社会学評論
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特集・東日本大震災・福島第一原発事故を読み解く
岩手県における防災と復興の課題
麦倉 哲吉野 英岐
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2013 年 64 巻 3 号 p. 402-419

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抄録

東日本大震災による岩手県の死者行方不明者の合計は6,000人を超えている. 生存した被災者は避難所等での生活を経て, 応急仮設住宅で避難生活を継続し, その数は2013年9月の時点でも約3万6000人に達している. 国, 県, 市町村は復興計画を策定し, 復興事業を進めているが, 被災した市街地や住宅地は更地のままであることも少なくない.
2011年に大槌町の応急仮設住宅の住民を対象とした調査では, 深刻な被災状況, 生存者の避難行動の高い割合, 避難先での助け合い行動などが確認できた. また聞き取り調査から, 被災犠牲死の要因の再検討が必要であることを明らかにした. そのうえで, コミュニティの復興にとって, 復興のシンボルとなる地域文化の存在が重要であることを指摘した.
復興まちづくりの前提になる防潮堤建設では, 県による民有地の取得が必要であるが, 多数による共有地や相続未処理のままの土地が多く, その取得は難航している. 釜石市での調査からは, 海岸部での防潮堤の建設にあたり, 41名の共有になっている共有地の存在が明らかになった. 国はその処理をめぐって加速化措置を発表したが, 被災地の自治体が自ら処理を進められるかたちにはなっておらず, 復興の地方分権化は実現していない.
今後の課題としては, 震災犠牲者の被災要因の検証, 地域文化の所在や価値の認識, 住民の地域への関心の持続, 住民と基礎自治体が復興をすすめられる体制の構築が挙げられる.

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© 2013 日本社会学会
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