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社会学評論
Vol. 64 (2013-2014) No. 3 p. 492-509

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http://doi.org/10.4057/jsr.64.492

投稿論文

本稿は, 発達障害をもつ高校生を対象にした社会生活技能訓練 (SST) においてその参加者たちがこの訓練に抵抗していく事例を検討する. とりわけ本稿は, 社会生活技能訓練とそのなかでの抵抗について, それぞれの実践を組み立てている手続きを記述することを通じ, 発達障害者に対する制度的支援の実践が当事者に対していかなる行為と自己アイデンティティの可能性を提供しているのかを明らかにする.
制度的実践を介した医学的概念とその対象者の行為およびアイデンティティとの関係については, 医療化論の視点からすでに批判的検討がなされてきた. しかしこうした批判的視点にあらかじめ依拠してしまうことは, 発達障害者と呼ばれる人びとがこの概念に基づいて行いうる実践の多様なあり方を見失わせてしまう. したがって本稿はこの視点からひとまず距離をとりながら, この実践を構成している概念連関の記述を試みる.
この作業を通して本稿が見出すのは, 医療化論の視点とは対立する次の事態である. すなわち, 発達障害者への制度的支援の実践は, その参加者が発達障害の概念を批判的に捉え返していくための可能性をも提供しており, したがってまたこの実践のあり方に抵抗し, さらにはそれをあらためていく可能性をも提供しているという事態である. これに基づき本稿は, 当事者のアイデンティティ形成とその書き換えの積極的な契機として制度的支援の実践を捉えていく必要のあることを示すことになる.

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