社会学評論
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特集「グローバル化と農村・過疎化」
  • 高野 和良, 徳川 直人
    2021 年 71 巻 4 号 p. 532-540
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
  • ――生活構造論の視点から――
    松本 貴文
    2021 年 71 巻 4 号 p. 541-558
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,グローバル化を背景とする新たな生活課題としての未婚化への対応が,農村の地域社会に与える影響の一端を,生活構造論の視点から明らかにすることである.そのために,九州地方の過疎農山村A 町が実施している結婚促進事業参加者への聞き取り調査の結果から,(1)未婚男性たちのどのような生活構造が未婚化と関連しているのか,(2)結婚促進事業への参加が未婚男性の生活構造にどのような変化をもたらすのか,(3)そうした未婚男性たちの生活構造の変化が,どのような地域社会の変容を引き起こしているのか,の3 点について検討した.

    その結果,(1)について,未婚男性の社会的ネットワークの閉鎖性と,老親との同居や家の後継者を期待する家族観の2 つが結婚を阻む要因となっており,同時に結婚できないことを悩まねばならない原因ともなっていること.(2)について,結婚促進事業への参加が社会的ネットワークを拡張するとともに,結婚観・家族観へも影響をおよぼしていること.(3)について,こうした変化を通じて,結婚促進事業が未婚化という生活課題を解決すための,各集落を結ぶハブ(hub)となることで,都市との関係を構築する際の窓口として機能し,地域社会に成員に対して新たな生活課題に対処できる資源を提供していること.以上の3 点を明らかにした.

  • ――技能移転を通した内発的発展の可能性――
    二階堂 裕子
    2021 年 71 巻 4 号 p. 559-576
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,外部人材と協働しつつ,農山村の住民が主導する「新しい内発的発展」とよばれる動きがみられる.また,外国人技能実習生の雇用も拡大している.しかし,外国人技能実習制度による発展途上国への技能移転はほとんど達成されていない.本稿では,ベトナム人技能実習生を事例に,技能実習生の活用を通した農業経営と技能移転の可能性について考察する.

    愛媛県に拠点のある地域協同組合X は,有機農業を中心としたコミュニティ・ビジネスを活発に展開している.労働集約的な有機農業を実践するため,X にとって技能実習生は不可欠である.さらに,X はベトナムに有機農業センターを開設し,帰国した技能実習生を再雇用することにより,新たな輸入業の開始だけではなく,ベトナムにおける有機農法の普及も実現させている.

    分析の結果,以下の知見が得られた.第1 に,技能実習生の受け入れにより,革新的な農業の実践や持続的な過疎地域の再生を実現させる可能性がある.第2 に,農業者が技能や知識の継承を実行した場合,その可能性は高まる.第3に,彼らが技能移転に向けて行動するための条件は,①明確な経営理念に根ざした経営戦略,②次世代育成に対する強い熱意,③技能実習生の母国における農業の現状に対する理解である.

    結論として,農業者の経営能力の向上と,技能実習生の母国における情勢を視野に入れた外国人技能実習制度への改正が火急の課題であることを強調する.

  • ――宮城県登米市を事例として――
    相澤 出
    2021 年 71 巻 4 号 p. 577-594
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では東北地方の過疎地域の家族の変化を,家族の介護に対する向き合い方に着目することによって提示する.地域医療を担い,自らも地域住民である医師と看護師の視点から捉えられた患者と家族の姿は,現代の過疎地域の家族の一面と,過去との差異を鮮明なものとする.検討するのは,宮城県登米市の事例である.先行研究において登米市は,多世代同居の直系家族と同居志向の強さが典型的に見出される地域とされてきた.しかし,登米市の今日の在宅医療の現場での聞き取り調査からは,地域社会や家族のあり方に変化の兆候が確認された.介護負担の増大に対して,介護施設の積極的利用が家族によってなされていた.この地域は在宅医療の担い手や社会資源に恵まれており,医療や福祉の専門職も家族の介護負担を軽減するためのケアに積極的である.こうした条件下で,過去とは違い,同居家族による介護は家族や親族,地域社会のなかで規範的に期待されるものではなくなりつつある.さらに患者や介護に直面する家族は,多様な家族成員や親族のネットワークによって支えられていた.近居や世代間の違いへの配慮の大きさなども,家族や地域に確認された.現代日本の介護をめぐる諸制度は,いまだに同居家族の介護負担を暗黙の前提としている.しかし,典型的に多世代同居が見出されるとされてきた過疎地域の介護現場にも,こうした前提にとらわれないケアや家族の姿が見出されている.

  • ――森林資源をめぐる動員網と関係網――
    福田 恵
    2021 年 71 巻 4 号 p. 595-614
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,「過疎の時代」のただなかにある山村像を再考するために,「林業の時代」を支えた近代山村について考察を加えた.その結果,夥しい林業者の移動を通して,山村社会の間に幅広いネットワークが形成されていた点を確認し,次のような社会的特質を抽出した.

    まず大局的にみれば,交通インフラや行政組織の整備などを通して,このネットワークには関連諸機関や有力者の網の目が絡みつき,山村社会を政治的・経済的に動員するメカニズムが埋め込まれていた.つぎに各地方の特質からみれば,伝統的な林業地帯と新たな森林フロンティアが,出稼ぎの輩出と受入の関係を形づくることで,森林資源の探索と開拓が繰り返され,山村の網の目は全国各地に派生していった.最後に地域の具体的場面からみると,ネットワークの深部には,国家や資本から自律した広狭域におよぶ社会関係の諸契機が内蔵されていた.その関係網は,狭域的にいえば,一村落における複数の「山村」の集合と,「峠」を利用した人的交渉によって支えられ,また広域的にいえば,親族網やメンバーの入れ替わり,高い社会的モビリティをその派生・拡大の起動力としていた.

    本研究は,既存の山村像に対して,山村間における広狭域に及ぶ空間移動とそこに織り込まれた社会的流動性を強調し,閉鎖的で硬直化したイメージをもつ現代山村のなかにも開放的かつ柔軟な関係性が潜在的に組み込まれていることを示唆した.

  • ――福井県越前市における集落営農調査から――
    伊藤 勇
    2021 年 71 巻 4 号 p. 615-634
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    グローバル経済の展開とそれに呼応した新自由主義農政の展開とによって苦境の度を深める中山間地域において,地域農業と村落社会の維持・存続をはかろうとする集団的実践として「集落営農」を取り上げ,それが取り組まれた背景と経緯,取り組みの成果と課題,そして,「集落営農」を媒介に加速したと思われる農家と村落の根本的変容について,福井県越前市における事例研究の 調査知見を報告する.

    「兼業稲作」を特徴とする当地で「集落営農」の進展を促したのは,米価下落と減反拡大による稲作農業の採算悪化に伴い兼業農家の間に生じた動揺と危機感である.そして,「村」としてのまとまりや共同の歴史をもち,一定の意欲と能力を備えた「定年帰農者」等の主体を確保しえた村落において,「集落営農」が積極的に取り組まれた.約10 年の取り組みによって種々の成果が挙がり,地域の農業と農地そして村落社会が維持されてきた.しかし今,農外就業現役世代の意識と行動の両面での「農離れ」や「村離れ」が顕著になって次世代の後継者問題が深刻化している.その裏には,農業情勢と農政の変化というマクロな変動を背景に取り組まれた存続実践に媒介されて,長年安定を保ってきた兼業稲作の「家」が大幅に減少し,そうした家々が構成してきた「村」の性格も大きく変容したという事態がある.中山間地域の農業と村落の未来は,こうした根本的変容の先に展望されなければならない.

投稿論文
  • ――ある結婚差別の事例を通して――
    笹川 俊春
    2021 年 71 巻 4 号 p. 635-653
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    1960 年代以降の高度経済成長という日本社会の地殻変動と同和対策事業の実施は被差別部落を激変させた.被差別部落からの転出や一般地区からの転入が加速し,「誰が部落出身者なのか」わからないという状況が一般化した.

    そうした極めて現代的な状況が加速する中,1991 年10 月,広島市内の高校に通う部落出身の女子高校生が部落差別を受けたことによって自ら命を絶った.一般地区で生まれ育った彼女がなぜ部落差別に遭い,どうして死を選んだのか.関係する行政によって『広島市中学校教師結婚差別事件に関する総括書』がまとめられ,彼女の死を部落差別の結果と断定したが,彼女が直面した困難と部 落差別との関係については言及されなかった.

    彼女の死からおよそ30 年が経過しようとしている今,彼女のような「境界を生きる人々」は増加し続けている.だからこそ,差別によって命を奪われた彼女が直面していた「境界を生きることの困難さ」とは何かを解明する試みには大きな意味があると考える.本稿では,この差別事件に関わる公の文書として唯一公開された『総括書』をもとに,彼女が部落差別を受けたことを再確認し,彼女のように一般地区で生まれ育った部落出身者が,境界を生きる存在としてどのようなアイデンティティを形成し,どのような困難に直面しているのかを明らかにする.

  • ――Self-Starvation の意味理解の変遷――
    河野 静香
    2021 年 71 巻 4 号 p. 654-670
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    Self-Starvation(以下SS と略記)は今日の日本では摂食障害の名で知られているが,こうした理解が広まったのは比較的最近のことである.だがそれ以前の日本でSS が知られていなかったかといえば,そうではない.本稿は摂食障害として知られる以前の日本におけるSS の意味理解,〈摂食障害〉の生成,その後の展開を記述する.

    分析対象は1872~2018 年の新聞記事のうち,見出しあるいは本文にSS と関連する語句を含む記事である.テキストマイニングと内容分析による記事の計量的な分析から,日本におけるSS の意味理解の変遷を次のように要約できる.

    19 世紀後半,SS は宗教的目的による断食,政治的目的によるハンガーストライキ,厭世による断食自殺など多様な意味で理解された.20 世紀半ば,SSは医療者から様々な病名で,精神的な病気として言及された.1980 年代以降,SS は医療者,教育関係者,フェミニストカウンセラーによって心の問題として理解され,拒食症として言及され始めた.このときSS は心の問題であると同時に社会の問題としても捉えられ,医療をはじめ公的,非公的諸機関の連携が求められた.2000 年代以降は福祉を中心に,SS は摂食障害の名で,嗜癖(addiction)として理解され始めている.現代日本でSS は心の問題であると同時に習慣化した行動パターンの問題と解され始め,新たな支援のあり方が模索されている.

  • ――外国人技能実習制度における労務管理――
    吉田 舞
    2021 年 71 巻 4 号 p. 671-687
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,外国人技能実習生の日本の労働市場への従属的包摂の仕組みを,受け入れ制度と労務管理に着目して考察する.技能実習生は,日本人労働者とは異なる労働力として,さまざまな制度的制約のもと,労働市場に組み込まれている.従来,これらについては,人権問題や労働問題として,その過酷な実態が告発されてきた.しかし,技能実習生は,必ずしも直接的な強制や,非人間的な抑圧だけで,管理されているわけではない.むしろ,その制度的立場ゆえに,「よくしてくれている」雇用主に対して,「ものが言えない」状況が強化されることもある.本稿では,このような視点から,制度と労務管理に組み込まれた「恩顧」のイデオロギーに着目する.そのために,以下を明らかにする.まず,地方の家族経営体で働く技能実習生の労務管理の事例から,職場における雇用主との疑似家族的労使関係や,労務管理の実態を明らかにする.次に,これらの労務管理に対する,技能実習生の4 つの対応パターン(耐える,帰国する,逃げる,闘う)を考察する.ここから,疑似家族的労使関係や制度的制約が実習生の対応選択に及ぼす影響を分析する.この結果,技能実習制度では,政策から現場レベルまで,「援助=よくしてやる」という恩顧の論理が貫徹しており,そのなかで,技能実習生が労働市場の底辺に組み込まれていることを明らかにする.

  • ――社会学的知識分析の新たな展開に向けて――
    小田 和正
    2021 年 71 巻 4 号 p. 688-703
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,1990 年代以降にドイツ語圏を中心に生じている新しい知識社会学の研究動向に着目し,そのなかでもR. Keller が提唱している「知識社会学的言説分析」に焦点を当てる.Keller の知識社会学的言説分析は,知識社会学と言説分析という異なる伝統をもつ知識分析の枠組みを統合し,知識の生産や流通,それらの変化をマクロな水準で経験的に探究するための研究プログラムを提示するものであり,すでにドイツ語圏を超えて国際的な広がりを見せつつある.本稿の目的は,Keller の研究プログラムの基本的な理論枠組みと分析図式を紹介するとともに,その理論的課題を指摘することにある.

    Keller のプログラムの特徴は,マスメディア等に媒介されるマクロ水準の言説の内容的構造を分析するだけでなく,その生産・流通・変容を(その特定の)言説外的要素との連関から説明する点にある.その研究視角は,科学知識や新たなテクノロジーの社会的受容をめぐる問題が先鋭化している今日の社会状況を踏まえれば,きわめてアクチュアルであり,社会学的な知識分析に新たな枠組みを提供するものとして重要な意義をもつ.だがそれは,言説外的要素の存在論的ないし認識論的地位の基礎づけに課題を残しており,本稿では,Keller のプログラムに依拠した経験的研究を積み重ねつつ,同時にその課題の解決に向けてさらなる理論的整備を行う必要があると論じる.

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