社会学評論
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特集・近代社会の転換期のなかの家族
近代世界の転換と家族変動の論理
アジアとヨーロッパ
落合 恵美子
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キーワード: 人口転換, 圧縮近代, アジア
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2013 年 64 巻 4 号 p. 533-552

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抄録

日本の近代家族研究の蓄積は世界の家族変動研究にどのような貢献ができるのか, アジアとヨーロッパを例に検討する. まず, 人口転換とジェンダーへの注目を理論的基礎として, 近代の家族変動と社会変動をとらえる枠組みを提出する. 第1次人口転換と主婦化が近代家族を単位とする「第1の近代」を作り, 第2次人口転換と脱主婦化が個人化と家族の多様化を特徴とする「第2の近代」を開始させたとする枠組みである. この枠組みをアジア社会に適用するため, 日本以外の東アジア諸国は圧縮近代, 日本は半圧縮近代ととらえることを提案する. 圧縮ないし半圧縮近代においては, 「個人主義なき個人化」すなわち, 家族が互いに支え合う社会において, 家族というリスクを回避するための「家族主義的個人化」が起こる. また, 人口学的条件等の違いの結果を文化的優劣と誤解して, 間違った政策判断をする危険がある. とりわけ自己オリエンタリズムによって「第1の近代」の近代家族や性別分業を自らの社会の伝統と思い込む「近代の伝統化」が起こりやすい. 日本よりも圧縮の強い他のアジア社会では, 伝統と近代とグローバル化が絡み合って家族のグローバル化が急速に進行する. 他方, ヨーロッパの「第2の近代」は, 世界的視野で見ると, 世界システムにおける地位の低下に対応する現象と考えられる. 多くの社会が行き着く経済成長の鈍化した高齢社会に対応した社会システムを構築する試みが「第2の近代」なのである.

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© 2013 日本社会学会
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