社会学評論
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特集・現代社会論の現在
「ポスト工業社会」の労働社会論
藤田 栄史
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キーワード: 金融化, 市場と組織, 個人化
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2008 年 59 巻 1 号 p. 114-132

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抄録

大量生産体制とケインズ主義的福祉国家を骨格とした戦後システムの転換の行方に形成されつつある「ポスト工業社会」における財・サービスの社会的生産システムは,どのような編成になるのであろうか.1990年代以降,「ポスト工業社会」への転換は新しい局面を迎えた.グローバルな市場化・金融化,個人化が進むとともに,営利企業とは異なる原理に立つ社会的企業や非営利組織によるサービスや財の生産の重要性が高まりつつある.
日本社会も同じ変化の波に洗われている.「ポスト工業社会」への転換は,各国の政治的制度選択や歴史的経路などに依存するのであり,多様な軌道をとる余地がある.日本社会の場合,ここ十数年の間に市場化・金融化を促す新自由主義的な制度改革が政治的に選択され,従来の日本的経営・雇用慣行は変化に迫られた.
こうした変化を把握するために,次の3つの視点が必要である.(1)「市場」「組織」と労働者のニーズ・志向との絡み合い,(2)個人化,(3)家事労働,非営利団体の労働やボランティア労働などからなる非雇用労働と雇用労働の組み直し.本稿は,主に(1)と(2)の視点から日本の経営・雇用慣行の変化と持続とを論じた.

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© 2008 日本社会学会
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