社会学評論
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投稿論文
  • ――主婦のハンドメイドと公共/家内領域の境界をめぐって――
    里村 和歌子
    2020 年 70 巻 4 号 p. 325-342
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿は,「作家さん」というハンドメイド作品を自ら売る主婦たちの労働的行為に焦点を当てながら,なぜ,どのようにハンドメイド作品を売ることができるのかについて考察する.具体的には,先行研究で論じられた,美術,家父長制,資本主義という三つ巴のイデオロギーによって無償労働の「穴」に追いやられてきた「手芸」が,なぜ,現代の「作家さん」たちにとっては稼得源となるのかについて,フィールドワークをとおして考察した.その結果わかったことは以下の3 つである.1)「作家さん」は家内領域でたまたま発見したハンドメイドという技能を資源として市場で売ることで経済的対価を得ているが,それらは総じて低価格である.2)低価格の理由は,「作家さん」という存在が作家である以上に,無償労働の担い手として期待される主婦を前提としているからである.しかし3)完全に無償にならないのは,「作家さん」の雇用されない,自律的な協働が商品の交換価値を生んでいるためである.労働者とも主婦とも定義しきれない中途半端な存在である「作家さん」は,家内領域を足場にしたつくり売るという行為によって,ジェンダーにより不均衡に配分された公共/家内領域の境界を知らず知らずのうちにはみ出している.
  • ――「生活時間のやりくり・組み立て」に着目して――
    柳下 実
    2020 年 70 巻 4 号 p. 343-359
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー
    家事労働研究は家事労働の分析を通して,世帯内労働の男女不平等を明らかにしてきた.特に量的な家事労働研究は,料理,皿洗い,掃除などのタスクに費やす時間や頻度から家事労働を把握してきた.しかし,これらの研究は世帯員の活動を滞りなく進めるためになされる世帯のマネジメントを見落としているという批判がある.本稿は上記の批判を発展させ,世帯のマネジメントには時間の捻出である生活時間のやりくりや,やりくりの可能性を考慮してスケジュールを構成する生活時間の組み立てが含まれると論じ,さらにそれらを女性が担っていると予想する.
    そのうえで生活時間のやりくりを量的調査から捉える試みとして,世帯の構成が変化する結婚や子どもを持つことが生活時間に与える影響に着目し,探索的な分析をおこなった.働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査を用い,固定効果モデルで結婚や子どもを持つことによって,男女の起床・家を出る・帰宅・就寝時刻にどのような変動が生じるのかを検討した.結果から,結婚により男女とも起床・帰宅・就寝が早くなっていた.子どもを持つことは男女ともに時刻へ有意な影響を与えていたが,女性への影響がより大きく,子どもを持つ女性は起床・帰宅・就寝が男性より有意に早い.本稿の知見から子どもを持つ際の活動のタイミングを動かすという労働の負担が,女性に大きいことが示唆された.
  • ――死にゆく患者に対する感情労働――
    中田 明子
    2020 年 70 巻 4 号 p. 360-378
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿は,患者の死に対する看護師の感情が,看取りの経験を重ねることでどのように変化するのか解明することを課題にする.
    本稿の調査における2 人の看護師の発言を分析すると,新人時代には患者の死に衝撃を受け,精神的な負担の大きさから,死にゆく患者との関わりを避けがちになっていた.しかし看取り経験を重ねてからは,死にゆく患者に積極的に関わり,疾患を越えて患者の生活史を知ることで悲しいと感じていた.
    この変化の過程では「穏やかな最期」という死生観が形成されている.それは3つの要素をもち,第1 に死を万人に訪れるものとする認識であり,第2に苦痛や後悔が残らないことを理想とし,第3 にそのような死となるように介入しなければならないという職業意識である.この死生観によって精神的負担が軽減されて,死にゆく患者への関わりが可能となる.以上の看護師の関わりは,患者や家族に後悔が残らないように介入することで,「他者の感情管理」を行い,また患者の生活史を聞くことで感情を触発し,この死生観によって感情を抑圧することで「自己の感情管理」も行っている点で,Hochschild の感情労働に該当する.
    「穏やかな最期」という死生観を形成した看護師は,「自己の感情管理」は可能になったが,告知が一般化した時代において,死が迫っていることを受け入れられない患者や家族に対してどのように関わるかという「他者の感情管理」が新たな課題となっている.
  • 横山 智樹
    2020 年 70 巻 4 号 p. 379-396
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は福島県南相馬市原町区を事例に,なぜ原発事故後に人びとは避難先から避難元に通い,帰ってきたのか,またそれはいかなる意味をもつのかを検討することである.本稿では原発事故被災者の〈生活構造の経時的変化〉を分析の視点に据え,「通うこと」や「帰ること」が被害からの回復や新たな環境への適応をめざす〈復興プロセス〉へといかに結びついているのかを明らかにした.中でもこのプロセスは,①生活構造の地域的固有性や歴史的連続性にもとづいており,「通い」「帰る」中ではこれらを再構築することがめざされていたこと,②都市部の早期帰還者と農村部の長期避難者との間で被害回復や適応のあり方は異なっていたが,これらの相互関連性によって成り立っていたこと,③「早期帰還」政策としての復興政策がいわば同等のものとして扱ってきた,避難指示解除・帰還・生活再建・復興との間に存在する断絶を埋めようとする営みとして現れていたこと,の3 点に特徴づけられていた.
    原発事故後の復興政策は,十分な制度的保障や復旧を抜きにした避難指示解除によって早期帰還/移住の二者択一を迫り,自力再建を強制したことで,生活の時間的・空間的断絶や災害前後の不連続性を生じさせてきた.しかし人びとは「通うこと」や「帰ること」でこれらをもう一度つなぎ直し,政府が強行しようとする「復興」や社会解体に抗う,〈復興プロセス〉を形成してきたのである.
  • ――19世紀ドイツ社会政策の展開を事例に――
    坂井 晃介
    2020 年 70 巻 4 号 p. 397-412
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,福祉国家の制度形成に関わる理念の位置価を,とくに19世紀後半ドイツにおける「連帯Solidarität」という語の政策的意義から,知識社会学的に明らかにすることである.
    既往研究はこの語の階級闘争的意義を強調するが,政策形成に関わる統治実践においてこれがいかなる意味内容をもっていたのかについては十分に明らかにされてこなかった.そこで本稿では,1860 年代から構想され1880 年代に成立していく,労働者社会保険立法にかかわる政策担当者による諸言説を,制度と理念の相互連関から分析し,この語彙の同時代的布置を探った.
    その結果明らかとなったのは次の点である.第1 に,同時代の政策担当者は,労働者や資本家が適切に自身の利害関心を自覚せず対立しているところに,社会問題の原因を見出している.第2 に,双方がもつべき適切な利害関心を特定し,それらを調和的に充足させるために,国家介入の重要性を主張している.第3 に,そこにおいて「利害関心の連帯」というフレーズは,階級的な闘争概念としての意味を離れて,国家介入を正当化する文脈で用いられている.
    こうした分析により,同時代のドイツにおける統治実践において,連帯Solidarität という語が,社会集団の秩序を特定し,それを政策的に実現することで社会国家を作り上げていくための1 つの知識として動員されていることが明らかとなった.
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