社会学評論
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精神科病院の長期入院および脱施設化の動向に関する考察
―東京都多摩地域の病院スタッフを対象としたインタビュー調査から―
櫛原 克哉添田 雅宏若林 真衣子
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2024 年 74 巻 4 号 p. 782-799

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抄録

本稿は,日本の精神科病院にて長期入院の傾向が続く状況について,病院スタッフの視点から考察し,脱施設化の遅れの要因を検証する.フィールドとして1950~70年代にかけて病院の新設が相次ぎ,その多くが現存する東京都多摩地域を選んだ.近年の制度改正や診療報酬の改定の影響もあり,精神科病院は従来の入院中心の医療からの転換を余儀なくされ,病床数の漸減という点で,病院によってはゆるやかな衰微の局面を迎えつつある.

転換期にある精神科病院の現状を探るべく,医師と精神保健福祉士を対象にインタビュー調査を行った.結果,病院の特徴を表す類型として「脱施設化を推進する病院」と「長期入院患者を受入れ続ける病院」の2類型が導出された.前者は,病床数の削減や退院促進等を進める特徴を有する.後者は脱施設化の必要性を認めつつも,退院や転院が困難な患者が一定数いることから,その受け皿にならざるをえない旨が語られた.他の病院からの入院・転院要請のほか,地域での受入れが困難な患者も受入れる傾向にあるため,結果的に病院に対する地域の依存度が高まり,医原病とよびうる状態も惹起されていることが示唆された.「脱施設化を推進する病院」では入院が認められない患者も,「長期入院患者を受入れ続ける病院」に引受けられうると考えられ,背景には入院を求める地域の意向もうかがえた.この重層的な関係性が脱施設化の遅れの要因の一つであると考えられる.

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