社会学評論
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投稿論文
  • ―福祉レジーム論とフェミニスト福祉国家論の併存を越えて―
    大木 香菜江
    2024 年75 巻3 号 p. 190-204
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    脱家族化論は,1990年代に家族の育児や介護にかかるケア負担を緩和させる働きをみるものとして,Esping-Andersen の福祉レジーム論とそれを批判し新たに家族の視点を加え入れようとするフェミニスト福祉国家論のなかで展開された.しかし,1990年代以降の脱家族化論が福祉国家と家族の関わりを分析するという同一の問題関心をもって出発するにもかかわらず,2つの学術動向に分断されたままに1990年代に脱家族化の概念形成がなされ,脱家族化を用いた実証研究へと発展し,相互議論の場が設けられることがない.そこで本稿ではまず,1990年代以降に展開する前者と後者の脱家族化論を整理し,これらが分派して発展し続けていることを指摘する.福祉国家比較研究においてメインストリーム研究といわれる前者が,1990年代前半に展開していた後者の脱家族化概念を見落としたことをきっかけに,脱家族化論の分派が生じ,後者によっても前者の脱家族化概念が参照されないことで両派の併存が継続したのである.つぎに,2つの潮流のどちらかに立脚する一面的な脱家族化論の理解によって福祉比較研究において南欧と東アジア地域における脱家族化の内実が十分に理解されずに処理されることを指摘する.2つの脱家族化論の併存を乗り越えた相互検証的な研究をすることで,両地域の家族政策策定により有益な議論がもたらされることが期待されるのである.

  • ―自己と他者への概念の適応実践に焦点を当てて―
    栗原 和樹
    2024 年75 巻3 号 p. 205-222
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    「子どもの貧困」問題は2000年代後半から問題化され,貧困層の子どもの支援が重要な課題とされてきた.その中で,教師は重要なアクターとして位置づけられ,貧困をいち早く捉え,支援することがめざされてきた.しかし,教育社会学の議論では,教師がある子どもを貧困であると同定することは,どのように成し遂げられているのか,という問いには注意が払われてこなかった.また,貧困層の排除の一因とされている教師の階層性の影響については,実証的なデータに基づかない推論に終始していた.本稿では,この点に着目して貧困の当事者として自己呈示する実践と,他者を貧困であると同定する実践を「概念分析の社会学」の立場から検討する.分析には,貧困の当事者として自己呈示をし,かつ教師として働いている小学校教師へのインタビューデータを事例として用いる.

    分析の結果として,「貧困」の当事者としての自己呈示の際には,子ども時代の語りの検討から,貧困概念と世帯概念の結びつき,そして世帯の管理者ではないことが貧困の当事者の境界画定を困難にしていることを指摘した.また,教師として貧困を同定する際にも,その世帯との関連性が教師としての職務に制限をかけていることを指摘した.

  • ―ロバート・ベラーの象徴的実在論の理論的意義―
    宮部 峻
    2024 年75 巻3 号 p. 223-238
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    現代社会において宗教現象の分析の重要性がますます認識されるようになった一方,社会学は宗教を適切に分析できていないという理論的課題が存在する.本稿は,こうした理論的課題に先駆的に取り組んだロバート・ベラーの「象徴的実在論」に注目し,今日の宗教社会学に対してベラーの宗教論がもつ理論的意義を明らかにする.

    1970年前後にベラーが提唱した象徴的実在論は,宗教や道徳といった社会の規範的次元を利害や権力によって説明する還元主義的な社会科学を批判した立場である.ベラーが象徴的実在論を提唱した当時の時代背景に注目すると,功利主義的な傾向が強まる現実世界を批判的に捉えるために象徴的実在論の構想を試みたという,ベラーの規範的関心が明らかとなる.ベラーの象徴的実在論は,パーソンズの規範的関心を継承するものである.象徴的実在論は,実在の開放性・多層性を捉えようとするパーソンズの試みをシュッツの概念を借りて表現しようとしており,また神学者のパウル・ティリッヒの影響を受けて構想されている.

    象徴的実在論は「宗教のリアリティ」の解明をめざすだけでなく,ベラーの研究の根底にある立場であり,パーソンズの規範的関心を継承し,宗教と社会科学の対立の克服をめざしており,それは啓蒙主義以来の社会科学を批判する立場である.その試みには課題があるものの,宗教に関心をもつ社会学者であれば応答しなければならない問いを提起している.

  • ―初職開始年による age trajectory の違い―
    鳥居 勇気
    2024 年75 巻3 号 p. 239-254
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,初職非正規雇用労働による精神的健康への影響が加齢とともに変化するのかと,加齢による格差の変化傾向は初職開始年によって異なるのかを明らかにすることである.日本では,初職が非正規雇用であると正社員への転職が困難であるとする「罠シナリオ」が強調され,貧困や精神的健康などとの関連も指摘されている.しかし,欧州の健康研究では,人生初期時点での格差は加齢とともに拡大すると主張されているが,初職の雇用形態による精神的健康の格差についても同様であるかについてはほとんど議論されていない.また,初職非正規雇用をとりまく状況は年々変化しているが,それに応じて初職非正規雇用による精神的健康への影響も変化しているかについても明らかにされていない.以上の課題を踏まえて,本研究では,東大社研若年・壮年パネル調査データを用いて成長曲線モデルを推定した.分析の結果,初職開始年が2000年以降の場合において,男性の精神的健康の格差は加齢とともに拡大する傾向にある一方で,女性の精神的健康の格差は若年期に最大化することが明らかになった.また,婚姻・現在の雇用形態・年収を統制した場合,男性は初職の効果が部分的に減少したが,女性の場合はわずかに効果が上昇した.以上の結果を踏まえて,先行研究が扱ってこなかった,初職非正規雇用による不利益が存在する可能性や,日本の経済面での男女格差について,考察として論じた.

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