去,酸素ボンベの元栓の開栓忘れが影響度と割合の高い主なインシデントでベッド/ストレッチャーの車輪の固定忘れが割合の高いインシデントであった.
  • 平賀 秀明, 秋本 義雄, 植草 秀介, 松尾 和廣, 吉尾 隆
    2020 年 15 巻 3 号 p. 240-251
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    背景:多くの国では医療紛争及び医療訴訟の解決までに長期間要することが問題となっているが,医療訴訟の長期化要因を詳細に解析した報告はない.そこで本研究では,医療紛争及び医療訴訟の時間的負担の軽減を目的として,医療訴訟の期間に影響を与える訴訟背景を調査した. 方法:2004~2008年に千葉地方裁判所に提訴され,判決により解決した民事訴訟39件を重回帰分析及びスピアマンの順位相関係数を用いて解析した. 結果:過失行為から提訴までの期間(以下,提訴期間),提訴から解決までの期間(以下,訴訟期間)及び過失行為から解決までの期間(以下,解決期間)の中央値は,それぞれ2.78年,2.37年及び6.03年であった.男性患者の提訴期間は女性患者よりも短く(β=-0.723,95%CI:-1.219~-0.227),争点増加により提訴期間は延長した(β=0.173,95%CI:0.052~0.294).同様に上訴(β=0.457,95%CI:0.178~0.735)及び患者側の弁護士の存在(β=0.933,95%CI:0.611~1.255)は,訴訟期間を延長させた.提訴期間と解決期間の間には,強い正の相関関係が認められた(rs=0.87,p<0.01). 結論:医療紛争及び訴訟の早期解決のためには,提訴前に男性患者の懸念に対応し,争点を減らし,弁護士及び被害者の訴訟活動を支援することが重要である.
報告
  • 宇城 令, 川合 直美, 寺山 美華, 鶴見 眞理子
    2020 年 15 巻 3 号 p. 252-260
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,転倒予防に関する教育的な介入後の患者からの情報提供状況,危険回避状況について4年間の推移を検討することである. 方法:対象はA大学病院における一般病棟の認知機能障害を認めない入院患者とし,2010年2月よりパンフレット等の教育的な情報提供を行った.この介入を評価するために,2010~2013年に無記名自記式質問紙調査を行った.調査項目は,転倒経験等の情報提供状況,入院中の履物の種類,ナースコールの使用状況,危険な行動の理解等とし,5段階評定とした.分析方法はχ2検定またはKruskal- Wallis検定後に多重比較,効果量を算出した. 結果:患者からの情報提供状況やナースコールの使用等には関連はなかったが,履物の準備及び危険な行動の理解へは有意な関連が認められた. 結論:本研究での教育的な情報提供は,医療者を介さない履物の準備や知識の向上と関連し,ある程度影響を示すと考えられた.
  • 前原 友哉, 松本 裕則
    2020 年 15 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    WTCとは勤務時間の裁量権,つまり「勤務時間をどれだけ自分で管理できるか」ということであり,WTCの増加は労働者のストレス軽減に有益であるとされている.A病院の臨床工学技士は業務が多岐にわたり,スタッフそれぞれが個別に業務にあたっている.しかし業務全般を把握する者がおらず,スタッフは終業時間になっても帰宅時間の予測ができない,つま­りWTCが少ない状況にあった. そこで業務全般を把握するリーダーを配置し,効率良く業務を差配する体制を整えた.リーダーは終業時間までに残務を的確に指示する.それによりスタッフは帰宅時間の予測が可能となる.つまりWTCが増加する. 取り組みの前後でスタッフの超過勤務時間を集計し,厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」を用いてスタッフの疲労蓄積度を調査した.WTCが増加した結果,取り組み前後で超過勤務時間に差がないにも関わらずスタッフの疲労蓄積度は有意に低下した.
特別寄稿
書評
feedback
Top