抄録
目的:患者誤認事例に特徴的な背景因子を検討し,患者誤認防止策の策定に寄与する.
対象と方法:福井大学医学部附属病院にて,2017年度から2019年度に報告された患者誤認事例247件,2019年度に報告された非患者誤認事例2487件を対象とした.時間的圧迫(繁忙・焦り),作業状況(業務中断・複数業務の同時進行),作業環境(同じ場所やリストからの選択),同姓・類似氏名の4項目に注目し,これら4つの背景因子の患者誤認と非患者誤認事例における頻度,背景因子の組み合わせ別頻度,患者誤認事例における事項別(場面別),職種別,経験年数別での頻度を検討した.そして,2019年度に報告された患者誤認ならびに非患者誤認事例を対象に4つの背景因子が患者誤認事例において非患者誤認事例と比較して特徴的であるか,ロジスティック回帰分析で検討した.
結果:4つの背景因子の頻度は患者誤認事例において非患者誤認事例と比較して有意に高く,患者誤認の事項別,職種別,経験年数別で4つの背景因子の頻度に有意差はなく,患者誤認事例の90.3%にこれら4つの背景因子のいずれかを認めた.患者誤認事例の57.9%で複数の背景因子を認め,背景因子の組み合わせでは繁忙・焦りと同じ場所やリストからの選択の両者を認めた事例が最多であった(36.4%).同姓・類似氏名は非患者誤認事例では認められず,患者誤認に極めて特徴的な背景因子であった.他の3つの背景因子もロジスティック回帰分析で有意に患者誤認に特徴的な背景因子であったが,同じ場所やリストからの選択のオッズ比が最も高い結果であった.
結論:繁忙・焦り,業務中断・複数業務の同時進行,同じ場所やリストからの選択,同姓・類似氏名は患者誤認事例に特徴的な背景因子であった.患者誤認防止策について議論した.