社会学評論
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投稿論文
  • 閻 美芳
    2017 年 68 巻 2 号 p. 176-193
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    中国は, 法律も道徳も人間関係に還元されてしまう「差序格局」が優越する社会といわれてきた. ところが, 実際に中国の民衆生活に降り立ってみると, 「差序格局」のほかにも, 「理 (礼)」などの社会規範も併存している様子がみえてくる. そこで本稿では, 山東省の一農村の日常生活を分析するなかから, これまでの中国研究が注目してきた「差序格局」構造をもつ社会において, 実際に中国の一般民衆がどのようなプロセスを経て行為の正当性基準 (根拠) を探り出し, 自らもそれに従っていくのか, そのメカニズムを考察した.

    考察の結果, 民衆の公平感覚を担保する「情」に心を向かわせ, 「下からの公」を生成するのは, 「体情」であることが明らかとなった. 体情の「体」とは, その人と身を重ね合わせ, その人の身になって行動することを意味する. また「情」とは, 窮地に立たされた弱者にこころを寄せて, 思いやることをさしている. 中国の人びとは, この動詞形の「体情」(情ヲ体スル) を介して, あくまでも人間の情に忠実な, その場に必要とされる「下からの公」を, そのつど見出していた. 「体情」に焦点を当てることで, 中国社会をより立体的に理解できるだけではなく, 相手の「情」がわかることを前提とする中国の一般民衆のもつ人間観・社会観の提示につながるだろう.

  • 毛塚 和宏
    2017 年 68 巻 2 号 p. 194-212
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は「個人主義の浸透により恋愛結婚が普及した」という個人主義仮説を, フォーマル・アプローチによって検討することで, 新たな理論的説明を提示することである.

    個人主義仮説は, 「家」や「分」を重視するような集団主義的な人々は見合い結婚を選択し, 自分の意思を尊重する個人主義的な個人は恋愛結婚を選択する, と仮定する. これに対して, 個人主義への志向と恋愛結婚の選択は必ずしも直結しない, という意識と行為の関連について批判がなされている.

    そこで, 本稿では「選好の進化」によるアプローチを用いることで, 意識と行為をそれぞれ独立に扱い, その単純ならざる関係を分析する. 個人主義の浸透プロセスを考慮した恋愛結婚の普及モデルを構築し, 意識と行為の時系列変化を捉える.

    その結果, 先行研究では想定されていなかった「慎重な個人主義」という行為パターン (選好) が析出した. 慎重な個人主義はある程度の階層維持を考慮に入れ, 見合い結婚・恋愛結婚を選択する. 恋愛結婚の普及に際して, この慎重な個人主義が, 見合い結婚中心的な社会の中で恋愛結婚を志向する選好を社会に涵養する, という重要な役割を果たすことが示唆された.

  • 田口 ローレンス吉孝
    2017 年 68 巻 2 号 p. 213-229
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    「日本人」/「外国人」の二分法に還元されない「混血」「ハーフ」と呼ばれる人々は, 政府・メディアの言説や学問領域においてしばしば不可視化されている. しかし, かれらの存在は日本社会における歴史的背景の中で立ち現われ, 時代ごとに多様なイメージや言説が付与されてきた.

    本稿では, オミとウィナントが用いた人種編成論の視座を援用し, 時期区分と位相という枠組みから戦後日本社会における「混血」「ハーフ」の言説編成を整理し, 節合概念によってその社会的帰結を分析した. 第1期 (1945-60年代) において再構築された「混血児」言説は, 第2期 (70-80年代) に現れた「ハーフ」言説の人種化・ジェンダー化されたイメージによって組み替えられることとなる. 第3期 (90-2000年代前半) では「ダブル」言説を用いた社会運動が展開されるが, これらは当事者の経験を十分に捉える運動とはならなかった. 第4期 (2000年代後半-) には, これまでの「ハーフ」言説が多様化し, 現在の日本社会でナショナリズムや新自由主義, そして当事者によってその意味づけが再節合されつつある. 歴史的な言説編成の中で「混血」「ハーフ」と名指された人々への差別構造が通奏低音となって温存される一方, 当事者の運動によってこれらが可視化され始めている状況を明らかにした.

  • 北村 匡平
    2017 年 68 巻 2 号 p. 230-247
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    敗戦から1950年代にかけて, 大衆娯楽として最も隆盛していた映画は, 多くの国民的スターを輩出した. この時代のスターダムにおけるスターイメージの変遷とそれを価値づける言説に, 大衆の欲望モードの変化がみられるのが1955年頃である. 本稿は, 原節子と高峰三枝子に代表される占領期的な欲望を体現する‹理想化の時代›から, 1955年以降の若尾文子を代表とする‹日常性の時代›への推移を見取り図として, 映画スターに対する大衆の欲望モードの偏差を浮上させることを目的とする.

    この転換期, 大衆の集合的欲望を最も引き受けていたのは若尾文子であった. 超俗的な美貌をもった占領期のスター女優とは異なり, 若尾文子を価値づける言説は, 「庶民的」「親近感」「平凡」であり, 大衆の‹日常性›を体現するペルソナを呈示していたからこそ彼女はスターダムの頂点にのぼりつめることができた. 本稿は, 娯楽雑誌におけるスターの語られ方を分析することによって, 経済発展だけでは説明できない言説空間の変容を捉える. そこで見出されるのは, 占領期の‹理想化›された社会を象徴するスターへの反動として, 大衆文化を具現する‹日常›の体現者を称揚する言説構成である. スターを媒介にして自己を見つめ返すようなまなざしの構造が生成する1950年代中頃, 若尾文子は「平均的」であることによって大衆の‹日常性›を演じ, 若者の「リアリティ」を体現したのである.

  • 麦山 亮太
    2017 年 68 巻 2 号 p. 248-264
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    キャリアの中断は, 個人の社会経済的地位を動揺させ, 格差を生成する契機である. 本稿の目的は, キャリアの中断による格差の生成過程を明らかにすることにある. 中断の効果を問うにあたり, 従来の地位達成モデルにもとづく分析は, キャリアの中断の効果が個人の異質性に由来するものか, その後の地位を低下させることに由来するものかを分離できないという点で不十分であった. そこで本稿では, 2005年SSM調査の職業経歴データから同一個人について複数時点の観察を作成しパネルデータ分析の手法を適用することで, 以上の効果を分離し, 中断がその後の正規雇用獲得確率に与える持続的影響を捉える. 加えて, 中断時年齢, 中断期間の長さ, 中断に至った理由によってキャリアの中断の効果が異なるかどうかについても検討する.

    分析の結果, 個人の異質性を除いてもなお, 男性は20年弱, 女性は20年以上, キャリアの中断を経験することでその後の正規雇用獲得確率は低い水準にとどまることが示された. 男性はとくに30歳以上の壮年期においてその効果が強い. 女性は, 年齢・中断期間・離職理由による差異はあるものの, キャリアの中断はどの層にとってもその後の正規雇用獲得確率を持続的に低下させる契機となっている. さらに, キャリアの中断はより地位の低い個人が経験しやすいイベントであり, それまでの格差をさらに拡大させる役割を果たしている.

  • 武田 俊輔
    2017 年 68 巻 2 号 p. 265-282
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    本稿は, 伝統的な都市祭礼における複数の祭礼集団間の対抗関係と, それを楽しむ見物人のまなざしと行為とが対抗関係に与える作用について明らかにする. 従来の都市祭礼研究の多くは対抗や競い合いが祭礼の場において具体的にどのように成立し, それぞれの町内の人々によって経験されるのかについて, そしてその優劣を判断する見物人の存在が対抗関係にもたらす作用について, 十分に論じてこなかった.

    また見物人のまなざしが与える影響について分析した数少ない研究においても, 担い手たちが祭礼における対抗関係をどのように経験し, それに基づく興奮と面白さを創り出すのか, またそれを眺める見物人が対抗関係にどう関与し, 「面白さ」を拡大すべくいかに担い手に働きかけるのかといった, 担い手と見物人の意識および行為を十分に捉えることができていない.

    本稿では上記の点について明らかにすべく, 滋賀県長浜市の長浜曳山祭という都市祭礼において, 祭礼組織同士の対抗関係が喧嘩という形で最もあらわになる「裸参り」行事を事例として分析を行う. そこで見物人のまなざしの下での祭礼における対抗関係について, 担い手・見物人双方の興奮と楽しみが創り出されていく仕組みや, 見物人たちが担い手に対して対抗関係を拡大すべくどのように働きかけるかについて論じ, 見物人の対抗関係への作用とそれが都市祭礼においてもつ意味の重要性について明らかにする.

  • 鹿又 伸夫
    2017 年 68 巻 2 号 p. 283-299
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/09/30
    ジャーナル フリー

    日本の世代間所得移動と貧困の世代間連鎖に関する研究では, 成育家庭の経済状態から始まる影響の経路そして成育家庭の貧困から始まる地位の経路が, 貧富の世代間再生産傾向を作りだすことに焦点をあてている. しかし, 親の学歴や職業など他の成育家庭要因にくらべて, 成育家庭の経済状態から始まる影響経路が子世代の経済的格差を作りだすのかは, 検証されるべき問題である. その検証を, 全国調査データをもちいて, 経済状態を家計水準として測定し, 無職を対象に含めて行った. 分析結果は, 成育家庭の経済状態を始点とする影響経路だけが, 子世代の経済的格差を作りだす顕著な経路とはいえないことを示した. 子世代の経済的格差を作りだす主要な影響経路は, 成育家庭の経済状態, 親の学歴と職業がそれぞれ本人学歴に影響し, その本人学歴から離学後職業へ, 離学後職業から現職へ, そして現職から本人の経済状態へとつながる連鎖的影響経路だった. 男性での貧困に到達しやすい地位経路は, 成育家庭の貧困だけでなく親の低学歴からも始まっていた. しかし, 女性では現職から本人の経済状態への影響が男性ほど強くないため, 明確な地位経路はなかった.

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