社会学評論
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特集・都市社会研究の新たなパラダイムのために
大都市の繁華街と移民女性
名古屋市中区栄東地区のフィリピンコミュニティは何を変えたか
高畑 幸
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2012 年 62 巻 4 号 p. 504-520

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抄録

本稿は, グローバリゼーションに伴い新たに創出された地域性としての異種混交化 (町村2006) が進む地域において, そこで生まれる新しい社会問題や社会的緊張の緩和に移民女性たちが果たしてきた役割を明らかにすることを目的とする.
名古屋市中区の繁華街・栄東地区は, 1980年代初頭からフィリピン人女性の就労が多かった場所である. ここでは, 1997年からフィリピン人の組織化が進み, 2000年には複数の組織が合同で事務所を借りて「フィリピン人移住者センター (Filipino Migrants Center: FMC)」を開設した.
ここは, 繁華街における外国人コミュニティの中で, 日本社会の一番近くにある「窓」として機能する. そして彼女らはインナーシティの地域活性化への人的資源ともなってきた. その背景には, 移民女性に特徴的な「弱者性」が定住を促進したこと, また日本の政策・施策も「外国人の定住と多文化共生の地域づくり」の担い手を必要としてきたことがある.
すなわち, 栄東地区においては, 剥奪的状況に置かれた移民女性と地元住民・行政との結合的関係がまず作られ, 彼らの「共生事業=窓」を通じて関係が保たれた. そして, 地域で移民男性が関わる問題が発生すると, その窓を利用して彼らと地域住民との対話が図られ, 地域が抱える新たな社会問題や社会的緊張への解決が試みられてきたと言えよう.

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© 2012 日本社会学会
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