2020 年 15 巻 3 号 p. 261-265
WTCとは勤務時間の裁量権,つまり「勤務時間をどれだけ自分で管理できるか」ということであり,WTCの増加は労働者のストレス軽減に有益であるとされている.A病院の臨床工学技士は業務が多岐にわたり,スタッフそれぞれが個別に業務にあたっている.しかし業務全般を把握する者がおらず,スタッフは終業時間になっても帰宅時間の予測ができない,つまりWTCが少ない状況にあった. そこで業務全般を把握するリーダーを配置し,効率良く業務を差配する体制を整えた.リーダーは終業時間までに残務を的確に指示する.それによりスタッフは帰宅時間の予測が可能となる.つまりWTCが増加する. 取り組みの前後でスタッフの超過勤務時間を集計し,厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」を用いてスタッフの疲労蓄積度を調査した.WTCが増加した結果,取り組み前後で超過勤務時間に差がないにも関わらずスタッフの疲労蓄積度は有意に低下した.