抄録
目的:看護師の疲労,睡眠,気分の自覚得点を前向きに一定期間連続して測定することで,インシデント発生予測因子として活用する有用性を明らかにする.
方法:A病院の看護師を対象に,1ヶ月間毎勤務調査用紙に記載するよう依頼した.調査用紙では基本属性,毎勤務のインシデント経験と勤務開始と終了時にVisual Analogue Scaleで主観的な疲労,睡眠,気分を記載するよう依頼した.分析にはt検定および対応のあるt検定を用い有意水準は両側5%未満とした.
結果:A病院の病棟外来17部署207名を分析し,部署経験年数とインシデントの有無について有意差(p=0.015)があり,インシデントありは3.31年,なしは4.42年であった.日勤開始時の疲労に有意差(p=0.022)があり,インシデントありは51.20点,なしは60.06点であった.
考察:日勤の勤務開始時の疲労が,当該勤務におけるインシデント発生の予測因子と位置付けられる可能性が示唆された.